(ギャグ短編を書いてたつもりが気づいたらナーベラルとルプスレギナの擬似的百合エロ小説になってた!何を言ってるかわからないと思うけど私にもわからない!擬似的とつけるのはナーベラルの脳内では相手が別人だから)
「みんな、急に呼び出して悪かったわね」
湯気を立てる紅茶のカップを前にしてナーベラル・ガンマは言った。
円卓を囲むのは5人のプレアデス姉妹。いつものメンバーはいつもと違う会話を予感し、何事かと彼女を見ている。
「重要な用件と言ってたけど、どうしたの?」
伝言の魔法で呼び集められた姉妹を代表してユリ・アルファが聞いた。姉妹上も職業上もトップである彼女はたいていの事で会話をリードする。
「悩み事っすか、ナーちゃん?ルプーお姉さんがなんでも答えてあげるっすよ」
「そうよ。姉妹なんだからなんでも相談していいわ」
「ナーベラルから相談なんて珍しいよねぇ」
「…………仕事の悩み?」
姉妹たちがそれぞれ興味深そうに理由を尋ねる。
彼女は軽く息を吐くと相談を始めた。
「私がアインズ様と人間の街へ行ってるのは知ってるでしょう?今まで黙ってたけど、そこで泊まっている宿は……アインズ様と同室なの」
「!?」
5人それぞれが驚きの表情をとった。
エントマは物理的な理由で表情こそ変わらないが驚愕の気配を放っている。
「待って!一人ずつ部屋を取ると不経済だというアインズ様のご判断なの!」
ブーイングの嵐が来る前にナーベラルは理由を説明する。
「パーティーが別々の部屋をとると変に思われるし、同室なら敵への備えもしやすいでしょう?アインズ様のことだからきっと他にも様々な理由がおありなのよ。とにかく私が拒否できなかったことはわかってほしいの」
「……なるほど。黙っていたことは別として、確かに仕方のないことね」
ユリが最初に感想を述べた。
「戦士の相棒という偽装身分を考えれば貴女かルプスレギナが適任だったとはいえ、羨ましいことこの上ないわ」
「そうっすよ!」
ルプスレギナが叫んだ。
「戦士の相棒なら神官でも良かったじゃないっすか!私もアインズ様と同じお部屋でお仕事したかったっす!」
「アサシンでは不足だったのかしら?私もスクロールを騙して魔法を使えるのに」
「ナーベラルだけずるいよぉ。符術使いだってお役に立てるのにぃ」
「…………ガンナーも援護射撃は得意」
羨望と嫉妬の混ざった抗議がナーベラルに集まる。
しかし、それを自慢したいために全員を集めたわけでないことは皆もわかっている。
「それで、そんな羨ましい環境で何を悩んでるの?」
「ええ、それは……」
ユリの質問にナーベラルは珍しく口が重い。
「決して自惚れてると思わないでほしいのだけれど……もしもよ……もしもアインズ様と同じお部屋でいつか……いつか……と……と……」
「と?」
姉妹たちは首をかしげる。
「と……」
ナーベラルはもじもじするだけでその先を言わない。
彼女がもったいつけるなど本当に珍しいことだった。
「と、ってなにかしら?トカゲ?」
ソリュシャンが聞いた。
「トマトっすか?」
「闘牛ぅ?」
「…………等角多角形?」
「トラップ・ザ・ソウル?いえ、貴女が魔法のことを私たちに聞くはずがないわね」
姉妹それぞれが「と」のつく物を列挙していくがナーベラルはまだ答えない。
「わかったっす!」
ルプスレギナが手をぱんと叩いた。
「『ドッキリ企画を仕掛けられたらどうしよう。不安で夜も眠れない』っすね!もー、ナーちゃんってば子供みたいなことを!」
「違うわよ!だいたい『と』で始まらないでしょ!」
「じゃあ、何っすか?」
「それは……」
ナーベラルは一瞬怒ったが、再び口をもごもごさせる。
しかし、大きく息を吸うと覚悟を決めて悩みを打ち明けた。
「……と、『伽』を命じられたらどうすべきかわからないの!」
その瞬間、稲妻のような衝撃が5人の姉妹たちを襲った。
男女が同じ部屋に長時間滞在し、そこにはベッドもある。そういう事態も当然起こりうる。当たり前のことに誰も思い当たらなかったのは相手が神にも等しい存在であり、世の常識と切り離して考えてしまいがちだからだ。
「全員召集をかけるはずだわ……」
「ええ、プレアデス全体の名誉に関わる問題ですもの……」
「これ以上ない大問題だねぇ……」
「…………ナーベラル、責任重大……」
姉妹たちは納得と緊張、そして嫉妬を覚えつつもそれぞれがナーベラルの胸中を察した。これほど重大な任務はなく、かつ彼女がそういう分野に詳しくない事を知っているからだ。
「わかったっす、ナーちゃん!」
一人だけ椅子から立ち上がったルプスレギナが言った。
「可愛い妹の危機を救うため、私が一肌脱ぐっすよ!一晩かけてみっちりあの手この手を教えてあげるから安心するっす!」
「みんな、知恵を貸してくれないかしら?ルプスレギナは本当に他の選択肢がない最悪の状況になったら頼るから今は黙ってて」
「ちょっとおおおおお!?」
除け者にされたことで円卓をバシバシと手で叩くルプスレギナ。
ティーカップが揺れ、全員が自分のぶんを押さえた。
「最悪ってなんすか!?ひどいっす!あんまりっす!」
「ルプスレギナ。貴女は優秀なメイドだと思ってるし、そういう知識もあるのは知ってるけど……その……実践経験はないでしょう?」
「……え?」
ルプスレギナは痛いところを突かれてたじろいだ。
「一度も戦ったことのない兵士が戦術について語るのを信用できる?」
「ぐう……」
「同感ね。戦ったことのない兵士なんて信用できないわ」
ふふふ、と愉快そうに笑うソリュシャン。
その余裕ぶった態度にルプスレギナはむっとした。
「そういうソーちゃんは経験あるんすか?」
「殿方を体の中に入れた経験なら何回もあるわ」
「それは捕食!ただの下ネタじゃないっすか!」
「はいはい。二人とも落ち着いて」
ユリが手をぱんぱんと鳴らし、二人を休戦させた。
「ソリュシャン、貴女ならナーベラルに助言できるんじゃない?」
暗殺者なら色仕掛けや夜伽もお手の物だろうと意味だ。
ところが、それを聞いたソリュシャンは少し困った顔になった。
「そうねえ……実を言うと、私は誘惑するだけなら自信があるけど、殿方を最後まで楽しませるとなると微妙なの。だってその前に食べちゃうもの」
全員が「ああ……」という納得の表情を捕食型スライムへ向けた。
一人だけにんまりとする人狼を除いて。
「ふふん、ソーちゃんも私と五十歩百歩じゃないっすか」
「あら、五十歩と百歩はかなり違うわよ?」
「二人とも!」
ピシャリと教鞭を鳴らして最終警告を出すユリを見てどちらもまずいと思ったらしく、笑顔を貼り付けてお互いに謝罪した。
「ユリ姉さんはどう?」
「ごめんなさい、ナーベラル。力になりたいけど、私にも荷が重い問題だわ。エントマとシズもこういう経験はない……わよね?」
ユリはふと心配になって2人を眺め、両者がこくりと頷いたことで安堵した。とんでもない事実が飛び出さないとも限らない。
「そういう経験が豊富な御方に伺うべきね。誰がいらっしゃるかしら?」
「だったらぁ、サキュバスのアルベド様じゃないかなぁ?あとシャルティア様とかぁ」
部屋がシンと静まり返り、発言者は少し遅れて自分の過ちに気づいた。
「エントマ、私に八つ裂きにされて来いというのね?」
「い、今のは忘れてぇ……」
しゅんとするエントマだが、ナーベラルは裏切られたような視線を送り続けた。
正妻戦争を始めているあの2人に事情を話せば地獄の釜をひっくり返すより酷いことが起きるだろうと。
「…………たぶん、八つ裂きならまだ良い方」
シズのつっこみに姉妹たちは首肯した。
「私が死なずにすむ相手はいないの?」
「ニューロニスト様もある意味で詳しそうだけど、あの方もアインズ様の正妻を狙っていると聞くし、無理ね。みんな、他に心当たりはある?」
ユリが聞き、他の姉妹たちはうーんと唸った。
「年の功というけれど、セバス様は微妙だわ。奥手すぎる御方ですもの」
「デミウルゴス様はすごい知恵者だけどぉ、そっち方面の話は聞かないよねぇ」
「…………コキュートス様は経験があったとしても種族が遠すぎるし、アウラ様とマーレ様もたぶん無理」
「ゴホン!ゴホンゴホン!」
ルプスレギナだけがキラキラさせた目でナーベラルを見る。「ほら、私しかいないでしょう?」と言いたげでそれに気づかない振りをしてたナーベラルだが、やがて本当に選択肢がないとわかると深いため息をついて言った。
「こうなったら……藁をも掴むしかないわね……」
「おっけー!大船に乗ったつもりでまかせるっす!さあ、善は急げっすよ!」
「え?ちょっと待って!ああっ!」
ルプスレギナは彼女の手を取ると部屋から出て行き、扉が閉まるとまずユリがぽつりと言った。
「きっと遊ばれるでしょうね」
「ええ、遊ばれるわ」
「玩ばれちゃうんだねぇ。ナーベラル、かわいそぉ」
「…………合掌」
新しい玩具を見つけた子犬のようにはしゃぐルプスレギナに連れて行かれたナーベラル・ガンマに各々が祈りを捧げ、相談会はお開きとなった。
「ねえ、本当に大丈夫よね……」
ナーベラルはそわそわしながら壁に覗き穴など開いていないかを確認した。
場所はルプスレギナの寝室である。念のために化粧台を動かしてドアを塞ぎ、絶対に誰も入って来られないようにしているが、それでも魔法で覗かれると怖いので不可視化の魔法をお互いにかけようと彼女は提案したが"コーチ"に却下された。
「最初の伽で透明プレイなんてありえないっす。大丈夫っすよ。ドアに札をかけといたから」
「札?どんな?」
「『風邪で寝てるから起こさないで』って」
「嘘だと丸わかりじゃない!神官なら一瞬で治せるでしょう!」
「冗談っすよー。うっふっふ」
ルプスレギナはにこにこしながら「明かりはどうするっすか?」と聞いた。
「け、消したほうがいいの?アインズ様は暗視のスキルをお持ちだからあまり関係ないと思うけど」
「うーん、ムードを考えるとこれくらいがいいっすね」
そういうとルプスレギナはオレンジ色の照明に切り替えた。
「よーし、それではナーちゃんへの猛特訓を開始するっすよー。ぐっへっへ」
「変態みたいな迫り方はやめて……」
両手をワキワキさせながら彼女に迫るルプスレギナ。
行為とセリフは完全な変態親父であり、思わず彼女は後ろへ下がった。
「ねえ、これは練習なのよね?本当に……実行するわけじゃないのよね?」
「ナーちゃん。こういう格言があるっす。兵士には訓練で可能な限り恐ろしい地獄を見せろ。実戦では可能な限り優しい地獄を見せろ。そうすれば生き残れる」
ナーベラルはそれを聞いてため息をついた。
「実戦を想定しろということね……」
「そういうことっす。さあ、私をアインズ様だと思ってがんばるっす。ゴホン」
ルプスレギナは軽く咳払いした。
そして太めの声を出す
「ナーベラル、夜も深いな」
「……え?それってまさか……アインズ様のつもり?」
「ものまねスキルないからこれが限界っす」
いーからいーからと調子を合わせるように言われ、彼女は仕方なく即興劇に付き合う覚悟を決めた。
ルプスレギナはベッドに腰をかけ、隣に座るナーベラルに背中を向ける。
「今日は多忙な一日だった。少し肩を揉んでくれるか?」
「アインズ様は疲労しないし、そんなことを仰ったことなんて――」
「いいっすから!」
自分の肩を指差し、ナーベラルは一度だけため息をついて肩を揉み始めた。
「あ~、気持ちいいっす……じゃなかった。いい気分だ。ナーベラルは揉み方が上手いな」
「お、お褒めに預かり光栄でございます……アインズ様……」
私はなにをやってるんだろうと思いながら彼女はルプスレギナの肩を揉む。
しばらくすると「腰も揉んでくれ」「次、脚」と言われ、徐々におかしいことに気づき始めた。
「ねえ、これって私を都合よく使ってるわけじゃないのよね?」
「そんなことはないっす」
「本当に?」
「本当……ぐっ!」
「首もかなり凝っているわね。揉んであげましょうか?」
後ろから首を両手でつかまれ、殺意の波動を感じたルプスレギナは余興をやめることにした。
「さあ、体もほぐれたから本番っすよ。きっと肩を揉ませたアインズ様はこうやって……」
「え?きゃっ!」
手を引かれ、体を抱き寄せられたナーベラルの目の前に黄金色の瞳があった。彼女のブラックダイヤのような瞳にイエローダイヤのような姉の瞳が映り、その中にさらにお互いの瞳が映り込む。合わせ鏡のように色彩が続いていた。
「こうやって求めてくると思うっす」
ルプスレギナはさきほどまでの軽薄さを消し去り、妖艶に微笑んだ。
息がかかるどころか互いの鼻が触れ合う距離だ。事実、彼女のすらりと伸びた鼻梁の先がナーベラルのそれにつんっと触れた。この世に二つとない美貌が見詰め合うその光景を見ればあらゆる生物は耽美主義に目覚め、彼女たちを崇拝しつつ自分の醜さを呪いながら一生を送るだろう。
「さあ、アインズ様にこうされたら、どうするっすか?」
「アインズ様が……こんなことを……?」
ナーベラルは目を閉じてその状況を想像してみる。
至高の御方の腕に自分が抱かれ、あの赤い眼差しが目の前にあったなら。それを考えると彼女の体に電流のようなものが駆け巡った。
(駄目よ……あの御方の正妻は守護者統括のアルベド様が……私は一夜限りの……)
でも、もしも―――。
彼女はあってはならない事を一瞬考え、あわてて思考の歯車を止めた。
「アインズ様の……お、お望みのままに……」
「ふっふっふ、愛い奴、愛い奴」
目を閉じて震える妹分にルプスレギナはにやにやして腰や腿をまさぐり始めた。
「ん……」
「あれ?ナーちゃんは何もしないっすか?」
「え……アインズ様にお任せした方が……」
眉をハの字に曲げつつナーベラルは自信なさげに言う。
「お任せして自分はじっとしてる、と?」
「だ、駄目なの?」
「はあ~~~」
長く深いため息。
それを聞いてナーベラルが目を開けると呆れ顔があった。
「ナーちゃん。それ、マグロって言うんすよ」
「マグロ?どうして魚が出てくるの?」
「つまりっすね……」
ルプスレギナはあれこれと説明を始め、それを聞いてるうちにナーベラルの頬が桜色、薔薇色へと変化していった。
「そ、そんな意味が……」
「ナーちゃん、このままだとアインズ様をがっかりさせてしまうっすよ」
「それは困るわ!」
ナーベラルの紅潮した顔からすぐに血の気が失せた。
そんな事が起きるくらいなら自分の首を切り落とす方がずっといい。
「恥じらいはあってもいいけど少しは押さないと駄目っすよ」
「押す?突き飛ばし?」
「それは戦闘技術っす。例えばっすねー」
ルプスレギナは自分の両手をナーベラルの背中に回し、体を密着させる。
二人の間でやわらかいものがぎゅうっと圧迫されて形状を変えた。
「こうやって胸を当てるとかどうっすか?ナーちゃんもけっこうあるんだから使わない手はないっすよ」
「つ、使うって……」
胸を使うという概念がわからないナーベラルだったが、やってみるしかない。
見よう見まねでルプスレギナを抱きしめてみた。
「そうそ……痛い!痛い!痛い!それはただのホールドっす!」
肩をタップして悲鳴を上げるルプスレギナを解放し、彼女は頭を抱えた。
「全然わからないわ……」
「うーん、これは難儀っすねー。ナーちゃんも人間の街に行ってるんだから娼館とか覗いたらいいじゃないっすか。不可視化の魔法を使えば観察し放題っすよ」
「そんなことをするくらいなら死んだほうがマシよ……。え?貴女、そんなことをしてるの?」
「え?あははは、そんなわけないっすよ!さあ、目を閉じて。続きっす」
ルプスレギナは強引に話題を切り替えるとナーベラルをベッドの上に寝かせ、再び尊い御方にされるところを想像するように言った。そして細い指をつつっと喉に這わせ、胸骨へ下りると双丘の片側へ上る。
「あ……」
「その可愛い声、いいっすよ、ナーちゃん」
「い、いいの?」
慣れない感覚に思わず声が出てしまった彼女は不思議そうに言う。
「普段はきりっとしてる子が可愛くなると男はぐっと来るらしいっす。さあ、その調子で」
「でも……ん……」
1本の指が柔らかな丘を撫で、すぐに4本の指がやってきて膨らみを掌中に収めた。空いていたもう片方にも同じ刺激がやってきて、自分が何をされているかをナーベラルは理解した。想像の中では神にも等しい存在が自分の体に覆い被さっており、彼女は震えをこらえるために掌を握り、爪を皮膚に食い込ませた。
「ん……ア…………ズさま……」
「ナーちゃんって意外と……」
「な……なに?」
「い、いや、表情と声がエロい……ゴホン。初々しさがあって良いっす」
この時、ルプスレギナは嬉しさと悔しさの混ざった気持ちで彼女を見下ろし、内心では動揺していた。ナーベラル・ガンマの意外な技能を見つけてしまったからだ。シャルティアがこの場にいたらどんな面白い展開になっただろうかという楽しい妄想を脳内の引き出しに仕舞いつつ、彼女は次のステップを踏む。
「あっ……」
「これは必要なことっすよ」
ナーベラルは上着をするすると脱がされ、胸が大気に触れるのがわかった。そこへやってくる五本の指。
「ひぁっ!」
肌に直接触られるため不慣れな刺激が増し、彼女は湧き上ってくる奇妙な感覚に必死に耐えた。伽の練習とはいえ、はしたない姿で御前にいる自分を想像すると罪悪感で死にたくなった。
(でも……アインズ様が伽をお望みなら……これでいいはず……)
柔らかな膨らみにかかる手はそのまま奥の心臓を掴み、死の罰を与えるのではないかと彼女は思った。いっそ与えてもらえたら楽になれるだろう。しかし、食い込む指は奇妙な動きを繰り返すばかりで彼女はもどかしさから両足をすり合わせ、発したことのない声を出した。
「あ……あぁっ……」
ごくり、と音が聞こえた。
「今……唾を……飲まなかった……?」
「の、飲んでないっす」
「ほ、本当に……?あぁっ!」
ナーベラルは困惑したが押し寄せてくる刺激のせいですぐにどうでもよくなった。
「ど……どうすれ……ば……」
「ん?」
「どうすれば……いいの……この後は……」
「そうっすね……キ、キスをねだってみるとか?」
「キス……」
そこまでしなくても。
ナーベラルはそう思ったが、いずれ実践することを考えれば避けては通れなかった。
「でも……アインズ様の前に……誰かに捧げるのは……」
「姉妹なら挨拶の範囲内っすよ」
「そ、そうなの……?」
「セーフっす。さあ、おねだりしてみて」
ルプスレギナの声に情欲的なものが混ざってるような気がしたが、それも訓練の一環なのだろうと思い、彼女は覚悟を決めた。本当の伽ではどんな失態も許されない。
「口づけを……して頂けますか……アインズ様……」
目を開けると想像上の尊い御方が消えてしまうため、彼女は暗闇の中で願う。
しっとりした何かが唇に触れた。
「ン……」
ナーベラルの頭の中で火花が散った。
本来なら想像することも許されない不敬な光景が頭に浮かび、パニックになりかける。
彼女は以前にも同じことがあったのを思い出した。戦士モモンとの仲を人間の冒険者にからかわれた時だ。その軟派な男は死んでくれてせいせいしたが、あの時も自分は動揺し、アルベドの名前を口走るという大失態を犯した。
太陽の如き御方と特別な関係になるなど正に太陽を独占するようなもの。ナーベラル・ガンマはそこまで自惚れていないつもりだ。しかし、事実無根ならあそこまで取り乱すだろうか。
怖い、とナーベラルは思った。この思考の先には恐ろしいものが待っていると確信する。だから何も思い出さなかったことにした。
(なにかしないと……じっとしてたら駄目…………ク、クジラ?……になってしまう……)
彼女は若干の思い違いをしつつも唇に触れたものがゆっくりと動いているのに気づき、それを真似してみようと思った。
(……こうすれば……いいのかしら……)
ナーベラルが唇を少し動かすと奇妙なもどかしさが少し減った。しかし、今度は喉の渇きが増し、徐々に体が熱くなる。そこからは干乾びて死にかけた生物が水を求めるように体が意欲的に動き始めた。彼女は両腕を相手の背中に回し、今度こそ程よい加減で抱きしめると貪るように口を動かした。
「ンン……んっ……あぁ……」
はあ、はあ、という息遣いの混じった声がオレンジ色に染まった空気に溶けてゆく。触れては離れる唇の間からはやがて水音が生じるようになっていた。
一瞬には長すぎ、永遠には短すぎる時間が流れた後、ナーベラルはようやく自分本位の行為をしていることに気づき、あわてて唇を離した。
2対の美しい花弁の間に糸がつつっと引いて切れた。
「も……申し訳……ありません……」
「……ばい……っす……」
「……え?」
彼女が目を開けるとルプスレギナがぐったりして横たわっていた。
何が起きたのかとナーベラルは混乱する。
「ど、どうしたの、ルプスレギナ?私、何か間違った?」
「ううん……よかったっす……こんなに……すごいなんて……」
「あれで良かったの?」
「満点っす……どうしよう……姉妹なのにぐらっと来ちゃったっす……」
ルプスレギナは顔が紅潮し、声には恍惚が満ちていた。
「舌を使うとか……どこで覚えたんすか……」
「なんのこと?」
「入れてきたじゃないっすか……」
「そんなことをするわけ……え?」
ナーベラルが思い出してみると確かに自分から舌を絡ませていた気がした。
彼女は驚愕し、次に絶句した。間違いなく自分がやったことだ。
ちなみに、アインズに舌やら唇やらはあるのかなどという疑問を彼女たちは持ち合わせていない。至高の御方は自分たちの想像など及ばない力を持っているのだから。
「ナーちゃん……ベッドの上ではレベル100かも……」
「痴女みたいに言わないで!」
「私は知識なら豊富だけど……ナーちゃんは逆っすね……先輩面してごめんっす……」
「しっかりして!ねえってば!」
ナーベラルは完全な恍惚状態に陥っているルプスレギナの肩を揺らして起こそうとしたが、まともに会話できるようになるのはしばらく後だった。
その間、ルプスレギナの部屋の前を通りかかった一般メイドはドアノブにかかった札を二度見してから首をかしげた。
「冬眠中……え?人狼ってそんな種族だったの?」
ルプスレギナにそっちの気があるみたいに書いてごめんなさい!
でも、彼女はシャルティアと"そういう関係"って可能性もあると思うんです。やけに馴れ馴れしいし耳年増なのもそのせいじゃないかなーと。あるいはシャルティアの弱みでも握ってるとか?早く公式で二人の関係を明かしてくれー。