あのすみません。俺のシフトだけ週7になってるんですけど、記入ミスですよね? ・・・・・・え、合ってる? 作:鯛焼きマン
秋空の下。
今日も今日とてサポーターの
ついさっき首都高速に入ったところ。
「いーいーな、いーいーな。にーんげんっていーいーな。みんなでなかよくぽちゃぽちゃおふろ。あったかいふとんで、ねむ、るん、だろう、な・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぼくもかえーろ、おうちへかえろ。でんでんでんぐりがえしで「また仕事ー」「ぐあああああああああああ!!」
ワゴンの狭い車内で発狂する俺。
我ながら鬱陶しいにもほどがある。
それでも笑っていてくれるイッシーマジ天使。
だから帰して(切実)。
「だーめ」
「さいですか・・・・・・即答でございますか・・・・・・」
出してぇええええ! このデスマからだしてぇええええええ!
俺は帰らなくちゃいけないんだ俺の
俺の愛しき
「いいじゃないですかー、何だか遠距離恋愛みたいでー。ロマンチックですよー?」
「そんな哀しいロマンスはいらない」
俺ってば高嶺の花より、手元にあるたんぽぽ派だからさ。
ちなみにイッシーは高嶺の花枠。
この子は幸せにならんとアカンよ(親戚のあんちゃん感)。
「じゃあサバキさん。この仕事終わったら温泉でも行きますー?」
「ほ? 温泉?」
何が『じゃあ』なのかわからんけど、イッシーの会話が急に飛ぶのには慣れた。
天才特有の発想の飛躍みたいなもんだって勝手に解釈してる。
なんせあの城南大学に通ってんだぜ?
しかも頭良すぎて授業免除とかよくわからん特権持ってる。
ぜってぇ高校中退の俺より頭いいだろうし、頭の回転も実際早い。
「それにしても唐突になんぞ?」
「ちょうど今から行くの箱根ですしー」
あ~、そういやそうだったな。
温泉かぁ・・・・・・いいね!
「近くだと大涌谷の温泉ですかねー」
「あっ、それ知ってる。ゆで卵が黒いとこでしょ?」
「おー? サバキさんよく知ってますねー」
「そりゃ有名だからな」
大涌谷の温泉。その効能は、神経痛・筋肉痛・関節痛に効くとのこと。
『鬼』の仕事終わりにゃピッタリじゃないか。
天気が良けりゃ富士山も見えるらしいし、富士の山を眺めながら浸かる温泉・・・・・・格別だろうなぁ。
「今から楽しみだぜ!」
「あははー、サバキさんが元気になってくれて嬉しいですー」
そりゃ肝心の『鬼』である俺のモチベーション低かったら意味ないもんな。
イッシーは良い上司になりそう。ちょっとだけおやっさんと替わってみたら?
・・・・・・俺の仕事量はどうせ変わらないか。
それにおやっさんもおやっさんであの年で結構タフで根性あるし、だからこそ支部の事務局長という名の中間管理職の(如何にも大変そうな)仕事が務まってそうだし・・・・・・やっぱいいや。この子は幸せに(以下略)。
「あ、そういえば大涌谷って昔、地獄谷って呼ばれていたらしいですよー」
「えぇ・・・・・・俺の行く場所は結局、地獄か・・・・・・」
折角上がりかけたモチベーション下げないでイッシー!
だが許す!(温泉行きたい欲が勝った)
「まかもぅ、じぇんじぇん見つかんねぇですけどぉ・・・・・・?」
どういうことだ! 本当にいるんですか!? 日菜佳さん!
『いや間違いなくいると思うんですけど・・・・・・環境は揃ってますし・・・・・・』
何ですか、電話越しでもわかる自信のなさそうな声は。
こっちは魂半分口から出かかってるんですけど?
三日三晩探しても痕跡すら全く見つからないって・・・・・・おかしいでしょ。
『もしかしたら一年前みたいな新種かも・・・・・・』
「え」
おい馬鹿やめろ。いや、やめてください。
「そんなん出て来たら俺は死にますよ? 俺の命がどうなってもいいんですか?」
『私にそんなこと言われても困ります〜。そういうノリは樹さんとしててください』
何故そこでイッシー出てきたし・・・・・・確かにこういうノリ完璧に返せるのイッシーぐらいだけど。
『たちばな』の人は、おやっさんは年が離れ過ぎだし、立花姉妹はノーマル女子だし、同僚の『鬼』の人も大体がアナクロだったり、真面目過ぎだったりでこういうネットで使うようなネタは通じねぇもんなぁ。
同期のトドロキは生真面目すぎて、何でも真に受けるから反応が面白いけど。
ただそれもやり過ぎると日菜佳さんがうるさいんだよな・・・・・・おのれリア充!
「・・・・・・とりあえず捜索範囲広げますね」
『はい、今の所はそれで。新しい情報が何か手に入ったら連絡してください。その間に資料を整理しておくので』
「お願いしますね」
本当にお願いしますね!? じゃないと俺、死ぬから! マジで!
『大抵のことがあってもサバキ君ならどっこい生きてそうですけど・・・・・・あ、そうだサバキ君』
「なんです?」
どっこいって何だよ(困惑)。
プルトンロケットに乗って自爆しても生き残りますってか? 御冗談を。
『樹さんとはどこまで進んでるんですか?』
What? ナニイッテルカワカリマセンヨ?
進むってどこに? 地獄に? それとも地獄谷の方に?
そういや温泉行けっかなぁ・・・・・・不安だ。
『温泉!? ほぉほぉ・・・・・・それはいいですね!』
何ですか? 連チャンで仕事ぶっこむ気ですか? させませんよ(無駄な抵抗)。
『どんだけ社畜根性を拗らせてるんですか・・・・・・まあ、良いです。要するに、樹さんによろしくってことで』
「はいはい、よろしくされました」
そんなん一々頼まれなくてもわーってますよ。
サポーターに支えてもらう代わりに、戦闘能力の無いサポーターを守ることも『鬼』の仕事。
日菜佳さんもそんな当たり前の事を聞くなんて、俺ってそこまで信用ないのかねぇ?
「サバキさーん。コーヒー淹れましたよー」
「ほぉい、センキュぅ」
あったかいコーヒーが秋の山中で凍えた身に染みるぅ。
流石の気遣い。
やっぱりイッシーは最高だぜ!
「この近くにはもういないんですかねー」
「こんだけ探してもいないとなるとな。つってもウブメかオオクビが発生するとしたらここら辺ぐらいなんだよなぁ・・・・・・」
ウブメは湖や沼、オオクビは山中で育てられる魔化魍だ。
神奈川県内で最大の湖である芦ノ湖と、それを囲むように山が連なる箱根山。
気温と湿度も考慮して絞り込んで、この近辺がビンゴだと思ったのだが・・・・・・。
「っと、最後のが来たか」
捜索に出していたディスクアニマル・茜鷹が帰ってきた。
これで全てのディスクアニマルが手元に戻ってきたことになり、これがハズレなら場所を移して捜索をし直すことになる。
兎に角、調べてみなきゃわからんな。
「お疲れさんっと、どれどれ・・・・・・」
冠しているその名の通り変形して円盤に戻り、俺の手の中に飛んできたディスクアニマル。
現代版・式神の彼らは、一応『弦の鬼』である俺の場合は変身鬼弦・音錠の裏にある窪みにディスクを嵌めて回すことで録音されている音が再生される。
そうして録音された音を聴いて、予め設定しておいた場所へ捜索に出た彼らが魔化魍を発見したか確かめるのだ。
「どうですかー?」
横から顔を覗かせたイッシーが
あー、うん・・・・・・そうだな・・・・・・。
「結果だけ言うと・・・・・・当たり、だな」
「おおー」
イッシーは感嘆の声を上げる。
だが俺は素直に喜べなかった。
だって最後の最後で当たりとかさぁ・・・・・・嫌な予感がプンプンするぜぇ!(泣)
ま、つべこべ言ってもしょうがないか・・・・・・よっしゃ(地獄へ)行くか!
「んじゃま、いってきます」
「いってらっしゃーい」
さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・・・・鬼は俺だけど。
「ビシっとキメて、温泉行きましょうねー!」
颯爽()と駆けだした俺に、イッシーが厄除けの切り火(火打ち石でカチカチするやつ)をしながら声援を送ってくれた。
え? 温泉のこと覚えてくれてたんだ(感動)。
ぶっちゃけもう忘れてるんじゃないかと思ってた(感激)。
嗚呼、君を侮っていた俺を許してくれ!(感涙)
「ははっ・・・・・・大きすぎる期待だが、応えてみせますか!」
俺、この仕事終わったら温泉でのんびりするんだ・・・・・・。
「このご飯うめぇ・・・・・・!」
粒が立ってる! 流石ここらで一番高い温泉旅館の出す料理っ!
普段使わない(使う暇がないとも言う)貯金を崩した甲斐があるというものだ。
旅館内の土産屋も品揃えが豊富で、ちゃんと関東支部のみんなの分のお土産も買えた。
あとは一晩泊まって明日の朝に帰るだけだ。
・・・・・・は? フラグ? 何それ? 現実にフラグ回収なんてありませんよ?
ええ、魔化魍が不気味なまでに弱すぎたとか、
なんか『実験の過程の失敗作』みたいな印象だったとか、
今回の魔化魍が今後の大きなフラグになったとか・・・・・・そんなのありえないから(震え声)。
そんなことを俺が考えてもしょうがないけど(諦め)。
「くぅ~! しかもお酒も美味いときてる!」
色々不穏だけど報告はちゃんとしたんで、後は事務局に丸投げして俺は飲みます(クズ)。
「はーい、どうぞどうぞー」
能天気な俺のお猪口にイッシーもノリノリでお酒を注いでくれる。
今はお互い浴衣を着て、温泉旅館で晩食を味わっている。
肝心の温泉はどうしたのかって? ・・・・・・ふぅ、最高だったよ(言葉で言い表せれぬ至福)。
「いやぁ、イッシーみたいな美人にお酌をしてもらうなんて贅沢だなぁ」
「いえいえー」
そして見事に酔っ払い口が軽くなる俺(注:ここからサバキさんの意識と記憶が朦朧としているので地の文が単調になります)。
「今度は『たちばな』や『鬼』のみんなも連れて来たいよ~。特にトドロキ。あいつ頑張ってるしさぁ」
「おー! いいですねそれー。みんなで宴会しましょうー」
酔って理性がぶっ飛んでいる俺(お酒にはそこそこ強い方)と酔いが回っておらずいつも通りのイッシー(ザル)。
「うんうん、宴会、いいよねぇ~。何事もメリハリって大事よホント。それをトドロキにも教えてあげたいよ~。だってあいつ師匠のザンキさんの遺志を継いでもっと頑張らないとって張り切っちゃって。それがあいつの長所でもあるけどさぁ、ほらあいつって張り切り過ぎると変に空回ること多いじゃん? だから気を張り過ぎて、しないでいいミスとかしないか心配だよ。フォローするこっちの身にもなれっての~。ちょい手伝うくらいなら良いけどさぁ? いい加減にしないと俺が闇堕ちすんぞコラぁ~! なーつってぇ!」
俺の知らない所で『トドロキの泣き上戸』と双璧を成す『サバキの褒め上戸』と呼ばれる状態になってしまっている俺。
「サバキさんはやっぱりトドロキさんのことが好きなんですねー」
「ちょ、やーめーろーよぉ! 俺ソッチ系じゃないからぁ! 普通に女の子好きだからぁ!」
いい加減テンションが気持ち悪くなってきた俺。
「どういう女の子が好きなんですかー?」
「うん? そうだなぁ・・・・・・欲を言うなら、綺麗で、優しくて、俺なんかを好きでいてくれる子ぉ、かな~? なーんて贅沢言い過ぎかぁ? あはは!」
酔いにかまけて変なことを口走ってる気がする俺。
「そんなことないですよ。サバキさんを好きな人は、たくさんいますよ」
「そうかなぁ? あはははっ!」
そうして一人爆笑いする男とそれを微笑ましく見る女の晩酌は、男の方が酔い潰れてその場で寝っ転がるまで続いたのだった・・・・・・。
「サバキさーん、朝ですよー!」
「ふぁ?・・・・・・知らない天井・・・・・・あっ、そういや今日外泊だった」
翌日、いつの間にか布団(ウチの
そのまま寝ぼけと二日酔いでボーっとしたまま着替え、朝食を食い、旅館を出発。
酔い覚ましにとイッシーから貰ったミネラルウォーターをチビチビ飲んでいる内に『たちばな』に到着した。
その頃には二日酔いもマシになっていた。
とりあえず仕事終わりの顔見せをし、店にいる『猛士』の人へお土産を渡した。
しかし温泉での話をしたら何故か日菜佳さんから溜息を吐かれた。解せぬ。
俺は温泉を楽しむことすら封じられているのか?
流石にそれはないだろうけど。
イッシーがあんなに嬉しそうなんだから、俺が楽しんでも別に良いよなぁ?
お酒は飲んでも飲まれるな。そして飲むのは二十歳になるまで(イッシーは8月の時点で二十歳)。