デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします 作:にゃー
詩乃を呼んで昼ごはんを食べたあと、予定通りに一時にALOにログインした。
アリシャから今日――正確には明日――の深夜一時に会談があるから付いてきてーというメッセージが。
確かシルフとの会談だったか。
しかし一時に会談に行くとなれば、今日はルグルーに行けなくなってしまう。
アリシャには今日はルグルーにまで行く予定があると断って、しかし君の身が危なくなったら転移して駆けつけるので安心してくれとメッセージを送る。
暫くして仕方ないなーといった感じのメッセージが返ってきて、俺たちはルグルーに向けて移動を始めた。
ケットシー領を南下しシルフ領の森を抜け、飛行制限がかかる山岳地帯に数時間かけて到着した。
VR初心者のシノンが少し疲れているように見えたので休憩してから、ルグルー回廊に入る。
ここに出る敵は基本的に図体のデカい敵なのでシノンの弓は当て放題だ。
洞窟の中は暗いため、【闇魔法】の暗視スペルを唱える。
光源を生み出すことでも視界を確保できるのだが、光源の用意よりもこちらの方が確実なのだ。
光源と敵のあいだにものが挟まることによって敵が見えなくなる。ということがないからだ。
ルグルー回廊の敵であるオークなどを倒しながら二時間ほど。ようやくルグルーに到着した。
入口の伝言用ガードに俺達が到着したことを告げるメッセージを残して宿屋でログアウトする。
もう十九時をとっくに回っていて、あと十数分もすれば二十時となる。
ログアウトして三人揃って起き上がり、味噌汁を温め直して酢飯を作り――とやっていると食事が終わる頃には二十一時を回っていた。
そろそろキリトがルグルーに到着しているかもしれないので、二人には風呂に入ってくるように言って俺はALOにダイブした。
ログインすると、伝言用のガードを確認する。
残念ながらキリトたちからの伝言は来ていないようだ。
仕方ないので暇つぶしがてらにルグルーから続く橋を渡り、ルグルー回廊に入る。
この一本道の通路しかスイルベーン側からルグルーに入る通路はないのでここで戦いながら待っていればキリトたちと少しは早く合流できるという判断だ。
オークを狩り続け、遅々たる速度でBSPを入手していると、サラマンダー狩りはすごい効率だったんだなと今更ながらに理解する。
他種族撃破ボーナスに加え、BSPをキルした相手が持っていれば一定値奪えるからだ。
三十分ほどそうしていると、前方から二名と、その後に二十一名が走ってくるのが【索敵】で捉えられた。
数字の問題からきっちりフルメンバーの三パーティと、それに追われる二人という感じだろうか。
逃げているであろう二人がオークを倒している俺の横を通り過ぎ、そのメンバーがシルフとスプリガンであることを確認した俺は、オークを手早く片付けると二人を追いかけた。
和人からシルフの先導で来るということは聞かされていたし、スプリガンでプレイしているということも知っていたからだ。
流石にこの時間にキリトと先導者以外のシルフ、スプリガンの二人組がここを通るとは考えにくい。
二人に追いつくと、シルフが、え? 何この人!? と驚いていたが無視してキリト(らしき人物)に挨拶をする。
バーストくんでーすと言えば、お前か!
と返事が来てサラマンダーの大部隊に追われてるから街まで逃げるぞ!
と言われてさらにスピードをあげることに。
俺が言えたもんじゃないが、サラマンダーの大部隊に追われるって何をやらかしたんだこいつは。
キリトの胸ポケットには話に聞くプライベートピクシーが入っており、キリトをパパと呼んでいて驚いたが、SAO時代に数日だけ触れ合ったMHCPの子だろうか?
走り続け、あと十数メートルで街に入るという距離まで走ったその時、ルグルーの入口を塞ぐように土魔法の壁が生やされた。
……普通にマナー違反じゃねーか?
街から外に出られないじゃん。
入口が封鎖され、一本道の橋の反対側にサラマンダーの大部隊が陣取る。
絶体絶命かな。
タンク三人に加え、その後にはメイジが十数人。
明らかにピュアファイターを殺すためだけの部隊だ。
しかし、俺らが生きるにはそれを打ち破らねばならない。
橋の幅的にも剣を振るえるのは二人が限界。
シルフのお嬢ちゃんにはサポートをしてもらうことになり、俺はバステトに【使役魔法】でブーストをかけてからバフを重ねがけしてもらう。
SAO時代に猛威を振るった特攻、その中の蛇に対するダメージを倍増させる効果はサラマンダーに対しても有効だった。
リジェネ、特攻。その数値はあの時と比べれば雲泥の差だが、縮小版完全体バースト様の復活だ。
キリトと一瞬だけ目を合わせ、キリトを先頭に一列になってサラマンダーに突進する。
キリトの陰に隠れ、キリトがサラマンダーに突進し、大剣と見間違える片手剣を振るい、それが防がれるのを確認した俺はキリトの背中を踏み台にしてタンクたちの防御を抜けようと飛翔する。
翅による浮力は得られないが、それによる空中動作の補正は得られる。
直線的な火力重視の火球を躱し、三人のタンクの後ろ側に着地したその時、タンクの後ろに隠れていたであろう軽装のプレイヤーに吹き飛ばされる。
その先は湖。
水中には強力なエネミーがいるし、仮にいなかったとしても水に落ちれば魔法のいい的だ。
タンクのタワーシールドの端をなんとか掴み、俺との位置を交換するように引き寄せると橋に着地する。
しかし、タンクの外側に押し出されてしまった。
湖に落として二人に減ったはずのタンクはいつの間にか補充され、三人で盾の裏に隠れる陣形をとっている。
その後から直線型の威力重視の火球が複数飛んでくる。
闇の矢を生み出す呪文を咄嗟に唱え、数個は打ち消すことに成功したが、十発近くの火球が俺たちの周りに着弾し、爆発する。
タンクは無視して奥のメイジに魔法を浴びせようとするが、予備であろうタンクたちにその尽くを防がれ、とりあえずは前衛でその役を務めているタンクを倒すことを考えることにした。
見ればキリトはピッタリと並べられた三枚のタワーシールドの極わずかな隙間に大剣を突き刺し、テコの原理を持ってその防御を崩そうとしていた。
それに対し、必死に踏ん張っているサラマンダーに向けて盲目を付与するスペルを唱える。
レジストされることなくその効果を発揮した呪文は、タンクの視界を奪い、そのバランス感覚を崩させた。
【盲目】といっても完全に視界が潰される訳では無い。視野と視認可能限界距離が狭まるだけだ。
しかし、急に視野がせばまればバランス感覚が失われるのは必至。
俺は何度もこの魔法に救われていた。
確かに、この戦法ならば個人的技量が高いキリトたちを倒すことは出来るだろう。
俺が嫌いな戦闘手段にして、しかし有効だとも知っている戦闘パターンだ。
しかし、俺がここにいたことでその目論見は破られたようだな。
圧倒的なプレイヤースキルを持つキリトと、それに匹敵する技量を持つ俺。
どちらかひとりだけならば戦闘パターンの強さに押しつぶされていただろうが圧倒的な存在であるフロアボスを俺たちは何十度も攻略している。
その戦闘により得られた経験値は基本的に複数人で振るわれるものだ。
タンクの隙間が空いたところにキリトが突進する。
後ろで待機していたであろうサブタンクが盾を構える前に首元に大剣を突き刺し絶命させると、まだいるサブタンクに吹き飛ばされて再びタンク隊の外側に弾き飛ばされる。
蘇生魔法は長い詠唱を行うため唱えられてはいないだろうが、それでもまだ複数いるタンクを全員倒すには時間がかかる。
俺のリジェネも間に合っておらず、後衛のシルフのMPもそこまで余裕はないだろう。
やられるのも時間の問題かという考えが浮かんだその時、ルグルー側、シルフの後、壁の上から大量の火球が降り注いだ。
対象は俺とキリトではなくサラマンダー側だ。
サラマンダーのメイジたちはそれを撃墜するべく発射弾数に優れる弾幕魔法を放つが、その弾幕は火球を通り抜け遠い空に消えていった。
驚愕するサラマンダーたちは、火球のダメージを少しで漏らすためにヒーラーも含め全員が防御態勢をとる。
火球が地面に着弾し、爆発すると思われたその時、火球は音もなく消えていった。
いつまで経っても衝撃が来ないことに気がついたメイジが防御態勢を解除してその顔を上げると同時、その額に一本の矢を生やし、エンドフレイムとなって絶命した。
矢が生える音は続き、さらに数名を撃破したところでサラマンダーたちは矢を防ぐための防御を行う。
しかし、メイジたちは火力を押し付けてこなくなったし、ヒーラーたちはタンクを回復しなくなった。
キリトがタンクの盾の上から連続攻撃を叩き込むとようやくタンクを一名撃破し、その穴に侵入。
今までの鬱憤を晴らすかのように暴れたおし、一人のメイジを残して全滅させた。
残った一人のメイジも倒せなかった訳ではなく、後ろのシルフに頼まれて残された奴だった。
俺は土魔法の壁の上を眺め、後でお礼を言わないとなと一人呟いた。
戦闘描写書いてるけどきちんと伝わってる?
俺とキリトは苦戦しながらも最終的に幻影の火球と飛来した矢に助けられ、サラマンダーたちを倒した。
っていう文章だけで事足りてたりしません?
戦闘描写はずーーっと苦手意識があります