デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします   作:にゃー

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半分くらい戦闘描写デース


二年間も一緒にいれば大体はわかるが、大体しかわからない

 戦闘を開始してから五分ほど。サラマンダーの大部隊と一人で渡り合っていた俺だが、段々と劣勢になってきていた。

 敵の数を減らせば減らすだけ不利になる。

 理解の及ばない理不尽が俺を襲っていた。

 最初に十人以上を倒したあの魔法も、二発目は半径十メートルに、三発目は半径五メートルほどに。

 本来の範囲と比べればはるかに上だが、この大部隊を相手にするには圧倒的に力不足だった。

 最初は七十を超える数がいただろう部隊も、パッと見た感じメイジ二パーティ、タンク一バーティ、アタッカー一バーティの合計四パーティ程まで減っていた。

 俺は四十人近くをこの短い時間で倒した訳だが、どういう訳か俺のステータスは低下を続けているし、生き残った三十人弱は単純な装備の質でも、プレイヤースキルでも上位の者達だ。

 

 俺がシラフでまともに正面からかち合って倒せるのは精々一パーティ。奇襲できれば二パーティ。地形を活用できれば三パーティ。

 しかし、ここは障害物も何も無い空中だ。

 奇襲ができるチャンスは交渉のために投げ捨てたし、地形の活用もそもそも障害物も何も無いこの場所では行えない。

 

 それでも領主(アリシャ)を殺させるわけにはいかない。

 俺は彼女を守ることを約束して護衛になったわけだし、なによりここで会談が潰されてしまえば世界樹攻略は遠ざかってしまう。

 この種族会談は世界樹合同攻略という頭の狂った――しかし有効かもしれない作戦の前提なのだから。

 

 それからさらに時計の針は進む。

 パーティのリーダー格を執拗に狙い、その統制を崩させながら撹乱する。

 時間さえ稼げば勝ちなのだ。

 

 そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 俺が一番脅威に感じず、半ば放置していたアタッカーのパーティが俺の包囲網から外れ、領主たちの方へ向かった。

 存在しもしない大使が到着してしまえばこの戦闘バランスは崩れる。

 ならば、四種族を敵に回したとしても内、二種族の領主を討って少しでも対抗できるようにと考えることは不自然なことだろうか?

 

 あの線を超えたら恐らくシルフ・ケットシー両陣営はサラマンダーに殺されるのを防ぐためにお互いの領主を殺すだろう。

 そうなれば領主のデスペナによる領主館に蓄えられた通貨の移動が起こる。

 それは両陣営が返却し合えば問題ない。

 十日間に及ぶ税金の倍率変更だってしなければ問題は無い。

 しかし、確実に同盟の件は見送られる。

 一週間か、一月かは分からない。

 しかし――

 

 俺がアタッカーたちの動きに気がついて動き出した時にはもう遅かった。

 生き残りのタンクたちに道を塞がれ、メイジたちからは魔法で狙い撃ちにされ、未だ息がある指揮官の剛剣が振るわれる。

 ここで死んでは意味が無い、しかしあの線を超えさせても意味が無いのだ。

 俺は言葉にならない叫びを上げてタンクたちの壁を越えようとした。

 その時――線とアタッカーたちのあいだ、その進行を食い止めるように()()()が巨大な土煙を上げて墜落した。

 

 それに驚き、動きを止めるアタッカー。意識がそちらに向くタンク。

 俺はその隙を縫って包囲から離脱し、アリシャの横に着陸した。

 

 

「双方、剣を引け!!」

 

 墜落した何か――キリトが大声をあげる。

 それに驚いたアリシャに、あの人誰? と、問いかけられる。今回の切り札だと答えれば、その瞳をすっと細めキリトを見定めるようにその視線を固定した。

 

「指揮官に話がある!!」

 

 変わらぬ声量でキリトが叫ぶ。その言葉は、俺がこの場に転移してきて上げた言葉と一言一句違わず合致していた。

 

 先程まで俺の相手をしていた指揮官がタンクたちの横をすり抜けて前に出る。

 サラマンダーからしたらこの状況は絶体絶命だ。

 先程の俺の言葉が真実だとしたら、キリト――スプリガンともことを構えなければいけなくなったのだから。

 その状況を多少なりとも良くするため、キリトの要請に応じざるを得ない。

 

 しかし、サラマンダーの指揮官は恐れも知らずとばかりにキリトに返事をした。

 まるで、俺の話などこれっぽっちも信用していないとばかりに。

 なぜスプリガンがここにいるかは知らんが、どちらにせよその後のヤツら共々殺してやる。

 

 俺はキリトとこれっぽっちも打ち合わせをしていない。

 手札を大きく見せるためにキリトともう一種族を敵に回すとは言ったが、キリトがスプリガン(一種族)も敵に回す。といったり、三種族以上を上げたりすれば俺の言葉との矛盾から嘘を確実に見破るだろう。

 さらに、この指揮官は俺の発した言葉をこれっぽっちもキリトに伝えていない。

 「なぜここにいるか分からん」これが最高に最悪な言葉だった。

 

「俺の名はキリト。スプリガン=ウンディーネ同盟の大使だ」

 

 キリトがそう返答した時、俺は喜びに包まれていた。

 キリトの性格はあの二年間でよく知っている。

 不利な時には手札を大きく。しかし、必要以上にホラを吹かない。

 それでも()()()()使()だと言ってくれるかは五分五分だった。

 

 盛大な着地をしたキリトの周りには誰もいない。

 リーファもアルゴもシノンもそれぞれの陣営の近くに着陸しているからだ。

 それを見たサラマンダー指揮官は、キリトと俺の嘘を暴くための揺さぶりをかける。

 

「護衛の一人もいない貴様がその大使だというのか」その言葉はさらに悪辣だった。

 キリトが是と答えれば嘘、いると答えて俺やリーファだけをあげても嘘。

 きっちりと俺を含めて四人いることを言わなければならなかった。

 

 しかし、キリトはしっかりと俺を含めた四人を護衛だと言った。

 シノンとリーファは若干驚いたような表情をしていたが、サラマンダーの指揮官はキリトを揺さぶるのに意識を集中させていたためか気が付かれることは無かったようだ。

 

 しかし、()()()()()の護衛しか付けない、装備も際立ったものがないお前の言葉を信じることは出来ないと奴は言ってのけた。

 キリトはそれに対し、俺自身が最高の剣士だからな。とニッと笑って言った。

 だからそもそも護衛も必要なかったのさ。

 

 そういったキリトを舐めまわすように見たあと、サラマンダーの指揮官は苦し紛れにこう言った。

「オレの攻撃を三十秒耐えることが出来たら貴様を大使と信じてやろう」

 

 キリトは背中から大剣と見紛う片手剣を引き抜き、翅を広げて浮き上がり構えた。

 

 その瞬間、シルフ側から声が聞こえてきた。

 曰く、あの指揮官はサラマンダー最強の剣士。

 最強種族最強の剣士――つまり全プレイヤー最強だと。さらにあの両手剣は伝説級武器(レジェンダリーウェポン)だという。

 アリシャはさらに補足し、あの両手剣――魔剣グラムには特殊効果として剣や盾の防御をすり抜ける効果が付与されているらしい。

 

 なんだその馬鹿げた効果は。

 俺はこの世界でファイターとしてタンクとかち合った経験があるから知っている。

 ファイターは基本的に防御に回ったタンクを攻め倒すことは出来ない。

 なぜならその巨大な盾がALOのダメージ算出式に非常に有利な設定がなされているからだ。

 攻撃位置――盾なので倍率は非常に低くなる。

 攻撃速度――完全に盾で止まってから衝撃が伝わるのでその倍率は低くなる。

 被ダメージ側の装甲――鋼鉄の塊、巨大な盾の装甲値はかなりのものだ。

 

 唯一普段と変わらないものは武器の威力だけ。

 そんなファイター絶対止めるマンであるタンクの防御()をすり抜けられるということは、こいつはどんな敵でも剣が届く範囲に近づけば撃破できるということ。

 剣自体の威力だって伝説級、ということから凄まじいの一言に尽きるだろう。

 俺はSAO時代からの戦い方が回避一本であったため今回の戦いでもまともに打ち合うことはしなかった。

 しかしキリトは武器防御を前面に押し出した脳筋だ。

 叫んで伝えようとした時には既に戦いは始まっていた。

 

 グラムの情報を知らないキリトは敵側の筋力値を推し量るためにわざと攻撃を防御しようとした。

 しかし、その防御はすり抜けられ、飛ぶハエを撃ち落とすが如く吹き飛ばし、キリトは再び大きな土煙を上げて地面に墜落する。

 

 しかし、その直後にホバリングしているユージーン将軍に向かって鋭角に突進していき、上段から鋭い攻撃を浴びせた。

 

 キリトが来る前から戦っていた俺は知っていたが、奴は装備の強さだけに負ぶさっているだけではなく、確かな腕を持っていた。

 キリトの剣を防ぎ、流し、弾く。

 キリトの連撃の勢いが緩んだその隙に大ぶりの一撃を振る。

 

 おそらく、あそこまで大きく、それこそ()()()()()()()()()()攻撃を繰り出したのはわざとだ。

 わざと防げる攻撃を行い、その剣の性質を持って敵を両断する。 

 剣の強さを知り、活かす。そこいらのプレイヤーに出来る動きではない。

 

 キリトは二年にも渡って体に染み付いた動きで防御を行うが、グラムの能力によって攻撃をまともに食らって吹き飛ばされる。

 

 既に三十秒は経過していた。 

 しかしユージーン将軍に火が付いたのだろう。

 戦闘はまだ続く――

 

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