デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします   作:にゃー

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たくさんの誤字報告を頂きました。
嬉しいと同時にこんなに誤字ってるんだと情けなくなります。
皆様ありがとうございます


猫っていうものはすごいものだ。

 カフェを出た俺はそのまま外門へ向かい、そこから迷宮区を目指した。

 思わぬ知り合いとの再会もあり、ある程度は精神的に回復したが、それでも全力で走って向かう気にはならず久しぶりに地形を眺めながらふらふらと移動していた。

 

 だからだろうか。いつもならばコンマ数秒で流れていく風景の中にけもの道を発見した。

 もしこの世界がリアルであったなら、ここら辺は多くのプレイヤーに踏みならされ、けもの道も見つからなかったと思うが、あくまでもこれはゲームだ。

 いくらプレイヤーが踏みならしても、その草はプレイヤーの重さがなくなり次第元の状態へ戻る。

 流石に草刈りをされれば消えるが、それでも翌日には元通りだ。

 そんなところにけもの道。

 何かあるな。そう思った俺は迷宮区に向かっていた足を止め、けもの道へ入っていった。

 

 けもの道をたどること二十メートルほど、何も無いところで道が途切れる。

 ここは街道からはなれ、草の背も腰ほどまでに高くなった場所だ。

 それでも一応はあたりを眺めての確認はできる。

 つま先で立ち、周囲を眺めるが踏みならされたような跡は見当たらない。

 何も無かったか、と気を落としてうなだれると、その視界の先に横穴を発見した。

 地面から三十センチほどの高さまで草が割れて、出来ている横穴だ。

 体高三十センチほどの動物が通ったあとだろう。

 そのまま視線を上にあげると草は不自然に曲がり、横穴の真上にも伸びていた。

 つまり、けもの道を見つけて入ってきた探索力の低いプレイヤーを追い返すトラップのようなものだろう。

 今まではけもの道で草が潰されていたが、ここからはもじゃもじゃと生えている未開の地、めんどくさそうだがこの横穴をたどってやろうじゃないか。

 

 横穴の空いている方向へ歩く。

 草を刈り、かき分けやすくしてから横穴を探す。

 横穴を見つけたら再びその方向へ進む。

 

 途中で横穴の方向に進んだら急に方向転換がされていて横穴を見失ったり、方向転換に気が付かずまっすぐ進めば落とし穴にはまったりとしながら三時間ほどフィールドをさまよい歩いているとようやく草原を抜け、目的地のような場所へたどり着いた。

 そこは神聖なという言葉が似合う場所だった。

 どこからか湧き水が湧き、岩には苔が生えている。

 水で濡れた苔や草木が日の光を反射し、しかしその中心の祠の周りには雑草一本苔一()()もない。

 そんな祠に近づく勇気もなくその場に棒立ちしていると、後から蹴り飛ばされる。

 慌てて剣を抜いて振り向けば、そこには一匹の猫が。

 猫のカーソルは敵性エネミーのものではなく、街にいるNPCのもので、しかし街の守衛のように戦闘もでき、その実力が圧倒的な場合に表示される黒色のものであった。

 

 再び慌てて剣を収めて猫のカーソルを見る。

 このタイプのNPCは敵対行動をとると敵性エネミーになることがあるんだよね。

 まだ変わっていないようでよかった。

 猫のNPCというのは初見だが、とりあえず話しかけてみる。

 俺が質問をするとにゃーにゃーと答えてはくれるのだが、何を言っているのかが理解できない。

 近づけばいいのか? とか、立ち去ればいいのか? とかここはなんだ? とか聞くこと十分ほど、猫は俺の首にかかっているバステトの勾玉を器用に外して祠に持っていった。

 

 普通は武器以外は外されないんだけどなと思いながら、イベントの一環だろうと思いそれを眺めていると、祠から何かが流れ出て、勾玉へ入り込んでいった。

 

 少し待つと猫が勾玉を咥えて戻ってきて、俺の首にかける。

 え、これだけ?

 てっきりバステトが復活すると思ったんだけど。

 なんか変化があるだろうと思って詳細を開いてみれば、フレーバーテキストが追加され、敏捷値の補正が強くなっていた。

 今までは、首装備として使用でき、時間が来ればテイムモンスターとなるといったことが書かれていただけだった詳細に追加されたフレーバーは以下の通り。

 

『バステト信仰最後の祠から信仰心を得た勾玉。その力は十分に高まっているが、同じ存在が邪魔をして復活することが出来ないでいる。同一存在を所持者が打ち倒すことで復活後の力はさらに増すことだろう』

 

 つまり、この城のどこかにいる同一存在、多分フィールドボスかフロアボス。クエストボスかもしれないが、なんとなく違う気がする。

 クエストボスなら多分一層のキャンペーンクエストには終了のマークがつかないはずだしな。

 

 次に、幾らか神聖さが失われた祠を調べてみる。

 

『猫族が作り出したバステトを信仰する祠。人族がその信仰をやめ、施設を封印した今でも唯一残り、今なお信仰の場として使用されている場所。現在はバステト復活の補助にその神聖な力を消費し、その力を弱めている』

 

 神聖さがあったのも、今は弱まって感じているのも実際にあるものみたいだな。

 それにしても人それぞれ感じ方が違うであろう雰囲気をどうやって演出しているのやら……。

 

 ゴーレムの時のようにアイテムは落ちてないようなので、とりあえずお祈りしてマップにマーキングをしてこの場を離れる。

 バステト信者ってわけではないが、俺の名前もバステトにあやかってるものだし、将来的にはバステトにお世話になるかもしれない。

 ボス戦の前くらいにはお祈りに来るのもいいかもしれないな。

 

 そのまま街道に戻り、迷宮区に急ぐ。予想外に時間を食ってしまったからな、無駄な時間どころか有益な時間だったが、それでも時間を消費したことは事実。さっさとレベリングを開始しよう。

 

 最寄りの街を無視してそのまま迷宮区へ。

 できるだけ経験値量が多い敵が出てくる深層へ向かい、敵を倒す。

 勾玉がアップグレードされて敏捷補正が高くなったおかげか、先日より討伐スピードが上がっている気がする。

 いつも通りの道を通り、エンカウントする敵を倒して深層を目指していると、これまた新しい道を見つける。

 正確には隠し通路、触れない限り閉じたままの壁だ。

 昨日まではなかった気がするが、さて……。

 

 壁に触れ、道を開き進んでいく。五分ほど歩くと開けた場所、と言っても迷宮区ではといったものだが。

 直径二十メートルほどの円形闘技場のような感じだ。

 中に入れば唐突に入口が封鎖される。

 ……え? 転移結晶は十層から販売ですよ?

 まだ俺持ってないんだけど。デストラップかなにか?

 

 ちょっぴり冷静さを失いながら闘技場の中心に近づくと、上前方の大きな穴から一匹の動物が飛び込んできた。

 咄嗟に後に飛び、それを回避すると火炎放射が追撃してくる。

 燃えないように猫耳ローブを盾にしながら回避する。

 ようやく相手の姿を確認すれば、二又の猫。

 名前は«バーサークキャット»バステト関連のイベントか。

 流石にこいつが勾玉のいう同一の存在ってことはないだろう。

 こいつも一層の時よりは強くなっていることがカーソルの色から見て取れる。

 多分攻撃パターンも増えてると思うが、こっちも強くなったし、何より黒猫のコートもある。

 延焼ダメージへの対策は出来ているし、多分負けることはないだろう。

 それじゃあ、やりますか。

 

 

 結論からいえば、8回目までは行動内容の変化はなかった。

 そう、8()()()。猫は9つの魂を持つとはいうが、まさか8回も復活してくるとは思わなかった。

 最大HPが低めで、9回合わせてフロアボスの半分程度で済んでいると思うし、攻撃パターンはフロアボスより単調であるためいうほど脅威ではなかったが、それでも大量のHPを削らされたことは事実。

 精神的に結構疲れている。9回目の復活では、1回目に切断して以来切れたままだった尻尾が新しく生え、その目もいつかのバステトのようなものになっている。

 

 多分ビーム打ってくるな。そう思った時には既に発射されていた。

 急いで横に飛べば、着弾地点の石畳が真っ黒に焦げている。

 んー。難易度的にはバステトの方が高いのかな。

 あそこは草が生えていて打たれれば打たれるほど燃えている場所が増えていったからな。

 次々と場所を移動して戦っていたからなんとかなっていたが、こっちは炎を気にして戦うことはなさそうだ。

 

 安定第一で後に回りながらビームを躱し、ついでとばかりに尻尾を攻撃し、破壊する。

 心配していたパターンの変化も既に知っているものだったので精神的な余裕も出てきた。

 そのまま削りきってコングラッチュレーション。

 LA報酬は……なんだこれ? コンタクトか?

 ペイント要素で目の色を変えられたりするのは知ってるけどコンタクトってのは初めてだな。

 詳細を見てみれば装備として使えるみたいだし。

 装備部位は、アクセサリ。今の俺でいえば太陽の瞳を付けているところだな。

 アクセサリ枠は二枠あるので装備して、あの日に茅場からプレゼントされた手鏡で確認してみると、瞳孔が縦に割れて、金色の瞳になっていた。

 いわゆる猫目ってやつだな。一部のプレイヤー(ネカマなど)からは蛇蝎のごとく嫌われているこの鏡だが、結構便利である。

 ストレージ容量は全く食わないし外で普通に鏡として使うことも出来るし、曲がり角の確認も出来なくはない。

 手鏡というものはベータ時代を含めても見たことがなかったアイテムだし、あそこでもらえて良かったと思う。

 ちなみに、猫目のコンタクトの効果は【索敵】ボーナスだ。

 俺の【索敵】は装備で【片手剣】の半分の値で(【片手剣】の熟練度が【食いしばり】を抜いてトップになった)使えるようにしているものだが、これにはしっかりボーナスが乗り、【片手剣】の六割ほどの値で使えるようになった。

 【精密動作】にも補正が乗るが、残念ながら【精密動作】は所持していないので無効。残るは正確性のブーストだ。

 猫関連でゲットした装備はみんな高性能で便利だな。

 

 さて、さすがに疲れたし街に戻って寝よう。

 




一応難易度設定的にはバステト>今回のボス猫となっています。
HP総量では今回の猫の方が多いですが、攻撃パターン、威力、地形などが組み合わさってバステトの方が高いということですね。

それから、装備部位ですが、頭、首、上着、背中、腕、ベルト、スボン、靴、指輪×2とアクセサリ×2となっています。
あとはメインとサブアームですね。

……装備部位が足りなかったりしませんよね?
自分でも把握しきれてない……

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