僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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なんかgdgd気味ですがかまわず投稿です。


榛名と山城と満潮と

「提督。榛名さんとの1対1で模擬戦を申請します」

 

落ち着いた風に言っているがものすごくプレッシャーを発している榛名が申請してきた。

内容は榛名との一騎打ち。

うん。わかりにくいね。

僕の榛名vs斉藤の榛名ということだ。

 

他の艦娘たちには非常に友好的に接しようとしているが、どうにも斉藤の榛名に対して思うところがあるらしく、ぎこちない態度になっていた。

それを解消しようというのが目論見なのだろう。

 

だが

 

「却下。資材がない。陸で何かしら資材を使わない勝負をすればいい。何なら私物のゲームを貸し出そうか?」

 

いくら僕が榛名贔屓であってもこの複雑な事情が重なり合った時期にそこまでの融通は利かせられない。

 

「それに模擬戦ならやらなくとも榛名の…キミの勝ちになるのは分かりきっているだろう?」

 

二人の練度差を考慮すれば僕の榛名が装備なしで、斉藤の榛名が今うちで用意できる最高の装備をさせても僕の榛名が圧勝する。

練度100超えに1桁じゃあかすり傷つけられれば御の字というレベルだ。

模擬戦にこだわる理由がわからない。

 

「榛名がこんなにもお願いしているのに…ですか?」

 

声のトーンがまた一段階下がった気がする。

が、今の僕は提督としてすべき対応に専念する。

状況が切羽詰りすぎているのだ。

タウイタウイに向けての仕込みをしなけばならないのが一番大きいが、ここでもう一つ厄介事が増えたのだ。

榛名・瑞鶴・北上の引き抜きをする条件として視察が来るのだ。

おそらくこちらの規模に対してこの三隻は強力すぎて運用できないとか難癖つけて連れ帰る算段だろう。

それに対抗するために十全な運用状況で、戦果も上々である旨を示さねばならない。

戦果については他の鎮守府と規模差を考慮すればトップレベルだからおそらく問題ない。

これで難癖つけてくるなら記録と数字で押し返せる。

ただ運用状況については僕が艦娘を欲して建造を多くしているため資材が元々少なく、タウイタウイに向けてのことで更にカツカツだ。

これについては正直厳しい面がある。

だから今から視察に来るまでの間に一定量以上の状態にしないとまずい。

 

一応方針については全体に通知しているし、榛名もそれを把握しているはずなのだが…

 

「そうまでして模擬戦にこだわる理由って何なのか、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」

 

何度かこの質問をしているが、毎度榛名は顔を伏せて沈黙してしまう。

 

「言いたくない・・・か。話せば必ずしも許可するわけではないけれど、少なくとも理由が分からなければ確実に却下する。それより今度の作戦の仕込み、進んでいるか?」

 

山城を主体にやらせていた準備。これに榛名も含めて実施することにした。

理由は単純。榛名が()()()であるからだ。

 

「…三式弾が必要個数開発できれば問題ないかと」

 

「今回は金剛ではなく山城と行うことになるが、それについて意見はあるか?」

 

史実では金剛と榛名のペアで行った作戦だったはずだ。

僕も艦これを始めてからサラッと調べただけだからあまり自信は無いが。

 

「あの作戦時は榛名たち金剛型が適役でしたが、今回は状況が違います。むしろ提督の考えでしたら榛名も山城さんも抜きにして重巡を主体にしたほうがよろしいのではないでしょうか?」

 

僕の本当の意図まで汲み取っての発言だろう。榛名の言は正しい。

 

「そうだな。そこまで把握してくれているなら問題なさそうだ。榛名の言う通り、僕の意図を成し遂げるにはキミや山城では過剰火力なんだ。上手く調整してほしい」

 

訓練はさせているけれど、訓練中は赤城につき合わせているのに対して本番は深海棲艦相手にやらなければならない。

どこまで上手く行くかは計りかねる部分がある。

 

「提督の命令であれば、なんなりと。作戦の後ならば模擬戦を許可してくれますか?」

 

で、またその話に戻るのね…

 

「確約はできない。検討はしてみよう」

 

今よりは落ち着いているだろうけど、そもそも相手がここに残っているかも怪しい。

榛名の望みだから可能な限り叶えてあげたいけれど、出来ないこともままあるのだ。

 

と、ここでノックがなった。

時間的に遠征帰投の報告だろう。

 

「入れ」

 

「失礼します」

 

満潮が書類を持って入室してきた。

 

「遠征艦隊の帰投報告よ」

 

ぶっきらぼうなのはいつものことだが、いつもよりも不機嫌度が高い気がする。

疲れているのだろうか?

 

「お疲れ。ほぅ、大成功ね。よくやった。下がって良いぞ」

 

こちらでも遠征の成功と大成功がある。

発生条件はおそらくゲームと同じ。

ただ理屈はよくわからない。艦娘らの言では妖精さんが張り切って普段以上の資材を持ち帰ることができたとのこと。

要領を得ないが現場に付いていくわけにも行かず、そういうものだと割り切っている。

 

「また、榛名さんと居るのね。もう専属秘書艦任命なのかしら?」

 

満潮が榛名を横目で見ながら言う。

専属秘書艦ってなんだ?

 

「榛名はちょっと要望を言いに来たんだよ。ところでその専属秘書艦ってなんだい?」

 

「秘書艦は榛名さんで固定して、他の娘にやらせないってこと」

 

うーん、それだと榛名を出撃させているとき秘書艦なしってことになる。

それは厳しいかも。

専任がいるのは良いが、そこが抜ける場合も考慮しなければならない。

あえて穴を作るような運営は好みじゃないな。

 

「他の娘にもしてもらうつもりだよ?というか別に今日の秘書艦は榛名じゃないし」

 

「じゃあその秘書艦はどこかしら?」

 

「ここよ」

 

山城がゆらりと現れた。

 

「扉、開けっ放しだったわよ」

 

「ご、ごめんなさい」

 

素直に謝る満潮。

素直な態度って珍しいような…?いや、相手が僕じゃないからか。

 

「これ、開発の報告書。悪いけれど目当てのものは出なかったわ」

 

「そればっかりは妖精さんの気分次第だからね。しかたないさ」

 

報告書を受け取り、目を通す。

三式弾は開発できなかったようだ。

 

「珍しいわね。建造じゃなくて開発を優先してるなんて」

 

「まーね。重要度が変わったんだ。さて、用が済んだなら早めに休んでくれ。しばらく忙しくなるからね」

 

満潮を始め駆逐艦は稼動頻度が高い。

出撃のみならず遠征もあるからだ。

特に資材をためようとしている今は通常時より頻繁に遠征へ行っている。

キラ状態とまで行かなくても疲労状態は解消しておきたいので、雑務や訓練を縮小して休養を増やしている。

ゲームであれば1-1キラ付けとかで楽できたのだが、現実は面倒だ。

 

「…」

 

なにやらムスッとしてこちらを睨む満潮。

この娘はこういう拗ね方をするから対処法が分かり難い。

罵倒に近い物言いであっても自身の意見や要望を発言してくれる叢雲や霞のほうがそういう面では助かる。

いや、アレはアレでキツイものがあるんだけどね。

艦娘かつ自分のでなければまず絶縁したいレベルで。

 

「提督、棚にある新商品のお菓子食べても良いかしら?」

 

山城が唐突に言い出した。

今までそんなこと言い出すことなんて無かった。せいぜい出されたお菓子をつまむ程度だ。

めずらしいこともあるものだ。

 

「あぁ、かまわないよ。僕も食べてみたいからいくつか残しておいて欲しい」

 

「ありがとう。満潮、それに榛名さんもお茶淹れるから付き合って」

 

満潮のためか。

山城がフォローしてくれる様子だし、任せてみよう。

そう思って思考を運営に切り替え、視線をPC画面へ向けると…

 

なんか…いた…

 

小さな体の少女…妖精さんだ。それも三人。人?でいいのか?

普段執務室には来ない、というか来たの今回初めてじゃないか?

一体何事だろうか?

 

こちらが戸惑っていると、一人がこちらに出てきた。

 

「ていとく、わたしたちのうちだれをくびにするの?」

 

…へ?

くび?首?というか喋れるん?

今まで身振り手振りだったよね?

ちょっと混乱が収まらない。

 

「しゅほーのわたしはとうぜんつかうよね?」

「ふくほーもひつようでしょ?」

「ていさつできないとふべんだよー?」

 

…この子らは一体なんの話をしているのだろうか?

 

「ここに来るなんて何事?提督にご用事?」

 

山城がこちらに向けて声をかける。

よくよく妖精たちを見ると見覚えがある。

アホ毛が特徴的なショートヘアの妖精。

双眼鏡を持ってるポニーテールの妖精。

サンバイザーをつけてるツインテールの妖精。

 

個人的に一番見覚えがあるのは最後のツインテ。

水上偵察機の妖精さんだ。

残りの二人は…

 

なんだっけ?

 

「この子ら、山城のところの子?」

 

「えぇ。この子が主砲・35.6cm連装砲の子で、この子が「15.2cm単装砲の子で、ツインテの子が偵察機だね」えぇ、そうよ」

 

山城の装備は初期のまま主砲・副砲・偵察機の組み合わせだ。

偵察機の子はもともと判別ついていたから、残りのどちらがどちらなのか判明すれば判別できる。

 

「別に破棄する予定なんてないんだけど、なぜそれを考えているんだい?」

 

妖精さん達に聞くと首を傾げる。

 

「どゆこと?」

「さんしきだんとこうたいするのはだぁれ?」

 

こうたい?交代…

あぁ、そういうことか。

 

「えと、三式弾を積む際にどう装備を弄るかってことだね?予定では悪いけど偵察機を外すことになると思う」

 

僕の言葉に肩を落とす偵察機の子。

それを慰める主砲の子とほっと安心している副砲の子。

微笑ましい風景に和んでいるとふと呆然としている山城が見えた。

なんか既視感が…

あぁ、この前の自分の艦娘を判別できるようになったと伝えたときの大淀もこんな感じだったな。

 

「てい…とく?この子たちの言葉わかるのですか?」

 

「んー、わかるというかこの子らって喋れたんだね。初めて知った。今までは雰囲気で読み解いてたけど、やっぱりはっきり言語にしてもらったほうがわかるね」

 

「…そう、ですか」

 

そう言って山城は下がった。

それについて行くように妖精さんたちも机から降りていく。

 

でもたしかに色々と不可思議ではある。

榛名が来てから、というよりケッコンカッコカリの指輪の力と見るのが妥当か?

一番思い浮かぶ原因はそれだし…

正直この立て込んでいる状況でこのことに思考を割くゆとりはない。

早く作業を終らせ、より計画を確実なものに…

 

「はい、提督。あーん」

 

目の前にクッキーが現れた。

顔を上げると榛名がにこやかに差し出していた。

先ほどまでの冷めた空気は一切無く、いつもの榛名だった。

 

「どうぞ!」

 

そのままズイと差し出し続ける榛名。

 

「あまり根を詰めすぎるのはよくないですよ?そうやって提督ががんばっているのは素敵ですが、それで提督が前みたいになってしまうのは榛名、いやですよ?」

 

その微笑みはとても優しく、春の陽みたいだった。

 

榛名の言うことが正しい。

楽しいことのために努力して、それで楽しむための時間すら削ってしまったらどうなるのか。

その結果をよく経験したではないか。

 

「そうだね。もともと僕は怠け者だし、怠けてて普通か。じゃあお言葉に甘えて」

 

あー、と口をあけると榛名が優しくクッキーを口に入れてくれた。

 

「おいしいですか?」

 

しっとりとした食感と、甘さが口の中に広がる。

咀嚼しながらしゃべるのはどうかと思ったので、頷いて肯定する。

 

「ならよかったです。もう一ついかがですか?」

 

「ん、もらおうかな」

 

だが榛名はもうクッキーを手にしていない。

一緒に山城たちのところに取りに行こうかね。

と、立ち上がろうとするとそれを榛名に制された。

 

「山城さん、満潮さん。クッキー持ってきてください」

 

彼女らをパシリに使うのかい。

山城たちのほうを見るとやはり戸惑っている。

顔を見合わせた後山城が口を開いた。

 

「食べるならこちらに来なさいな。そこは仕事する場所でしょう?」

 

山城の言うとおりだ。

すると榛名が妙に笑みを深めた…ように見えた。

なんかどこかで見たことあるような…?

 

「提督は忙しいので、手が離せないそうです。一つずつでいいので。それに…」

 

そこで言葉を区切り、山城たちのほうに近づく榛名。

そうするなら榛名が持ってくればいいものを。

何か山城たちに言っている様子だ。

 

「ちょっ!」

「しーっ」

 

そして激しく動揺する山城と満潮。

満潮が声をあげるとたしなめる榛名。

何を企てているんだか…あ。

榛名の妙な笑みをしたときを思い出した。

この間、榛名たちが来た日の瑞鶴を呼び寄せたときだ。

あのときはそのまま瑞鶴を引っ張ってこけさせてたな。

ということは何かイタズラでも思いついたってことか?

瑞鶴のときみたいに危ないことをしなければ良いが。

 

少しすると山城と満潮が不機嫌そうにしながらクッキーを一枚ずつ持ってこちらにきた。

 

「じゃ、じゃあ私からやるわ」

 

満潮が宣言して前に出る。

 

「ほら、口開けなさい」

 

ぶっきらぼうにクッキーを差し出す満潮。

…理解した。榛名は満潮たちからも"あーん"をさせてくれるよう取り計らったんだ。

どんな方法で説得したのか分からないが、この二人がこんなことしてくれるなんてこの先二度とないかもしれない。

ならおとなしく味わっておこう。

 

「あー」

 

口を開けるとなんだかんだしっかりと食べさせてくれた。

満潮のことだから嫌々でポイと投げ入れられるかと思ったが、そんなことはなかった。

榛名は一体どんな魔法を使ったんだ?

僕も使えたならもっとうはうはなのに…

 

しっかりと咀嚼し味わっているとその様子をじっとまつ満潮。

飲み込むまで待ってから口を開く。

 

「満足した?」

 

「欲を言えばおかわりほしい」

 

あ、つい本音が

 

「ばっかじゃないの!?」

 

ありがとうございま…いや、僕はその業界の人じゃないです。

プンとそっぽ向いて下がる満潮。

入れ替わるように山城が前にでる。

 

「ん。はいこれ」

 

若干不機嫌そうな顔のままクッキーを差し出す山城。

 

素直に口を開けていただく。

うん。甘くて美味しい。

 

「そ、よかったわね」

 

うん。よかった。

けど何も僕は言ってないっすよ?

 

「そのくらいならなんとなく分かるわ。それじゃ、戻るから」

 

すぐに踵を返して去る山城。

満潮もそれに続く。

なかなかに貴重な体験だったな。

 

しっかりと咀嚼し終えて飲み込むと、榛名がコップを持ってにこやかにしていた。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう」

 

水を飲み、一息つく。

なかなかすごい気分転換をさせてもらったよ。

 

「キリッとしてる提督も素敵ですが、榛名は今の提督のほうがいいと思います」

 

唐突に言われてドキッとする。

 

「あ、あぁ。ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

結構気を使わせてしまったみたいだ。

もう少し根を詰めないようにしながらがんばろう。

 




かわいい女の子に美味しいものをあーんしてもらいたい。
するのでも可。

前半はシリアス目のストーリー進行。
後半はそろそろ作者が我慢できなくなってきたので強引な流れと分かりつつもイチャラブ要素です。
だってそうしたかったんだもん。

すみません。でも私は省みない。

提督が何か物騒なことを計画している様子です。
察することができる諸兄が多いかと思いますが、一応伏せておいていただけるとありがたいです。

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