旭日は昇っているか ~鹿屋基地攻防記~(休止中)   作:くろしお

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二日連続投稿です。

鹿児島・鹿屋基地迎撃戦 中編その2です。
内容は短めなものとなっています。(というか、最近が長過ぎだった。)

金剛たちの艦隊は、果たして深海棲艦の艦隊を止めることが出来るのでしょうか?

それでは、第12話です。どうぞ。


第12話 鹿児島・鹿屋基地迎撃戦 第二中段  迎撃距離 20,000m

 6月5日 午後1時48分 ―佐多岬沖 北北西13㎞地点―

 

 第一陣の金剛以下6隻の重火力艦隊は、深海棲艦の水上打撃部隊の迎撃のために錦江湾を南下する。

 一方、空母機動部隊旗艦の赤城以下6隻は、反対に桜島と鹿児島港との間まで後退し、航行中の桜島フェリーの退避誘導や漁船の避難指示を無線やモールス信号で発していた。

 この位置から、重火力艦隊を援護する形となるように艦載機を次々発艦させる。

「全艦、輪形陣をとれ!皆さん、ここを絶対に抜かせてはならないですよ!」

『『了解!』』

 赤城は、刺し違えてでも水上打撃部隊の動きを止める気でいた。最も、これはどの艦娘であっても最終手段として考えていた。

 加賀や蒼龍、千歳も続々と艦載機を打ち上げていく。

「航空隊の皆さん、頼みましたよ。」

 赤城は、発艦していく艦載機たちを見送りながら、そう念じる。

 

 

 

 

 金剛たちが荒平出撃拠点を発って暫くして、前方に黒く島のように並ぶ物体が表れてきた。深海棲艦の水上打撃部隊だ。

 まさに今、錦江湾内の船舶へと砲撃していた。

 金剛は、見境なく撃つ敵艦隊に怒りを覚えた。

「くっ…。アイツら…。皆!準備はイイネー!各艦、自由砲撃!目標、深海棲艦戦艦!全砲門、Fire!」

 遂に、鹿屋基地所属艦隊と深海棲艦の水上打撃部隊とで戦端が開かれた。

 

 

 金剛とル級flagshipが接敵距離を詰める。互いに声の届く距離まで近づいた。

「来タカ、忌々シイ艦娘ドモ。我ガ砲ノ前ニ沈ンデイケ!」

「それはこっちのセリフネー!関係の無い人々を襲って、許せるわけ無いネー!」

「フン。知ッタ事カ。全テハアノ御方ノ為。人間モ、艦娘モ全テ消シ潰シテヤル!全砲門、目標前方ノ都市部!絶望ヲ与エテヤレ!」

「なっ!マズイネー!榛名、伊勢、利根、前方のル級flagship2隻に全弾叩き込むネ!」

『『『了解!』』』

 後ろに続く3人も含めて、ル級flagshipへ集中砲火を浴びせる。

 金剛と榛名は、主砲と副砲に自動砲弾装填装置を搭載する。分間3発から、分間5発へと速度を上げたこの主砲は、的確にル級flagshipへのダメージを上げる。

「クッ。沈ム前ニ…、一矢報イテヤル!貴様ラハ、コレデ終ワリダ!」

 旗艦ル級flagshipは、一発でも多く鹿児島市街へと被害を与えようとした。

 だが金剛はその行動を見ながら、口角を上げてル級flagshipへと顔を向きなおす。

「フッ。まさか、貴方達を止めるのが私達だけだとでも?そうだとしたら、頭の中はヒドイくらいのお花畑(Flower Field)ネ。」

「ナニ?」

 そう言った瞬間、旗艦ル級flagshipの体に上空から500㎏爆弾と、海面からホップアップ軌道を描いてきた対艦ミサイル4発が突き刺さる。

 ドドーン!

「グハッ!キ、キサマー!」

 

「言ったでショウ?お花畑だって。…お前の失敗は、本土に近づき過ぎたことネー!」

 トドメに金剛は、旗艦ル級flagshipにゼロ距離射撃で主砲を叩き込む。

 

 ギィィィッー

 

 旗艦ル級flagshipは、爆炎と共に海中へとその姿を消していった。

 

 しかしながら、それくらいで退く深海棲艦たちではない。

 残った戦艦ル級flagshipとタ級が中心となって砲撃を続行する。

「…しぶとい奴らネ。」

 金剛はそう言うと、艦隊に反航戦を命じながら敵艦のバイタルパート(VP)を狙い撃ちする。

 侵攻速度は弱まったが、依然深海棲艦の水上打撃部隊は健在。殴り合いのケンカ同然の戦闘が続く。

 

 

 

 

 旗艦ル級flagship撃沈の数刻前、荒平出撃拠点。

 県道に配置されていたのは、88式及び12式地対艦ミサイル(SSM:Surface to Ship Missile)部隊。

 本来の射程ならば、本土に接近する遥か手前で深海棲艦の水上打撃部隊を攻撃出来たのだが、そこは作戦の内。

 赤城達の航空隊が、水上打撃部隊と金剛たち重火力艦隊が交錯するタイミングで急降下するのを狙う。

「SSM-1(88式)及びSSM-2(12式)発射用意…、発射!」

 部隊長の号令と共に、先行してそれぞれ3発、計6発が2隻のル級flagshipへと向かう。

 赤城所属の急降下爆撃部隊の爆弾投下とほぼ同時に、その6発全てが2隻ともに命中する。

 正確には、旗艦に4発、もう1隻のル級flagshipに2発だったのだが、戦艦同士の発砲炎で視界が霞んでいた状況では、彼女たちは何が起こったのか理解出来なかっただろう。

 少しずつ重火力艦隊は、外海へと水上打撃部隊を押し返し始めていた。

 本番はこれからである。後続の複数の水雷戦隊が、多数の酸素魚雷を抱えて獲物を狩る準備を始めていた。

 

 

 

 

 ―鹿屋基地 鎮守府本館・通信室―

 取材班が鎮守府内での取材を試みている頃、提督は副司令と共に深海棲艦の動きを追っていた。

「霧島たちは何だって?」

「空母機動部隊は欺瞞、つまり囮の可能性が高い、って。本命は恐らく…。」

水上打撃部隊(こっち)か。…ここが本土で良かったと心底思うよ。」

「まあ、島嶼部だったら間違いなく囲まれて殲滅されているのがオチよね。」

「だな。さて、どうするかね…。半数以上は撃墜したが、まだこちらに向かってくる機体もある。」

「となると…、空爆かしら?」

「いずれにせよ、手は打つさ。」

 提督は、通信室内のタッチパネルディスプレイから、コンソールを叩き込む。

 その指示内容は、後々触れよう。

「取り敢えず、3割墜として敵さんには一度母艦に帰投して貰おう。」

「?基地防空ではこちらの方が圧倒的に有利な条件なのに?」

「なに、こちらを舐めてもらっては困るという意思表示さ。基地防空司令部に通達、VADSと対空機関砲で応戦。対空ミサイルはまだ使うな、と伝えてくれ。」

「…何か悪いこと考えてない?」

「いいや。むしろ2段構えさ。メディア(彼ら)にも現実を知ってもらう必要があるからな。」

 あまり基地施設に被害を出さないようにね、と副司令に念押しされる提督。無論、被害を出させる気も無かったうえ、艦娘(彼女)たちの帰る家を守るのは、この場から動くことのできない提督にとっては重い意味を持つものだった。

「皆、無事に帰って来いよ…。」

 戦闘海域のリアルタイム情報が、刻々と変わる現状をディスプレイに映し出していた。

 偶然なのか、ディスプレイの色と海の色は同じであった。

 

 

 

 

 午後7時25分 ―大隅半島上空 6,300ft―

 時間はだいぶ進み、鹿屋基地の空爆へと向かう深海棲艦機。

 

 水上打撃部隊は、金剛ら重火力艦隊や川内型率いる複数の水雷戦隊が猛攻を掛けたことにより、半壊。

 現在は大隅海峡付近まで後退していた。両艦隊は睨み合いとなった。

 

 それとは別に行動していた空母機動部隊は、生き残った旗艦ヲ級の指示のもと2波に分けて鹿屋基地と鹿児島空港への攻撃を行うことを決めた。

 1波目は、少なめの艦載機で攻撃。損耗率4割となったが、大体の対空火器の位置が分かったため、2波目は総勢140機を超す大編隊を送り込んだ。先に鹿屋基地を落として、比較的無防備な鹿児島空港を狙うことにしたのだった。

 ヲ級自身も最初は逆の手順で攻略しようと考えたのだが、錦江湾内と東シナ海側の状況からこの順で攻撃することとなったのだ。

(東シナ海には、帰投中だった佐世保鎮守府所属の艦娘たちが、万一の控えとして残っていたため。)

 だが、彼女はまだ知らない。てっきり、もう使われていないと思われていたモノから、痛い目を見ることになることを。

 

 

 深海棲艦機たちは、眼下に鹿屋基地を捉え始めていた。

 空が徐々に暗くなっているなか、煌々と光る誘導灯と滑走路。これほど分かりやすい対地攻撃目標は無い。

 5機編隊で迫る深海棲艦機。

 

 鹿屋基地とて、これだけの爆撃機を対処できる能力は無い、筈だった。

 

 

 

 

 同刻 ―鹿屋基地 鎮守府本館・展望デッキ―

 提督は取材班に、映してほしい場所がある、と告げ一行をここまで連れてきた。

 副司令は通信室に残り、インカムを付けて提督周辺の音声を聞きながら、指揮を継続する。

「一体何を映して欲しいのですか?」

 椎崎がおもむろに提督に尋ねる。

「今からこの基地は空爆を受けます。」

「なっ…。ここは屋外ですよ!貴方は我々を殺しに来たのですか⁉冗談じゃない!」

 矢田部が怒りを滲ませる。だが、提督は淡々と続ける。

「ええ、確かに見方によってはそうかもしれません。ですが、私達は奴らに、ここへ爆弾一つ落とさせるつもりはありません。」

「は?」

 矢田部は、気の抜けた声をだす。

「貴方達マスコミは、己が危険な場所へと足を踏み入れるのではなく、世論を煽って自らは素知らぬ振りをしていることがしばしばある。我々自衛官、いや艦娘たちへの目も何かあるごとに度々掌を返される。」

 提督は続ける。

「報道は中立であるべき、なんていうのはあくまで理想論です。実際はどうしたって偏向的になる。それ自体は仕方ない。問題は、本来在るべき“事実”が国民の目から隠匿されることだ。」

「何も“事実”をそのまま垂れ流すのは、正直愚かな思考だと私は考えます。ならば、同じ立場に立ってその“事実”を報道すべきだと、私は考えます。その第一歩があなた達です。」

「…つまり、戦場で起こっていることを自身の感じたことから伝えろと。」

 和島が問いかける。

「そう思ってくれて構いません。無論、編集がいますから、あなた方の思いや感じたことが報道されることを嫌がる者だっているでしょう。それでも、一人でも取材対象者の目線に立つことが本来あるべき報道の姿ではないかと、私は考えます。」

「提督さんは、メディアを、報道を憎んでいるのですか?」

 椎崎が提督に問いかける。

「…先程までのことは、あくまでも私のエゴです。ですが、現実から目を背けて欲しくは無いという、私なりの願いです。憎む、憎まないとは、少し違いますね…。誰にでも知る権利がありますから。」

「…わかりました。矢田部さん。私、ここでレポートさせてください。この目で、この肌で感じたことを伝えたいんです。そう思って、南九州放送に入ったんですから。」

 椎崎が、矢田部にそう告げる。

 矢田部は、彼女の目を見た。その瞳に熱意を感じながら。

「…分かった。俺の負けだ。但し、危ないと感じたら直ぐに建物内に退避。それが絶対条件だ。」

「矢田部さん…。」

「思い出しちまったよ。お前のその瞳から。…折れるなよ。」

「…?はい!」

 椎崎が、矢田部に元気のいい返事を返す。

「椎崎さん、和島さん、そろそろ迎撃準備が整います。こちらへ。」

 提督は、基地を一望できる欄干近くまで二人を誘導する。

 

 提督は、インカムで副司令を呼び出す。

「副司令、準備は?」

『いつでも。現在の深海棲艦機の迎撃距離は、20,000m。』

「了解。基地内の全防空火器の使用を許可する!基地司令、よろしいですか?」

『こちらもOKだ。いつでも撃てるぞ。』

「ありがとうございます。全武器無制限使用許可(ウェポンズ・フリー)!」

 提督は、迫りくる深海棲艦機を祓う号令を下す。

 

 同刻 ―鎮守府本館・通信室―

「よし!皆、いっちょ派手にやるわよ!」

『「おう!」』

 副司令は、通信を介して基地中の防空部隊に喝を入れる。

「基地設置Mk 41 VLS、全ハッチ開放!SM-2、ESSM全弾発射!」

 

 ポーンポーンポーン

 パシッパシッパシッパシッ

 カチッ ボン 

 

 ドオォォー

 

 その瞬間、滑走路脇から無数の超音速の矢が、花火の如く打ち上がる。

 それに呼応して、基地中の自衛隊車両から、11式短SAM(地対空ミサイル)、03式中SAMが放たれる。

 

 椎崎は、この光景をレポートしていた。

「視聴者の皆さん、今映っているであろう、夜空に打ち上げられたこの火焔は、綺麗な花火などではありません。接近する深海棲艦の航空機を撃ち落とすための、自衛隊の対空ミサイルです。」

「深海棲艦の攻撃が始まって、もうすぐ10年近くになります。当たり前の平和は、僅かな違いで惨禍へと変わっていきます。海上保安庁や自衛隊、艦娘さんたちは、私たちの享受するこの平和を守るために、生死の狭間で戦い続けています。」

「どうか皆さん、戦場は目前にあることから目を逸らさずに日々を過ごしてください。一介のアナウンサーがこんな事を言うのはおかしいでしょうが、日々の生活を命懸けで支えて下さる人々のことを頭の片隅において頂ければ、報道の意義があったと思います。」

 

 このレポートが、後に彼女自身の人生に大きく関わってくるなど、この報道当時は思いもしなかっただろう。

 日本の報道史に残る、象徴的なレポートとなることなど。

 

 

 深海棲艦機は、鹿屋基地手前18㎞付近で全機迎撃された。

 この瞬間、深海棲艦の空母機動部隊の戦闘は事実上終了した。

 全機撃墜の報を受けた際には、まさか対空ミサイルに墜とされるとは、とその場にいた空母全員が思った。

 なぜなら、ここ数年で対空ミサイルに墜とされることが皆無だったからだ。(理由は前話のとおり)

 旗艦ヲ級は、水上打撃部隊の動向に注意しながら、撤退準備を開始する。

 

 

 

 

 そして、大隅海峡の睨み合いもいよいよ終わりを告げようとしていた。

 鹿児島・鹿屋基地迎撃戦は、遂に決着の時を迎えようとしていたのである。




ご拝読頂きありがとうございました。

次話で、鹿児島・鹿屋基地迎撃戦は最終話です。
ミサイルの予算はどうしたんだって?な、何のことかな(目逸らし
思いのほか、筆者の意図しないところで金剛さんがメイン回だった気が。

感想等ございましたら、感想欄の方で対応させて頂きます。
ではまた、次回お会い致しましょう。
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