デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします 作:にゃー
なにか思いついたら1000件突破~とか1100件突破~といって投稿しようと思います。
これからもよろしくお願いします
二月下旬、俺はある目的のために迷いの森に来ていた。
クリスマスの時とは違い、雪は完全に融けている。
迷いの森専用の地図を見ながら一エリア一エリアを洗っていく。
洗うといっても結構雑だ。エリア中央で【索敵】の拡張機能で範囲が向上したサーチングを行うだけだ。
俺は追跡のような便利機能の取得が少ない代わりに看破ボーナスと索敵範囲向上の取得数が多いのでできる探索手段だな。
三つか四つめのエリアで恐らく目的の人物だろう反応を見つけた。
何故かソロで活動してるし、複数のエネミーに囲まれている。
なんとなくやばそうだし急いだ方がいいかな。
着いて平気そうなら手を出さなければいいし。
いつかのように【急制動】で木々を避けながら移動すると、完全に追い込まれた少女の姿が。
ほんの少しの思考の後、彼女を助けることを選択。
俺のレベルはこの層プラス五十ほどあるので余裕のワンパンで三匹のゴリラを倒し、少女に声をかける。
ありがとうございます。と言われるが、俺にその言葉を受け取る権利はない。目的のために少女のテイムモンスターを見殺しにしようとしたのだから。
まあ、まともな考えができる人間ならば必死に主を守ろうとするテイムモンスターを見殺しになんかできなかったってことだな。
一応少女に話を聞く。
ロザリアという女とパーティーを組んでいたこと、分配で揉めて飛び出してきたこと。
一応パーティーを組んでいたのは知っていたのでただの確認だが。
さて、どうしようかな。助けたお礼に頼みを聞いてほしいとか言ったら確実に勘違いされそうだし。
うーん。まあここで言ってみるか。
「俺はあるオレンジギルドを壊滅させるために君を助けたんだけど、良かったら協力してくれないか? もちろん絶対的に安全とは口が裂けても言えないけど俺の神様に誓って君を守るから」
オレンジギルドという言葉に顔を青くして協力という言葉に首を傾げ、安全ではないという言葉に再び顔を青くして守るという言葉に安心したような顔をする少女は、少し考えたあとに「よろしくお願いします」と協力を申し出てくれた。
とりあえずここで長いこと話しているとオレンジ連中に聞かれる可能性もゼロではないし、どっかで座りながら話そうと言うとオススメの店があると言う少女。
森を出たらそこに行くことを約束して森を出るために移動を開始――する前に。
「オレンジギルドを釣るためにレアアイテムを利用したいんだ。その為には君のテイムモンスターがやられてしまったと奴らに思わせるのが一番だからその子を隠したいんだけど」
何か方法はある? と聞いてみる。
指先を顎に当てて少し考えた少女は服の中に隠すとかですかね?
と笑いながら言った。なんか、純粋すぎて眩しい。
ないなら、と俺には必要ない――俺以外のビーストテイマー垂涎の――アイテムをトレードウィンドウを開いて送る。
いつか話したテイムモンスター用のモンスタ○ボ○ルだ。
装備部位は指で、指輪に宝石類が付いている場所には平べったく、小さな鏡がついている。
鏡からテイムモンスターを出し入れするらしい。
俺にはバステト専用の勾玉があるから完全にいらないな。
指輪と違ってステータス補正もあるし。
少女はこんなレアアイテム受け取れませんと言うが、作戦のためには必要だ。というと渋々トレードを受けてくれた。
それに、と俺は服の内側に入れてあった勾玉を取り出して二回つつく。
中からバステトが現れて、この通り俺には必要のないものだしねと言う。
バステトは俺の手のひらに着地すると、そのまま俺の肩へ飛び乗ってくる。
その後、目の前の少女の頭に飛び移った。
珍しいな。アルゴくらいにしか乗らないのに。
頭の上のバステトを優しく持ち上げて胸元まで持ってきた少女は小さく笑ってバステトをひと撫でしてから俺に返却する。
俺の手のひらに収まったバステトをフードにしまって、そう言えば自己紹介をしていなかったことに気がつく。
お互いに自己紹介をすると、二人揃って驚いた。
俺はこの少女が中層のビーストテイマーとして有名なシリカであることに。
少女は俺が攻略組唯一のビーストテイマーであることに。
となると、この子がフェザーリドラか。初めて見るバステト以外のテイムモンスターだけど、意外と大きいんだな。
ピナと呼ばれるフェザーリドラにも挨拶をしたあとピナには指輪に隠れてもらって俺たちは三十五層の主街区に向かった。
◇
現在の三十五層は中層プレイヤーの主戦場となっているらしく、結構人の数は多かった。
シリカに案内されて食事処に行くまでの間に多くの男性プレイヤーに声をかけられていた。
大方、ロザリアたちとのパーティーが解散となった話を聞きつけた奴らだろう。
シリカはお誘いは嬉しいですが、と言った上でしばらくはこの人と一緒に活動するのでと俺の後に隠れるように断っていた。
うーん。この男達から向けられる嫉妬の視線はいつ向けられても心地よいな。
俺の装備が金属のひとつもないからか大して強くもないのだろうと決めつけたプレイヤー二人組に抜けがけはやめてくれと言われるが、タイミングよくバステトがフードから出てきてくれたので、テイマーとしてお互いに参考に出来るところがあるんでなと言って適当に躱しておいた。
シリカは迷惑をかけてすいませんと謝ってくるが、別にいいのだ。むしろ男冥利に尽きる。
アルゴをなだめる時の癖で気にするなと髪を梳いてやると、急に大きな声でこっちにお店があるんですよーと歩いていってしまった。
追いついて少し歩くと目的の店にたどり着いた。
宿屋と一緒になっているレストランらしい。
中に入ろうとすると隣の道具屋から数人が出てくる。
大半は普通に広場に歩いていったのだが、最後尾の若作りを頑張っている女性とシリカの目が合った。
女性はシリカに無事に森から抜けられてよかったねと笑いながらいい、続けてアイテムの分配はもう終わったわよとバカにするように告げる。
シリカはいらないって言ったはずですと会話を切り上げようとするが、シリカの肩にピナの姿がないことに気がついた女性がトカゲちゃんはどうしたと言う。
シリカはちらっと指輪を見たあとに俺の方を見る。
ああそうか、シリカはこの女性が俺の標的だとは知らないんだったか。
「明日は思い出の丘に行くんだ。悪いが準備があるからここまでにしてくれ」
行くぞ。とシリカの手を取って店の中に入る。
後ろで何やら言っているが、無視した方がイラつかせることが出来るだろう。
宿屋のチェックインをするためにフロントへ歩く。チェックインを済ませてから待っていてくれたシリカと合流し、レストランの奥の席に座ると、シリカは謝ろうとするがその必要は無いと手を上げて制する。
メニューを開いておすすめを聞こうとすると、丁度NPCのウェイターがマグカップを運んできた。
中に入っているのは深い赤色の飲み物で、ヘルメスの血と呼ばれる飲み物だ。
ステータス増強系の飲み物は全ては『○○・イコル(イコール)』と名前が付けられていて、ヘルメス・イコールは現状見つけられている増強系アイテムの中で最も敏捷値の上昇量が高いアイテムである。
カップ一杯で敏捷値+三。回数制限は二回だ。
下位互換としてルビー・イコールというのもあるのだが、あちらは一杯で+一、回数制限は五回となっている。
一杯飲んだあとに続けて飲むことは出来ないため明日の朝にもう一杯飲んでシリカのステータスを増やそうというわけだ。
俺は現状の回数制限増強アイテムは全て限界まで使用しているので特に変わりはないのだが。
その後、先程の女性の話をシリカが振ってきて、なぜあのようなことをするのかと問われる。
ロールプレイの一環と言ってしまえば簡単だが、デスゲームでああいうことをするやつははっきり言って異常だ。
攻略が滞る可能性云々、一致団結云々ではなく、閉鎖的空間で悪事を働いたものの末路など分からないはずもないのだが。
良くて監禁、最悪殺される。一時の楽しみのために悪事に手を染めた結果がそれでは釣り合いが取れないだろう。
まあ釣り合いが取れないといえば攻略組も同じだ。
気を抜いたら死ぬ戦場に出て得られるのがひと月に数パーセントデスゲーム解放に近づくというものと、世界のトップにいるという優越感だけなのだから。
この世界で一番リスクと実益を天秤にかけて楽しんでいるのは中層プレイヤーだろうな。
そう言うと、シリカは攻略組の方たちは私たちに希望を与えてくれる太陽みたいな存在ですと言ってくれた。
うん。シリカみたいな可愛い子にそう言ってもらえるなら攻略組の男達は喜んで死地に飛び込むだろうな。
少し間を開けて俺はどうなのかと聞かれたので俺も応援されたら攻略に力が入るだろうなと答える。
その答えのすぐあとに食事が運ばれてきてシリカはお腹すいちゃったなーと食べ始めた。
俺も結構お腹減ったしここの料理は結構美味そうだと思い料理に手をつけた。
アルゴの時よりも力が入っているかもしれないな?
原作があるからある程度書きやすいってのがあるんですけどね。