デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします   作:にゃー

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せっかく脳みそ読み取るゲームなんだから付け耳が脳波でピクピクする機能くらい付けて欲しかった

 クラインの被り物を作り終えた俺は、S級食材とは言わないまでも、上等な素材を探してフィールドに来ていた。

 【裁縫】を封印の酒壺に収納し、フリーとなった枠に別のスキルをはめての探索だ。

 因みに、十個目のスキルスロットに入っているスキルは【加速】である。

 これは【疾走】が前提スキルとしてあるもので、【疾走】が走りにのみ適用されるのに対し、【加速】はそれ以外の多くの動作に適用されるものである。

 裁縫を行っている時は【疾走】【加速】以外の枠を【裁縫】に入れ替えて【インカーネイト・オーバーライド】を使用して行っているということだ。

 

 本来A級やB級食材は早々お目にかかれるものではないのだが、俺には美食家バステトがいる。

 バステトを連れてフィールドを歩いていればそれくらいの敵を一時間に三体か四体ほどのペースで持ってきてくれる。

 ヒドゥンボアというひとつ上にS級食材を落とすハイディボアがいるイノシシを釣ってきたバステトに感謝しながら胴体に傷をつけないようにして討伐する。

 討伐するとポリゴンになるので胴体を気にする必要はなさそうなのだが、ゲン担ぎというやつだ。

 ほぼ百パーセント食材を落とすとはいえ、確定ではないのだから、これくらいして精神安定を取りたいのだ。

 ある程度の量が揃ったら別の層へ向かってほかの食材を狙う。

 肉一種類というのは流石に飽きるからな。

 

 湖周辺の魚――この時だけはバステトが水に入る――や、山奥の植物系モンスターなど、様々なモンスターを倒し、A級食材十六個、B級食材二十四個を収集し、これで十分だろうと思ったところで狩りを終了した。

 

 

 参加確認メッセージから三日後、アルゴを連れてエギルの店にやってきた。

 今日が食事会当日である。

 ちょっと早めに来てエギルにカーテンとレールなんかを取り付けてもらおうと思ったのだ。

 せっかく被り物が多いとはいえ普段と違う格好をするのだからそういうものがあった方が盛り上がるという判断だ。

 早めの訪問に少々驚かれたが、その後にカーテンを六つの部屋になるようにかけてもらって準備完了。

 それから少ししてやってきた女の子三人組に挨拶をして、アスナに集めておいた食材を譲渡する。

 アスナはその量に驚いていたが、バステトがいるからなと言うと納得していた。

 その後、シリカがお久しぶりですと抱きついてきて、リズは呆れたようにため息をついていた。

 

 シリカとはあの時以来会っていなかったので本当に久しぶりである。

 適当に撫でてやって、アルゴからの視線が痛いので床に下ろしてやって、五十層まで上がってきたことを褒める。

 シリカは俺がトレードしてくれた装備のおかげと謙遜するが、五十層クラスの装備を持っていれば誰でも五十層で活動できるようになるようならこの世界に中層プレイヤーはいないだろう。

 上のヤツらが使わない装備を下に流すだけで簡単に上にやってくることになるのだから。

 つまりシリカの実力である。

 

 その後、キリトがクラインに絡まれながらやって来て今日の参加者が揃った。

 

 俺はトレードウィンドウを開くと、それぞれにアイテムを送信する。

 ちなみに、作成者の権限でそれぞれのアイテムは「〇〇のお着替え」となっている。

 丸に入るのはそれぞれの名前だ。

 エギルに用意してもらったカーテンに全員を押し込んで着替えさせる。

 ちなみにカーテンの外にいるのは俺とアルゴだけである。

 俺達も耳をつけて五分待ってからカーテンを全開にする。

 着替えに五分とは短い気もするが、SAOでは装備フィギュアを弄るだけでいいのでその分時間がかからないのである。

 

 アスナとエギルだけが全く違う服装で、キリトたちはそのままの装備に頭だけが違った感じになっている。

 ちなみに、武装してやってきたのはキリトだけなのでキリトには適当な黒系の服を追加で渡しておいた。

 

 リズは普段店で着ているふわふわのドレスアーマーからアーマー要素を無くしたようなもので、そのふわふわの髪などと相まって童話の世界からやってきたような感じである。

 そこに生えるうさ耳がさらにといった感じだ。

 

 シリカはワインレッドを基調にしたワンピースで、猫耳が生えることで妹系の雰囲気がさらに強くなっている気がする。

 

 キリトは俺が渡した黒系の服を着て、暗色系のピンと立った狼耳を付けている。

 少々恥ずかしいのかそっぽを向いているところも狼感がアップである。

 

 最後にクライン。

 クラインは相当悩んだ。

 サムライか猿のイメージしかないものだから相当悩んだ。その癖下手に頼れるところがあるから安直に猿というのはダメな気がしたのだ。

 当初は緩い和服――着流しでいいのではと思ったのだが、やはりと言うべきか、クラインは和服を着てきていたので変更して正解だった。

 その和服はそのままに、頭の上にあるものそれは――動物の耳などではなくちょんまげである。

 これくらいしか思い浮かばなかったのだ。許せクライン。

 リズやキリトとエギルには大ウケしているので問題は無いだろう。

 その後、各々の評価をしてから作ってきた耳を放出して付け替えたりして遊び、キリトの腹の音でアスナが厨房に入った。

 ちなみに、人気だったのはエギルの猫耳とアスナの狼耳である。

 エギルはネタとして、アスナはその雰囲気と狼耳が非常にマッチしてこの場の全員で見惚れるほどであった。

 リズの犬耳も元気な反面寂しがりだったりするリズによくあっていて、リズがキリトに甘えるような素振りを見せた時にはキリトもかなり狼狽えていた。

 ちなみに俺とアルゴとシリカ、クラインは初期装備が一番という結論になった。

 なお、シリカとアルゴはお互いに威嚇のような何かをしている。

 付いている耳的にはシリカが有利そうなのだが、シリカが勝てるビジョンが見えないのは何故だろうか。

 

 アルゴが威嚇しているのはまあ、分からなくなくもないのだが、シリカはなぜなのだろうか。

 威嚇されてるからし返しているだけか?

 ……流石にそんな子じゃあなさそうだしな。

 とりあえずアルゴの首筋をなぞって咎めると、アルゴは威嚇をやめてちゅーちゅーと鼠の真似をして軽いキスをしてくる。

 みんなの前なので一回だけで終わらせる。

 そもそもそんなキャラじゃないだろ。

 リズとクラインは何やら羨ま妬ましい感じでため息を吐き、シリカはフシャーと威嚇を強める。

 

 エギルに首根っこ引っ張られてカウンター裏に引きずり込まれると、やり過ぎると空気が悪くなるかもしれんからイチャつくのは程々にしてくれと警告。

 空気が悪くなるのは好ましくないのでアルゴにカウンター裏からメッセージを送り、問題は解決だ。

 そもそも俺は人に見せびらかすようなのが苦手なのだ。

 その後、アスナが次々に料理を運んできて部屋がいい香りに包まれる。

 メインディッシュは確定ドロップのS級食材。

 確定ドロップとはいえその入手手段は限られており、五十六層の森の中に出る超巨大ボスグマの討伐が条件なのである。

 なお、熊の強さはネームドボスを上回るほどであるのだが、キリトとアスナで倒してしまったそうだ。

 もう七十層目前まで攻略が進んでいるとはいえ、ネームドボスクラスをコンビで倒せるとは流石である。

 

 熊肉は鍋となって出てきた。最近は暑くなってきているが、だからこそ鍋が良い。

 超巨大グマの癖に大量にドロップはしなかったそうで、流石に八人の腹を満たすほどではなかったが、その味は別格であった。

 素材がいいとここまで行くのかと思う反面、ここまで美味い料理を作ることが出来るアスナの熟練度はどうなっているのかと思わされる。

 

 その後、俺が用意してきた食材が調理された姿のものにも手をつけ始める。

 

 ステーキに刺身という豪華なラインナップに、栄養を気にする必要は無いSAOの中だからこそ美味しく味わえるサラダなど。様々な料理を楽しんだ。

 俺が好きだったのは魚系の料理だ。

 NPCレストランだと肉も魚もあまり変わらず、一番うまい料理がいいのだが、そこを一歩越えた先にあるアスナの料理だと魚系がかなり美味しく感じられた。

 食事を終えて満足した俺たちだが、そこで解散とはならずにエギルが出してくれた飲み物を飲みながらぐだくだと日付が変わるまで話し続けた。

 ちなみに、エギルはリアルでバーテンをしていたらしい。

 道理で似合っているはずだと思った。




たくさん集まっても普段通り会話文がほとんどないという……

これじゃあ集まった意味が無いじゃないか……
いつも通り脳内で適当に再生していただけると嬉しいです

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