デスゲームでオワタ式を強制されたのでゾンビプレイします   作:にゃー

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多分あと三から六話くらいで完結します


やっぱりサラマンダー狩りの報酬はすごいものだった。

 リーファの頼みで、シルフ・ケットシー両陣営の世界樹攻略に参加できることになったキリトだが、資金の収集に問題があるとアリシャが言うと、物語でありそうなでっぷりと太った金貨袋を出現させた。

 資金の足しにと渡されたその通貨は、SAO時代のものだっただろう。

 ならばと俺もSAO時代に稼いだ通貨を同盟に差し出す。

 アリシャとの間でロンダリングのようなものをした時、そのまま種族に収めることも考えたのだが、税金を収めてもらうことになるからとやんわり断られたのだ。

 しかし、キリトの頼みで世界樹攻略を可能な限り早く目指したい現状ならば断られないだろうという判断だ。

 ついでに今回のサラマンダー大量討伐の報酬である通貨とドロップアイテムも納品する。

 ――勝った!

 

 俺の満ち足りたような顔に苦笑いするキリトだが、二人の領主がその額を数えればほとんど目標金額に到達しているらしい。

 ならばと今までのサラマンダー狩りでゲットしていた通貨も納入し、キリトに期限を聞く。

 

 最初から焦りのようなものは感じられていた。

 キリトは三週間と指を立てて言うが、やはり出来るだけ早くという言葉を付け加えたいのだろう。

 

 どんなにかかっても一週間で駆けつけると言ってキリトとリーファを見送った。

 俺は両領主を送り届ける必要があるからな。

 

 二人を見送ったあとに、とりあえず急いでケットシー領に戻ることとなった。

 万が一ではあるがサラマンダーが気を変えると面倒だからな。

 

 移動が始まり、空気を読んで空気に徹していたアルゴとシノンが声をかけてきた。

 あの女(アリシャ)って何?

 

 デジャブを感じながらもケットシーの領主で、俺のお姫様(護衛対象)だと答えれば、二人はアリシャを抱えて隅の方へいってしまった。

 

 俺達が今いるのは、蝶の谷というケットシー領からアルンに行くためのダンジョンで、ルグルー回廊のように中間都市がない代わりに、飛行制限がないフィールドとなっている。

 出現する敵も、ケットシーには迷惑をかけたからな。と、シルフたちが倒してくれるので楽ではあるが暇だ。

 サラマンダー数十人の討伐報酬であるBSPの振り分けなどをしながらケットシー領に向けて飛んでいると、後からなにかに追突される。

 

 ()()()はアリシャだった。

 振り返ってみれば、そのまま胸に顔を埋められ、条件反射で頭を撫でつける俺。

 すぐに我に返ってやめたが、俺の視線の先にいるアルゴとシノンの目はいつかのように冷えきっている。

 

 アルゴに教えて貰ったというか、アルゴが喜ぶ反応があの二年間で剣技のように体に染み付いているせいか、ついこんなことをしてしまうが、決して下心があるという訳では無いのだ。

 

 それにしても、前面は比較的露出が抑えられていたが、背中は殆ど全露出なんだな、今日のアリシャは。

 露出が少ないなんて嘘だった。

 俺が抱きとめたからか、翅をしまってしまったアリシャを離すことは出来ないし、かと言ってこのまま抱いていると背中に直に触り続けることになる。

 

 どうしたんだ? と聞いてみても、顔を埋めたままに返事はない。

 ちょいちょい、とアルゴとシノンを呼び寄せれば、美人な領主様に懐かれて良かったナ。とアルゴ。

 あの人も大概だとは思ったけどあなたもほとんど変わらないじゃない。とシノン。

 いつの間にか顔を上げていたアリシャは、英雄色を好むって言うし仕方ないヨ!

 そう言って俺の腕から抜け出すと、アルゴとシノンのあいだを飛行する。

 

 英雄って俺のことか? キリトの方がぴったりだと思うけど。

 俺は魔王に反逆した部下みたいなものじゃないかな。茅場からスキルもらってたわけだし。

 そんなことを考えていると、三人は揃ってため息をついた。

 

 

 無事にケットシー領にたどり着いた時には、もうリアルタイムで三時に差し掛かろうとしていた。

 会談場所から領に入るまでで二時間と考えれば速いとも言えるが、流石にほぼ半日ぶっ続けでログインしているために疲れた。

 アリシャとサクヤに挨拶をすると、ちょっと残って話したいというアルゴとシノンを置いて、俺は一足早くログアウトした。

 

 ログアウトして、ナーヴギアを外す。

 すっかり暗くなっている外の景色が見える窓にカーテンをかけて電気をつけると、何故かワイシャツ一枚の亜子と詩乃に毛布をかけて風呂に向かった。

 ちょっと夜更かししすぎちゃったかもな。

 

 

 手早く体を洗って風呂から出ると、既にログアウトしていた亜子と詩乃が、床に敷いていた布団を押入れにしまい、俺のベッドにも敷布団を戻してくれていた。

 ありがたいが、亜子はどこで寝るんだ?

 詩乃部屋でねるならこれでいいと思うけど……。

 

 結論、長時間のダイブで体が痛くなっていた二人は質の良い俺のベッドで寝ることを主張し、また三人で眠ることになった。

 ここまで密着して寝ないと行けないとなると、逆に体が痛くなると思うけど……。

 それからズボンを履いていないすべすべの生足を絡ませるのをやめてください。本当に、切実に。

 

 長時間のログインのあと毎回こうなるようなら折りたたみの普段はソファとかになるベッドをもうひとつ買うべきだろうか?

 そのことについて少し考えたあと、俺は気絶することで悶々として眠れないであろう睡眠時間を確保した。

 SAO時代のいつかのように、意気地無しという言葉が聞こえたような気がしたが、長時間ログインによる疲労からくる幻聴だろう。

 




アルゴさん:独占欲はない。ずーっと一緒にいてくれて大事にしてくれるならなんでもいい。

バーストくん:二年間のアルゴとの異常なスキンシップの量を、それ以前の経験がほとんどなかったために正常な量だと思い込んでいる。
スキンシップ依存のような何かでもある。
最近は暇な時間がない(ゲームしている時間が暇な時間というのは少し違うらしい)ため、SAO帰還後から溜まってるってやつらしい。

理性が持たないなら意識を落とせばいいじゃない!byバースト

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