僕の艦隊これくしょん ~提督になれば艦娘とイチャラブできると思っていた~   作:荒井うみウシ

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しばらくぶりですいません。

白雪視点となります。


白雪さんと磯波さん_裏1

久々の秘書艦を担当でき、司令とご一緒に居られる喜びを感じていると、司令から一声かかった。

 

「白雪さん、これおねがいできます?」

 

差し出された書類を確認すると建造に関連する書類だった。

これを工廠にいる明石さんまで届ければあとは彼女と妖精さんが建造をはじめてくれる。

割と司令は工廠が好きなようで自ら赴いて建造や開発を見届けることが多いが、実際には書類ひとつで事足りるため、こういうこともままある。

おねがいというからには私一人で行って来いという指示なのだろうが、なぜ今回なのだろうかと嘆いてしまいそうになる。

 

たまたま初期艦だった叢雲さんが提示した秘書艦の条件により、比較的古参の駆逐艦がなりやすいようにされている。

先を見れば私も有利な部類に入れるだろうからしぶしぶ了承していたが、現状叢雲さん自身や霞さんの頻度が多く、まだまだ私が担当できるのは時たまでしかない。

それでもやっと担当できるときに限って二人きりになれる時間が少なくなることが起きる。

前回の担当時は来客のため、前々回は急遽出撃すべき状況のため。

今回は何も無く、二人きりでゆったりとできると思っていたら、普段秘書艦をつれて行く建造を私一人で行うことに。

 

司令は私と二人になるのがいやなのでしょうか?

 

そう妄想してしまいそうになる。

事実は異なるだろう。今までのは司令自身の裁量外のことですし、今回の件もべつにわざわざ私のときだからというわけではない。

たまたまだったわけだ。

そうにきまっている。

 

でももし違ったら、私はきっとおかしくなってしまうでしょう。

だからそう思い込む。

 

 

「どうしました?チェックはしましたけど何かぬけていました?」

 

心配そうな顔で司令が覗き込む。

しばらく黙ってしまっていたようだ。

彼に無用な心配をさせてしまって申し訳なくなる。

 

「いえ、ただ少しぼーっとしてしまいました。申し訳ありません」

 

あわてて取り繕う。

 

「そうですか?体調悪いようなら代わりのだr」

「大丈夫です」

 

彼と二人きりになれる(このとき)を逃したくないが故に少し大きな声で言ってしまった。

他の誰かに取られたくない。強くそう思う。

 

「でもあまり無理をしないように。白雪さんはそういうの隠すの上手ですから」

 

普段の茶目っ気を出しながら軽いトーンで彼が言う。

でもその中に含まれるこちらを気遣う気持ちとほんの少しの安堵の気持ちは確かに感じられた。

 

「ありがとうございます。それではこちら、処理してきますね」

 

そういって私は扉に向かう。

扉の前で振り返り、彼の顔をしっかりと見つめた後、礼をし退室する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―・―・―・―・―・―

 

 

 

建造が終った報告を受け、司令の指示により、結果を確認しに行く。

工廠へ入ると一人の艦娘が居た。

 

吹雪型九番艦・磯波

わたしの姉妹艦である彼女が着任したのだ。

 

「磯波さん?」

 

私が声をかけると彼女はこちらに気づいたようだ。

 

「あっ、白雪ちゃん。磯波、着任しました。これからよろしくね」

 

ほのかにはにかみながら磯波さんが挨拶する。

 

「はい、よろしくおねがいします」

 

人手不足のこの鎮守府で艦娘が増えるのはとてもありがたいことだ。

それも姉妹艦であるのだからうれしさも倍増である。

はやくこのうれしさを司令に伝えに行こう。

 

「では司令のところに着任の挨拶をしにいきましょうか」

 

「あの、提督ってどんな方ですか?」

 

とことことこちらに近づきながら磯波さんが尋ねてくる。

 

「とても素敵な方ですよ。外見はちょっと厳しそうですけど実際にはとても優しい方ですし」

 

あの人のことを思うだけでうれしい気持ちになれる。

もっと素敵なところを具体的に言いたくなるけれど、ぐっとこらえる。

ライバルは少しでも少ないほうがいいですからね。

とはいえ磯波さんも彼に惹かれるのは時間の問題でしょうけれど。

 

「ふふっ、白雪ちゃんがそんな風に思うぐらいいい人なんですね」

 

磯波さんが笑う。

一言言っただけでなのにどこまで伝わってしまったのだろう?

というより伝わるほど顔に出てしまった自分が恥ずかしい。

 

「えぇ、とても。優しく、真摯で、頼りがいがあって…」

 

と、そこまで言ってハッとする。

 

「これじゃまるで惚気話ですね。ごめんなさい」

 

私と磯波さんの間に少し気まずい空気が流れる。

 

「えっと、あんまり人気がないけど、ここ(この鎮守府)にはどれぐらい艦娘が所属しているの?」

 

少し不安そうに磯波さんが言う。

 

「確か16名、磯波さんを含めれば17名ですね。内駆逐艦は磯波さん含め8名ですよ。ただアイテム屋さんと任務娘さんは大本営所属ですが」

 

頭の中でうちの所属の人たちを数える。

 

「あいてむ?」

 

怪訝そうに磯波さんが首を傾げる。

 

「アイテム屋さんが明石さんで、任務娘さんが大淀さんです」

 

大本営所属の二名はなぜか司令がそれぞれ"アイテム屋さん"・"任務娘さん"と呼ぶ。

理由は知らないが、あの人がそう呼ぶのだから皆それに倣ってそう呼んでいる。

本人たちももうそう呼ばれることに対して抵抗がなくなったようにも見える。

 

そうこう話しているうちに司令の待つ執務室に着く。

 

 

 

 

 

―・―・―・―・―・―

 

「白雪です。入ります」

 

ノックをした後に声をかける。

どうぞーと司令ののんびりした返答を聞いたうえで入室する。

 

「新しい建造が終了しました」

 

そう言って磯波さんを中へ招き、私は司令の傍に控える。

彼は視線を手元から磯波さんに向ける。

その目には期待がこめられているのがありありと見てとれる。

人手不足に悩まされている最中、新しく着任があったのだから当然であるが、それが向けられているのが自分でないことに少し嫉妬してしまう。

 

「と、特型駆逐艦き、9番艦のい、磯波です」

 

おずおずと入ってきた磯波さんが敬礼をしたのち、おどおどと挨拶をする。

それを司令はひとまずじっと見つめた後、口を開いた。

 

 

「よろしく。しばらくはここでの生活に慣れてもらうことを優先するために、雑務を多く受け持ってもらうけど、すぐに海に出てもらうようになると思うので、心積もりをしてくださいね」

 

若干作ったような物言い。不器用ながらも磯波さんを気遣って、緊張させまいとする司令の心遣いがわかる。

 

「はっはい!がんばります」

 

うれしそうに磯波さんが答える。

頬を少し染めながら目を伏せる。

 

 

これは、やはり彼女も同じようになってしまったようですね。

一目惚れしてしまうほど司令が素敵なのはわかりますが、ライバルが増えるのは少々好ましくないです。

 

「では当分の間は白雪さんに教わって、仕事を覚えてください。かまいませんね、白雪さん」

 

思案していると司令がこちらを向いて言った。

彼からの指示ならばどんなことでも従おう。

 

「はい、承りました」

 

思案していたことを悟られないように即座に返答し、しっかりと礼をする。

 

おや?指示を思い返してみるとこれはひょっとして厄介なことなのでは?

今日は久々の秘書艦で、司令の傍にいられる数少ない日なのに、それを差し置いて磯波さんに指導をするのでしょうか?

いや、落ち着いて考えるのです。別に指導をするのは今すぐというわけでも今日一日というわけでもありません。

ですから今日は秘書艦の仕事を全うしつつ、磯波さんに指導を行えばよいのです。

そうです。それが適解です。

 

「ん?下がってもよいのですが、まだなにかありますか」

 

司令が磯波さんに声をかける。

 

「ぁぅ、いえ、私は特にありません・・・」

 

磯波さんが私と司令を交互に見る。

司令がこちらを向いて、視線で問う。

 

「私も特にはありませんよ?」

 

秘書艦なのですから、私が下がる道理はありませんし。

 

「えっと、ならどうしてそうじっとこっちをみているのでせうか?」

 

時折司令はこういった砕けた口調を使う。

おどけているときや機嫌がいいときなどに使うことが多い。

 

「本日の秘書艦は私ですから。司令のお傍に居るのは当然かと」

 

淡々と事実を伝える。

 

「その、白雪ちゃんにつ、つくよう指示されていますので・・・」

 

磯波さんが体を縮めながら答える。

私は司令の秘書艦としてそばに控える。

その私につくように指示されている磯波さんも傍に控えている。

なにが問題なのだろうか?

 

「えっと、じゃあ白雪さんや。磯波さんをつれて鎮守府の案内なり、他の娘との顔合わせなりしてきてくれませんかね?」

 

少しだけ、本当にほんの少しだけ顔をしかめながら司令が指示を出す。

どうやら秘書艦の仕事よりも磯波さんの対応を優先してほしいようだ。

 

「それでは秘書艦の仕事ができなくなってしまうのですが、いかがなさいましょうか?」

 

つい司令の傍にいたくて、彼の指示にそむきかけるような発言をしてしまった。

いや、この程度ならまだそむいてはいないはずだ。ただ確認しているだけだ。

 

「今日は特段仕事が多いというわけではありませんし、大半は終っています。磯波さん関連のほうを重視してくださいな」

 

明らかな作り笑いをしながら司令が促す。

 

司令は実は私と一緒に居るのが嫌なのでしょうか?

いつも他の娘のときは一緒に居させるのに、私のときばかり離れたり他の人も置いたり。

そんなに嫌われるような何かを私はしてしまったのでしょうか?

思い当たる節は一切ありません。

ひょっとして生理的に無理という部類なのでしょうか?

もしそうだとしたら私は絶望的で、生きていくことすら難しいでしょう。

いや、でも本当に嫌っていたらとっくに私は解体されているはず。

でも人手が足りないからまだなだけで、時がくれば解体されてしまうのでしょうか?

 

いやなことが頭をめぐる。

大好きな司令がそんなことを思うはずがないという思いと現実からの推察に頭がパンクしそうになる。

 

「・・・わかりました。それでは一通りまわってきます」

 

…どちらにしろ、私がすることは彼の指示にしたがうのみです。

彼がどんな理由、どんな思いを私に抱こうが、必要としてくれる限り、それに答える。

彼に求められることが私の幸せなのだから…

 

 

 

 




以前の雰囲気・ふいんきについて割りと感想で言及されるのですが、マジレスっぽいのが見られたので一応弁明するとネタです。

"なぜか変換できない"まで含めてのものですので、一応。

親切に教えてくださった方々はありがとうございました。


追記:一部設定に矛盾が生じる表現があったので、修正しました。

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