デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします 作:にゃー
ぐっすり眠り、クエストへ旅立つ。
今回も雑魚ばっかりだと思ったら雑魚の塊が三個とでかい猫と尻尾が二本のでかい猫が一匹ずつ。
幸いボス猫たちは離れているので気が付かれないうちに雑魚を片付ける。
その後は尻尾が一本の猫に攻撃して二本猫から離れるように誘導しながら戦っていく。
【食いしばり】があるとはいえ二本猫の炎で体力が九割を切ったらワンパンだ。
警戒に越したことはないだろう。
猫の攻撃の隙間に攻撃を入れていき、三十分ほどで一体目を倒すことが出来た。
幸いなことに二体目には気が付かれていない。
初期値の【隠蔽】スキルを使って二体目の背後から近づき、尻尾を切断する。
一発で切断することが出来、クリティカルで入ったため二本のバーのうち一本目の三割ほどを吹き飛ばすことが出来た。
尻尾を切り飛ばしたあとは普通に戦い、炎を吹く動作をすると同時に横っ飛びをして回避する。
しかし、猫の口からは炎が吐き出されていなかった。
……もしかしたら、尻尾が炎を出すために必要な器官だったのかもしれない。
炎が出せないならばこっちのもので、一体目とほとんど同じタイムで撃破した。
さて、ライオンはどこだ?
待っていると森の方向から何かが飛んできた。
それは土埃をあげて着地し、そのまま突っ込んでくる。
俺は、左肩を前に出した体勢で剣を左肩の前に来るように右手で持ち、ぶつかるのと同時にその勢いで回転し敵を切り裂きながらその衝突で受けるダメージを殺す。
殺しきれなくても問題は無いのだが、ダメージを受けないということは、体勢が崩れていないということなのでそのまま攻撃に移ることが出来るため、着地をして尻を向けている敵の尻尾を攻撃しておく。
バックステップで距離を取り、敵の姿と名前を確認する。
姿はクエストメモに書かれた通りライオンで、名前は«バステト»である。
バステトの名前の通りそのライオンはメスであり、神話の神を元に作られたボスであることが見て取れる。
HPバーは三本あり、今の攻撃で一本目を一パーセント削れたか削れてないか程度、つまりほとんどバーは動いていなかった。
冗談キツイぜ。
バステトが目からビームを放ってきたと思ったら着弾地点がごうごうと燃えているし、口から火炎を放ったと思ったらその範囲は二股の猫の数倍だったりと、明らかに一層にいるプレイヤーが倒すことを想定されていない強さだった。
先に進んだプレイヤーがこのクエストの話を聞いて降りてきて倒すことを前提とした難易度だ。
今のところは炎にさえ気をつけていれば攻撃が直撃して吹き飛ばされても実質ノーダメージで済んでいるので対等に戦えているが、炎を浴びたら多分死ぬだろうな。
リジェネ石があるとはいえ延焼ダメージとバステトの攻撃のタイミングが被ってしまえばその時点でガメオベラだ。
多分こいつも尻尾を切断すれば口から炎は出せなくなると思うのだが、ステータスが高いせいかなかなか後ろに回れない。
苦戦しているうちに一時間、二時間と時間が経ち、三時間目に差し掛かると同時に尻尾の破壊が完了。HPバーの二本目が吹き飛んだ。
正直、かなりきつい。
前座の猫達を含めればもう四時間ぶっ通しで戦闘中だ。
【食いしばり】もこのクエストだけで5も上がっている。
ソードスキルも試してはみたが、剣にソードスキルの光が集まるとバックステップで逃げられて目からビームで攻撃されるためすぐに選択肢から外した。
ベータ時代、フロアボスですらそんな挙動は見せたことがなかったと思うんだが、製品版でAIが良くなってるのか?
それなら最悪のアップデートだな。
デスゲームでなければ難易度が上がってもまあ許容できるが、これはデスゲームだからな。
一番を言えばすべての敵がただのカカシがよかった。
そうだ、とふと思いついたことを試してみる。
ソードスキルを発動させ、ライオンがバックステップをするための体勢になると同時に体を動かしてソードスキルをキャンセルする。
一瞬の硬直が生まれるが、初期スキルであり、即行でキャンセルしたため文字通り一瞬だ。
そのままバックステップしたライオンを追いかけ、視線の先から外れビームを避けて再びソードスキルを発動。
ビームを出したままのライオンの胴体に直撃し、そのHPが一気に数パーセント削り取られる。
よし、パターン入ったかはわからないがこれで攻めよう。
ビームを打ち終わったライオンは左前脚で薙ぎ払うように動き、体の向きを九十度変える。
それと同時に腕の範囲外へと逃げ、再びソードスキルを始動させる。
ライオンがバックステップのために踏ん張るのを見てソードスキルを解除して飛び込もうとすると、ライオンはこちらに飛び込んできていた。
は!? ふざけんな。 【食いしばり】がなければ即死だった。
思いっきり吹き飛ばされ、空中で一回転してしっかりと着地する。
宙にいる時間が長かったせいでライオンは目からビームの体勢だ。
再び横に思いっきり飛び、なんとか回避してそのまま突進する。
もうソードスキルなんて使ってやるもんか。さっきまでみたいに地道にチクチクチクチクと攻撃してやる。
それから一時間後、クエスト開始から五時間たってようやくライオン――バステトは倒れた。
神話の神様を元にしたボスでこんなに苦戦したんだからLA報酬もいいものだろうと期待していると、ウィンドウに現れたアイテムの名前は『太陽神の瞳』どうやらこの世界ではバステトはセクメトと同一視されているらしい。
もしかしたら今回のバステトが敵対モブだったのはセクメトの狂気が抜けていない状態だったのかもしれないな。
それにしても太陽神の瞳って、いきなりすげーものがドロップしたな。
効果はどんな感じなんだ?
ふむふむ、暗所での発光機能と毒の無効化か。
発光機能は太陽としてのもの、毒の無効は太陽の光を浄化の光に当てはめられて設定されているのかもしれない。
まあ、欲張るなら出血と延焼、他にも何個かあるスリップダメージすべての無効化が欲しかったが。
まあ、麻痺毒にも効果があったら最強だから今度調べてみるか。
どれほどの光を放つかはわからないが、使用制限はなさそうなので片手が塞がり、光る時間にも限りがある松明やランタンとは違い便利そうだ。
装備部位も耳であるため問題は無いな。
戦いが終わって糸が切れたように倒れそうになった体を無理やり動かして町長の家へ帰る。
クエストクリアの報告をすると、このキャンペーンクエストの裏側が語られた。
疲れでまともに聞くことが出来なかったが、昔この街では猫――つまりバステト信仰があったのだが、バステトに何者かの悪意が入り込み、残虐な神へと変貌してしまったそうだ。
昔の人達はバステトをなんとか封印して、残虐な神となったバステトの力を削ぐために教会などを閉鎖したそうだ。
バステトの封印はバステト自身の力を使って行っていたらしく、バステトの力が弱まれば封印の力も弱まり、いつかは封印が解ける。
封印が弱まって神気が漏れ出たことで生態系が乱れ、バステトの化身として二体のボス猫が現れたとか。
セクメトから悪意が抜けた後転生したとされるバステトに悪意が宿ったことによりセクメトにもどり、炎の息を吐くことができるようになったりしたのだろう。
セクメトは炎の息を吐いたという話もあるし。
それにしても、今回の推理は五分五分だったな。
多分クエストの条件は時間経過。
クエストの内容は今語られた通りであり、俺の推理通りであったというわけだ。
それじゃあ、内容をアルゴに送りますかね。
ちなみに、今回の二体のボス猫のLA報酬は前回と同じものだった。
複数持っていても使えないし、とりあえず【隠蔽】のほうはアルゴにあげようかな。
【索敵】はアルゴが取ってなかったらアルゴにあげるとしよう。
ところであいつのレベルはどのくらいだ?
二十になってないとしたら三枠で、【隠蔽】、【爪】あとは【疾走】や【軽業】、【索敵】かなんかか?
まだ【所持重量拡張】は早いし、あるとしても【投剣】あたりか。
都合よく【索敵】を持っていないかはわからないが、今度会ったら聞いてみるか。
街の歴史を話し終わった町長は、以前渡したクリスタルからいつかバステト様が現れるでしょうと言って報酬を持ってきた。
報酬は残念ながらエジプト神話に関係する品ではなかったが、やはり一層のプレイヤーがクリアすることを想定されていないのかかなりハイスペックな代物であった。
バステトを封印した時に使ったものの残りらしく、延焼ダメージを無効化する外套だ。
真っ黒の布で出来ており、フードもついている。
フードに猫耳のごとき突起があるのが少し気になるが、性能もベータテストでみたことがない程であり、敏捷を底上げする他、炎ダメージを耐久度に変換する効果や、隠蔽ボーナス、索敵ボーナスもあり、地形効果の寒さにより受けるダメージも無効と良いこと尽くめである。
流石シークレットキャンペーンのクリア報酬だな。
コルも20万コルと大金で、クリア報酬の経験値でレベルアップもした。
バステトを倒した時の経験値でひとつ上がっていたため、このクエストだけで二つだ。
さて、これであとはゴーレムを倒せばこの街にいる理由はないのだが、今日はまだ昼だ。
流石にゴーレムとの連続戦闘は避けたい。
あいつはなんとなくだがこの辺の雑魚とは違う気がするからな。
ネームドモンスターですらないが、そんな感じがする。
となると街をぶらつくくらいしかないんだが……。
そうだ、完全にクリスマスとか正月とか忘れてたしアルゴを呼びつけてアイテムを渡すついでに遊ぶとしよう。
エジプト神話について話してましたが、多分これ以降は出てこないです。(出てきました)