デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします 作:にゃー
目が覚めれば知らない天井。
……そうか。パーティを組んでいたキリトたちが部屋をとってくれて投げ込まれた感じだろう。
今度お礼を言っておかなければな。時間は二十二時すぎ。
ボスを倒し終わったのがちょうど昼過ぎくらいだったから十時間くらい寝ていたっていうことか。
十時間しか寝ていないとはいえ、
あの疲れから丸一日眠っていてもおかしくはないと思ったが十時間しかってのもおかしいか。
体を起こしてウィンドウを開こうとする。
分配には半ば無意識的に参加していたため何が回されたのか覚えていなかったのだ。
ウィンドウを開くために右腕を振りあげようとすると、何かが右腕を握っているのに気づく。
そちらを向いてみれば椅子に座ったまま寝ているアルゴが。
……。心配かけたかなぁ。こいつは割と責任を感じるやつだからな。
自分との約束で攻略組に復帰した俺が倒れたなんて聞いたら自分を責めているかもしれない。
こいつが起きた時にそんなことも吹き飛ぶことを祈ってアホみたいに広いベッドに寝かせる。
メニューを開くのは右手でないとダメなので手を離してメニューを開き、再び握って左手で操作する。
目を引いたアイテムはハデスの隠れ兜。
サイクロプス――キュクロープスがハデスに作ったとされる兜だ。
効果は【隠蔽】ボーナス。それ以外のステータスは低いが、ボーナスの値がかなり高い。上層に行ったとしてもボスのLA報酬クラスでなければこのクラスのボーナスはないのではないかと思えるほどだ。
効果量は50パーセント。俺の【隠蔽】の値は1なのでいらないが、アルゴには有用だろう。
他にもボスの素材が多いが、正直使わなさそうである。
多分だけど加工したところで筋力とか耐久にボーナスがつく系だと思うし。
隠れ兜を実態化させると、兜というよりティアラだった。
草冠と言った方が近いかもしれない。
少なくとも俺には似合いそうにないのでアルゴに上げることはこの瞬間に決定した。
他にもなにかないかなとストレージを漁って何も無いことを確認してメニューを閉じる。
もう夜だし、やることがないなと思って何をするか考えて気がつく。
今ならアルゴの寝顔が見放題であると。
今までアルゴの寝顔は見たことがなかったので覗いてみれば、いつものお姉さんぶろうとして失敗したりしているアルゴよりも幾らか幼く見えた。
いつか、起きている状態でもこの顔を見せてもらえないだろうかと思いつつ、眠気が襲ってくるまでアルゴの顔を眺め続けた。
◇
一時頃に二度寝して五時頃に起きる。流石に十時間寝たあとの二度寝ではそう眠ることができなかったようだ。
まだアルゴは寝ているので再び眺めて時間を潰す。
起きた時に俺がいなかったら心配するだろうし。
自意識過剰? いいえ、十時間も気絶していたやつが起きたらいなくなってたとか確実に心配する。
リアルなら通報ものだ。
三十分ほどすると、アルゴが目覚め、もぞもぞと動き始める。
女の子が目覚めたばかりのところを目撃するとかかなりすごい事じゃないか?
アルゴは上半身を起こすと、ぽかんとしながら目を擦る。
その後にキョロキョロと当たりを見回し、真横にいる俺を見て目を見開いて身を引いた。
いくらベッドが広いとはいえ、そこまで飛び退くと落ちるぞ?
ほら落ちた。
むぎゅ。と情けない声出して頭から落ちたアルゴは、圏内だからダメージこそ受けないものの、頭を押さえて涙目になっていた。
「寝顔可愛かったぜ」
そんなアルゴに俺はキメ顔でそういった。
「年相応っていうか、普段作ってるキャラより幼く見えて庇護欲と……嗜虐心かな? そんな感じのものが掻き立てられたわ」
未だに頭を押さえていて目尻に涙を溜めているアルゴの顔をあげさせて涙をなめとる。
アルゴの視界にはハラスメント警告が出ているはずだが、正直このまま黒鉄宮送りにされても悔いはない。
顔を真っ赤にして逃げ出したアルゴだが、あの調子なら俺が心配していたような感じにはなっていないだろう。
プリプリと俺に怒っているはずだし、そんな中で自分を責めるなんてことはすっかり抜けているはずだ。
それから三十分し、素材を売却をしているとアルゴからメッセージが飛んできて、内容を確認してみると、次やったら黒鉄宮送り! とだけ書かれていた。
今回はセーフみたいだ。いや、良かった良かった。
それじゃあ、アルゴの機嫌を取るためにここらのクエストを消化して片っ端から情報を送っていきましょうかね。
あ、ハデスの隠れ兜渡すの忘れてた。