旭日は昇っているか ~鹿屋基地攻防記~(休止中)   作:くろしお

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お久しぶりです。くろしおです。<(_ _)>

さて、いよいよ第8話ですが…滅茶苦茶長くなりました!(分量的には3話+4話分位です…。)
ごめんなさい;つД`)
前回残り3割とか書きましたが、すみません、まだ今話では終わりません。

ですが、この貨物列車護衛任務も次話でラストです!
…纏め方が悪い自分を呪いたい…。

それでは、第8話です。どうぞ。


第8話 譲れないもの、護るべきもの

 午前10時40分 ―JR九州 延岡駅(宮崎県延岡市)―

 この世界線での延岡駅は、日豊本線と高千穂線の接続駅である。

 我々の世界線では九州横断鉄道の一角として建設途中だった、宮崎県側の高千穂線及び熊本県側の高森線。残念ながら、高森トンネルの出水事故により二つの路線は繋がることなく、第三セクターへと移管された。

 その後、高千穂線は高千穂鉄道として、高森線は南阿蘇鉄道として再スタートを切ったものの、前者は2005年に襲来した台風によって五ヶ瀬川沿いの橋梁や線路が流失し、復旧費用が捻出できず惜しまれながらも廃線、後者は2016年の熊本地震により大被害を受けたが、こちらは国の法制度の改正に伴い支援を受けられ、地震で損傷したトンネルや橋脚の復旧工事が現在(執筆時点)でも続けられている。後者は現在では一部区間の運行を再開しており、全線の完全復旧が待たれる。

 

 …話を戻して、この世界線では自衛隊が路線存続の要請を行ったため、全線完工済み且つ積載量が少し軽い貨物列車なら往来可能という規格変更も行っている。

 このため、延岡駅や中間の高千穂駅などには小規模な貨物線が設置されることとなった。現在神通たちの乗った3695レが停車しているのは、そうした線の一つであったりする。

 熊本地震はこの世界線でもあったが、路線の管轄がJR九州であったこともあり、高森・高千穂両線は、約一年半の復旧工事で完全復旧を果たしている。

 

 

 延岡駅構内では、小型スイッチャーによる貨車の入れ替えが行われていた。もともと旭化成のお膝元であり、企業城下町でもある延岡市にとっては欠かすことのできない構内設備でもある。黄色の小型スイッチャーは、数両のコンテナ車を牽いて駅構内を右へ左へと駆ける。

 可愛らしいサイズのスイッチャーではあるが、本気を出せばコンテナ満載のコンテナ車を20両以上牽引することも可能である。小さいからといって侮ってはいけないのである。

 

 

 そんな中、列車の発車を待つ神通たち。インターネット記事から根岸駅周辺の惨状を見ていた彼女たちは、提督からの通信で更に驚く情報を聞くこととなった。

 

『神通、根岸の件はもう知っているか!?』

「はい。ここにいる皆、駅のテレビで知りました…。」

『そうか。実は、最初に爆破された列車のことだが…、横須賀に向かう予定の列車だったそうだ。』

「!? 本当ですか!」

『似たような事象があったからか、うちの方にも連絡が来てな。…恐らく、今向こうは大混乱だろうな…。』

「私たちはどうすればいいですか?」

『もう宮崎なんだ。ここまで来たら、任務もやり遂げようと思っているが。神通、君はどうだ?』

「…私も最後まで全うしようと思います。」

『…そうか。…火器を含めた武器の使用は許可している。万が一、何かあれば遠慮はいらん。但し、民間人は巻き込むなよ。』

「了解しました。そうならないことを願っています。」

 

 根岸駅で爆破されたタンク車は、米軍及び海上自衛隊横須賀基地へと向かうものだった。

 ここ最近頻発する、自衛隊や艦娘、鎮守府を狙ったものが大規模にエスカレートしたものとみて間違いなかった。

 だが、こちらは相手がどんな者達なのか把握できていない。そのことが、神通や他の艦娘たちに不安をもたらしていた。

 

 

 

 

 提督は、神通たちの出発前に次善の策として、彼女たちに対して武器携行・使用許可命令を出していた。

 これは、長距離移動による護衛が理由の一つであるが、これらの襲撃事件等による警戒感も手伝って、艦娘たちが過ごす予定のコンテナには、積める限りの武器を用意しておいた。

 コンテナは、時系列的には第5話の少し後に、先に吹田の方へと送っていた。最悪の場合、籠城も可能な強度を持たせるよう、妖精さん達に提督が頭を下げてまで頼み込んだものである。艦娘たちのことを想ってのことだったが、これは後に思いもよらない効果をもたらす。

 

 

 

 

 そんなことは露知らずの艦娘たち。提督が載せてくれていた武器の手入れと確認を行っていた。

 村雨と夕立は前方側、神通や朝潮、満潮は後方側のコンテナ内武器庫から自身の扱いやすいものを選ぶ。

 実は、コンテナごとに積んでいる銃火器は、微妙に異なる。正確には、銃の種類が少し違うのである。

 現在、前方側のコンテナに積んであるのは主に自衛隊や米軍でも使用されている、M4カービン(5.56㎜弾)や5.56㎜機関銃MINIMIとスタングレネード、煙幕弾が中心である。

 後方側には、主に89式小銃(5.56㎜弾)や9㎜拳銃(P220)が手持ち用として、12.7㎜重機関銃M2を列車警備用としてコンテナの前後の屋根側に2つ搭載している。(撃つときは弾倉が自動的に上がってくる仕様)

 

 手榴弾等は可燃物を搭載していることもあり、うかつには使えないうえ、銃火器も本来なら列車では使えない。

 銃の使用も、特例あるいは緊急時に限り許可される。現在、提督がこれら銃火器の使用許可を出しているため、この辺りは法的に問題ない。

 「タンク車に銃弾が当たったらどうする!」と思われる方もいらっしゃるだろうが、海上と比べて線路上ではうねりも少ないため、日々深海棲艦と戦うために砲撃訓練を行っている艦娘たちにとっては、かなり撃ちやすい条件であり、狙いを外すことはまず無いだろう。…恐らく。(風雨はどうにもならないが。)

 

 前後のコンテナには、ジュラルミン製の大型の盾(シールド)が複数載せられている。

 最も、艦娘によっては盾としてではなく、武器として使う者も居そうではあるが。

 

 

 

 

 午後1時35分

 DD51重連の率いる3695レが長い休憩から目覚め、老体を打ちながらゆっくりと延岡駅を出発していった。

 発車時刻が長引いたのは、日豊本線上で起こった人身事故の影響で、ダイヤの組み直しを行った結果、貨物列車の発車が遅れることとなった。

 

 ようやく出発した3695レではあったが、偶発的にも日豊本線内で踏切故障などが複数発生したため、宮崎駅に到着したのは、午後5時8分のことだった。

 ここから先、日豊本線宮崎~南宮崎間には大淀川橋梁が架かっている。軽巡洋艦大淀の命名元となった河川である。

 この橋梁は、軸重の重たい機関車の運行が難しい区間である。具体的には第7話で挙げたEH500は走行ができない。一方、国鉄時代に製造された交直流対応電気機関車EF81や交流電気機関車ED76は、この大淀川橋梁を横断できる。DD51も同様だ。

 3695レは、列車の前方から西日が照らすなか、大淀川橋梁を堂々とした姿で通過していった。

 

 

 

 

 ところ変わって、3695レが大淀川橋梁を渡る頃。

 

 ―JR九州 青島駅(宮崎県宮崎市)上空―

 南宮崎から日南線を志布志方面に下って7つ目の駅である、この青島駅は海幸山幸神話に因む青島神社の最寄り駅である。この青島神社では豊玉姫命(とよたまひめのみこと)と、塩筒大神(しおづつのおおかみ)が祀られており、縁結びや安産、航海安全の神として信仰されている。

(なお、日南線を走る特急「海幸山幸」もこの神話から命名されている。)

 

 そんな場所の最寄り駅である上空500m。

 宮崎空港を約5分前に離陸した、白い機体色に赤いラインが入ったアグスタウエストランド社製AW139ヘリコプターが、ホバリングを行いながら日南線の線路上を右往左往していた。

 駅近くに居た人は、最初は映画か何かの撮影だと思っていた、という。

 AW139は、そのまま青島駅上空を8の字状に旋回し続けていた。

 徐々に日没が迫るなか、遂にその時が訪れようとしていた。

 

 

 

 

 ピィーッ。DD51の警笛が、ドップラー効果で引き延ばされていく。

 午後6時27分、3695レは変更後のダイヤ通りに青島駅を通過していた。

 当然ながら、神通たち艦娘の他にこの列車に乗っているのは、二人の運転士のみである。

 南宮崎で運転士が一人追加で乗ってきたが、これも普段であれば至って普通のことであった。

 (労働時間の関係で)

 …そう、普段通りであればだが。

 

 

ババババババ

 

 

 前方側のコンテナで監視任務中の村雨と夕立は、外のヘリの音が徐々に近づくにつれて、荷物の監視に向けていた集中力を切らし始めていた。

「一体何かしら、この音。」

「滅茶苦茶うるさいっぽい!」

 ヘリのあまりの爆音の酷さ故に、夕立はコンテナ上部のハッチを閉じて、耳を塞いでしまった。村雨も『こんな音、早く過ぎ去って欲しい』と思っていた。

 だが、その時二人は気が付かなかった。この爆音とともに、彼女たちにとって悪夢のような時間が訪れたことに。

 

 

 同刻、3695レ牽引のDD51先頭車。

「何だかうるさいな…。」

 マスコンを握る運転士は、外の爆音に辟易しながらも、己の仕事を全うすることに勤めていた。

 …背後から近づく者に気づかぬまま。

 

 ガンッ

 

「うぐっ」

 

 突如右側頭部を殴られた運転士。なす術なく、座席から滑り落ちる彼が、意識を失う前に見た最後の光景は、満面の笑みで血の付いた小さなコンクリートブロックを持つ、同僚の姿だった。

 (…一体何でお前が…)

 薄れゆく意識の中で、どうしてこんなことになったのか分からないまま、3695レの運転士は床に倒れ込んだ。

 

 

 

 

 非電化区間になったことで、屋根上からの監視が可能になった神通や朝潮は、低高度で3695レに近づくヘリコプターの姿に気が付いていた。

 

※もし電化区間でやろうものなら、交流2万ボルトあるいは直流1500ボルトの高圧電線によって、よくて感電悪ければ体が黒焦げの即死である。

 

「神通さん!あのヘリコプター、何かおかしいです!」

「少し様子を見ましょう。」

 神通はこの時でも冷静だった。次の光景を見るまでは、だが。

 

 

 ババババババッ

 突如、上空のヘリコプターが列車に向けて銃撃を加えてきたのである。

 空からのマズルフラッシュは線香花火のように光ったが、地上に対しては脅威にしか成り得ないものである。

 

 

「危ない!」「うわっ!」

 神通は朝潮を庇うように、体をコンテナ内へと引っ込める。

 …幸いヘリコプターの機銃掃射は、線路脇の法面に当たる程度だった。それでもかなり酷い土煙がしたが。

 

 

 そしてヘリコプターは列車に近づいたかと思うと、機体からロープを垂らし、3695レのコンテナ車上に次々と武装した者達を降ろしていった。手慣れた懸垂下降(ラぺリング降下とも言う)で一人、また一人…、最終的には八人がこの列車に強行移乗してきた。

 

 

 爆音が止み、前方側の村雨と夕立、後方側の神通と朝潮、満潮はコンテナ上部のハッチを開けて、コンテナ上の集団の様子を伺った。

 乗っていた艦娘たち全員、特に現在までの流れを見てきた神通や朝潮、満潮は、あまりに突然のことが連続で起こり過ぎており、現在の状況と思考が全く追い付いていなかった。

 すると、そんな彼女たちの状況を知ってか知らずか、全身重装備の者達の中でリーダーらしき人物が、前後に向けて拡声機を突き出す。

 

「この列車に乗っているであろう、艦娘共へ。この列車は我々が占拠した。言うことを聞けば、悪いようには扱わない。嫌というのであれば、実力を以って貴様ら人の皮を被った化け物を排除させて頂く。」

 

 謎の集団の開口一番がこれである。あまりにも急な展開ではあるが、流石に神通たちも少しブチ切れそうになっていた。

 コンテナ上部から少し低めの位置に居た満潮は、この列車の運転士に向けて緊急事態を知らせようと無線機を取った。

 だが、次の一言で艦娘たちの表情が凍ることになる。

 

「なお、運転士は我々の手の中だ。要求に従わない場合、この列車を鹿屋市街に突っ込ませる。以上だ。貴様らに交渉の余地はない。」

 武装集団のリーダーがそう言った途端、満潮は持っていた無線機を力無く手放した。

 

 その後武装集団は、タンク車編成の前後に3人ずつ銃を持った者たちを立たせ、彼らがリーダーとその補佐らしき人物を守るように、車上に陣取ったのである。

 

 

 

 

「トレインジャックだと‼ 怪我人は出ているのか⁉」

『今のところは大丈夫です。ですが…』

「今は皆無事なんだな。それだけでも現状では十分だ。」

 神通の衛星電話から、現状報告という緊急連絡を受けた提督。

 彼は、トレインジャックという異常事態に際しても、自身の鎮守府に所属している艦娘たちの無事が確認でき、安堵の表情を浮かべる。

 提督は、通話を続ける。

「それで、彼らの目的は一体何なんだ?」

『まだ、詳しいことまでは分かりません。『要求を呑まねば、鹿屋市街に列車を突入させる』といって、交渉そのものも聞き入れない様子でした。ただ、このまま彼らに従わない場合、私たちや連絡の取れない運転士たちの身の安全は、保障されないと思われます。』

「そうか。…武器の無制限使用は許可する。何かあれば、攻撃は止む無しだ。」

『提督。そのことなのですが、実は、こちらはうかつに撃てません。』

「? どういうことだ?」

『武装集団は、航空燃料や重油を満タンにしたタンク車上に陣取っています。もし、発砲してタンク車に命中した場合、彼らを巻き添えにする爆発を起こすどころか、下手をすれば私たちや沿線住民も巻き込み兼ねません。』

「…神通。列車に積んでいるジュラルミン製のシールドは幾つある?」

『前に4つ、後ろに6つです。』

「改造コンテナには、暴徒対策用にバリケードモードが設定されているはずだ。それを使って、遠距離攻撃をしながら挟撃が出来ないか?」

『…分かりました。一応警告はしてから戦闘に入ります。志布志駅に着くまでには決着をつけたいですね。』

「分かった。前側の娘達にも頼むぞ。」

『了解です。』

 この時、本来3695レを扱う運転士が、武装集団の仲間である、南宮崎から乗り込んだ別の運転士に気絶させられていたことは、神通ら艦娘たちが知るところでは無かった。

 

 

 国内史上初めてのトレインジャックは、武装集団の目的不詳のまま、艦娘の体術と銃撃戦による武力鎮圧という形で戦闘に入ろうとしていた。

 

 

 

 

 武装集団のリーダーは、艦娘たちに憎悪や嫌悪感を抱いている人物だった。その証拠として、先ほどの艦娘たちへの要求の文言からも、それを察することができるだろう。

(まあ、すぐには出てこないだろうな。奴らとて軍隊だ。慎重に来るだろう。)

 内心では艦娘への警戒心が高まっていた。人ならざる者への恐怖心も、無自覚ながらあったのだろう。

 

「ライラック、首尾よく事は進んでいるようですね。」

 ライラックと呼ばれた男が、自身の補佐をする女性に声を掛けられた。

「ローズマリー、本当にそう思うか? 確かに状況はこちらに有利だ。だが、艦娘共を抑えられていない。仮に運転室を奪取されれば、こちらは詰むぞ。」

 武装集団のリーダーであるライラックは、ローズマリーと呼んでいる補佐官兼作戦実行参謀官に、今作戦の現状での不安要素を打ち明ける。

 

 実際、武装集団は戦略目標として3695レのタンク車編成を占拠している。だが、「鹿屋市街に突入させる」という戦術目標に必要な、DD51の運転室占拠は、この武装集団の仲間である、先程同僚の運転士を殴った者が行っている。

 この戦術でライラックが危惧しているのは、前方側のコンテナに潜んでいる(筈の)艦娘(この場合村雨と夕立)が運転室への奪取に動いた時である。

 いくら武装集団の仲間とはいえ、結局のところ素人に毛が生えた程度の体術しかない元民間人(今回のトレインジャックのような場合、テロリストあるいは民兵と見做す)と、書類上でも自衛官(軍人と見做しても良い)である戦闘のプロとでは、明らかに後者が有利である。

 仮に拳銃を彼女たちに向けたところで、数的不利に敵う筈もない。

 

 しかし、ローズマリーはライラックに対して不敵な笑みを浮かべる。

「大丈夫です。要は、列車の主導権を最後までこちらが(・・・・)持ったままにすればいいのですから。」

 その笑みを浮かべる自信はどこから来るのだろうか。その理由は後に分かる。

 

 

 

 

 前方側で状況がよく読めない中、村雨と夕立は、神通からの通信を聞いて大急ぎで対策を講じようとしていた。

「村雨、どうする?」

「うーん。取り敢えず、神通さん達が後側の敵を抑えている間に、私達は前側の敵を無力化してしまいましょう。」

 村雨は、神通から聞いた提督の戦術を基に、夕立が敵を攪乱させるのに向いていると考え前衛に、村雨自身は夕立の後方から、列車の前方に来させないよう牽制射撃を行うことにした。

 

 

 午後6時52分

 油津駅に差し掛かる頃、3695レの車上では銃撃戦が始まろうとしていた。

 先に仕掛けたのは、夕立だった。

 一応、事前に神通が

「列車に乗り込んだ皆様方。私は、鹿屋基地鎮守府所属の軽巡洋艦神通です。この警告以降、武装解除を行わない場合は、あなた方を、実力を以って無力化いたします。警告は一度きりです。それでは、最善の選択をなされますよう。」

 と、警告を行ったうえでの行動ではある。

 夕立は、背中にジュラルミン製のシールドを二つ背負い、煙幕弾をタンク車側に投げながら、MINIMIを抱えて肉迫していく。その動きはさながら“狂犬”である。

 煙幕弾はコンテナの隙間や、有蓋車の屋根に引っ掛かるように炸裂したため、武装集団からは夕立がどこにいるのか掴めていない。

 

 一挙に23両目(ワム380000)の屋根上まで迫った夕立は、武装集団がいるであろう、28両目(タキ43000)以後に向けてMINIMIをぶっ放す。

 対する武装集団は、旧東側諸国の傑作銃AK-47を乱れ撃った。一発の威力が高いものの、命中率や反動の大きさが少し悪い点があるAK-47だが、内戦での武装集団やテロリストにとっては安価で仕入れやすく、操作や整備がし易いというメリットの大きな銃である。

 これに加えて、軽量で強度の高いポリカーボネート板を二重にしたライオットシールドで、前方側三人は夕立の攻撃を凌いでいる。

 村雨も、夕立に当たらないよう、超遠距離からM4カービンによる支援狙撃を行っている。彼女が狙撃することにより、武装集団のライオットシールドの強度を弱体化させることに、一役買っている。

 

 

 一方、後方側は睨み合いとなっていた。

 神通側がM2重機関銃で、武装集団を無力化(という名の殲滅)を行うことは容易かった。だが、先述のとおり、タンク車に被弾した場合が大変まずい状況になることが予想された。

 こちらは、武装集団側が仕掛けた。

 少しずつ、ライオットシールドを立ててじりじりと後方側に接近する。

 

 

 

 武装集団は、コンテナ車一両を隔てて、すぐそばまで迫って来ていた。

 もうダメなのか。神通達は、最期を覚悟しかけていた。その時である。

 

 

 

 列車が直線区間に入った瞬間、雲で日中遮られていた陽の光が、武装集団の眼にいきなり差し込んだのである。

「グワァッッ。目がっ…。目がぁ…。」

 たまたま列車の向きと神通達が太陽を背にするような位置に居たため、武装集団は対応が遅れて少しひるんだ。

 

 89式で対処していた神通や朝潮は、この一瞬の隙を見逃さなかった。

「よし、今よ!撃て!」

 パン パン パパパン

 神通の声と共に、迫っていた三人の武装集団の足と、ライオットシールドの保護範囲から外れた彼らの胴体を集中的に撃ち抜いた。

 急所は外して撃ったが、少なくとも彼らは銃を持てるような状況ではなくなった。

 満潮がM2で牽制しながら、神通と朝潮はタンク車に近づいた。

 

「糞っ、やはり無理があったのか。」

 ライラックは、後方側の三人が倒されたのを見て、次にどうすべきなのかを考えていた。

 すると、ローズマリーから、

「一度、彼女たちと言葉を交わしましょうか?」

 と、提案してきた。

 続けて彼女は、口で時間稼ぎしていれば前側は押し切れるかもしれない、とも言った。

 ライラックは少し考えたが、現状戦闘状況として五分五分な状態であることは事実であるため、神通たちの方へと向かっていった。

 

 

『前側、誰か応答できるか。』

 突如、武装集団のトランシーバーが唸る。

「こちらサンフラワー、どうぞ。」

『後側部隊が負傷した。こちらはカバーするから、お前達は前の艦娘共を頼む。撃ち抜いても構わん。』

「サンフラワー了解。ラベンダー、コスモスも了解。」

 銃撃最中なため、サンフラワーと呼ばれた男がライラックに応答を返す。

 前方側では、依然一進一退の攻防が続く。

 

 

 

 

「はじめまして、とでも言った方がよろしいでしょうか。私が、軽巡洋艦神通です。」

「駆逐艦朝潮です。」

「ライラックだ。後ろにいるのはローズマリー。…貴様らが、人の皮を被った化け物か。改めて見るが、やはり人を惑わそうとしているようにしか思えんな。」

 タンク車一両を挟んで、双方が対峙する。

「…っ。あなた方はなぜこのような真似を!なぜ艦娘に銃を…神通さん?」バッ

 朝潮は吠えた。しかし、神通は朝潮の言葉を遮るように、右手を出す。

 すると、神通も口を開く。

「私も少し言いたいことがあります。広島のあの爆弾は、あなた達が仕組んだものですか?」

「ご名答。まさか殆ど起動しなかったのは想定外だったが。」

 そう答えたライラック。話を続ける。

「我々は、人ではない存在の艦娘が、人の皮を被った化け物のようにしか見ることのできない集団だ。無論、非合法組織であることは理解して動いているがな。」

「あなた方の登場で、日本の未来が人でないものに委ねられてしまう。そんな訳の分からない状況になって、国民の中に納得できる者が果たしているでしょうか?」

 ローズマリーも話に参加する。

「今はまだいいでしょう。ですが、この先何年もこのまま黙ってあなた方艦娘に、協力し続けていけるとでも。我々は日本の、いや人類の未来をあなた方のような得体の知れない“モノ”に預けるわけにはいかないのです。そのためなら、どんな手段も辞さないつもりです。無論、この命でさえも。」

「この身が果てようとも、全ての艦娘を滅ぼすつもりでいる。この場で撃ち合っているのはそういう奴らだ。俺もそうだ。」

 ライラックら艦娘排除派が明確に目的を示したのは、この時この瞬間が初めてだったのかもしれない。

 

 

 数刻の沈黙が場を支配する。

 その沈黙を破ったのは、朝潮だった。

「あなた方の意見は分かりました。一つはっきりと言えることがあります。…あなた方は勘違いをしている。艦娘は、誰かのために命を懸けているんです。私たちは、この先未来を見られるかなんて分かりません。それこそ今日明日の戦闘で沈むかもしれない。それなのに、権力が欲しい、未来を操りたいなんて考えますか?」

 朝潮はそのまま続ける。

「確かに私たちの司令官は、人間ですし権力も確かにあるでしょう。ですが、彼や副司令は人と呼ぶには微妙とされてきた私たちを、“ヒト”同然に扱って下さったのです。この重さ(・・)があなた方には理解できますか。世間から作戦が成功すれば持ち上げられ、失敗すれば奈落の底まで叩き落される。そんな状況下で、あなた方は『ヒトでないから使い捨ててよい』と考えるのですか。少なくとも私は、沈むなら誰かの役に立ってから沈みたい。そう、考えています。ですが、あなた達は誰かのために何かを為すどころか、何の関係もない鹿屋基地の周辺に住む一般人を巻き込み、無差別殺人…いや、テロを起こそうとしているだけではないですか!」

「…朝潮さん。」

 朝潮の心の籠った独白を聞いた神通は、晴れやかな表情をしていた。

 

 

 

 

 だが、この朝潮の思いが届くことは無かった。

「…そうか。革命の為なら、多少の犠牲はやむを得ないと思っているのだがな。それならば、我々は平行線のままだな。済まないが、貴様ら艦娘にはここでご退場願うとしよう。」

 ライラックは、朝潮の話を聞きながらも、少し呆れたような顔をしていた。

 そして、彼は一歩駆け出すと、20m近くある距離から、一気に神通と朝潮との間合いを詰めた。

 彼の狙いは、朝潮の首だった。

「朝潮さん!」

 あまりにも一瞬の動きだったため、神通は対応が遅れた。

 朝潮に覆い被さる、ライラックの巨体。

 神通は、ライラックを朝潮から剥がそうと動くが、

 

 タアーン

 

 右足のつま先前に、黒焦げた傷とうっすらとした煙が昇る。

「やらせないわよ。」

 ローズマリーの右手には、隠し持っていた9㎜拳銃が握られていた。

 硝煙の匂いが、風に乗って神通に届く。

「くっ。どうすれば。」

 今動かなければ、朝潮の命そのものが危ない。だが、拳銃を向けるローズマリーがいる以上、神通は下手に動けない。

「あぐっ…、うっ…。」

 無言で首を絞めてくるライラックに、足掻くことさえできない朝潮。いくら艦娘が人の十数倍の力を持っているとはいえ、馬乗りにされた状態で巨漢の男性の手を外すのは至難の業だった。

(朝潮さんを救う方法は、何か無いのでしょうか?)

 神通は、選択を迫られていた。

 

 

 

 

 数瞬前に戻り、一人で後方側のコンテナに残っていた満潮。

「朝潮!」

 彼女は武装した男の行動で、朝潮の異変に気が付いた。

 今まさに、その男が姉の命の燈火を消し去ろうとしている。

 何か、何か自分にできることは…。

 

 

 

 あった。朝潮を救うにはこれしかない!

 

 

 

「神通さん!その場に屈んで!早く!」

 神通は無線機から飛び込んできた内容が、どういうことなのか理解できていなかったが、本能的に体を屈ませた。

…そのわずか5秒後。

 

 

 

 

 ライラックの巨体に、5.56㎜NATO弾が複数突き刺さった。

 

 

 

 

 ライラックの身体中から飛び出す血飛沫(ちしぶき)

「ラ、ライラック!」

 突然の銃撃に驚いたローズマリー。

 実は、満潮がコンテナ上部の少し低い位置で、かつジュラルミン製のシールドによって武装集団側から死角になる位置に控えていたことで、武装集団の誰も彼女の存在に気が付いていなかった。

そのためローズマリーは、まさか後方に三人目の艦娘がいるとは思っていなかったのである。

「くっ。おのれ~!」

 ローズマリーは、先程の体勢からまだ立ち上がり切れていない神通に、その銃口を向けた。

 だが、

 

 

 

 ターン

 乾いた銃声が、夕空に響く。

 

 

 ゴトッ

「ウッ…。か、肩が…。」

 右肩を撃ち抜かれ、その場に座り込んだローズマリー。

 89式小銃のスナイパーモードにより、満潮はあらゆる方向に振動する列車上でも、正確に彼女の肩を撃ち抜いた。

 朝潮は、ライラックに首を絞められていたものの、幸いなことに軽症だった。

 

 

 

 

 場面は変わり、未だ銃撃戦が続く前方側。

 もう、日没を迎えようとしている頃だったが、両者の銃口から火花が消えることはまだ無い。

 しかし、そうした展開も終わりを迎えようとしていた。

 

 榎原~日向大束間にあるトンネル

 夕立は銃撃戦に際し、煙幕弾の他にもう一つの非殺兵器を持ち込んでいた。

 そう、スタングレネードである。

 トンネル突入直後、夕立はスタングレネードのピンを外して列車後方へと投げ込んだ。

 その場所は、サンフラワーたちの居た一つ前の車両だった。

 直ぐに夕立は、目と耳を塞いでスタングレネードの炸裂に備える。

 

 

 

 カチッ。キィィィィン

 ピカッ

 ドォーン

 

 

 

 トンネル内に響き渡る、超高周波音波。

「アーッ」「グワーッ」「イヤーッ」

 至近距離でスタングレネードをまともに食らった、サンフラワー、ラベンダー、コスモスは鼓膜が破れんばかりの音に頭までやられてしまい、そのまま気を失ってしまった。

 前方側で長く続いた銃撃戦の、あっけない幕切れだった。

 前方側三人は、気絶しているうちに夕立が手足を拘束し、上部が開閉するタイプのワム380000の車両内に収容した。

 

 

 

 

 午後7時53分

 艦娘を殲滅せんとしていた武装集団は、艦娘たちの抵抗に遭いこの時刻を以って事実上壊滅。結果として返り討ちに遭ったわけであった。これで全てが終わる…筈だった。

 

 

 

 

 午後8時37分 ―JR九州 志布志駅(鹿児島県志布志市)―

 史実では盲腸線状態となり、日南線の停車駅もこの駅で最後となる。この世界線では、志布志線(志布志~西都城間)と大隅線(志布志~国分間)が交わり残ったため、中規模の乗換駅と化していた。

 本来なら、3695レはここで一度止まるはずだった。(運転停車のため。)

 …しかし、牽引しているDD51が止まる気配はない。全滅したはずの武装集団は、運転席にまだ一人残っていたのである。そう、あのコンクリブロックで同僚を殴った男だ。

 

 

 神通は、負傷した武装集団の手当てをしている際に、外の異常に気が付いた。

「うん?うーん? …おかしいですね。朝潮さん!」

「はい!」

「今通過している駅が何駅か分かりますか?」

「ちょっと待ってください…。えっ?今志布志駅です!」

「やっぱり。私としたことが…。直ぐに村雨さんと夕立ちゃんを呼んでください!」

 神通は、一体何に気が付いたのか?

 

 

 

 

 神通は、すぐに無線で前方側コンテナに連絡をとる。

 無線に出たのは、夕立だった。

『こちら夕立。神通さん、どうぞ。』

「夕立さん、村雨さんと一緒に先頭の機関車に向かってください!」

『りょ、了解っぽい。』

「それと、銃を持って行ってくださいね。何が起こるか、予測が付きませんから。」

『はっ、はい!』

 神通は無線を切ると、無線機を元の位置に戻した。

 

 

「やられましたね…。まさか運転士に紛れていたなんて。」

 麻酔薬で気絶させている、武装集団のメンバーたちを見ながら、神通はため息をついた。

「司令官には報告したのですか?」

 朝潮がそう神通に尋ねるが、

「いいえ。今、何故か鎮守府の方にも基地の方にも、連絡が出来ないみたいです。」

 

 実は、この時鹿屋基地を中心とした半径8㎞圏内では、大規模な電波障害…いや電波妨害(ジャミング)が行われていた。

 このため、通信機器は軒並みダウン。情報が入らないため電波妨害エリアから出ようとするものの、エリアとの境界付近で多数の交通事故が発生。

 通信機器が使えない以上、鹿屋基地所属の艦娘の艦載機や、哨戒機、救難機も着陸できないため、全機が止む無く鹿児島空港へのダイバート(代替着陸)が行われた。

 この時点で、既に鹿屋基地の周辺地域は、鉄道を除き陸の孤島と化していたのだ。

 

「これ以上、悪いことが続かなければいいのですが…。」

 夕立たちからの報告を待つ神通の顔は、優れなかった。

 

 

 

 

 その頃、夕立と村雨は先頭の機関車に乗り移っていた。

 DD51は、その構造上、運転室への出入り口が両側にしかなく、今夕立と村雨が立っているデッキには、扉が取り付けられていない。

 先程まで、ほぼ一人で武装集団と銃撃戦の大立ち回りをやった夕立は、流石に体力を消耗していた。

 そのため、まだ余力のある村雨が、運転室に突入する殿を務めることとなった。

 

 

 バリーン

 DD51の旋回窓を蹴飛ばして、村雨が突撃する。

「何だ⁉」

 乗っ取りを続けていた運転士は、突然の艦娘の攻勢に、あっけにとられたまま組み伏せられた。

「貴方が、この列車を暴走させていたのね。観念なさい!」

 村雨が、持っていたロープで運転士を縛り上げる。

「お兄さん、しっかりするっぽい!」

 遅れて入ってきた夕立が、殴られて気を失っていた、本来の3695レの運転士の意識を呼び覚ます。

「…ううっ。…艦娘…さんたち…?」

「大丈夫ですか?どこか痛みますか?」

 意識を取り戻しつつある運転士に呼び掛ける、村雨。

「頭の…ほうを、…お願い…します…。」

「待ってくださいね。」

 村雨は医療バックから、オキシドール、ガーゼ、包帯を取り出し、素早い治療を行う。

「もう、大丈夫ですよ。」

「ありが…とう。列車…は?」

「列車は…」

 運転士が、村雨に問いかけ、彼女はそれに答えようとした。だが、彼女の表情から笑みは消えた。

 

 

 

 

 運転台が、破壊されていたのである。

 

 

 

 

「何ですって!それは本当ですか!?」

 本来なら絶対に言わない口調で返した神通だが、コトはそんなことを気にするような状況ではなかったのである。

 村雨からの無線(先頭機関車の列車無線より)によると、3695レは、以下のように大変危険な状況になっていた。順を追って説明しよう。

 

 1.先頭機関車の運転台の破壊

 鉄道車両を制御するのは、マスコンであることは先述(第6話を参照)したが、他にもATS(自動列車停止装置:Automatic Train Stop)やブレーキの圧力計などが集中している運転台は、いわば列車の司令塔、車でいうところの運転席である。加えて、ディーゼル機関車2両分の制御をこの先頭機関車の運転台で行っていたため、事実上制御不能な状態に陥った。

 当然のことながら、武装集団に与していた運転士は、先頭機関車の機器の多くを破損させていた。このため、この先頭機関車での制御はもう不可能であった。

 

 2.ATS-SKの車上照射機への細工

 1で述べたATSだが、普通の鉄道車両であれば、如何に破壊されようとも最悪の場合列車に非常ブレーキ(EB)が掛かることによって、列車の暴走を防げる。のだが、今回元々鹿屋基地周辺への突入を確実に行うために、延岡駅停車中に武装集団側は、3695レに元から取り付けられた正常なATS車上照射機を、異常のあるATS車上端子へと交換していた。

 一体何がマズいのかと言うと、ATSは地上側にあるATS地上照射機(線路の間にある長方形の白いやつとか黄色いやつとか)とATS車上照射機との間で信号を出し合い、走行中常に列車の速度を監視し続けている。これにより、区間ごとに定められた速度を超えて走行すると、非常ブレーキが掛かる仕組みだ。

 だが、今回の交換されたDD51のATS車上照射機は、地上側の信号は正常に受け取るが、列車側の信号を偽装するシステムによって誤った信号を送り続けるものにされたため、仮に暴走していたとしても非常ブレーキは掛ることなく、列車は進み続けることになる。

 つまり、鉄道車両を無事に止める、最後の砦の一つである安全装置が、全く働かないこととなる。この文言だけで、いかに大変な事態かが察せられるだろう。

 

 3.全貨物車のブレーキ緩解

 更にまずいのは、貨車と機関車のブレーキが分断されたことである。

 実は、南宮崎出発の前後に、先程の運転士が2系統あるブレーキのうちの1系統を「動作不良があるかもしれないから、片方を止める」と言って、正常だったにも拘らず遮断。

 更には、青島駅付近で列車を乗っ取った際、村雨や夕立の意識が後方に向いている間に、列車を低速(といってもせいぜい2~30㎞/hほど)まで減速させて、残りの1系統も機関車と貨車のブレーキコックを同時に遮断後にジャンバ栓を切り離してしまったのである。

 このため、機関車側でブレーキをかけたとしても、ブレーキは機関車のみにしかかからないうえ、慣性の法則によって最悪の場合脱線転覆の起こる可能性が高いのである。

 

 武装集団側がいかに徹底的に、「鹿屋基地周辺へ燃料弾薬を混載した貨物列車を突っ込ませるか」を、周到に練っていたかがわかる。

 

 

 

 

『村雨さん、本当に列車を止める方法は無いのですか?このままでは、みんなや鹿屋の人たちが!』

 無線から届く、神通の悲痛な叫び。

「…私たちは、鉄道のプロではありません。出来ることはもう…。」

 絶望に面した村雨が、無情にも、そう虚しく告げていた時だった。

「いや…、まだ、あります。止める方法なら。」

 そう言ったのは、3695レの運転士だった。

 同僚に殴られ負傷しながらも、まだ彼の眼は死んでいなかった。

 ちなみに村雨に縛り上げられた彼は、村雨にボコボコにされて気を失っている。

 頭痛が酷く、口もあまり上手く使えない中、彼は話を進める。

「全車両の…手動ブレーキを…回して…止めましょう…。」

「手動ブレーキ、って何っぽい?」

「鉄道車両で…使うものとしては…、最終手段…です。それ…なら、この列車でも…止める…ことが出来…ます。」

『本当ですか!』

 無線から、神通の声が飛び出す。

「ですが…、タイミングを…間違えると…、全てが…塵と…化します。どうか…、この列車を…救って…やって…ください。」

 無線機から聞いていた神通は、少し考えたが、もうこれしか方法が無いと思った。

 

 

 提督や副司令、妖精さんや艦娘みんなが居る鎮守府を、いつも買い物や地域交流でお世話になっている鹿屋の人たちを、この悪夢の列車から守りたい。

 神通は、提督に衛星電話を介して連絡を繋いだ。

 

 自分たちの居場所を、そう簡単に消させるものか。そう思った満潮や、同乗している他の艦娘たちも、神通や満潮と似たような想いであった。

 片道約1000㎞に及んだ神通たちの護衛任務は、佳境を迎えようとしていた。

 

 

 3695レの鹿屋基地到着まで、残り1時間。




ご拝読頂きありがとうございました。

荷物どころの次元ではなくなりましたが、果たして神通たちはこの暴走する貨物列車を止めることができるのでしょうか?


余談でありますが、先頭の部分で登場する高千穂鉄道ですが、現在は別企業として高千穂駅を中心に活動する「高千穂あまてらす鉄道」として残っています。
高さ100mを超える鉄橋を、改造ゴーカートで見下ろせるというのがなかなかスリリングなんだとか。
出来れば、現役時代にこの橋を列車で渡りたかったものですが、今は叶わぬ夢なのでしょうね…。
(碓氷峠しかり)


それでは、また次話お会いいたしましょう。
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