僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~ 作:荒井うみウシ
side:榛名
「みんな飲み物は行き渡ったよね?それじゃあかんぱーい!」
瑞鶴さんの音頭にあわせて皆が乾杯をする。
「そういえば提督はお呼びしていないのですか?」
艦娘用寮の談話室を使った宴会に彼の姿は無かった。
この場にいるのは艦娘のみ。
メンバーは瑞鶴さん、北上さん、赤城さん、山城さん、摩耶さん、羽黒さん、そして榛名です。
「うん。だって今回はがーるずとーく、女子会ってやつだもん!それに、皆から提督さんのことについて話してもらうのに、本人が居たら言いにくい娘もいるでしょう?」
発起人の瑞鶴さんが言う。
「そーだねー。なんだかんだいいつつもこの北上さまにも羞恥心はあるからね。この場のことはてーとくには内緒ってことで」
かなり明け透けな言動をしている北上さんが先陣を切ってこういうのは本当に言いにくい娘へのフォローでしょう。
そういう気の回し方ができるのは羨ましいです。
「別に提督の話だけでなくてもいいんでしょう?私はただの懇親会と聞いていたのだけど」
口数が少なくとも押さえるところは押さえる山城さんが言う。
「えぇ。でも私たちの共通の話題として一番なのは提督さんのことでしょう?無理にそうしろとはいいませんけど、入り口はそこが一番かなってさ」
「そうね。それは否定しようがないわ」
瑞鶴さんの説明に納得した様子の山城さん。
事実戦闘を除いて共通の話題としては提督についてが一番なのだから。
とはいいつつ実質この集まりを提督について情報共有を目的としている娘は多そうですが。
「じゃあトップバッターは発起人の私がやるわね。この間さ、提督さんに聞いたんだけど、提督さんは猫より犬派なんだって!」
「まぁなんとなく想像できるな。自由奔放な猫より言うこと聞く犬の方が良いって感じか?」
摩耶さんの想像もありそうですが、提督である以上それだけじゃないと思います…
ゲームのときに出てくる出会いたくないあれ。
「うーん、なんか猫には悪い思い出があるらしくてね。それが原因で特に白い猫はあんまり見たくないって言ってたよ」
白い猫…やっぱり榛名の想像のほうがありそうです。
「悪い思い出?噛まれたりでもしたのかな?」
「たぶんそんな感じじゃないかしら?皆は犬と猫、どっちが好み?」
皆はそれぞれ犬や猫と答える。はじめに提督は犬がいいと言ったからか犬派が多めなきがします。
「榛名さんはどっちがいい?」
「榛名は猫ですね」
榛名がそう答えると瑞鶴さんは意外そうな顔をしました。
「てっきりていとくが犬というから犬っていいそうだけど、なにか理由があるの?」
北上さんも榛名の回答が気になったようです。
「えぇ。以前提督が猫耳をつけた榛名の画像を手に入れまして、猫耳榛名!いや榛にゃんイイ!とおっしゃっていたので」
おや?なにやら皆さんポカーンとしていますね。
どうしたのでしょうか?
「あ、もちろんその画像の榛名は他所の榛名ですよ?」
「いや、そうじゃない…あぁ、うん。別の話題にしましょ…」
なにやら腑に落ちませんがいいでしょう。
しかし、別の話題ですか…
「猫耳。つけたらていとく喜ぶのかなぁ?」
「北上!?話題変えようっていったばかりじゃない!」
ぼそりと呟く北上さんの言に反応する瑞鶴さん。
「でもさ、やっぱりていとくの好みって気になるし?特に異性方面では」
「そ、そうだけどさぁ…」
複雑な顔をする瑞鶴さん。気にはなるけど話題は変えたいということでしょうか?
「榛名さん。他に提督の好みってどんなのがあるのかしら?」
山城さんがいつもの様な流し目ではなく、しっかりとこちらを見て質問する。
あまり印象にありませんでしたが、彼女もやはり提督の艦娘ということなのでしょう。
「榛名も全てを知っているわけではありませんし、直接教わったわけではないので間違っているかもしれませんよ?」
ゲーム中の独り言や、ご友人との会話から聞いたことのなのでおおよそは間違ってないと思いますが。
これは言う必要ありませんし。
「それで構わないからいくらか教えてくれる?」
「もちろんです。さて、どれから話しましょうか…」
艦娘はみんなかわいいと言っていたことを伝えてもそれほど有益と思われないでしょうし…
「というか榛名さんはそれでいいのですか?」
赤城さんが言う。
「いいとはどういうことでしょうか?」
「いえ、以前から思っていたのですが、提督の好みを知っていることは優位に立てます。それをやすやすと放棄できるものでしょうか?」
赤城さんはこう聞いているわけですね。
─
「そう…ですね。前はそういう考えもありました。榛名だけを見てもらって、榛名が独り占めしたいって。でもそれじゃあダメだったんです」
そう考えていた。
でもそれではまた前みたいに彼はいなくなってしまうかもしれない。
「榛名は…榛名の望みは提督の傍にいつまでもいることです。健やかに、和やかに。そのためには榛名だけではダメだったんです」
縛り付ける鎖は多いほうがいい。
止めておく楔は多いほうがいい。
「むしろ榛名から皆さんにお願いしたいくらいです。提督がここに居続けたいと思えるように。…いやなら無理にとは言いませんが」
また、彼と会えなくなる日を迎えたくない。
また、彼と会えない日々は迎えたくない。
ずっと、彼の傍にいる日々がいい。
ずっと、彼が笑っていられる日々がいい。
それが榛名の望みだから。
榛名が口を閉じると、しばらく皆無口でした。
しかし、静寂を破ろうと山城さんが口を開く。
「…そう。ならはっきり言わせてもらうけど。私は貴女のお願いで彼の傍にいる気はないわよ」
「山城さん?」
怪訝そうに赤城さんが問う。
「私は私の意志で、私の望みで提督の傍に居るわ。そこだけは明確にしておいて貰いたいわ」
はっきりと言い切る山城さん。
えぇ、それでいいでしょう。いえ、それがいいでしょう。
「はい!ではそのためにご協力いたしますね!」
「山城さんはあまりそういうのではなかったと思っていましたが…認識を改めざるを得ませんね」
フフフと笑い、口元を手で隠す赤城さんの目は真剣そのものです。
なら、もう少しサービスするべきでしょう。
「そうは言っても赤城さんはすごく有利ですよ?」
「…どういう意味でしょうか?」
こちらを見る赤城さんの目はとても深いものでした。
「だって提督はいろんな意味で空母が好みですもの」
瞬間、皆さんが固まりました。
「またまたとんでもない爆弾を置いていくねぇ~、榛名さんは」
北上さんだけはいつも通りのようです。
「そうでもありませんよ。たぶん駆逐の娘たちはとっくに気づいているでしょうし」
ちらりとしか見ていないが、
普段からそれを目にする機会が多い駆逐艦の娘ならなおのこと。
「たしかにこういう話はあんま駆逐達と共有してないけどよ、どうしてそういえるんだ?」
摩耶さんの疑問に答えましょうか。
「今のところ秘書艦は駆逐艦がほとんどになっていますよね?」
「それで?」
「なら、提督は資材を貯蓄したがる性格なのは知っているはずです」
「それはアタシらも知ってるけど、それと空母が好みってどうつながるんだ?」
「ズバリ建造です。貯蓄が好きなあの提督がボーキを多量投入して建造を行うのですよ?」
貯蓄よりも空母を優先している証左です。
「あの…それの意味はよくわからないのですが…」
羽黒さんがおずおずと言う。
「ですから、空母を建造するためのレシピを貯蓄を削ってまで回すので「ちょっとまって」はい?」
瑞鶴さんが遮ります。
「つまり榛名さんは提督が空母を出そうとしているから空母が好きって言いたいのかしら?」
ちょっと違いますが…
「いえ、空母が好きな証拠としてわかりやすい例を出しているだけですよ?」
そう、空母が好きだから空母レシピを回す。
空母レシピを回すから空母が好きとは順番が逆なんです。
「ひとつ確認させて?」
「はい、なんでしょう?」
「提督は…いえ、榛名さんもだけど、
?
「それがどうかしましたか?」
「それがって…いえ、なんでもないわ。話の腰を折ってごめんなさい」
なにやら難しい顔をしている瑞鶴さん。
いったいどうしたのでしょうか?
「まぁ、とにかく、提督は空母好きですよってことです」
「なぁ、ちなみに重巡はどうなんだ?」
「もちろん好きですよ?というか艦娘はみんな好きと言ってましたので安心してください」
「そっか、それなら少しは希望が…」
ぶつぶつと自分の世界に入っていく摩耶さん。
「ところでさ。さっき言ってたいろんな意味でってどゆこと?」
北上さんがのほほんとしてます。
「女の子としての意味や、運用上の好みっていう意味ですね」
「ほうほう?」
「空母による制空権の確保は重要ですからね。だから対空性能の高い摩耶さんは将来非常に頼りにされますね」
「へっ?アタシ?」
急に自分の名前があがって驚く摩耶さん。
フォローはこれでいいでしょうか?
「あと先制できるのも高評価です。その点は雷巡の北上さんにも軍配があがります」
「およ、それはよかった」
「大まかにはそういった点が好みみたいですよ」
いろいろ伝えましたのでみなさん熟考しているようですね。
良い傾向です。この情報をもとにもっと提督となっていただきたいですね…
大変お待たせしました。
正直登場キャラ増やしすぎて処理が追い付かないっす…
1話に登場するキャラ数が減ったり、人数は多いのに会話する人数が少なかったりするかもしれませんがお許しください。
でもやれる限り、どれだけ時間がかかっても続けようと思いますので、気長にお待ちください。