デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします 作:にゃー
あとプネウマの花のプネウマって実在する花の名前じゃないっぽいです?
どんな意味があるのでしょう
三十五層の宿に戻るまではとても静かな時間だった。
気まずい雰囲気となっている訳ではなく、単純にシリカが赤面して黙ってしまっているからなのだが。
宿に戻って俺とシリカの部屋どちらに入ろうか迷っていると、シリカが俺の部屋を指さすので中に入ってシリカを椅子に下ろす。
それじゃあピナを外に出して花を使おうと言うと、左手についた指輪の鏡面部分を二回つつくシリカ。
合図でピナが出てきてシリカの肩に停る。
俺もバステトをフードから取り出して机におろす。
ピナがバステトの周りをパタパタと飛んだ後、寄り添うように着地すると、仲良く腹ばいとなる。
花を取り出して、使用方法通りに俺はピナへ、シリカはバステトへ花を当てると花が白く光って消滅し、二体のHPバーの隣に白い花が咲く。
バステトのステータスを見ると一回りほどすべてのステータスが向上し、ピナのスキルのようなものがアクティブ行動一覧に表示されていた。
一部は灰色になっており使用出来ないようだが、体力の即時回復やバフなども増えてバステトがこれまた強くなった印象だ。
ピナの方もバステトのスキルが表示されているらしく、特攻系バフが使えないのと、5m以内リジェネの倍率が分間レベル掛ける十まで下がっていること以外はほとんどそのまま使えるようだ。
シリカはバステトちゃんってこんなに強かったんですかと驚いているが、そんなに強いんです。
俺が攻略組で戦えてるのはほとんどバステトのおかげ。
【猫神の加護】もバステトがいないと機能しないし、バフがないと【インカーネイト・オーバーライド】もステータス増強するだけのスキルになるし。
だから俺の神様なんだよねバステトは。ほんとに。
その後、夕飯を食べて二十一時。先程からメッセージのポップアップが過労死を起こしそうなくらい働いている。
シリカにそろそろ前線に戻らないとと言うと、明日の朝からじゃダメですか? と言われる。
前線に戻るだけならば明日の朝でもいいんだけどね。俺には
早く戻らないとどうなるかわからん。
渋るシリカをまた会えると宥めて別れ、未だホームとしている九層へ転移した。
転移してメッセージを開くとはやくはやくとたくさんのメッセージが。
もう少し過剰に供給させておかないとまずかったか。
急いで宿へ戻って扉を開けると、扉の直線上にあるベッドに足を組んで座っている。
昔、間に合わずに遅れて帰ってきた時は冷や汗ダラダラでベッドの毛布にくるまっていたんだが。
なんか状況が違うか? そう言えばその時はメッセージ一通しか来なかった気が。一年近く前のことだから記憶が薄れてるな。
「正座」
有無を言わさぬ、それこそ攻略の鬼時代のアスナを軽く上回る圧を感じる言葉に思わず言われた通りに正座をしてしまった。
昨日今日何をしていたのかを問われる。
一昨日伝えたとおりにタイタンズハンド壊滅させてました。(あと女の子助けてました)
ふーん。とひどく冷たい瞳でこちらを見るアルゴ。
窮鼠という訳では無いが、アルゴもこんな目を出来るんだな。
一枚の紙切れを取り出したアルゴはそれをこちらへ投げ渡してくる。
ポイッて感じではなくふわふわとか、ひらひらという感じだ。
読め。と目で伝えてくるアルゴに、俺は紙切れに書かれた内容を音読する。
『攻略組ソロプレイヤーバースト、中層プレイヤーとカップル成立か?
攻略組唯一のビーストテイマーにして、軽装から想像出来ないほどの耐久力から「不沈艦」とも呼ばれるバースト氏が昨晩三十五層で中層で活動中の女性プレイヤーと食事を摂っているのを私は目撃した。彼は、上層プレイヤーの女性とも深い関係にあると噂されている人物である。
もし、そんな彼が中層プレイヤーと関係を持つことになったとしたらこのゲームが始まって以来の大スキャンダルである。私は今日の目的としていたチーズケーキを断腸の思いで諦め、徹夜で彼らが泊まることになった宿を監視することにした。食事を終えた彼らはそのまま二回の宿へ向かう。宿は絶対的なセーフエリアなため監視をすることは出来なかったが、翌朝中層プレイヤーの女性が五十層クラスの装備で宿から出てくるのを目撃。当然、中層で活動していた彼女には入手の機会がない装備である。しかし、バースト氏であれば余裕で入手ができるであろう装備だ。
二人はそのまま転移門へ向かうと、女性プレイヤーがバースト氏の右腕に抱きつくと同時、バースト氏が転移先を指定する。
他人に転移先を指定させるという行為はお互いのあいだにかなり強固な信頼関係がなければ行えない行為であることはご存知だろう。それが女性プレイヤーであれば尚更のこと。
それだけではなく、転移先はデートスポットとして有名な四十七層である。私も少ししてから転移すると、遠目に仲睦まじく話しながら歩いている二人を発見した。
そのまま監視を続けていると、行き先は南門。四十七層の圏外は出現モンスターの関係上デートには向かないが、南門のその先――思い出の丘は話が別である。
思い出の丘のてっぺんにはモンスターがポップせず、ベンチなどもあり景色もとてもいいことから例外的にデートスポットとしても扱われる立地である。私は二人が圏外に出たことで追跡を諦めようとしたのだが、攻略組のソロプレイヤーの黒づくめの剣士を発見し、彼に同行を頼む。
彼はその雰囲気から気難しく取られるのだが、優しい心の持ち主で、攻略組で、顔も良いという優良物件である。私は若干の下心を持ちながら彼と一緒に思い出の丘へ向かった。
彼は戦闘力が皆無な私が圏外に出ることに難色を示したが、どうしてもと言うとエネミーには私に指一本触れさせないと言ってナイトのように道中に現れる敵を次々と倒していく。
エネミーの数が増えた思い出の丘でも鎧袖一触で倒していく。思い出の丘は一本道なのでてっぺんまでは登れなかったが、彼とのデートはかなり良いものだった。
先に上に行ったバースト氏たちに気が付かれないように早めに下へ降りる。
少しして降りてきた二人の距離はさらに近づいていた。
私の同行者は二人から隠れるために【隠蔽】で隠れようとする私を胸に抱き、その黒いコートで私を包むと、奴の【索敵】スキルはカンスト程度では誤魔化せないと言って私を隠してくれた。
再び私たちが二人の後ろへ位置するようになり、彼らを監視していると突然現れたオレンジカーソルの集団。
バースト氏はいつかの宣言のとおりに情け容赦なく彼らの四肢を切断し、回廊結晶を砕くとオレンジプレイヤーとグリーンカーソルのギルドメンバーを黒鉄宮へ送る。
彼に恐れをなしたのか、それともオレンジプレイヤーに恐怖を感じたのかは分からないが、女性プレイヤーは足が動かなくなったと言う。
そんな女性プレイヤーをお姫様抱っこすると、バースト氏は主街区へと消えていった。
私もオレンジプレイヤーの人間の闇深さに恐怖して完全に腰を抜かしてしまい、同行者にお姫様抱っこで主街区まで送ってもらったのだが、それは全くの余談である。
この記事は、バースト氏以外の人物のプライバシーを守るためプレイヤーネームを伏せさせて頂きました』
なんだこれ。あのゴシップ記者まだ記事を書いていたのか。
昔、俺とアルゴの食事をすっぱ抜いたやつである。
ここに出てきているのはアイツとシリカとキリトかな?
アイツとシリカは分かるとしてもキリトはなんで四十七層にいたんだ。
つか、見出しに比べて後半はキリトとのデートしか書かれてないじゃないか。
アルゴは……シリカのことを怒っているのか?
確かに仲良くはなったが関係を持つと言われるほどではないぞ。
シリカと一緒にいたのは、悪く行ってしまえばオレンジギルドを壊滅させるためだし。
まあ、一緒にいて楽しくなかったと言えば嘘になるが。
俺の音読を聞いてさらに不機嫌になったアルゴ。
さて、どうやって機嫌をとろうか。