デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします   作:にゃー

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最近はスマホを触るとハーメルン開いて誤字報告や感想などがないかを確認するほどで、稀に夢にまで見ます。


一芸に秀でる者は多芸に通ずとは言うが、ユニークスキルは流石にインチキだった

 七十五層の転移門を有効化したあと、ホームに戻ってキリトのことをアルゴに報告する。

 アルゴは少し考えた後、誰かが記事にするダロと記事を書くことはしないようだった。

 ちなみに、俺のスキルの【猫神の加護】や【インカーネイト・オーバーライド】は一応攻略組に知られている。

 知られた時期がヒースクリフの【神聖剣】に近かったからユニークスキルを疑われたが、【猫神の加護】がバステト由来のバステト関連スキルであること、【インカーネイト・オーバーライド】はよく分からないが【猫神の加護】が生えた直後あたりに生えたということにしてテイマー専用か、特殊な条件があるエクストラスキルとして認知されている。

 【急制動】にもユニークスキル疑惑があったが、七十層に上がってからアスナを始め、敏捷ファイターが取得可能スキル欄に名前を確認したことからエクストラスキルであるということが決定した。

 尚、アスナたちは俺の【急制動】の使い方が気持ち悪くて【急制動】は取得しない方針らしい。

 

 つまり、キリトが正真正銘の二人目のユニークスキル使いであるのだが、なぜアルゴは情報を拡散しないのだろうと考えていると、いつの間にかアルゴに正座&重しとして(全然重くないのだが)膝の上にアルゴが俺と向かい合って座る態勢で説教が始まる。

 

 その説教は夜まで続き、二度とレイド単位以外でボス攻略に臨まないことを約束させられた。

 俺としても少数攻略はゴメンなのでしっかりと約束をして目尻に涙を溜めているアルゴを抱きしめて頭を撫でてやる。

 記事を書く時間よりも俺を説教する時間をとったということかな。

 愛されてるなぁ……。でもそんなSAOもあと四分の一。リアルで会えるのかどうか分からないが、その時まではこうしていたい。

 

 翌日、キリトの活躍は多少大げさに書かれてはいるものの、嘘はなくアインクラッド中に広まっていた。 

 それに加えてSAOの矛と盾。【二刀流】と【神聖剣】の決闘が告知された。

 表向きは二人のユニークスキル使いの強さを見せつけて士気を高めるためらしいが、本当の理由は血盟騎士団の幹部がキリトのアスナ独占をよく思っていなかったところに少数ボス攻略。

 流石に危険すぎる。我らが副団長を殺す気かと言った感じのヤツらを鎮めるために、ヒースクリフが「決闘してキリトくんが負けたらウチ(KOB)のヒラね」という感じで決闘を持ちかけたところ、脳筋のキリトは考えるより先に了承をしていたらしい。

 なお、キリトが勝った場合の商品は決めていないというヒースクリフの絶対性を信じている血盟騎士団員だが、あいつは昔(インチキスキル所持の)俺とボスアバターを利用したタイマン勝負で負けているんだぞ。

 キリトが必ず勝つとは言えないが、キリトの勝つ未来も十二分にあると俺は思っている。

 

 さて、茅場晶彦という男が団員を納得させるためにこんな面倒なことをするだろうか。

 あいつなら口先ひとつで丸め込めそうな気もするが……。

 なにか目的があるようだが、キリトをギルドに入れて何があるのだろうか。

 うむむ。わからん。わからんが少なくともゲームの根幹を揺るがすことにはならないだろう。

 俺もスキル交換のあとに何度かあいつと会っているが、俺への補填とレッドギルドに覗かれた時、あとは【神聖剣】の取得以外か?

 それ以外のタイミングではGM権限を使っていない感じだったし。

 二ヶ月ほど前に会った時は俺のレベリング速度が速すぎてトップとして追いつくために迷宮にもぐり続けるのが辛いと言っていたくらいだし。

 

 そして迎えた決闘当日。

 七十五層主街区の中央にお誂向きに設置されたコロッセオは空いている席がひとつもないほどの観戦客で溢れていた。

 

 コロッセオの中央で向き合うキリトとヒースクリフは、何やら会話をしているようだが、最前列の俺の位置からでもその内容を聞き取ることは出来なかった。

 その後、十メートルほど離れて右手をヒースクリフが操作すると、宙にカウントダウンが表示される。が、キリトもヒースクリフもその数字を注視することは無い。

 二年もこの世界にいれば少なからず決闘を経験する。

 つまり、慣れだ。最初の頃は数字を見ていたキリトも決闘を繰り返してそのセオリーを学び、体でカウントダウンを覚えたのだ。

 

 【DUEL】の表示がされると同時に二人が同時に動き出す。

 キリトの二刀流ソードスキルを盾と剣で捌いたヒースクリフは、再び空いた距離を詰めるように大盾に体を隠しながら突撃する。

 キリトは間合いを掴めず、剣から離れるように盾側に回避するが、十字架のような形をしている盾の下端で突く様に攻撃を繰り出す。

 あれは知らない攻撃だな。

 昔戦った時は円盾だったから当然か。

 キリトは左右の剣の腹を重ねて防御すると、その衝撃を利用してさらに距離をとる。

 

 攻撃の【二刀流】防御の【神聖剣】かと思われていたが、剣を二本扱える【二刀流】は武器防御に優れ、盾に攻撃判定がある【神聖剣】は手数に優れる。

 全く違うスキルなのにその恩恵はほぼ同じ。

 違うとすればどちらに重きを置かれているかと言うだけで、ユニークスキルの強さが際立つ攻防であった。

 その後も激しい攻防が繰り広げられ、初撃決着に足る決定打をお互いに与えられないまま決闘は進む。

 決闘が強制終了される五割近くまでお互いのHPは削れていき、ついにキリトが攻勢に出た。

 ボス戦でも見せた二刀流の超連撃。

 ヒースクリフのHPをガードの上からゴリゴリと削っていき、ついにヒースクリフの盾を剥がし、最後の一撃を加えようとした時に世界がブレた。

 これは、最前列にいて、超速の世界に足を置いている俺だから気がつけたことだろうか。

 ヒースクリフ以外の全オブジェクトの状態が固定され、その空間をヒースクリフだけが動いたような違和感。

 少なくともキリトは実感しているだろう。

 ――あいつズルしやがった!

 盾が奇妙に移動し、あっさりとキリトの攻撃を弾くと、ソードスキルの硬直で動けないキリトに簡単な突き攻撃を加え、決闘は終了した。

 

 世界に忠実な男だと思っていたがそうではなかったか? いや、違う。あのヒースクリフの表情はレッドを拘束した時と同じ顔だ。

 不本意ながら使わざるを得なかったような、そんな表情をしている。

 

 決闘の終了を告げるWINNER表示とともに湧く観客には目もくれず、ヒースクリフは控え室へ消えていった。

 

 勝者へのインタビューのようなものもなく不完全燃焼ながらも終了した翌日、黒の剣士キリトの血盟騎士団入団と、黒の剣士と閃光の結婚、及びしばらくの攻略休止という大ニュースを持って観客達に燻っていた熱は発散された。

 

 非公式(俺個人)の二人への質問では、決闘の後招集された二人にキリトの入団と、アスナの一時退団を認める旨が通知され、ついでとばかりにキリトも入団直後に一時退団。

 その後、何やかんやとぼかされて結婚に至ったらしい。

 尚、二人は下層の隅っこに新しい家を買って休暇を満喫するそうだ。




あとはユイちゃん時系列(何も考えてない)と七十五層の決戦だけですね。
主人公が主人公できるのはユイちゃん時系列の別場所の話だけなので結構悩みます。

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