デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします   作:にゃー

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どうするかかなり迷ってる


ゾンビプレイするって言ったけど運営にやめさせられそう。

 ベッドからするりと抜け出した俺は、宿の備え付けストレージにボス素材をすべてぶち込んで身軽になり、結晶を買いに行く。

 今回のメインは解毒結晶だ。

 麻痺状態では転移結晶は使えないので、麻痺を回復できる解毒結晶を購入制限まで。

 麻痺ピックを投げられて解毒し、スピードをゼロから上げる時に再び麻痺になんてことがありえるかもしれないからだ。

 太陽神の瞳の発光機能は意図的にオフにして、猫族の祠へ向かう。

 黒猫のフードを深くかぶり、眼球への月光の反射すら気にかけて慎重に気配を探る。

 バステトはコートの内側に隠れてもらいながら【索敵】を二人がかりで行う。

 俺の【索敵】では祠の前に1人、バステトの【索敵】でも1人。

 祠を覗けば一人の青年。暗くてわからないが青年というには年をとっているかもしれないな?

 まあ、見た感じイケメンだ。スーツとか似合うんだろうな。爆発しろ。

 

 バステトの【索敵】はかなり強いためないとは思うがヒースクリフ本人が隠れていることも考えてインスタンスメッセージを送る。

 何かしら反応をすればとりあえずあいつが本人だ。

 

 送った瞬間、ポップアップが来たのだろう。ピクっと反応して右手でメニューを開く動作をする。

 即時受信なのね。リアルとは違って同一サーバーでやり取りされてるから当たり前かもしれないが。

 ヒースクリフはメッセージを読んだ後にメニューを閉じ、左手で何やら操作をすると俺の視界に不死属性を付与しました。と言った感じのポップアップが浮かぶ。

 どういうことだ?

 ヒースクリフは暗闇の中でこちらへ向かってくると、君をとって食おうという訳では無いと言って椅子をふたつだし、片方に座る。

 その態度はリアルのカフェでお茶をしているようなリラックスしたもので、器の違いを見せつけられた気がした俺は、椅子に座ると質問を投げかける。

 

「ふむ、君をここに呼び出した理由か。場所はどこでもよかったのだけどね。君のログを見る限りここを気に入っているようだからここに呼び出したのだよ」

 

 俺が聞きたいのはここを指定した理由ではなく、呼び出した理由なんですけどねぇ。

 

「十八層のフィールド、フロアボスがソロで突破された。そう言えばわかるかい?」

 

 そういえばさっきログとか言っていたな。となると運営側――中に干渉できる運営がいるなら警察がさっさと解放してるか。となると、茅場晶彦。

 

「うん、ここまで早く正体を推理してくるとはね。スキルのことを隠したり、ここへ来たあとの行動だったり。君は随分頭が回るようじゃないか」

 

 つまり、茅場が俺をここに呼んだ理由は俺を殺すため。――いや、違う。ならば不死属性を付与する必要などないし、そんなことが出来るならボタン一つで殺すことも可能なはずだ。

 何故だ?

 

「十八層のフィールドボスがソロで撃破された時、私やカーディナルですら発見、修正できていないバグで撃破されたのかと思って覗いてみれば、そこには君がいた。ログでは十何本の武器を使い潰し、ステータスの力で強引にねじ伏せた君がね。スキルを覗いてみれば、私が設定した覚えのないスキル。調べてみれば、NPC、それもボスに付与されているスキルが変質したものだった」

 

 【成長の代償】はNPC用のスキルだったのか。

 道理で外すことが出来ないはずだ。

 

「スキルが付与されたのは完全にこちら側の不手際だったが、私は私のゲームのバランスを崩壊せしめるプレイヤーを見極めねばならなかった。想定外のスキルでシステムの穴を突き、擬似的な不死性を持った君が不死性だけを頼りに戦っているようならば、殺すこともためらいはしなかっただろう」

 

 いつ、試されたのか。問えばセクメトのアバターの中に入っていたのはこいつらしい。

 まずはセクメトとして戦う。

 その時俺は、不死性を盾にしたゴリ押しだった。

 ゴリ押しが有効な相手だからしているのか、そうでなくても無理矢理に突破してきていたのか。

 確かめるために戦闘スタイルを変更したという茅場。

 それが、あの盾剣士。

 あいつの技量はすごかった。

 

「君は、その凄い奴に勝ったのだけどね? ステータスが高くなっているとはいえ、私の方がステータスは高かった。体力も圧倒的だったし、君の不死性を突破する手段も限定的だが持ち合わせていた。それでもなお君は私に打ち勝った。スキルに頼り切りの弱者ではないことを証明してみせた。こんな理不尽な世界を作っておいて何をいまさらと言うかもしれないが、しっかりとした力を持っている君を私の左手で殺すことは私が許さなかった」

 

 しかし、そのスキルを野放しにしておく訳にはいかないと茅場はいう。

 

「今更リビルドを許可したところでいきなり君が重戦士になれば何かがあったと勘ぐられるのは避けられない。かと言って救済措置がなければ君は突出したステータスもなく、ただ速いだけのマラソンランナーだ。それでは君の強さが損なわれる」

 

 君と一日戦い続けて疲れた頭で私は考えたと茅場。

 

「考えた末、私は君のスキルを書き換えることにした。バステトが復活した時に君のスキルが点滅したのは完全な予想外だったが、君が止めてくれて正直助かったよ。ある程度考えておいたことがパーになるところだったからね。流石にあの戦闘のあとで一から考え直すのはきつかったと思う。君は少し前までこうこうだったからこうするよ。というのは納得出来なかったからね」

 

 それで、俺はどうやってまともになるんだ?

 

「これでも私は二十四時間以上君の相手を全力でした頭を使って考えたのだよ? 少しは労ってくれてもいいと思うんだけどね。とりあえず、今考えているのはこんな感じだね。嫌だというなら考え直すことも考慮に入れよう。完全にこちらの不手際で起きたことなのだから」

 

 送られてきたメッセージにはスキルの詳細が書かれていた。

 

 まず、ステータス補正は切れる。HPも、それ以外もだ。

 その代わり、今までのレベルアップ分も含めて、これから得るステータスポイントの取得数が1.5倍。

 リビルドはさせないし、ステータス無双もさせないがお詫びとして筋力に新しくポイントを振るチャンスを与えると同時に今後のステータスポイントの増量でお詫びというところか。

 ついでに、体力が九十パーセント以上ある時は、コンボを食らっても絶対に即死はしない。

 また、百パーセントある時に受けるダメージは防御力などで差し引く前の値を十分の一にしてその後に改めて防御力で減算する。

 

 【食いしばり】がいらないというのであれば、同熟練度の別のスキル(エクストラスキル含む)に変更も可能だということだ。

 

「天才茅場晶彦さ、流石に疲れた頭で考えたせいで大変なことになってるぜ? 流石にダメージ十分の一にしてからあらゆる軽減手段を適用したら今度こそ本当の不死身になるぞ? 俺はこれを貰ったらポイントをすべて筋力に振って金属鎧を着込むな。十分の一にしたダメージをさらに軽減して、スキルでさらに軽減してってな。流石に上に行っても最初のダメージが十分の一になったらまともなダメージにならないだろ」

 

 お前はそういうのを望んでないんだろと俺。

 

「……。完全に失念していた。さすがの私でも君との戦闘のあとではまともに頭が回っていなかったらしい。これは持ち帰らせてもらって、後日話し合いたいのだがいいかね?」

 

 まあいいけど、あ、でもなんで俺にこんなのがついたかくらいの説明はほしい。

 お前が茅場晶彦だってことを言わないことと交換で。

 

「分かった。頭の休憩を入れた後にまとめてメッセージで送るとしよう。その後に君のスキルのことは考えさせてもらうがいいかね?」

 

 分かった。とりあえず夜遅いし帰らせてもらうね。

 あ、あとこの大量の解毒結晶、お前の呼び出しに警戒して持ってきたんだけどいらないから原価で変換してくれない?

 

「……。分かった。後ほど対応しておこう」

 

 それじゃあ帰るわ。あ、対応ついでにこの転移結晶の補充も頼むよ。

 

「…………了解した」

 

 転移結晶を砕き、主街区へ帰ると不死属性を解除しましたというポップアップが出て、不死属性が解除された。

 帰って寝るか。

 

 

「まさか瞬時に穴を見抜くとはな。流石ゲーマーと言ったものか。死の可能性が極限まで低いとはいえこの世界を楽しみ、仕様に正面から喧嘩を売って不死性を獲得。その不死性が絶対のものではないと追い詰められてもなお笑いながら戦い続けたプレイヤー。評価をさらにあげて詫びのランクも高くするとしよう。まずは、結晶類の補填だったか。……評価を改める必要はあるのだろうか?」

 

 

茅場からバーストへの秘匿メッセージ。【成長の代償】について

 

 レベルごとに一定ポイントしか振り分けられないSAOにおいてボスエネミーのステータスをレベルを上げずに高くするために作られたスキル。

 本来の名前は【ボス属性】

 レベルを高くしない理由は高くしすぎると経験値補正や、ダメージ補正が高くなってしまうからである。

 手間をかければボス一体ごとにそこに至るまでの平均レベルを予測し、適切な絶対経験値量、ダメージ補正コミコミのステータスを設定できるが、流石に馬鹿らしいので専用スキルを作ることになった。

 

 バーストについた理由としては、完全にボスエネミーと名前が一致していたからである。

 相互監視システムのあるカーディナルでは、こいつはボスではないと言うカーディナルAとボスであると言うカーディナルBがおり、ボスならば【ボス属性】を付与せねばならないし、ボスでないならば付けてはならない。

 正式サービスのチュートリアルの一万人一斉転移、一斉アバター変更の負荷でバグを起こしたカーディナルは、妥協案として【ボス属性】を改変し、仮にボスでなかったとしても致命的な問題にはならないスキルを付与し、ボスだった場合でも付与はしたという言い訳ができ、自己崩壊が起きないように理論武装。

 その後、バーストから完全に目を離した。

 

 他にも何名かボスと名前が被っているプレイヤーはいたが、ABC順で1番目にいたバースト(Bast)に目をつけ、その処理を行った。

 バーストの処理を終えたカーディナル両名は、自己崩壊が起きないようにバーストの処理とともに【ボス属性】のタスクをクリアしたものとみなし、破棄。以降一切触れることは無かった。




どうしまひょー
適当にスキル考えてタイトル微妙にいじって終わりでもいいかもなー

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