デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします 作:にゃー
アルゴと街を歩く。二十一層の街は俺がパッと見て決めつけたとおりに賑やかな街だった。
街のあちこちでカンカンと鉄を叩く音がして、NPCの呼び込みの声。
今改めて考えてみればSAOはすごいな。
この規模の街を少なくとも百個は同時に維持しているのだから。
NPCの家や、売り家となっていて入れない建物も多くあるが、表通りの店は数十店あり、その全てで買い物ができるのだ。
その品ぞろえも統一されている訳ではなく、同じジャンルの店でも微妙に品ぞろえが違うのだ。
その一店一店を覗いて品ぞろえをメモしていく。
アルゴは昨日も一通り見たらしいが、日によって品ぞろえが違わないか、値段が違わないかなどを確認しているそうだ。
ウィンドウショッピングにも思えるがその本質は情報収集。デートの内容としては酷いかもしれないが、これが結構楽しい。
様々なジャンルの店に入ってその店ごとの内装を確認する。NPCも昔のゲームのような固定応答しかしないものでは無いのでアルゴとNPCの駆け引きのようなものも見ることが出来る。
とは言っても中に人が入っている訳では無いので特定のワードを盛り込んだ会話をすればよさそうなのだが。
何回かその駆け引きを見て俺でもできそうだと思ってやってみればまともな駆け引きにならず商品を買わされたりもした。
アルゴに言わせればワードだけではなく、仕草や、特定のタイミングで特定のものに触るなどが必須らしい。
酒場の地下にある秘密基地に入るための符牒みたいだなというと、その通りだと返された。
アルゴがかわいいから店主も駆け引きを甘くしてくれてるみたいなことはないかと聞いてみれば薄らと頬を染めて腕に抱きついてきて赤くなった顔を隠すように腕に押し付けてくる。
鉱石買取NPCのところにたどり着くと、共有となったストレージを覗いて少し考えた後に二割ほどを残して売り払うアルゴ。
残した鉱石はここよりも若干高く買ってくれるフリーの鍛冶師に売りに行くそうだ。
NPC売りというのはコルしか産まないが、職人売りはお互いに欲しいものが手に入れられて、さらに職人側の熟練度も上がるといういいことずくめの売買だ。
このまま職人の方に行くかと思ったが、流石にデザイン武器を作りに行くから武器は買いませんなんてことになると怒られるらしいので先に作りに行くとのこと。
俺の武器は十八層の店売り――それ以降の階層では直刀は売られていないしクエストも発見されなかった――なので、買い替えを勧められるだろうとの判断だ。
デザイン武器のNPCの元へ。このデザイン武器は戦闘用にも使えるが、その本来の使用用途は店を飾り付けたりするような装飾用だぞという説明をNPCにされて武器を作り始める。
基礎はもちろん直刀。持ち手は刃の幅と同じくらい。両刃で先は刺突もできるように尖らせて……。
ん? 装飾用だからか持ち手側に穴が空いていてそこに糸状のものを通してアクセサリーを括りつけられるのか。
確か余ってる勾玉があったよな。敏捷を上げるやつ。バステトの勾玉と比べて月とスッポンだったのでストレージの底に放置していたやつだ。
取り付けてみるか。ないとは思うが勾玉のステータス効果が付いたら儲けだし。
こんなものでいいかな。軽量化しすぎると耐久値がボロボロになりそうだし。
ああ、刀身の長さを少し長めにしておこう。今使っているのは少し短く感じてるからな。
重心が変にならない程度に長ければちょい当て離脱が楽になる。
他には鞘のデザインもあるのか。
直刀は西洋剣と違って鞘が付いているのだが、その鞘のデザインは全て同じなんだよな。
それがデザインできるとなると結構面白くなってきた。
どんなものにしようかな。とりあえずベースの色は黒かグレーかな? 派手目にすると多分ハイドレートに影響が出る。
ベースに黒で暗めのグレーでウジャト眼でも入れてみるか?
いや、流石にないだろ。バステトの印みたいなのはなかったかな。
うーん。エルダーサインくらいしか思い浮かばない。
普通に猫でいいか。アルゴの方をちらっと見て思いつく。猫が鼠をくわえている絵にしよう。
ベースをアルゴが使っているフードマントの赤茶にして、黒猫と鼠だ。
もう片面には猫の額に座っている鼠の絵と。こんな感じでいいか。
最後に一通り確認して問題がないことを確認、決定ボタンを押すとNPCがそれじゃあ作ってくるぞと言って別室へ行く。
五秒後、俺がデザインした鞘とそれに収められている直刀を持って帰ってきた。
武器のステータスを見れば、その数値は高くないものの、配分はかなりいい感じだ。これなら武器の素に形をコピーさせる意味はあるだろう。
持ち手の穴に通した紐に勾玉をつけて武器の素を使用する。
武器の素は形を変えて俺がデザインした武器と同じ形になった。
ステータスは結構高めだ。武器の素がボス報酬だったからか、セクメトから落ちたから【猫神の加護】による強化が働いているのかは分からないが、それはレベルが上がっていって【猫神の加護】による強化が強くなれば分かるだろう。
コピーの元となった戦闘力が低い直刀をストレージにしまう。いつかマイホームを作った時に飾り付けに使うとしよう。
店を離れて鉱石を売るために鍛冶師の元へ行く。
ギルド専属ならギルメンが集めた鉱石を武器にして売ることで若干の赤字になることはあっても熟練度を上げながら金を稼ぐことが出来るのだが、フリーの鍛冶師だと話は違ってきて、鉱石は買うか自分で取らないといけないし、取りに行くなら戦闘技能も必要とかなり大変なロールだとおもう。
そんな茨の道を行く鍛冶師がどんなやつなのか、ちょっと気になるな。
◇
アルゴに案内されながら鍛冶師の元へ移動する。
その移動の際、俺の左腰に下げられた直刀の鞘をチラチラとアルゴが見ているのがわかる。
アルゴの方を向いている面はどっちだったかな。
多分鼠が猫の額に座ってる絵の方だったと思うけど。
少し歩いてたどり着いたのは鍛冶場。一応宿にもなっているらしく、泊まっている場合は鍛冶場を割引料金で使えるとか。
どんなデカブツが出てくるかなと思っていたら、予想に反して出てきたのは地味ながら結構な美少女であった。
エギルみたいなのを予想していたギャップでビックリした。
少々見惚れていると、アルゴに脇腹を小突かれる。
リズベットと名乗った少女はとりあえず入んなさいと中へ迎え入れてくれた。
ソファーに座るように促されて要件を聞かれる。
まあ、俺はしばらく座っていてよさそうだな。
トントントンと話が進んでストレージから鉱石が消えて代わりにコルがふえる。
リズベットは結構喜んでアルゴにお礼を言っている。
この層で今のところ発見されている鉱石の中では最高級の素材らしい。
売りが来ないと思いながらもダメ元で買取を出してみたらかなりの量が来ておお喜びってことらしい。
その後アンタだれ? って話になって俺は自己紹介をする。一応攻略組だというと攻略組の得物を見てみたいというのでさっき作ったばかりの直刀を渡す。
鑑定をしてそのステータスを覗くとびっくり仰天のリズベット。
なんでもこの前見たボスドロップの細剣より総合ステータスが高いらしい。
片手剣と細剣という違いはあるものの、同ランクの場合の総合ステータスはほとんど同じなのでこの剣はボスドロップ以上だということになるらしい。
となると、【猫神の加護】が効いているかな。最近の細剣のボスドロップは十九層だったと思うし、武器の素は十八層のボスドロップだ。
流石に一層上のボスドロップを素で抜いているということは考えにくいからな。
【猫神の加護】が効いているこの剣は折らないように気をつけよう。
あと、NPC修理だと三割くらいの確率で最大耐久度が低下するから腕のいい鍛冶師を探さないとな。
ついでにこの直刀と同じ規格のものを打ってくれる鍛冶師もだな。
ボス戦だと耐久度足りないってこともありえるし。
考えが口から出ていたのか、はいはーい! と立候補してくるリズベット。
ところで、俺の考えはどこまで漏れていた? 【猫神の加護】はまだ知られてないと嬉しいが。
アルゴに目で問いかけると大丈夫だと返ってきた。
なら一安心。俺の返事が遅れたからかちょっと心配そうな顔をするリズベット。
俺が腕を信用していないと思ったのか最高傑作だという剣を見せてくる。
ステータスを見てみれば、今日アルゴと回った店においてあった剣よりステータスが高い。
これを作るために使ったのは二十層の素材だというのでその腕は確かだろう。
ひとつ頷いてよろしくと右手を差し出す。
その後は細やかな内容の決定をする。
まず、俺が入手したレア度が特別高くない鉱石は全部タダで卸す。
これは俺が言い出したことで、レア度が高いものも卸そうと思っていたのだが流石に悪いということでこうなった。
代わりにリズベットは俺の剣を無料で修理する。また、俺が無料で卸した鉱石である程度直刀を作ってこちらへ送る。
ほかにも本当に細々としたものもあるが、大体はこんな感じだ。
俺は鉱石を売りに行く手間が省けてリズベットは仕入れに必要な金と時間が減る。
リズベットの熟練度が上がれば俺に回ってくる直刀が強くなって他の商品の売値も上がる。
お互いにメリットしかない取引だ。
その後は俺とアルゴの関係をネタに昼ごはんを食べて解散となった。
アルゴもこれから用があるみたいなのでデートは終わり。俺も新しくなった得物の試し斬りに行こうかな。
まだ髪を染めてなくてフリフリを着ていないリズ登場
ぶっちゃけリアルでリズ並みの女の子がいたら学年じゃなくてクラスの男子の注目を集めるくらいはあると思う。
MOREDEBANにもある程度焦点を当てていきたい。
次は二回目クリスマスまでとぶかもしれません。
そうなった場合はキリトくんがアスナと決別していて黒猫団のトラウマを背負っているというかなり悲しい状況になります。