デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします 作:にゃー
ガバガバです。
間違いがあるかもしれません。
間違いは指摘してもらえると嬉しいですが、設定は変更しません。
というかできません。
迷宮区最寄りの街に戻ると、外門に攻略会議の通知のビラが貼ってあった。
日付は明日の二時。
このゲームのプレイヤーの多くは昼休憩で街に戻ってくるので、昼ごはんを食べ終わったあとに参加できるような配慮だろう。
とりあえず明日は俺も昼に戻ってくることにして、そのまま宿のベッドへ向かった。
寝て起きると、アルゴから攻略会議のことを知らせるメッセージが届いていた。
知ってる。と返そうとして、昨日機嫌を損ねられていたことを思い出す。
ありがとうと返信して迷宮区に繰り出す。
昼には街に戻ってこなければいけないが、とりあえず昨日ボス猫と戦ったところに戻ってみようと思う。
昨日はすぐ帰ってしまったが、先に進む道がどこかに出来ているかもしれないし、出来ていなくてもボス猫が飛び出した穴からどこかに行けるかもしれないからだ。
その為に鉤爪付きロープを購入してある。
昨日戦った広場へ戻ってきた。
少なくとも歩いて行けるところに通路は無さそうだ。
なので、ボス猫が出てきた穴に鉤爪を投げ入れ、迷宮区の床に突き刺さったことを確認して登り始める。
ロープという不安定なもので登っているが、体のスペックが良いからか、らくらくと登ることが出来、穴の奥に足を進める。
広場への通路と同様、五分ほどで通路は終わり、行き止まりにたどり着いた。
そこは、見るからに邪悪な場所だった。
バステトの祠とは違い、雰囲気でそう思わせるのではなく、単純に存在しているものがただただダメだった。
辺り一面に広がる血痕。それは中心にある祠まで汚している。否、祠から漏れて出ているようにさえ感じられる。
その祠の名前はセクメトの祠。
ここにいたボス猫はセクメトの化身だったみたいだ。
血にまみれているのも、セクメトが血に狂っていたからだろうか。
血が好きすぎて、血液に似せて作った酒数千杯を飲んで酔いつぶれた隙に悪意を抜かれたという話もあるし。
うーん。壊した方がいいのだろうか。
祠ってなんとなくそこから神様とか出てきそうな感じがする。
日本の神様なんかは神社から神社にワープできるみたいな話を聞いたことがあるようなないような気がするし。
放っておいたらここから化身がまた現れて殺戮を行いそうだし壊しておくか。
祠を壊すと、中から出てきた神様的なパワー。ただし、その力は負の方向に染まっている。
それがふわふわと空間を漂っていると、太陽神の瞳が光り輝き、その光が空間を覆うと、神様的なパワーから負の属性が消滅し、中立な力となったものを勾玉が吸収した。
勾玉の詳細が変わっているかもと思い見てみるが、今回は変化がないらしい。
次に破壊した祠を見てみる。先程の光の影響か、血に濡れていた祠は綺麗になっていて、触るのに嫌悪感は感じないで済んだ。
無造作に切りまくった石材をどけてゴーレムの時のようにアイテムがないかを探してみると、ありました。
セクメトの指輪。効果はスリップダメージと共にステータスダウンを引き起こす状態異常、疫病を通常攻撃に付与するという、割と強めの効果だ。
ここにあった理由としては、セクメトの祠に置くことで化身を作り出すことが出来るかららしい。
結果的に祠を壊して正解だったな。
指輪はいい効果だが、なんか装備したくない。
今のところセクメトは敵だしな。そう思っていると勾玉が光り、神聖パワーが指輪に入っていき、バステトの指輪となった。
詳細を確認すると、疫病の付与は失ったが、逆に疫病のスリップダメージを無効にし、疫病のステータスダウンを低下させる効果になったようだ。
疫病を振りまくセクメトから、病気や悪霊から守るバステトへ冠する名前が変わったことによる変更だろう。
これなら俺的にもかなり使いやすいし、何よりバステトの名前となったので付けるのに拒否感はない。
最後の指輪枠にバステトの指輪をはめ、これで全枠装備完了。
もう何もなさそうだし、迷宮区の順路に戻ってレベリングを再開しよう。
◇
レベリングを終え、昼前に街へ戻ってきて昼ごはんを食べて攻略会議の場へ。
少し早いがまあ、早く来ることで悪いことはないだろう。
やることもないので、バステト関連のことを考える。
多分、バステトの同一体はセクメトだろう。
祠があって化身がいたのが何よりの証拠だ。
セクメトというのは確定でいいだろうが、果たして一体だけなのだろうか?
バステト、というかエジプト神話の神は習合という考えで多くの神々と同一視されることがある。
バステトはテフヌトとハトホルと同一視されることもあるが、どちらも善性の神だったと思う。
なので多分敵にはならないと思う。
となると、バーストかなぁ……。
バーストっても俺の事じゃないけどね。
クトゥルー神話に出てくる旧神で、エジプト神話の猫の女神と言われており、その女神はバステトとされている。
しかし、その性質はバステトの温厚なものではなく、むしろセクメトに近いものである。
敵となり得る悪性であり、バステトの同一体と言っても問題は無いであろう神。
もし同一体が複数いるならこいつとも戦うことになるだろう。
ただ、クトゥルー神話はほんとにかじった程度しか知らないし、あそこの神話の神様ってめちゃくちゃやばい奴らが多かったりするからちょっと不安である。
そんな考えを巡らせていると、ついに五分前になったらしく、リンド主導で軽めに会議が始まった。
と言ってもまだ時間前なので今回の会議の流れを確認する程度だが。
五分後、時間がやってきて会議が開始される。
会場を見てみれば人数は四十人くらいだろうか?
フルレイドには足りないが、十分な数である。
今回の攻略で重要となるタンクの数もPotローテが安全にできるくらいは居るし、多分問題なくクリアできるだろう。
会議も終盤に差し掛かり、リンドが情報提供者として俺の名前を呼ぶ。
手招きされたので前に出て挨拶をしていつかのように守衛から得た情報を話す。
俺の弓の腕を心配するやつもいたが、ほぼ自動追尾だと言うとなら大丈夫かとなった。
メンバーに情報が行き渡り、パーティを組む時間になる。
サボテンとリンドのギルドからは十五人、五人三パーティずつが参加し、残る十数人で三パーティを組む。
五人組が二つと二人組が一つでき、俺があぶれた。
多分だが、あの五人組二つのうち片方はギルドで残りがソロの寄せ集めだろう。
寄せ集めと言っても結構仲は良さそうなのでボス攻略でのみの固定パと言った感じだろうか。
つまり俺が入り込む要素はない。
となると必然的に八パーティに収めるために二人組に交ぜてもらわなければならないんだが、知ってのとおりその2人組はキリトのところだ。
仕方ないので務めて明るめに話しかけ、交ぜてくれるように頼めば、アスナちゃんの方から逆にお願いされ、キリトにも了承されたので無事に規定パーティ数に収まることが出来た。
パーティができると各々の役割を決める。
俺の役割、というか今までのキリトたちの役割は遊撃。つまり取り巻きを倒すか適当にボスのHP削っといてねと言うだけのものである。
今回は弓を射る必要があるのでガッチガチな役割が割り当てられていないのもいいだろう。
敏捷ファイターとしての戦い方もタンク組がヘイトをとってくれてるなら随分楽になる。
ちなみに、弓は開幕速攻で使って、消滅しなかった場合はレッドゲージに入る直前と入った直後にも使う予定である。
使用タイミングとか明言されてないから念には念を入れてというやつだ。
役割が決定され、解散。
明日の十時頃にここに再集合して迷宮区を突破、そのままボス戦へということである。
猶予がある理由は必要なアイテムを買い集める時間をとるためなのだが、今回は強いて言うならポーションだけあれば良い。
毒なんかの状態異常にする攻撃は使ってこないからだ。
なので俺はそのまま迷宮区へ向かう。
今回はキリトたちも付いてくる。連携の確認というやつだな。
迷宮区に入って基本を確認する。
キリト始動の連携では片手剣を持ったキリトがパリィし、アスナちゃんが胸を細剣で突き、俺が首を切り飛ばす。
アスナちゃん始動ではアスナちゃんが敵の攻撃を受け流し、キリトが重攻撃を行い、俺が首を切り飛ばす。
俺始動の連携では俺が首を切り飛ばし、キリトとアスナちゃんは棒立ちをしている。
切り飛ばす。と言っても比喩表現だ。首を一閃してクリティカルでHPを全損させただけである。
SAOに即死攻撃はないからな……たぶん。
「なあ……」
キリトが口を開く。言うな、分かってる。
「今まで完全ソロだったしまともに受け止めれば大ダメージだから躱してクリティカルしかやったことないんだよ……」
ていうか点の攻撃で難しいアスナちゃんは兎も角キリトはできるだろ?
「俺は正確性が低いからクリティカルにならないこともあるし、そもそも当たらないこともあるぞ。だから基本的に当てやすい胴体ばっかだな」
アスナちゃんは、部位クリティカルと言うよりはカウンター気味に当ててクリティカル率をあげるタイプらしいので、彼女も胴体派らしい。
ベータテスト時にはクリティカルなんて気にしてなかったから知らなかったが、クリティカルには部位とカウンターにボーナスが乗り、俺はその両方を満たしているらしい。
クリティカル発動率のみならず、ダメージ倍率も高くなるので俺はワンパンできてるんだとか。
今まで気にしたことなかったから知らなかったし、アルゴに聞いたこともなかったが思わぬ収穫である。
連携も微妙ながら確認したのでそのまま迷宮区で狩りを続けて夜になって明日に備えて早めに帰宅した。