竜の使い魔   作:超高校級の切望

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邪竜は雪風と契約を結び、騎兵は世界を回る

「ふうむ……まさか使い魔召喚の儀で人間が呼び出されるとは」

 

 説明を聞いたオスマンは長い髭を触りながらタバサが召喚したという二人を見る。

 随分と上質な服だ。というかここまで上質な服など見たことがない。よほど離れた国の生まれなのだろう。

 平民だとしても、そこで平民がどのような立場にあるか解らない。というかそもそも、平民だろうがなんだろうが他国から攫うのは完璧アウトだ。

 これが魔力を持たぬ者だったら報告すらないんだろうな、と改めて教師達の教育をし直そうかと考えるオスマン。

 

「それで、君達はどうするのかね?」

「俺は使い魔をやってかまわない」

「それは、駄目……貴方は貴方を心配する家族の元に帰らなきゃ」

 

 と、ジークの言葉をタバサが否定する。

 だが、ジークは笑みを浮かべタバサに視線を合わせるようにしゃがむ。

 

「俺は故郷を離れて久しい。もう、家族と呼べる者達も生きていないだろう。一人、残した友もいるが彼は俺の約束通り、世界を見て回り、俺に夢を届けてくれていた。だから、俺に未練はない」

「………」

「一つ願いがあるとするなら。その儀をやるというのは俺だけにしてくれないか?」

「ジーク君!?」

 

 ジークの言葉に慌ててジャンヌが反応するがジークが大丈夫とでも言うように微笑むと顔を赤くして目をそらす。オスマンは砂糖を吐きたくなった。

 

「もとよりこれは俺が呼ばれた召喚だ。ジャンヌは俺が巻き込んでしまっただけ。使い魔になるのは俺だけだ。すまないが、それで良いか?」

「かまわない……私は、人一人の人生を縛って良いほど、マシな人間じゃないから」

「………それと、これ質問だ。君は俺に何を望む?」

「…………」

「俺はこれより君の剣となり、盾となる。だが、俺は生憎と……当初、主に全てを捧げられたあの人ほど己の生に心残りがなかったわけではないんだ。君の目的、君の望みしだいでは、この剣は君を貫く剣となる」

 

 此方の真意を見透かそうと、嘘は許さぬと言う真っ直ぐな目。怖くて、でも温かくて、タバサの氷のような心に僅かな罅が入る。

 

「………助けたい、人がいるの………守りたい、人が………だから、力を……貸して欲しい」

「………解った。改めて、名を教えてくれるか」

「………タバサ」

 

 迷ったが、結局此方の名を名乗った。誠意を見せることが出来ず、呆れられたろうか?が、ジークはタバサの目を見て笑う。

 

「これより我が剣は貴方の剣だ。あの人や、俺の友のように一級の使い魔になれるとは言い切れないが、よろしく頼むマスター」

「………よろしく」

 

 タバサとジークのやりとりが終わったのを見てオスマンはうんうん、と頷く。

 

「では、使い魔契約の儀を……」

「召喚されれば終わりじゃないのか?」

「……違う」

「そうな、なら俺はどうすればいい?」

 

 タバサはしゃがんだままのジークの頭上に杖を掲げ呪文を唱える。そして──

 

「な──!?」

 

 ジャンヌが顔を赤くして叫ぶ。タバサがジークに口付けしたからだ。

 

「い、いきなりなにを!?」

 

 慌ててジークをタバサから離すジャンヌ。と、不意にジークは顔をしかめ右手の甲を見る。

 

「………ふむ、無事使い魔のルーンが刻まれたようじゃな………剣、か。良い名だ」

 

 

 光の国ロマリア。そこに存在する大聖堂。

 その地下に、一部の者しか知らない隠し通路を通った先にある牢があった。そこに少女にも見える美しい顔立ちの少年が鎖に縛られた状態でふあぁと欠伸をした。

 

「………んー………寝過ぎた」

 

 ゴシゴシ目をこすり、んーと伸びをする少年。手足を縛っていた鎖は彼の何気ない動作を阻害することも出来ずに砕け床に散らばった。

 

「さて、そろそろ行くか」

 

 扉を強く引けば閂が折れる。その音にようやく通路にいたであろう見張りが反応して槍を持って向かってくる。

 

「よっと……」

 

 が、少年は壁を蹴り見張りの頭上を飛び越えると通路をかけていき、大聖堂の隠し扉がある壁を破壊して外に出る。

 すぐさま集まる兵達にげ、と呻き再び駆け出す。

 

「あー!もー!しつこいなぁ………とと!」

 

 あくまで捕らえようと追ってくる兵達と違った純粋な殺意を感じて上体を反らす少年。その上を剣が通過した。

 

「あ、ヤッホージュリオ。今日もかっこいいね」

 

 気軽に話しかける少年にジュリオと呼ばれたオッドアイの少年は殺意の籠もった瞳を向けてくる。

 

「どこへ行く気だい?」

「よく寝たからまた旅に出ようかな~って。ここ、僕の住んでた世界とは違うんだろ?」

「それは許されないよ。君は、教皇陛下の使い魔だ」

「あはは。知ったこっちゃなーい」

「───!」

「まあ君も、その容姿を買われて使い魔候補として育てられ、使い魔になれるよう愛されたのに呼び出されたのは全く知りもしない相手なんだから怒るのは解らなくもないけどさ、僕のマスターは一人だけなんだよね」

「なら、そのルーンを置いていけ!」

 

 そう叫び右手を切り落とそうと迫るジュリオの肩を踏み跳ぶ少年。

 

「やーだよ。使えるモノは使わなきゃ。というわけで、ばいばーい……」

 

 ピュウ!と少年が口笛を吹くとどこからともなくグリフォンと馬を合わせたような生物、ヒポグリフが現れる。

 この世界のただそういう形の生物であるヒポグリフと違い、神秘が内蔵された幻獣。その背に飛び乗った少年はあっという間に夜空に消えていった。

 

 

 

 

「さーて、どこに行こっかなぁ………んーと、大国ガリアに白の国アルビオン、後は……水の国だっけ?」

 

 少年は何時盗んだのか地図を見ながらうむむ、と唸る。

 

「よーし決ーめた!トリステインにしよ!水の国とか言うぐらいだし、噴水とか綺麗なんだろうなぁ……」

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