デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします   作:にゃー

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前話が短かったので眺め(5500)
心の温度ですが、殆どは圏内で進行します。


あって便利なものとあって不便なものがある。

 店に入ると同時、セイッという掛け声が聞こえた。

 発生源は入口からまっすぐ進んだところにあるカウンターの前の黒づくめの男。

 その男の右手には予備武器の中でも突出したものが欲しいなと思い、マークしていた片手剣。

 その剣が叩きつけられる先は、カウンターから半分ほどはみ出るように置かれた黒一色の剣。

 俺は、圏内であるのに切り札の【インカーネイト・オーバーライド】を使用し、敏捷値を鬼のように倍増させ、店内が荒れるのも構わず駆け出した。

 滑空という言葉が当てはまるようなめちゃくちゃな動作の後、ギリギリで剣と剣のあいだに左手を滑り込ませる。

 強烈なノックバックが発生し、カウンターの奥に叩きつけられたが、俺の剣は守られたようだ。

 

 目を丸くする黒づくめの男――キリトと、店がめちゃくちゃじゃないと叫ぶ店主――リズベット。

 

 俺に馬乗りになって襟首をつかみ、ガンガンと上下に揺さぶる。

 視界が揺れまくって気持ち悪いので圏内で攻撃を受け、ダメージを受けていないため効果継続中の【インカーネイト・オーバーライド】で上がった筋力値を活かしてそのまま立ち上がる。

 当然、俺に馬乗りになっていたリズは床に落ちるが、まずはキリトだ。

 

 ステータス振りから戦い方、武器の傾向まで全てが筋力重視の脳みそまで筋肉野郎、通称キリトに説教をかます。

 お前が壊そうとしていた武器を見てみろ、少なくとも下手なプレイヤーメイドの十数倍の値はつく超業物だぞ。

 ステータス傾向を見てみろ、耐久値と重量が削れている代わりに敏捷値補正が高いだろ。

 そんな繊細な剣をお前の脳筋ソードに叩きつけてみろ、一体どんな結果になるかは目に見えているじゃないか。

 

 キリトは壊そうとしていた訳ではなく耐久度を試そうとしていたとか言うが、そんなことは知らん。

 結果的に俺が腕を挟み込まなければ壊れていたのだからその言い分は通りません。

 キリトに謝らせることに成功した俺は、今度なにか奢れよと言って店を出ようとすると、非常に強い力で肩を掴まれる。

 

 振り返れば鬼という言葉が当てはまる形相のリズベット。

 そのまま左手でフードを掴まれ、店の奥へ連行される。

 キリトも右手で掴まれて俺と一緒に連行だ。

 

 

 鍛冶場の石床に正座させられた俺たち。

 キリトも結構正座が様になっているなと思う。

 俺? 俺はアルゴに何回か正座させられたことがあるから慣れてるんだよ。

 

 リズは鍛冶場の奥から箱を持ってくる。その中には同一規格の直刀がたくさん入っていた。

 リズはそれを俺の膝に載せると、再び鍛冶場の奥へ行き似たような箱を運んでくる。

 キリトは立ち上がって逃げようとするが、横から腕を伸ばして肩を押さえつける。

 今ならお前より筋力値は高いのだよ。

 

 そのままリズは片手剣がたくさん入った箱をキリトの膝に載せると、鍛冶用の椅子を持ってきてそこに座ると説教を始めた。

 

 店の商品を壊そうとするな。

 店をめちゃくちゃにするな。

 店に入ったなら最低限なにか買え。

 

 簡単にまとめるならこうだろう。

 その後、俺には店内の整理清掃と、二日間の店番。 

 キリトには五十五層の鉱石入手クエストへ同行が言い渡された。

 

 リズは、「あんた達は私の剣が簡単に壊れるって言いますけどね、適切な素材を使えばあんた(キリト)の剣が何本束になっても一発でぽきぽき折れる剣が作れるんですからね!」といって、キリトを引きずって鍛冶場を出ていった。

 

 キリトの膝の上に乗っていた箱が倒れ、中の剣ががらがらと音を立てて床へ落ちる。

 

 それも綺麗にしときなさい! という声が閉まり掛けのドアの先から聞こえたので俺は自分の膝の上の箱を床に下ろしてから片付けを始めた。

 

 

 水車がついた立派なこの店は、リズがどうしても欲しいというので有り余るコルを放出して権利書を購入、リズにプレゼントしたものである。

 三百万ほどしたが、内装はリズが用意したので少なくとも四分の一――百万コルほどはリズが用意したと言えるだろう。

 なのでこの店は俺にサブオーナー権がある。

 とは言っても今までそんなものを利用する機会などなかったのだが。

 

 本来なら店の内装に部外者が手を加えることなど不可能なので俺にサブオーナー権がなければ店がめちゃくちゃになることは無かったのだが、サブオーナー権があることで店を綺麗にすることが出来る。

 全く、あって嬉しいのかなくて嬉しいのかわかったもんじゃない。

 

 幸い、ショーウィンドウの硝子は割れていなかったので荒れている布や、壁にかけてあった剣などを元の位置に戻していく。

 一時間半程で店を元通りにすると、ついに暇になる。

 一応俺にもNPC店員を操作する権限はあるはずなのだが、操作方法がわからない。

 仕方ないのでカウンターの裏側に椅子を出して客を待つ。

 NPC店員が使えないならPC店員を使えばいいじゃないということだ。

 なお、性能はトントンか若干劣るくらいである。

 値引き交渉に応じたらリズになんて言われるか分かったもんじゃないからな。

 

 店番一時間。とても暇だ。先程まではバステトを撫で回していたのだがついに愛想をつかされてフードの中で丸くなって眠りについている。

 

 二時間経過。後回しにしていたレベル九十のスキルスロットの使用先、ほかのスキルの拡張機能などをだいたい埋め終わった。

 

 三時間経過。無駄に思考を回して結論を遠回しにしていたが、拡張機能なんてだいたい決まりきっているものだ。ついに全ての拡張機能を埋め終わった。

 

 四時間経過。九十になってあいたスキルスロットに裁縫のスキルを嵌め直した。

 先程つけたスキルは熟練度ゼロだったので付け替えにデメリットはない。

 裁縫って意外と楽しい。

 

 六時間経過。ついにエギルの所へ持っていってなかった素材が尽きた。そもそもかなりランクが高めの素材なのでまともな品をひとつも作ることが出来なかった。

 

 七時間経過。ようやく店が閉じる時間となった。

 二十時まで店にいたが誰も来なかった。

 外に出て扉の外にかかっている、OPEN/CLOSEの掛札を裏返そうとしたら最初からCLOSEだった。解せぬ。

 今日はエギルの所によって熟練度上げのための素材を買い込んでから宿へ帰ろう。

 

 

 エギルの店に到着。相変わらずの立地である。

 決して悪くは無いが、そもそもアルゲードは店を構えるのに向いた店ではないのだ。

 素材をすべて売却し、エギルに「だからこまめに来いと……」と言われるが、こまめに来て欲しいなら最前線の転移門前に店を構えるといい。

 裁縫に使う素材を大量に買うと言うと、一瞬はてなマークを浮かべたが、明日の朝までに用意しておくと言われたので明日の朝、リズの店に行く前に受け取りに来るとしよう。

 

 

 翌朝、エギルの店で大量の素材を受け取り、代わりに大量のコルを渡してきた俺はリズの店に入る。

 当然ドアの掛札はOPENとしておいた。

 

 そう言えば昨晩からキリトとリズの位置情報が把握出来ない。

 辛うじてダンジョンにいるということがわかるだけだ。だが、二人とも生きているしキリトがいるのだから全く問題は無いだろう。

 

 熟練度が低いあいだは使用できる素材より若干ランクが上のものの方が効率がいいらしい。

 アイテムは作成できないし、素材は減っていくが熟練度がもりもり上がる。

 

 店番を始めて二時間ほど。初の客がやってきた。

 中層のプレイヤーらしく、カウンターにいる俺を見て一瞬落胆の表情を見せていた。

 リズ目当てのプレイヤーだろうか。SAOの男女比はえげつないものとなっているので、その中でも貴重なかわいい女の子であるリズを目当てに来る奴も一定数はいるのだろう。

 

 完全にリズ目当てという訳では無いらしく、修理の依頼をしてくる。残念ながらリズが数日開けているので修理はできないと言うと、項垂れる客。

 これではこの店の評判が下がってしまうので中継ぎとなる武器、または武器を新調するように勧めてみる。

 あまり乗り気ではなかった客だが、「あの攻略組のアスナさんの武器もここの店で打たれたものですよ」という言葉にノックアウトされたのか、結構高めの細剣を購入していった。

 八万コルの売上ゲットだぜ。

 

 それから立て続けに客がやってきて、いずれも修理を頼んできて無理ですという定型文のあと武器の購入を勧めると全員が購入していった。

 

 鍛冶屋は基本的に武器の売上よりも修理で稼ぎ、たまに武器が売れて臨時収入。稀にオーダーメイドでボーナスが入るようになっているらしい。

 そう考えるとかなりいい感じなのではないだろうか。

 

 それから昼前まで熟練度上げに専念し、ついに三百を超えた。 

 かなりのスピードだがここからは辛めらしい。

 実際敏捷が高い俺でも作成までの時間が結構かかる。

 素材も適性のものでないといけないらしい。

 そうだ。と俺に光明がさす。

 【インカーネイト・オーバーライド】で敏捷値を上げれば回転数をあげることが出来るのでは?

 

 スキルを起動して裁縫を試す。

 ふんふん。いい感じだな。素材は沢山あるしまだまだやれるぞ。因みに、エギルのところで購入してきたのは五十万コル分である。 

 結晶を転移結晶以外に使わない俺からしたらそこまで辛い額ではない。それこそ趣味としてぽんと用意できるくらいには。

 

 一時間ほど裁縫を続け、作りたいものが作れるようになるとさらに楽しくなってきて次を作ろうと思ったのだが、客が来たので中断。

 いらっしゃいませーと営業スマイルをして、お決まりの修理はできませんからの武器購入のルーチンをこなす。

 やっぱりアスナのネームバリューはすごいな。アスナの名前を出すと男どもは気持ち悪い顔をして武器を選んで買っていくのだから。

 

 それからさらに数時間。三時に新しい客がやってきた。ドアの開く音とともにいらっしゃいませーと営業スマイル。 

 もう慣れたものである。

 今回の客は、「うわっ」とここまで聞こえる大きさで漏らす。

 いくら何でもひどくないかと真顔に戻って客の姿を見てみれは、攻略の鬼改め閃光のアスナ様じゃないですか。

 

 よーすと声をかければリズを知らない? とアスナ様。

 昨日からフレンド追跡ができなくて心配になってきたらしい。

 多分もうそろそろ帰ってくるというと、それでも心配というので、あと一時間経っても帰ってこなかったら俺が迎えにいくと言う。

 それなら……と言ってなんとか落ち着いたアスナに椅子を出して座らせる。

 アスナ本人も居れば売上は爆上げだろう。

 

 そのままアスナと話しながら裁縫をすること三十分。一パーティまるごと入ってきた奴らにテンプレ対応をして武器を予備も含めて一人二本。合計十二本を買わせる。 

 これで俺が裁縫のために使った額を普通に取り返したことになる。

 売れれば鍛冶屋はすごい儲けが出るな。材料費を差し引いたとしてもだ。

 

 そしてさらに三十分。アスナを連れて五十五層へ行く。

 アスナにはクエストの開始場所で待機してもらい、俺は山を登る。

 山頂までは難なく登ることが出来たが、何もいないな。

 

 空を仰げば上空にはドラゴンの姿が。とりあえずあいつを倒して帰ろう。 

 ここからでは届かないのでアペプの鎖を最大限に勢いをつけて投擲する。 

 長さ無限という強みがここで活きる。

 空を飛んでいるドラゴンの胴体部分に引っかかると、ぐるぐるぐるぐると勢いのままに縛り付ける。

 別枠耐久度が表示され、それがどんどん削られていくが、ゼロになるよりも早くこちらへ引き寄せる。 

 雪原に追突したドラゴンはHPバーを少し削り、拘束から抜け出すとこちらへ攻撃を仕掛けてきた。 

 左右の鉤爪と氷ブレス、突進に尻尾のなぎ払いと全てを躱し、逆にこちらは足場が悪い雪原ではなく、空中歩行が限定的に可能となる足装備の効果を最大限に利用して空中から攻撃を重ねる。

 【インカーネイト・オーバーライド】が未だ有効なため、三十分ほどでボスクラスのドラゴンを倒し終わると、俺は山を降りてアスナを迎えに行った。

 圏内に入り、アスナの位置情報を特定して二人で店へ帰ると、何故かリズとキリトがいた。

 あの山は一本道なのですれ違わなければ帰ってこれないと思ったのだが……。 

 ああ、結晶があったか。

 その後、アスナがリズの無事を喜んだ後にキリトがいることに驚いたり、アスナに俺たちの悪事……悪事? をリズが告げ口したりしてアスナに怒られることがあったが、万事解決。 

 その後、今日の売上の額をみたリズはかなり驚いてどうやって売ったのかを訪ねてくるので、適当にアスナの名前を出しただけだというと、普段はアスナの名前を出してもこんなに売れないという。 

 どうして? とお互いにはてなマークを浮かべながら、キリトが折れかけた剣を報酬にもらい、ついでに昔から続く取引の品である数うちの直刀を受け取って宿へ帰った。 

 明日は昨日今日の分を取り返すようにレベリングだな。

 

 

『奇跡のNPC店員!? 自我を得た美少女NPC

 某プレイヤー商店で奇跡的なNPC店員が一日限りで目撃された。そのNPC店員はカウンター裏の席で裁縫を行いながら、客が入店するととびきりの笑顔で応対し、店の商品を自発的にプレイヤーに勧めるなど、とてもNPCとは思えない対応をしたそうだ。 

 そのNPCは猫耳付きの黒フードをかぶり、前髪を睡蓮の飾りがついたピンで留めており、目は猫のように縦に割れていたという。 

 また、目撃したプレイヤーによってまちまちだが、猫耳フードの上に子猫を載せていたという話や、神秘的に光っていたという話もある。

 私はその店に突撃してみたが、店主は「その日は店を空けていたので知りません」の一点張りで何一つ情報は得られなかった。 

 別の店にも現れるかもしれないと言うことで、発見者には当日に報告していただけた場合に限り報酬を払わせていただくので是非、ご報告をお待ちしております』




ニコニコ笑って愛想良くしてフードをかぶって武器とかの代わりに裁縫道具とか持っていれば美少女に見えるという主人公の話でした。

いつだったかキリトに女顔と言っていましたがブーメラン刺さってるようです

髪飾りの時にも若干触れたかもしれないけど
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