デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします 作:にゃー
長くてもあと2話
翌日、予想通りに招集がかかり、ボス攻略会議が行われた。
ヒースクリフが偵察結果を話し、結晶無効化に加え、ボス部屋の入口が閉ざされるという状況に動揺が広がっていたが、ヒースクリフの俺が扉を壊した。という言葉に安堵のため息が一斉に上がる。
あまり士気を下げることは言いたくはないが、もう一度やれと言われてやれる気はしないと発言すると、その理由を問われる。
なんというか、ステータスとかバフとかスキルとか武器とかで壊せた気がしないのだ。
何に要因があるかわからない以上、前回と全く同じことをしてもその何かが欠けているかもしれない。
そう言うとヒースクリフは興味深そうに顎に手を当てた後、扉の破壊は最終手段とすると言ってボスの情報を話していった。
タンク組の話では、あの骸骨の正面にある二振りの鎌は防御力無視、または即死効果があり、盾や武器でガードできなかったプレイヤーが一撃でやられたそうだ。
さらに、側面の無数の足も攻撃手段としていて、敵が移動するだけで鋭い足が襲ってくるという。
攻略会議としては異例の六時間以上の会議の末、前方の鎌はタンクではなくトッププレイヤー中のトッププレイヤーである、俺とヒースクリフ、キリトとアスナが請け負うことになった。
メイン攻撃を相手にすることがないタンク組は側面の足を担当することになり、火力担当として瞬間火力が高い一撃型や、一瞬で手数を出せるカタナ使いなどが側面に。
会議初期は士気がかなり低かったものの、ここを突破しなければどうせこの世界で死ぬだけだということを感じさせるヒースクリフの言葉で士気は上がり、日をまたいでもその熱は継続すると思われたが三時間の休憩の後にボス攻略を行うことになった。
俺は、攻略会議の時から【インカーネイト・オーバーライド】を起動していたので、三時間休憩のあとならば冷却は終了している。
ボス戦では一撃もらっても最高火力を維持できるということだ。
会議が行われた広場のベンチに寝転がり休憩していると、ヒースクリフがやって来て俺にひとつの仮説を話した。
それは、茅場がこの世界を作った秘めた理由に関係するそうで、心意がどうのと言っていたがよく分からなかった。
曰く、【インカーネイト・オーバーライド】は心意を使うための脳機能やらなんやらを刺激するもので、そもそも最初から非活性だった場合はスキル自体獲得出来ないとのこと。
スキルを使い続けた俺は人よりも心意に近づいているので使うことが出来たとかできないとか。
茅場はいつかこの目で見れることを期待しているよと言ってギルドのほうに戻っていった。
そして三時間後、結晶無効化空間での戦闘になるため、普段は結晶を買い集めるところ、最高級の回復ポーションをポーチに詰め込んだプレイヤー達が集結していた。
俺の秒間回復量は異常だが、それでも回復が追いつかない可能性もあるので効果時間と回復量が長く多いものを多く選択して購入してある。
本来は効果時間が短く(≒素早く回復できる)ポーションが好まれるのだが、俺は別方向だ。
集まったプレイヤー達の中にはエギルやクラインたちもいて、キリトや俺に軽口を言ってくる。
張り詰められていた雰囲気が幾らか弛緩し、丁度いい具合となったところでヒースクリフが回廊結晶を砕き、現れたゲートに俺たちは入っていった。
ゲートの先には閉じられた両開きの扉。
しかしその扉には見覚えのある傷がついていた。
俺が開けた穴と切り裂いた位置が修復できなかったかのように歪みを持って存在していたのだ。
それでも上下半分になっていたはずの扉はくっついているので俺たちを閉じ込める機能に問題は無いのだろう。
ヒースクリフが扉を開き、俺たち鎌組を戦闘に、逆V字になって部屋に入る。
偵察隊からの情報で、中央に達してからワンアクション後――ドアが音を立てて閉じた――上からボスが降ってくる!
中心に達していた俺たち四人はバックステップし、その後に逆V字に広がっていたがプレイヤー達はタンクを内側に、円を書くように広がった。
俺たち四人の鎌対処手段はこうだ。
・ヒースクリフが頑張ってひとりで鎌を一本受け持つ
・アスナとキリトが頑張ってもう一本を受け持つ
・俺が頑張って側面組よりダメージを稼いでヘイトを正面に向けさせながら【隠蔽】のスキルでパーティメンバーのヒースクリフ、キリト、アスナにヘイトを押し付ける。
俺がダメージレースに負ければ側面組がなぎ払われるし、どちらかの鎌が抜ければ多分俺は一撃で死ぬ。
不死身プレイができなくなってからここまであの時が恵まれていたと感じたことは無い。
だがヒースクリフは茅場だし、キリトとアスナは最強夫婦だ。俺が死ぬことはないだろう。
【軽業】【急制動】【加速】に加え、装備についている空中動作可能オプションで常時浮かびながらという言葉がふさわしいほどの戦い方で骸骨にダメージを加えていく。
空中の歩数制限は【体術】のソードスキルで誤魔化したり、骸骨の顔を足場にしてリセットしたりと攻撃を加える。
下側は三人でスペースがちょっとキツめなので俺はできるだけ降りない戦い方をせざるを得ない。
さらに、ヘイト値を予測しながら【隠蔽】スキルで三人にヘイトを押し付けていく。
遅ければ鎌は空中の俺の体を切り裂くだろうし、早ければ冷却時間が間に合わなくなる。
空中で戦いながらの緻密なヘイト管理。
鎌こそ飛んでこないものの、口で食らいついてこようとするので首の可動域を超えた高所にいなくてはいけないのでなかなかに辛い。
俺が完全に攻撃一本に専念でき、それ以外のことはヘイト管理しかやっていなかったからか、通常のボス攻略より短めの四十分で討伐は成功した。
足場にする骸骨が砕け、情けなく落下しダメージを受けて【インカーネイト・オーバーライド】が切れるが、ボス攻略が終わった今ならば問題ない。
慣れない完全空中戦に、ミスを許されないヘイト管理をしていた脳から熱が抜けると同時に強烈な頭痛が襲う。
向こうで脳内出血でも起こっているのではないかと錯覚するほどだ。
側面組も全員無事、その多くが大の字になって寝転がっている。
即死攻撃こそ飛んでは来なかったものの、無数の足の攻撃を捌くのはなかなか大変だったのだろう。
キリトたちもお互いに寄りかかるように座り込んでおり、ヒースクリフは変わらず俺たちを眺めていた。
……少しばかりは疲れた演技でもしないと聡いやつにはそろそろバレるんじゃないかと思う。
今回は最後のクウォーターポイントだし、その内容も凄まじいものだったのだから。
そう思いながら頭痛をこらえるために一瞬目を瞑ると、破壊不可属性が付与されているものに攻撃をした時特有の音が聞こえた。
慌ててヒースクリフの方を見れば、予想通りその正面にシステム的不死を告げるメッセージと、そのメッセージに剣を阻まれたキリトの姿があった。
あーあ。これでこの世界も終わりかな。
恐らくこのあとは決闘の流れになってキリトが勝てばゲームクリア。負ければ茅場は攻略組を抜けてどっかに行くし、アスナはたぶん立ち直れない。
血盟騎士団は崩壊して聖龍連合だけになるが、流石にヒースクリフのカリスマは超えられない。
少しずつプレイヤーは減っていき、八十層になる頃には攻略組はいなくなるだろう。
流石に俺一人でここから先を制覇していく自信はないし、この世界はこの瞬間に終了だ。
そんなことを寝転がりながら考えているうちに、キリトはヒースクリフ=茅場晶彦と結びつけた推理を話していたらしく、見事だと茅場が答えていた。
KOBのメンバーの一人が激昂して茅場に切りかかるがいつかのように左手を操作して麻痺させる。
その直後、どさどさという音が聞こえて全プレイヤーが麻痺させられたのだろうと結論づける。
実際に俺の体力バーにも麻痺を知らせる表示がされている。
俺は装備で麻痺は半減しているし、バフがかかっていれば現状最高レベルでも数秒で解毒されるのだが、そうならないことを見るにシステム的な強制麻痺だろう。
左手で体を動かして首を傾けるだけで二人を見ることができるように体の位置を変える。
茅場とキリトの決闘が始まり、闘技場で行われた時よりも激しい攻防が繰り広げられる。
ボス戦直後だというのにすごいな。
俺は他人事のように考えながら観戦していると、今までソードスキルを使わずに立ち回っていたキリトがソードスキルを起動した。
茅場はニヤリと笑う。
あーあ。死んだなキリトのやつ。それにしても考えられるうち最悪の終わり方か。
ソードスキルを完全に捌ききった茅場が、キリトの体力を全損させるためにソードスキルを放つ。
その攻撃はどういう手段かシステム的麻痺を抜け出したアスナがキリトを庇うことで防がれた。
代わりにアスナのHPが全損し、何度も見たポリゴンの欠片となって消えていった。
キリトは絶望したようにアスナが残した細剣を左手に持つと、攻撃とも言えない動作で茅場に切りかかる。
茅場は盾で防ぐこともせずに右手のエリュシデータを弾き飛ばすと、アスナの体力を全損させた技と同じ技でキリトの胸を貫いた。
キリトの体力バーが削れていき、ゼロになるその直前、茅場のオーバーアシストにも似たブレがキリトの体に起こり、キリトが左手に残ったアスナの細剣で茅場の胸を貫いた。
なるほど。心意、意志の力。茅場が見たかったものはあれなのだろう。茅場は抵抗することもなく体力バーを減らし、その体力がゼロになると同時にシステムアナウンスによってゲームクリアが通知された。