旭日は昇っているか ~鹿屋基地攻防記~(休止中) 作:くろしお
夜間警備アラカトル、2話では収まりきれませんでした<(_ _)>
なので、今回は中編になります。
…ある程度のプロットは出来上がっていても、文章を書くにつれてあれこれ書こうとして長くなってしまうのが悩みどころ…。
それでは第4話、中編です。どうぞ。
歓迎会の終わった今晩、夜間警備任務をしていたのは、黒潮や漣だけではない。
秋雲と巻雲もまた、今夜の夜間の巡回警備メンバーとして選ばれた。史実でも一緒になることの多かった二人だが、今回の件に関しては偶然だったと言っていいだろう。最も、秋雲は歓迎会の後の警備任務に対して、あまり乗り気ではなかったようだが。
二人が今晩担当するのは、主に寮周辺である。と言っても、彼女たちが巡回する場所は、鹿屋基地スポーツセンター・武道館・コンテナルームといった付属施設が中心だ。後は、寮の下にある駐車場の見回り程度なので、そこまで広い範囲をするわけでもない。のだが…。
暗い通路を往く秋雲と巻雲。おもむろに秋雲がぼやく。
「巻雲、こう言うと怒られるだろうけど、この任務滅茶苦茶面倒くさいし、怠い。」
「秋雲、そうは言うけれど皆さんやってる事ですし…。まあ、先ずは寮の駐車場からです。」
現時点で、鹿屋基地の鎮守府に所属する艦娘の数は、そう多くない。それこそ寮二棟あれば済むくらいの人数だ。だが、今後戦力の拡大を考えた場合、ある程度の受け皿の確保は重要になってくる。それを見越しての、寮の先行建設だったりもする。
ただ、現在無人の寮の駐車場まで、それも夜間明かりもあまり無い中確認するとなると、かなり骨の折れる作業だったりするのだが。
艦娘たちの所有する車などは、艦娘寮下の駐車場に置くことが殆どだ。このため、誰がどの車なのか、今外出しているのかどうかまでが、割と直ぐに判るようになっている。
これも、後で出入口の出入庫記録と突き合せた時に、問題が起こらないようにするためでもある。
「何かこう、人の車を見るとさ、自分の車ってどうなんだろう、って思うことがあるのよねぇ…。」
「巻雲は、軽自動車でも全然平気ですけどね。」
ちなみに秋雲はミニバンタイプの車を、巻雲はスズキのワゴンRを所有している。秋雲は、夏冬のコミケに出展する時に備えて作業場を、寮の自室のうちの一部屋に確保しており、万一の時は自分の運転するトラック(レンタカー)を駆って、有明に行く算段を付けている。
そのことで、提督の許可が下りなければどうしようかと考えてもいたが、意外にも提督は許可をだした。まあ、その時は提督も(現場管理者という意味で)同伴するということで決着したが。
その時のことを、ふと思い出す秋雲。
「秋雲。どうかしました?」
「いや、何でもない。そっちは確認終わった?」
「そりゃもうバッチリ。ドンドン回りましょう!」
今日の警備は、比較的サクサクと進んでいた。数十台の車の確認作業を終え、秋雲が腕時計を見ると、時刻は午前1時半。午前0時50分頃から確認に取り掛かったので、早い方だと言えるだろう。
「巻雲。終わった?」「今全部終わりました。」
「じゃあ、次は武道館周りか。行くよ。」
「ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう!」
駐車場を後にし、二人は暗闇の中にある武道館へと向かった。
武道館は、静まり返っていた。ここで確認することと言っても、電気・ガス・水道が止まっているか、戸閉はキチンと出来ているか、用具は片付けられているか、といったくらいしかない。
巻雲は、2階にある弓道場を見回っていた。道場内には入らず、横の通路から確認をする。
「秋雲!こっちは終わったよー。そっちはー?」
…返事が、ない。
「秋雲!あ・き・ぐ・も!」
…シーン
「おかしいな…。秋雲さーん?」
巻雲は1階に降りる。…巻雲は、後ろから忍び寄る影に気がついていなかった。
チョン、チョン。
巻雲は、指で肩を突かれたような感覚がした。
彼女は、バッと後ろを振り返った。そこにあったのは…
懐中電灯を首から上に照らし、不気味に微笑んでいた秋雲の姿だった。
「ぎゃあぁぁぁぁぁー!」
巻雲は叫び声と共に、その場で気を失った。
「…きぐも、巻雲!」「はっ。」
巻雲が目を開けると、秋雲が顔を覗き込みながら、巻雲の名前を呼び掛けていた。
「気が付いた…。良かった…。急に倒れるから、こっちも驚いたよ。」
「ううん…。うん?」
巻雲は、気を失う直前のことを思い出した。
「…秋雲。やっていいことと、駄目なことは分かってますよね…。」
「ゴメンナサイ。」
秋雲は、平謝りだった。
「次からは、気をつけてくださいね。」「ハイ。」
ただ、巻雲はそこまで不機嫌だったわけではなく、秋雲から顔をそむけた時には、少しにこやかにしていた。秋雲からは、武道館内が暗くて見づらかったこともあって、巻雲の表情の変化に気付くことはなかった。
気を取り直して、二人が次に向かったのは、鹿屋基地スポーツセンターだ。
ここは、艦娘たちや基地に勤めている自衛官などの体力づくりの一環として、艦娘寮の建設と並行して設置が進められた。体育館、というよりはプール併設のスポーツジムというのが見た目に合っているだろう。
スポーツセンターには、筋肉をつけるためのトレーニング機器が置かれた、複数のトレーニングルーム、海上を航行する艦娘とて水に慣れるための25m×6レーンタイプのプール、それに付随するサウナ室やシャワールーム、更衣室、更には洗濯や乾燥ができるコインランドリーも併設されている。
こうした設備の整備には理由があり、場合によっては深海棲艦との戦闘で死=轟沈となることもありうる。その精神状態は、並大抵なものではない。こうした精神を安定させるため、あるいは自身が強くなるために、などの各地の艦娘たちの要望も鑑みられた結果、比較的新設の部類に入っていた鹿屋基地では、艦娘たちの配備開始と同時にこのスポーツセンターの設置が決まったわけである。
…実際にスポーツセンターとして開業したのは、今の提督が配属される直前だったため、前任者はスポーツセンターの稼働する日の目を見ること無く転属となった。
余談だが、鹿屋基地鎮守府の前任者は、自身が率いていた少数の艦娘と共に、現在は対馬にある海上自衛隊上対馬警備所内の一角で、対馬海峡付近の深海棲艦の動向を監視・哨戒している。(一部艦娘の艦載機は、対馬空港の一角で整備・点検が行われている。)
さて、秋雲たちは最初に2階にあるトレーニングルームを巡回することにした。このスポーツセンターは、1階にプールや更衣室、コインランドリーなど、重量が重いものが中心のフロアになっており、2階の複数のトレーニングルームは、トレーニング機器自体もそう重いものでもないためこのような設計になっている。
ここで最も大きいトレーニングルームは、24時間明かりが消えることはない。誰かしらが利用するため、基本的に電気は付いたままになっている。
秋雲たちは、主にこの時間帯で使われていない暗い部屋を見回っている。この日は、元々利用者があまりいなかったこともあって、確認はすんなりと進んだ。
2階にある、確認すべき部屋を全て確認し終えた二人は、最も大きいトレーニングルームの中へ。ちょうど部屋の中には、那智と足柄が機材を使いながら、体を鍛えている真っ最中だった。
時刻は午前2時50分頃。こんな時間に筋トレ?と思われる人もおられるだろうが、艦娘たちは休みの日にやることが限られるため、長期休暇以外の休日では買い物や運動、自室で何かすることの方が多い。…いつ何時、緊急に召集されるか分からないということもあるのだろうが。
「お疲れ様です。那智さん、足柄さん。」「どうもー。お疲れ様でーす。」
「おお、秋雲。それに巻雲も。どうした?」
那智がランニングマシーンを止め、二人に寄る。スポーツブラに運動用ショートパンツといった出で立ちをした彼女の体からは、汗が滴り落ちていた。
「ええ。実はいつもの夜間警備でしてー。」
「なーんだ。筋トレに来たわけじゃないのね。お姉さん、ちょっと残念。」
部屋の奥の方から少し遅れて、足柄も三人の元へと寄ってくる。彼女は、タンクトップと膝が隠れるくらいの短パンを着ていた。
運動のためか足柄は、いつもは伸ばしっぱなしの長髪を、ポニーテールにして手元が煩わしくならないようにしていた。
「ま、まあ。それはまたの機会に、お願いします。こんな時間でも、肉体強化に励むなんて…すごいですね。」
巻雲は二人を前に、純粋に二人の努力の凄さを感じた。だが、那智が巻雲に返した言葉は…、
「あー、うん。それはだな…、完全に私の趣味だ…。やることが特に浮かばなくてな…。」
「えっ。」
「ああ、私は違うわよ。私は、美容と健康のため。これくらいしないと縁なんか来ないもの。」
ふふっ、と笑う足柄。若干ハイライトが消えかかった瞳の奥からは、燃え滾る思いが伝わってきた。
思っていたことと違って、少しショックだった巻雲。 以下巻雲の心の声
(那智さん…、それはそれでマズいと思うのですが…。今度夕雲姉さんと相談して、鹿児島市街を一緒に買い物巡りするように誘ってみましょうか…。)
(足柄さん、綺麗だと思うのですが…。もしかして男運が無いのか、男たちに見る目が無いのでしょうか…。深く聞くのはやめておきましょうか。)
秋雲は、と言うと…
「そういえば、お二人って、どちらがお強いんですか?レベル自体も同等ですし。」
「私じゃないのか?少なくとも邪な理由で体を鍛えているわけではないからな。」
「はぁ?私は男もそうだけど、勝てる戦闘を増やすために筋トレしてるのよ!だいたい、那智はよく敵艦に突っ込んで行くじゃない!あんなんじゃいつかやらかすわよ!」
「なんだと!」
…明らかに、焚火にガソリンを放り込むことを言ってしまった。最も、秋雲の言葉足らずな部分が原因だが。
この手の話は、互いに平行線のままで終わるのだが、その話が終わるまでが長い…。
大激論を交わす二人から離れるわけにもいかない(それこそ離れたらどうなるか分からないので)秋雲たちは、落ち着くまで那智・足柄双方の評価点を挙げ続けた。…那智たちがようやく落ち着いたのは、午前3時半を過ぎた頃だった。
「足柄、すまなかった。」「こちらこそごめんなさいね、那智。」
「なんにせよ、落ち着いてくれて良かったです。」「これは秋雲さんのおかげだねぇ。」
ゴスッ
秋雲の脇腹に、手加減された巻雲のパンチが刺さる。
(急に何すんのさ、巻雲)(誰のせいでここまで大変だったと思っているんです?)
(…確かに私のせいだわ…。ごめん巻雲。警備終わったら何か奢るからさ。)
(間宮のパフェ、10日分で手を打ちます。)(…欲しかった同人誌が遠のいていく…。)
「二人もすまなかったな…。警備任務に支障をきたさせてしまったようだ。」
「いえ、大丈夫です。巻雲たちは、まだ仕事が残っていますから。お二人もお休みになってくださいね。」
「じゃあね。秋雲、今度私と競泳しましょうか。みっちり鍛えてあげるから!」
「ハ、ハイ…。」
秋雲が足柄から、競泳(という名の水泳教練)の約束が取り付けられたのは、
「最近、自室に籠っていることが多そうだから、戦闘以外で体を動かしてみれば?」
という足柄の何気ない思いからだった。
那智からも、いいんじゃないか、と言われて止む無く約束を受け入れた。(水泳教練の日に何も予定が入っていなかったのも、理由の一つではあったが。)
後日、足柄の水泳教練から帰ってきた秋雲が、巻雲や他の駆逐艦娘に語ったのは、
「…神通さんの訓練の方が良かったと思ったのは、たぶんこれが初めてかもしれない。」
ということ。
最も、口は禍の元とはよく言ったもので、この時の言動を偶々聞いていた陽炎を介して、更に後になって神通にも訓練を受けさせられることになるとは、この時の秋雲には分かるはずもなかった。
…訓練後の複数の戦闘時に、秋雲の回避率と命中率が上がったのは、彼女たちのおかげでもあろうが。
さて、那智たちと分かれた秋雲たちが次に向かったのは、25mプールだ。流石にそのまま制服で入るわけにはいかないため、二人は更衣室内の忘れ物確認を行った後、水着に着替えてプールサイドに入った。(プールの中に入るわけではないため、二人ともシャワーは浴びていない)
プールサイドを見ると、あちこちにビート板が転がっていたり、プール内に浮かんでいたりした。
一度、コースの仕切り(コースロープ)を両端に寄せ、プールサイドの端の方にある二人乗りの組立式小型ボートをプール内に展開した。
ボートは流石に手漕ぎ式だが、艦娘の力を持ってすればそこまで大変なことにはならなかった。
プール内に浮かんでいた十数個のビート板を回収し終えた二人は、用具入れにビート板をしまった後、サウナ室の点検に入った。
サウナ室の温度は約60℃。10分もいれば汗だくになること必至の空間だが、意外と我慢比べと称して、サウナ室耐久レースが艦娘同士で繰り広げられることもしばしば。
※ただし、あまりに長く居過ぎると脱水症状や熱中症を引き起こすこともある。サウナ部屋から出たら、シャワー等で汗を流し、身体中の水滴を拭き取った後、常温あるいは冷え過ぎていないスポーツ飲料や、水と塩を補給することを推奨する。(キンキンに冷えたものだと、かえって体調不良に陥る場合があるのでご注意を)
暗室状態のサウナ室に入ろうとした二人だったが、巻雲の眼鏡が熱気により一瞬で曇ってしまい、巻雲が入口付近で止まってしまった。
このため、後ろから入ろうとした秋雲が、巻雲に追突するような形でぶつかってしまった。
秋雲がたまたまプール内を見ていた、前方不注意が原因だったのだが、その反動で巻雲が部屋の照明スイッチを推し損なって、受け身をとるような形となってゴロゴロと転がっていった。
「巻雲ー。大丈夫~?」
「痛たたっ。秋雲!何やってるんですか!」
「ゴメン、ゴメン。電気点けるよ。」
明かりを点けた瞬間、巻雲の真下に…
顔を真っ赤にして寝っ転がっていた加古の姿が浮き上がってきた。
「ウアァァァー!」「えっ、ちょま、えっ。」
近くにいた巻雲は当然のことながら、日頃巻雲にドッキリを仕掛ける側の秋雲も、流石に困惑。
「…って、驚いている場合じゃないや。巻雲、加古さん運ぶよ。」
「ハッ。…そうでした。秋雲、ちゃんと抱えてくださいね。」
力こそ人間の遥か上ではあるが、彼女たち艦娘の重さ(つまりは体重なわけだが)は、一般的な女性の体重とほぼ等しいものになっている。
そのため、二人がかりならば例え戦艦や空母の艦娘であっても運ぶことができる。
二人は高温のサウナ室で寝ていた加古を運び出し、プールサイドと接しているジムの医務室へと急いだ。
ここの医務室は一般人も利用するため、建物内では比較的広い面積がとられている。医療妖精も何名か居り、主に運動時で起こった怪我を治療する場所になっている。(鎮守府本館の医務室とは別物)
「医療妖精さん、居る!?」「ああ、秋雲さん。どうしましたか?」
「ちょっとベッド貸してもらっていい?加古さんがサウナ室でぶっ倒れていたのよ。ここまで運んできたんだけど。」
「!? ちょっと待ってください。」
医療妖精は空きベッドを確認しに向かう。
タッタッタ… 直ぐに戻ってきた。
「ベッドは空いていました。加古さんを早く。」
「ありがとう。巻雲、加古さん持ち上げるよ。」
「意外と疲れるんですからね。早く運びましょう。」
ベッドに運び込まれた加古は、気持ち良さそうに寝ていた。だが、発見した当事者たちからすれば、あまりに生きた心地がしなかった。
医療妖精による加古の診断結果は、軽度の脱水症状だった。幸い、発見が早かったことで点滴を打つ程度で済んだ。もしも発見が遅れていたら…、想像するだけ恐ろしいことになっていただろう。
取り敢えず先に、スポーツ飲料や塩を加古の口に含ませ、体をゆっくり冷却していった。
医務室に加古が運び込まれてから10分程経って、姉艦である古鷹が駆け込んで来た。妹の生死に関わるのでは、と気が気でなかった古鷹だったが、医療妖精からの説明を受けて、彼女の切羽詰まった表情に笑顔が戻ってきた。
古鷹は、加古を見つけた秋雲たちにお礼を言い、加古の目が覚めるまで医務室で過ごすことを、医療妖精と秋雲たちに伝えた。
因みにどうして加古がサウナ室で寝ていたのかというと、
「久々に泳いでみたら、思いの外疲れちまってな。疲れて頭がぼんやりしているうちに、どうやらサウナ室で寝てたんみたいなんだよ。」
と、翌々日になって、見つけてくれた秋雲と巻雲に語っている。(見つけたお礼もこの時言っている)
そうこうやっているうちに、気がつけば医務室の時計は午前5時24分。秋雲と巻雲は、本来の夜間警備任務に戻った。と言っても、もう日が昇ろうとしていたが。
最後に二人は、新設工事中のコンテナルームを見回った。ここは、艦娘寮で主に1LDKの部屋が割り振られた艦娘たちのための、個人倉庫兼趣味部屋である。
夕張や秋雲などは、早々に2LDKの部屋を志望したため、こちらの設備の使用許可が後回しになったが、楽器や園芸用品、バイクの工具などの置き場や、大量の衣服の購入でクローゼットに収まりきらなくなったものを仕舞う場所など様々な用途で使われている。
これらは、1LDKと2LDKの艦娘間の部屋格差是正目的でもあったが、現在では使用済み40ft(フィート)海上コンテナを流用したため、どんな用途にも使えることで艦娘たちの間で人気が爆騰。
現在では鹿屋基地に留まらず、各地の鎮守府・泊地・警備府などで設置が進んでいる。後に鹿屋方式と呼ばれた、このコンテナ活用術は時間こそ掛ったが、民間への広がりを見せることとなる。
二人は建設機械の収容確認や、各ブロックのコンテナルーム新設工事の進捗状況を少し書いた後、鎮守府本館にある執務室へと帰還した。
執務室では、副司令が執務机でパソコンや書類を扱いながら、今日の演習計画や戦闘計画を練っている作業途中だった。
「お帰りなさい。秋雲、巻雲。加古の件は聞いたわ。ご苦労様。」
巻雲から、今日の夜間警備任務に関する書類を受け取る。と言っても、そんなに大層なものではなく、精々A4プリント数枚程度だが。
「ホントに大変だったんですよ~。特に秋雲のせいで。」
「そんなバカな…ごめんなさい、今日に関してはそうです。」
巻雲がフンスと鼻息を荒くして、少し怒りっぽくなったのを見た副司令は、
「ふ~ん?後日聞かせてくれる?不知火と夕雲も一緒にさ?」
「そ、それは「いいじゃないですか!たっぷり今日のこと話してみましょう!では、巻雲はこれで。」ちょ、ちょっと待ってよ~、巻雲さ~ん!」
この巻雲さん、Sっ気全開である。
巻雲を追いかけるように、秋雲は執務室から飛び出していった。
「元気がいいですね。二人とも。」
「そうね。まあ、元気があるくらいが丁度いいと思うのよね。」
秋雲たちが去った執務室には、副司令と今日の秘書艦である高雄の二人がいた。
高雄は、秋雲が出ていったのとほぼ入れ替わりになるような形で執務室に入ってきたため、先程のやり取りのことは知らない。
「後は、一番大変な範囲のところだけね。」
「そろそろですかね?」
「たぶんね。…五十鈴と由良だったら大丈夫よ。」
「そうですね。」
二人は執務室の扉を見つめながら、残る夜間警備任務を受け持った、五十鈴と由良の帰りを待った。
外からは、朝一番の貨物列車が第5側線に滑り込んできた。鉄道車両特有の、ブレーキをかけた際に起こる、キィィーという金属同士の擦れ合う大きな金切り音が、鎮守府周辺に響きわたった。
それはまるで、一日の始まりを告げる目覚まし時計のようであった。
ご拝読頂きありがとうございます。
今回は現状二番目に長い話となりました。
最後にチラッと話に出てきた五十鈴と由良が、次話のメインキャラとなります。
…私個人の意見なのですが、足柄さんは一体なぜ行き遅れキャラとされることが多いのでしょうかね?
美人ととるか、可愛い艦娘ととるか、若しくは別のことを考える方もいらっしゃられるとは思いますが、個人的にはいいと思うんですけどね…足柄さん。(レベル?まだ、誰も90代いってないです…(執筆当時))
話を戻して、次回も夜間警備アラカトル、後編(アラカトルとしては最後)になります。
…早く書き終えて話を前に進めたいのに進まない…。
それでは、また次回でお会いしましょう。では。