デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします 作:にゃー
海老の天ぷらと詩乃に貰ったそばでザルそばを作った俺は詩乃を揺すり起こす。
詩乃は意外と寝起きが悪いのだが、天ぷらを作ってやったぞといえばシャキッと目を覚ました。
一人暮らしなので小さめのテーブルに蕎麦と天ぷらを運べば、一瞬喜んだ後に二年前には見たことがない冷めた目で睨まれる。
蕎麦のゆで時間は完璧だった!
天ぷらの作成方法も一番人気のレシピを使った!
一体何がいけないというのだ!?
結論、天そばは基本的にあったかいのがいい。
詩乃は文句を言いながらも俺が作った料理を食べてくれ、組み合わせは微妙だけど味はいい。
と言って完食してくれた。
それから詩乃が東京に来た理由を話してもらう。
簡単に言えば東京の高校に入るから。
まだ一月なのだが、新年度までは自宅学習をするらしい。
ならば詩乃には東京の恐ろしさを伝えてやらんとな。
まず、大前提として詩乃は地味だが美人だ。
二年前はかわいいねーと言った感じだったにも関わらず、今は芯が通ってそうな理知的な美しさがある。
なので確実に高校に入れば男からも女からもちょっかいをかけられるはずだ。
男からは付き合ってくれとかそんな感じで、女からは美人な朝田さんをグループに入れればカースト上がるだろと言った感じで。
なのでその美しさを隠すためにメガネ、多少野暮ったいものをかけるしかない。
そうしなければ信じて送り出した詩乃が――となりかねないからな。
友人関係すべてを伝えろとは言わないが、困ったことがあったらなんでも伝えろ。
二年間も仕事をサボったツケとしてなんでも解決してやる。
最後に、男友達が何かの間違いで出来たら絶対に報告しろ。
あと告白されたら彼氏いるんでと断ること。
絶対だ。以上、黒猫お兄さんとの約束ダヨ!
美人だとか言われて照れたのか若干頬を染めている詩乃だが、とりあえず約束してくれたので一安心だ。
田舎と違って本当に東京は怖いからなぁ。
まあ、田舎も田舎で怖いところあったけどね。
その後はそろそろ荷解きをするという詩乃に協力しようとするが、洋服メインと言われ拒否られて、詩乃は隣の部屋に帰宅。
俺は食器を片付けてALOにダイブすることにした。
いやー、まさかここまで偶然が起こるとは。
こっちから探すように街を歩いていたつもりだったが、まさかまさかの隣の部屋に越してくるという展開。流石に驚きだ。
◇
ALOにダイブした瞬間、アリシャからメッセージが届いた。
狩りしたいから付いてきてーというメッセージだ。
ログアウトしたのはケットシー領内だったのでそのままアリシャの元へ行き、合流する。
領主といえども一プレイヤーであるため、狩りはしたい。
けど領主が死ぬと……という問題をある程度解決できる機能が、俺とアリシャのあいだの護衛機能だ。
モブエネミーの攻撃に限り、アリシャがやられたとしても俺が生きていればリメインライトは消滅せず、俺がリメインライトを持って領内に戻るか、蘇生魔法をかけて復活させるかすればデスペナも無くなるというものである。
そもそも俺がしっかり護衛すればいいのだが、それでは本末転倒なのだ。
ただのプレイヤーとして狩りをしたいのに過保護に守られてしまうのはアリシャの望むところではないからな。
ちなみに護衛はほかの種族のプレイヤーと領主が近くにいると色々な補正がかかって強くなる。
そっちがPKへの対策だな。
アリシャは強者の部類に入り、扱いの難しいクローを扱うテクニカルインファイターだ。
剣とは違ってパリングがほぼ不可能なその武器だが、連撃速度などはかなり高く、懐に潜り込まれれば一気に体力を持っていかれること間違いなしである。
近づくための牽制として【闇魔法】を持っているし、ケットシーらしく【召喚魔法】での巨大モンスター召喚や、ケットシーの切り札であるテイムモンスターも所持している。
領主としてフィールドになかなか出られないためスキル値は若干劣るが、プレイヤースキルだけで考えればALOトップ百には確実にランクインする腕前だ。
蝶の谷という中央に続くフィールドダンジョンの敵ならばいざ知らず、そこら辺のフィールドモブならばちょちょいのちょいと倒してしまうので、俺の出る幕はないのだが、踊るように敵を倒すアリシャを見るだけでも結構楽しい。
すると、俺の視界に表示されているアリシャの体力バーの横に騎士のマークが出現した。
アリシャが戦っているモブを切り伏せて、アリシャを抱いて付近の森に隠れる。
急に抱き抱えられて移動させられたからか、怒っているアリシャだが、俺が理由を話すと納得する。
騎士のマークは付近に他種族のプレイヤーがいる証拠。
仮に発見されればデスペナも惜しくはないとばかりに突貫されるだろう。
なのでALOの基本的移動手段である翅での飛行中には見つかりにくい森に入り、【闇魔法】を使ってさらにハイド補正をかける。
五分ほど隠れているとチカチカと騎士のアイコンが点滅し、最終的に消滅した。
見つかりやすい金の髪を持つアリシャの頭を隠すために上着の内側に入れていたアリシャを外に出すと、流石に接触しすぎたか褐色な肌でもわかるくらいに顔を真っ赤にして怒っている。
触れるとさらに酷くなることは分かっているので今日の狩りをどうするか聞けば、充分楽しめたし。ということで終わりとなった。
時間もよく見れば二十二時を回っている。
領に戻る時間なんかも考えればいい時間だろう。
俺たちはほかのプレイヤーに気をつけながら領へ戻り、ログアウトした。
黒猫のお兄さんからしてみれば詩乃ちゃんは妹分なのです。
美人だなんだと言ってますがウチの○○ちゃんは可愛いなーって感じです。
同級生設定だと書きにくかったので事前に書き換えておいたのさ。
黒猫のお兄さんのリアルネームもそろそろ決めないと和人君と会話する時に黒猫のお兄さんと呼ばせる他なくなってしまう。