デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします 作:にゃー
朝目が覚めるともうアルゴはいなかった。
寝顔を拝みたいところだったが仕方ないか。
視界の隅にメッセージが届いていることを告げるポップアップが点滅していたので確認してみると送り主はアルゴからだった。
内容は
『寝顔可愛かったゾ
PS;攻略組に復帰するのは十層が開放される前によろしくね』
と言ったものだった。
急げば急ぐほど危険になるんですがそれは。
まあいい、とりあえずアルゴには攻略情報を定期的に買うと連絡して宿を出る。
その後は1000コルを持って直刀クエストを消化し、スキルスロットをいじって細剣から片手剣へと切り替える。
上げ直すのは面倒だが、直刀は思ったより手に馴染むので細剣を使い続けるよりはマシだろう。
【食いしばり】を取得するためにレベル十を入れたいので朝から狩りだ。
手に持った感じで分かっていたが、軽く振りやすく、細剣とは違い半ば強引に切りに行っても折れないため使いやすい。
ソードスキルこそ片手剣のものだが、素の動作で細剣のように扱うことも出来るし花丸をあげたいところだ。
今日も誰とも会うことがなかったため狩場を独占でき、三時前にはレベル十に入っていたので一度圏内にもどり、必要なアイテムを集める。
【食いしばり】取得条件はHPを1にすることなので貫通ダメージを使ってやろうということだ。
圏外でないとダメージを受けないためちょっとだけ圏外へ出て、大雑把に短剣でHPを減らしていく。
30を切ったところでピックに切り替え、
チクチクと削っていき、10を切ったところでピックを突き刺し貫通ダメージの間隔を覚える。
三秒で1ダメージか。
確認してからでも間に合うな。
それから一時間ほど自傷と回復を繰り返し、【食いしばり】を有効化した。
有効化した直後にわざわざ1回ごとに体力満タンにしなくてもよかったんじゃと思ったのは別の話。
【食いしばり】が有効化したので次は熟練度上げだ。
昨日アルゴに教えて貰ったところに行くと、ゴーレムのような奴がいた。
あれだなと思って近づくと、とても動きが緩慢で、ゆるゆるであった。
腕を振りかぶるのも遅くて大丈夫かと思いつつ攻撃を受けると数メートル吹き飛ばされ、当たった場所がベータ時代を含めても一番の痛みを感じている。
幸い、ゴーレムはあの周辺から動かないようなので痛みが取れるまでポーション回復などに務め、全快すると同時に殴られに行く。
熟練度を見ればしっかり上がっているが、一回殴られる事に三分ほどかかり、ポーション代もそこそこかかる。
ここで【食いしばり】を上げる以上遠出は無駄だし、この周辺で稼ぐしかないか。
その後、三週間ほどゴーレムに殴られ、その鬱憤を晴らすように街の周りのモンスターを壊滅させ続けていると、途中で一回殴られて一上がるのではなく、数回殴られて上がるようになっていた【食いしばり】もようやく百まで熟練度が上がった。
単純な折り返しではないが、数値上は折り返しだ。
そう思ってあれからずっと世話になっていた宿へ帰ると――町長の家らしい――町長の頭上にクエストマークが浮かんでいた。
今までは無かったのだが、どんな条件だと思いながら話しかけてみれば、クエスト内容はこの街周辺の生態が崩れてモンスターが大量にやってくるとのこと。
その討伐に力を貸してほしいらしい。
大量、がどんな数かはわからないが正直囲まれるときついと思っていると、町長からひとつの石を渡された。
曰く、街の宝らしく所持している人の体力を回復し続けるものらしい。
宝だからあげることは出来ないが、討伐を手伝ってくれているあいだは貸し出してくれるそうだ。
詳細を見てみれば、秒間200回復すると書いてある。
……ん?
秒間200ってことはあれか?
一秒攻撃を受けなければ体力満タンか。
それなら行けるかもしれない。
いないとは思うが俺をワンパンする攻撃力のやつが来ても【食いしばり】で耐えてこの石で回復できるし。
運が良ければ熟練度上げもできるかもしれない。
それに、報酬も結構豪華だし、参加するのもいいかなと思って受領のボタンを押す。
町長はありがとうと言って今日はゆっくり休みなさいと二階を指さしたので今日はゆっくり休むことにした。
翌朝、アルゴから攻略会議が開かれたとメッセージが来たのでこっちも今回のクエストデータを送っておく。
内容は後回しになるが対価としては十分だろう。
一階に降りると町長から話を聞いてモンスターが来る方向へ移動する。
行ってみればかなりの数はいるが、この街周辺で見たことがある奴らばかりで、一つ一つの塊が多くても三匹か四匹なので問題なく倒せそうだ。
【成長の代償】のおかげでワンパンでモンスターを倒せるのもあり、楽々とモンスターを壊滅させると、ボスのような敵が現れた。
名前は、«バーサークキャット»
名前を囲んでいる二重カッコはネームドボスモンスターということだ。
ネームドボスはネームドモンスターより強く、フィールドボスよりは弱いという立場のモンスターで、こいつをソロで倒せるのが上級者だとベータ時代の一部のバカが言っていたが、ついに最終日までソロで倒せたやつは見たことがなかった。
このクエストは恐らくベータ時代にも見つかっていなかっただろうし、攻撃パターンも分からないため少し怖いが、こちらは確定で一発耐えて一秒後には体力全快、ステータスも【成長の代償】のおかげで十分ある。
なんとかなるだろう。
そう思って切り込んでみれば体力は【食いしばり】が発動して百。
猫の体力は二本のバーの一本目の数パーセントほどが削れている。
こっちの攻撃は当たってるみたいだが、あちらの攻撃は全く見えなかった。
もしあれが連続攻撃なら俺は死んでたわけか。
今まで戦った敵はあまり素早い動きをしてこなかったから素早い敵との敏捷ファイターとしての戦い方が身についてない。
ステータスはこっちが勝ってるだろうが相手は素早い動きをすることを前提として作られたAIなため、戦い方を身につけるには十分だろう。
攻略組に戻った時に【食いしばり】に頼りきりではすぐに異常に気づかれる。
しっかり躱すことが出来るようにならなければ復帰など夢のまた夢だろう。
攻撃を軽視、防御も軽視、ただ相手の動きを見ることに集中する。
SAOでは進む度に敵の速さが際限なく上がっていくということは無い。
人間が動かすアバターではそんな速さの敵には対応出来ないからだ。
なので今回俺が攻撃を見ることが出来なかったのは単純に速さに慣れていなかったり、攻撃に意識が向いていたためだ。
元々の俺の戦闘スタイルは攻撃を受け止めてから反撃するというスタイルであった。
攻撃する時には敵の攻撃が終わっているのが当たり前だったため敏捷ファイターの攻撃しながら攻撃を躱す、逸らすという戦いに慣れていないのだ。
こいつの速さは一級品だ。
こいつさえ見切ることが出来れば大体の敵の攻撃はしっかり
幸い、リジェネ石もある。
練習にはうってつけだ。
猫が突っ込んでくる。
後にステップし、攻撃方法を見る。
右か、左か、それともかみついてくるか。
猫が右前脚をあげて振りかぶる。
俺から見て左側から弧を描くように飛んでくる前足を避けるために俺は右斜め後ろへと再びステップをする。
攻撃をよけられた猫は振った足の勢いを使って地面を踏みしめて跳んでくる。
単純な突進は左右のどちらかに避ければいい。
ついでに横腹に攻撃を入れてやろうと思ったら折りたたまれていた左前脚で引っかかれ、それにより猫は減速、俺を支柱に円を書くように着地する。
大きく後方に飛んで距離をとる。
体力は回復した。
はっきり言えば、こいつの攻撃パターンは見切る必要は無い。
見切らず予備動作で攻撃を予測して躱せるようになるのが目標だ。
再び猫に突撃する。今度は左からの攻撃。
突撃の勢いは殺さず、猫の体がでかいおかげで空いている地面と鞭のような腕の隙間に蛇のように滑り込み、そのまま脇腹へ一撃。
視界の隅で尻尾がしなるのが見えたが対応出来ずに吹き飛ばされる。
直刀を地面に突き立てて減速し、猫の方を見ればこちらへ疾走してきている猫。
戦闘中の一秒というのは長く感じるもので、まだ回復がすんでいない。
思いっきり横に飛ぶと、ステータスの高さもあり、何とか回避することが出来た。
攻撃するたびに反撃されてるがこんなんじゃ敏捷ファイターとは名乗れない。
今度は猫の後に回り込むように動いて尻尾を斬りつける。
尻尾が暴れて来るが、流石に真正面にあるものには当たりはしない。
しっかり避けて離脱する。
やっぱり四足歩行のモンスターは攻撃がわかりやすいな。
突進か前足、後に回れば尻尾か後ろ足。
このまま攻撃の頻度を増やしていこう。
攻撃を避けることができるように攻撃を入れられる回数が二回三回と増え、ボスが現れてから一時間が経つとようやく倒すことができた。
当然LAは俺だ。
ネームドボスのLA報酬も、ほかのLA報酬と同じく一級品だ。
とはいえ、条件さえ揃えば複数回戦うことが可能であり、フィールド、エリアボスと比べれば格下であるため数層先に通用するかしないかと言った程度だが。
今回のドロップは防具。
正直、防具はいくら強くても最前線に出ればワンパンされることには変わりがなさそうだと思ってあまり期待せずに詳細を開けば、ステータスはしょぼい代わりに【索敵】スキルを所持スキルの中の最大熟練度のスキルの半分の値で使用できるというものだ。
現在の最大値は【食いしばり】の百二十。つまり【索敵】は六十相当で使えるということか。
装備部位は腰、ベルトである。
今まで防具は買ってなかったから部位が空いていたので丁度いい。
それじゃあ、さっさと帰ってクエストクリアの報告をしますかね。