デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします 作:にゃー
ピラミッド内部の遺跡のような研究施設のようなところを探索すること三時間ほど。
バステトにナビゲートみたいなスキルはないんだけどなと思いつつ先導されながらゾンビやスケルトンやレイスを倒していく。
生皮被りながら踊っていたのは最初の三人以外に見つけていない。
出てくる敵は対策がないとダメージが通りにくかったり攻撃が当たらなかったりするのだが、バステトの常時バフで効率よく倒すことが出来ていた。
打撃以外に耐性があるスケルトンを一刀両断できたのは少々驚かされた。
五回くらい階段を降りてようやく最下層っぽいところに来た。地下があったら最下層ではないので地上一階と言った方がいいだろうか。
そこにはいるわいるわ生皮かぶって踊ったり今現在生皮剥いでいたりするやつが。
ぶっちゃけここって普通にR18G指定されてもおかしくないと思う。
いくらかマイルドだけど実際に生皮剥いているところなんて見ることは出来ないぞ普通。
ステルスゲームのごとく一人一人消していくと、賢いAIなのか数が減ったことに気がついたようだ。
が、どうせ上に遊びに行ったんだろうと言って特に気にせず元の作業に戻っていった。
前言撤回。阿呆だ。
二十人はいたメンバーを三人まで減らすと、ようやく異常に気がついたのか何やら騒いで自身の胸に黒曜石のナイフをそれぞれ突き刺し、出血した血液で何かを描き終わると同時、三人ともポリゴンとなって消滅した。
なんとなくさ、こういう時って神様召喚とかの流れじゃないか?
帰ろう。セクメトあらため茅場と戦ったあとに武器は補給してないから三本しか持ってないんだ。
茅場には言われてないけどボスエネミーを今の状態の俺が倒しまくるのはあまりいい気はしないだろうし。
そう思って転移結晶を使おうとすれば当然のように使用不可。
少なくとも十七層まではこんなギミックなかったんだけどな。
追加されるとしても二十層みたいなキリがいいところからにして欲しかった。
覚悟を決めてボスが現れるのを待つ――けど一応文様を足で消そうとしてみる。
残念ながらもうイベントが始まったせいかキャンセルはできないようだ。
出てきた敵は、ククルカンという名前の羽付き蛇? ドラゴンみたいなやつだ。
ククルカンは、多分俺が知ってる唯一のマヤの神様だ。
創造神だかなんだかで、多くの人たちが名前だけは聞いたことがあるケツァルコアトルと同じだとか。
ケツァルコアトルは人身供養を止めさせたとかなんとか、そんな感じで昔の神様と喧嘩したとか聞いたことあるけど、こいつ思いっきり生贄に応えて出てきたよね。
キャンペーンの導入だとしたら俺は本当に知らないので勘弁して欲しい。
全く知らない神話のおそらく高難度だろうクエストをデスゲームで攻略しとうない。
召喚直後は空を飛んでいたククルカンだが、地面に着地するととぐろを巻いて戦闘形態となった。
飛ばれてると倒せないからか、飛んでいても狭くて逆に不利だと考えたからか。
まあどちらでもいい。飛んでないならやりようはいくらでもある。
まず気をつけること、巻き付かれたら詰みだろうからそこだけは絶対に避ける。
尻尾のなぎ払いも高威力そうだし吹き飛ばされそうだから時短の意味でも回避。
噛みつきもあるだろうからそれも回避。
最悪牙とかに当たらなければなんでもいいので口の上側とかにぶつかりに行って避けることも考えに入れておく。
あとは、火を吹いたりしてくるだろうけど予測はできないので臨機応変に。
知ってる神様なら予測はできるんだけどね……。
様子見に放られた尻尾の攻撃を回避し、それと同時に尻尾を切りつけておく。
ククルカンの四段あるHPバーのうち一本のバーが目に見えて減り、目算で十パーセントほどもけずれていることが分かる。
ああ、そういえば、バステトのバフに蛇特攻もあったなと思い出す。
しかし、1枠のバフくらいでボス級エネミーがここまで削れるとは思えない。どこかで何個か重複しているのだろう。
神様特攻なんてのはないし、多分バックストーリーで悪魔に取り憑かれたとかそんな感じのものがあって特攻が付いているとかそんな感じだと思う。
大きくひるんだククルカンに接近し、目を切りつける。こいつがそうかは分からないが蛇の目は魔眼だったりすることが多いからな。
ソロで石化とかしたら確実にパリーンだ。
近くに長いこといると巻き取られる気がするので一旦離れると、ククルカンはハウリングをする。
同時に石畳の下からどす黒い液体が噴出する。
血か? 生贄の生皮を剥ぐ時に地面にこぼれた血だと言われるのが一番納得できる。
どす黒い液体は人の形となり、右手に盾、左手に剣を持った剣士となった。
……。茅場か? いや、流石にないだろう。もしそうだったら俺は死ぬぞ。あいつを相手にしながらボスの相手は無理だ。
とりあえず数を減らすために血の人形に斬りかかってみる。
人形はあっさり切り裂かれHPを全損、人の形を保てなくなり地面に吸収されていった。
茅場は入ってないのね。よかった。
そのままボスに切りかかり、再びダメージを与える。距離をとるついでに噛み付いてきた顔を斬りつけて攻撃を回避する。
もう楽勝ムードだなこれは。最近戦ったのが茅場inセクメトだったり、フィールドボスのバーストだったりしたから感覚がおかしくなってるのかもしれない。
HPが減るにつれて火を吹いたりするようになったり、最下段がレッドゾーンに入ると空を飛ぼうとしてきたりしたが、火の息はバステトイベントでさんざん対処したし、空を飛ぶにしてもわずかしか体力が残っていない状態でそんな隙を晒されれば追撃をしてそのまま全損させる以外の選択肢はなかったので飛ばれる前に撃破となった。
LA報酬はストレージに入れているだけで敵からドロップするコルの量が1.1倍になるアイテム。
一応ボス属性付きだっただろうに随分弱いな。
ククルカンを倒した直後、茅場からメッセージが届く。
本来ならキャンペーンクエストが始まるはずだったのだが、神話関連のクエストは一人一種しか受けられないらしいのでクエスト進行は無し、あとボスを倒すのはできるだけ控えてくれとのこと。
倒さざるを得なかったから倒しただけだと返信して探索を再開する。
といってもバステト頼みだが。
一時間ほどこの階層を周り、ある程度のアイテムを回収したと判断して俺は転移結晶を割った。
出口が見つからなかったのだ。
主街区へ転移すると同時、アスナちゃんからメッセージの返事が来る。
ダンジョン内だと送受信ができないからな。
内容はアルゴの変容についてのもの。
なんでも俺が茅場と殺し合いをしていた頃、丸一日迷宮区から出てきていないことに気がついたアルゴは滅茶苦茶俺を心配してくれていたらしく、キリトやアスナちゃんに頼んで迷宮区の捜索を頼んだらしい。
それでも見つからず二人が迷宮区から出てきてアルゴに報告すると、それとほぼ同じ時刻に俺が転移結晶で主街区に戻ったらしく、位置特定が可能に。
メッセージを送るが返って来ずにまた一日がすぎた。
その頃にはアルゴは精神的に参っていたみたいで、五分に三、四通のペースで俺にメッセージを出し続けていたらしい。
それからしばらくして俺からのメッセージ。
その内容から特に何かがあった訳では無いと分かったアルゴは俺の宿にダッシュしてきたらしい。
五分に四通のペースってかなり早いなと思った俺は、あることに気がつく。キリトはどうなんだ?
あいつのメールが三割くらいあった気がするけど。
それもアスナちゃんに聞いてみると、すぐに返信が返ってきて、『キリトくんは同性愛者ではないんです。ただバーストさんが心配で、アルゴさんも心配だっただけです』と書かれていた。
そう。それは良かった。あいつもアルゴと似たようなことしてたのね。
その後すぐにもう一通とどいて、『バーストさんはアルゴさんの特別な柱だと思うのでできるだけ心配をかけないようにしてあげてください』と言われた。
最近結構仲はいいと思うし、ベータ時代からのからかいの延長線で長いことデスゲームに取り込まれてて発散できない欲をお互いに発散するために一夜を共にすることもあるが、言うほど特別な柱になっているのだろうか?
少々自信はないが、外側から見てそう見えるなら少しくらいはそうなんだろうと思うことにした。
大量メッセージ問題が解決した俺は、ククルカンの報酬をストレージにしまうために一度宿へ戻ることにした。