あのすみません。俺のシフトだけ週7になってるんですけど、記入ミスですよね? ・・・・・・え、合ってる?   作:鯛焼きマン

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タイトルが最終話っぽいけどそんなことはありません。
そもそも短編(集)ですしおすし。(死語)


それが君の裁鬼

 曇天の闇に閉ざされた森の中。

 

 音撃戦士・裁鬼こと(サバキ)は、一人項垂れていた。

 

「・・・・・・サバキさん。しょうがないっすよ。なんせ相手はあのノツゴだったんですから」

 

 サポーターである石割樹(イッシー)はいない。

 

「サバキさんは最善を尽くしましたよ」

 

 失敗した。間違えた。

 俺は想定してなかった強大な魔化魍相手に、イッシーと一般人を逃がすのを助けるか、魔化魍と一人で戦って足止めするか・・・・・・迷った。

 

 迷って、動くのが、遅れた。

 

「仕方なかったっすよ。十年に一度しか現れないはずの凶暴な魔化魍が、たった一年で復活するなんて誰も予想できなかったんですから」

 

 違う。俺が弱かったせいだ。

 だから守れなかった。

 

【サポーターに支えてもらう代わりに、戦闘能力の無いサポーターを守ることも『鬼』の仕事】

 

 だった、はずなのに。

 

「サバキさんが二人を運んでくれたから、すぐに病院で治療できたらしいじゃないですか」

 

 なのに、もう一つの『鬼』の仕事である『魔化魍退治』すらまともにできなかった。

 結局一人じゃ敵わず、取り逃がした。

 おやっさんにはトドロキが到着するまで待機、と言い渡された。

 

「きっと樹さんも大丈夫で「さっきからうるせぇよトドロキぃ!! お前に何がわかるんだよ!? あァ!?」

 

 お前なぁ! 命があればいいってもんじゃねぇだろ!?

 俺はっ・・・・・・女の子を傷つけちまったんだよ!

 命があっても傷が残ったりしたら、女性としての幸せを掴めなくなるかもしれないだろ!?

 あの子は俺なんかと違って悪い事なんてしてない、いい子なんだぞ!?

 そんな子は幸せにならないといけないだろ!?

 じゃなきゃあんまりだ! 理不尽だ!

 そんなイッシーの幸せを、俺は、奪うところだったんだ!!

 

「・・・・・・すみません。俺が無神経でした」

「っ・・・・・・いや、悪いのは俺だ。すまん、俺のことはしばらくほっといてくれ」

 

 ・・・・・・なにトドロキに八つ当たりしてんだよ、俺。

 悪いのは全部、俺だろうが。

 

「サバキさん・・・・・・俺が魔化魍の捜索、引き継いでやっておきます。だから少しでも休んでおいてください」

「ああ、すまねぇな。頼むぜ、トドロキ」

 

 ほんと、何やってんだよ俺は。

 トドロキは不器用なりに俺を励まそうとしただけだろ。

 これじゃ、昔の・・・・・・高校時代のクズだった俺から、何にも変われてねぇじゃねぇか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は魔化魍の捜索の拠点にしているキャンプから離れた小川。そこの水辺にある岩に腰掛け、文集をめくっていた。

 内容は頭に入ってこないが、そうしていると荒立っている感情が落ち着いてきた。

 

 そしてイッシーを守れなかったこと、さっきトドロキにあたったこと、それらの罪悪感がぶり返してくる。

 

 俺ってヤツはホント、優柔不断な小物で、タフなことぐらいしか能の無いクズ野郎だよな。

 

「よぉ、随分と参ってるみたいだな」

 

 え? サバキさん?

 

「おいおい『裁鬼』はお前だろ? 今のオレは、ただの佐伯栄だ」

 

 サバ・・・・・・佐伯さん。アンタ確か本部がある吉野の方で『鬼』を育てるコーチをしているはずじゃあ・・・・・・。

 

「たまたま近くに来る予定があったんだよ。そしたらあのノツゴがまた出たらしいじゃないか。しかも遭遇したのがオレの名を継いだお前ときてる。オレもアイツには煮え湯を飲まされたからな~。ちょっと陣中見舞いとしゃれこんでみたのさ」

 

 それはわざわざ、すみません。

 しかもこんな無様な姿を晒しちまって。

 

「そんなしょげた顔すんなよ。無様な姿なんて、オレだって現役時代に数えきれないぐらい石割のヤツに晒してきたぜ? あっ、そうそう、その石割から聞いた話じゃ、あいつの妹と救助された一般人、二人共無事らしいぞ? 入院する必要はあるらしいが、一生目立つ傷が残るような重症じゃないってよ」

 

 っ! それは、よかった。でも・・・・・・。

 

「宮沢賢治の『雨ニモマケズ』か・・・・・・やっぱりキツかったか。自身の非力さの所為で、誰かが傷ついたのは」

 

 やっぱ、アンタには全てお見通しだな。

 そうだ。ガキの頃から俺は、へこんでいる時、弱気になってる時、この本を手に取っていた。

 お陰で何度か買い替えたのにページはボロボロで、手垢に塗れている。

 

「そうやって自分の非と向き合えるのはお前の美点だ。『自分の非を認める』ってのは当たり前のことだが、その当たり前が難しかったりするからな」

 

 そんな大層なモンじゃねぇよ。

 こんなの、ただの現実逃避だ。

 

「ちょっとぐらいなら逃げて、考え込んでも悪くないだろ? 現実を見つめ直すためならさ」

 

 そうだろうか。

 確かにさっきトドロキに怒鳴っちまった時よりかは冷静になれた。

 

「……目を逸らして()()()()()()()()()、になんてするつもりはないんだろ?」

 

 そんなの当たり前だ。

 倒すべき敵(ノツゴ)守れなかった人(イッシー)も、俺が向き合わないといけない存在だ。

 それから目を逸らすつもりも、逃げるつもりも無い。

 

 だが、それで現実は何も変わってない。

 

「変わるものさ、現実なんて。考え方次第でな・・・・・・いや、むしろ変えてみせろよ。そのためにお前は『鬼』として自分を鍛えてきたんだろ?」

 

 確かに、そのために俺はこれまで鍛えてきた。

 そう信じて、鍛えてきた。

 でも、俺は、結局・・・・・・なぁ佐伯さん。俺は『鬼』に向いているんだろうか。

 教えてくれ裁鬼(佐伯)さん。

 

「・・・・・・オレが何故、『裁鬼』の名をお前に襲名させたかわかるか?」

 

 それは・・・・・・俺がアンタの最後の弟子で、同じ闇の属性に適性があったから?

 

「それもある。だが、それだけじゃない・・・・・・お前が『自分に裁きを下すことができる』。そんな『鬼』だからだ」

 

 自分に、裁きを、下す・・・・・・。

 

「お前がどんな悔いを、罪を背負っているのか、詳しくは知らない。だが、誰もお前に下せなかった裁きを、お前は自分に下したんだろ? 『鬼』になろうと誓ったその日に」

 

 俺が、『鬼』になろうと誓った日。

 それは俺が佐伯(サバキ)さんに会った日。

 アンタに拾ってもらわなきゃ、俺はあのまま、空っぽのまま死んでいた。

 でも、体を張って人助けするアンタを見て、俺は誓ったんだ。

 

 罪を犯して、

 なのに誰からも咎められなくて、

 償うべき相手もいなくて、

 そんな人達に命以外、捧げるモノがなくて、

 だけど、捧げることなんて無意味だと裁鬼(アンタ)に否定されて、

 

 なら、この命が尽きるまでは、一人でも多くの誰かを助けるために戦おうって。

 

「それを撤回するつもりはないんだろ?」

 

 ああ、そうだ。

 

「結局はさ、人間、目の前のことを一生懸命コツコツやっていくしかないんだよな。悩んでもいいさ、間違ってもいい。ただそれを認めて反省できるかが重要なんだ」

 

 そう、俺がやるべきことは最初っから決まってる。

 贖罪のつもりなんかじゃない。いくら他の人を助けても俺の罪が消えることは無い。

 

 でも償えないのなら、せめて戦い続けるのが・・・・・・俺の(サバキ)だ。

 

「サバキさーん! 魔化魍見つかりましたよぉ! ってあれ? サバキさん? いや先代サバキさん? でこっちが今のサバキさんで・・・・・・」

「ややこしいのはわかるが変な事で混乱してんじゃねぇよ。ノツゴが見つかったんだろ? んじゃあ、さっさと退治に行くぞトドロキ。それが『鬼』の仕事、だろ?」

 

 そんでちゃっちゃと終わらせてイッシーの見舞いに行こうぜ?

 

「! ・・・・・・はいっ! 行きましょう! サバキさん!!」

 

 全く、いつも元気で真っ直ぐで、本当にいい奴だな、トドロキは。

 まあ、たまにアホみたいな行動したり、変に空回ったりするけどさ。

 でも嫌いじゃないぜ。そんなお前のこと。

 

「んじゃま、いってきます。佐伯さん」

「行ってくるっす!」

「おう、行ってこい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんで頑張って、生きてりゃ、見えてくるはずだぜ、斎藤・・・・・・今までのお前に見えなかった『何か』がな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで凄かったんですよサバキさん! こう! ノツゴに食いつかれながらも果敢に音撃を叩き込んで!」

「おおー、それでそれでー?」

 

 魔化魍を無事(?)倒した俺とトドロキは、その足でイッシーの見舞いに来ていた。

 

「それに吹っ飛ばされたノツゴがズドーンって地響きを鳴らしながら倒れたんですよ! その隙をついて、俺も遅れて音撃を叩き込んだことでやっと倒せたんですけど・・・・・・いやー、サバキさんがいなくちゃ勝てない戦いでしたよ!」

「わー、サバキさんが今日のMVPですねー」

 

 イッシーはノツゴの攻撃(尻尾に付いたクソでけー針飛ばすヤツ)から一般人を庇ったことで頭部や足を負傷したものの、頭は脳震盪を起こした程度、足はヒビが入ったレベルで済んだらしい。

 

「そうっす! ・・・・・・サバキさんがいなかったら、俺なんかじゃ一年前みたいにまたやられてたところでした」

「いえいえ、トドロキさんとサバキさん、二人で挑んだからこその勝利ですよー。・・・・・・負傷してサポーターの仕事ができなかった私の代わりに、サバキさんを支えてくれてありがとうございますトドロキさん」

「え!? いやいや! 俺なんてまだまだですよ! ・・・・・・やっぱまだ、ザンキさんみたくはなれそうにないです」

 

 それでも包帯が巻かれた額や右足を見るのは辛かった。

 イッシー当人がいつもと変わらない緩い笑顔を浮かべていることが救いだった。

 

 イッシーを助けられず、イッシーに助けられる・・・・・・俺は本当にどうしようもないヤツだ。

 

「ファイトですよー、トドロキさん」

「~っ! ありがとうございます! 樹さん! ・・・・・・あー、それにしてもサバキさんの雄姿! 樹さんに見せられなくてホント残念です! あ、でもディスクアニマルに「うるせーぞ、トドロキ。ここ、病院。イッシー、怪我人。Do you understand(ドゥー ユー アンダスタン)?」

 

 あとお前が捲し立てるせいで俺が空気なんだよ(哀愁)。

 おかげでたっぷり自分語りできたわ(自嘲)。

 

「す、すみませッ! ・・・・・・すみません(小声)」

 

 わかればよろしい。←無駄に偉そう

 

 いや、フォローしてくれようとする気持ちはありがたいんだけどさ。

 あんだけカッコつけて出撃したのにいざノツゴと対面したら、ものの数秒で蜘蛛の糸みたいなのに拘束されて「音撃斬・閻魔裁き!」とか言ってる余裕なかったもん。

 もう「ひぃいいいいいい!」とか「うわぁあああああ!」とか喚いて、突っ張り棒代わりに音撃弦をノツゴの口に突っ込んで、我武者羅に音撃斬してただけだもん。

 

 音撃斬・閻魔裁き(キリッ)じゃなくて、音撃斬・閻魔裁き(生餌)だったもん。

 

 しかも結局トドメ指したのトドロキだもん。

 

「樹さん、退院したら『たちばな』に来てください。特別に、記録した映像見せてもらえるように事務局長に相談しておくので!」

「わかりましたー、よろしくお願いしますねー」

「恥ずかしいからやめてよね。うん、マジで」

 

 (ひと)の黒歴史を積極的に晒していくムーブやめろ。

 地獄への道は善意で舗装されているって、それ一番言われているから。

 

「・・・・・・あっ! そういえば魔化魍倒したの、事務局長に報告してなかったっす!」

「げ・・・・・・俺も忘れてた・・・・・・」

「あらあらー」

 

 いつもは忘れてたらイッシーが指摘してくれるから・・・・・・そんな言い訳、いいわけないよな(クソ寒ギャグ)。

 

 兎に角、早く連絡しねぇと。

 

「ああ! 連絡は俺がやっときますよ! ほ、ほら、サバキさんお疲れだろうしっ!」

 

 いや最初に遭遇したの俺だし、俺が報告するのが筋ってもんじゃね?

 

「いや、いいですから! サバキさんは樹さんと一緒にいてあげてください! そ、それじゃ!」

「お、おい。ってもう行っちまった・・・・・・」

 

 つーか病院で走るな騒ぐな・・・・・・俺、しーらねっと。

 

 というか、トドロキが行っちまったら俺とイッシーの二人きりになっちまうじゃねーか。

 

「サバキさん」

「イッシー・・・・・・」

 

 気まずい。

 クッソ気まずい。

 

「あの」「俺」「「あ・・・・・・・・・・・・」」

 

 うわー、なんか同時に喋ろうとしてお互い話しにくいみたいな雰囲気にぃ・・・・・・。

 

「サバキさん、どうぞー」

「アッハイ」

 

 そして譲られるという・・・・・・ダセー、俺ダセー。

 

「あ、あのさ、イッシー」

「なんですかー?」

 

 イッシーが微笑む。

 いつもの笑顔だ。

 でも、嫌でも目に映る包帯やガーゼが彼女の苦痛を視覚化していた。

 

「イッシーのこと守れなくて、ごめん」

 

 痛かっただろうに。怖かっただろうに。

 それを感じさせないように、笑顔を作る彼女を見るのが辛い。

 目を逸らしたくなる。

 だけど、この世の誰よりも俺が目を逸らしちゃいけないんだ。

 それは俺の罪で、負わなくちゃいけない責任だから。

 

 だが、それでも言わないといけないことがある。

 

「俺、強くなるから・・・・・・どんな魔化魍が現れても、イッシーのことをそいつから守って、その魔化魍も倒せるぐらい強くなるから」

 

 今まで以上に鍛えて、強くなるから。

 

「だから・・・・・・これからも、俺のことを支えてくれないか?」

 

 傲慢な物言いだってことはわかってる。

 守れなかった癖にどの口が、と責められても当然だ。

 

 それでも、俺には君が必要なんだ。

 君がいなくちゃ、俺はダメみたいだ。

 君がいてくれたなら・・・・・・俺は、もっと強くなれる気がするんだ。

 

 だから・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・」

「イッシー?」

 

 やっぱり、駄目か・・・・・・。

 

「はい、いいですよ」

 

 そうだよな。俺なんかじゃ頼りにならないよな、ってあれ?

 

「いいのか!?」

「ええ、もちろんですよー?」

 

 えぇ・・・・・・そんなあっさり?

 もっと考えて決めてもいいのよ?

 

「私はずっとサバキさんのサポーターで、相棒です。それは初めてサバキさんのサポーターになった時から心に決めてました」

「お、おう?」

 

 いきなりのストレート。

 逆に困惑してしまう。

 

「いや・・・・・・ですか?」

「そ、そんなことねーよ?! えっと、ありがとうな!」

 

 実際、すごい嬉しい。

 だけど、そうやって面と向かって言われると、な・・・・・・めちゃくちゃ照れる。

 

「あははー、これからもよろしくお願いしますね、サバキさん」

「おう、こちらこそよろしくな、イッシー」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

 うーん、なんだこの空気。

 超そわそわする!

 不快じゃないけど、なんだろう? 場違い的な居心地の悪さ。

 さっきから心臓の音がドキドキうるさい。

 ってか暑い。暖房効きすぎじゃない?

 気のせいかイッシーの顔も紅潮してるみたいだし――――――

 

「イッシー・・・・・・」

「サバキさん・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お見舞いにきましたよぉ! 樹さーん! ってなんでサバキさんがここに?」

「もう、病院なんだから騒がしくしないの・・・・・・って、ん?」

 

 立花姉妹が病室にログインしてきました。

 

「あっ、あー。ちょっと俺、お手洗いに行ってくるわー。ということで後よろしく~」

 

 ここぞとばかりに尻尾巻いて逃げる俺。

 

「これは・・・・・・やっちゃったわね」

「やっちゃいましたかね?」

 

 なんとか『斎藤悟 死因・恥ずか死』にならずに済んだ俺であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、装甲声刃(アームドセイバー)片手に颯爽と現場入りしたはいいが、待ちぼうけを食らっていたヒビキさんの下にノツゴ退治完了の報告が届いた。

 取り越し苦労をくらったヒビキさんは「ウソでしょぉ・・・・・・?」と言って肩を落とし、俺とトドロキだけでほぼ一分前後でノツゴを倒したことに「ウソでしょぉ!?」と驚愕したのだった。

 

 そして余談だが、しばらくの間「サバキの奴ヤバくない?」とか「サバキ君ってば期待の新人だね!」みたいな謎の空気が『猛士』内で蔓延した。

 何故だ? 解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「石割さん・・・・・・」

「ん? あっ、斎藤君・・・・・・今はサバキ君かっ、あはは、ごめんごめん」

 

 病室を出て、曲がり角を曲がったところで石割さん・・・・・・先代裁鬼のサポーターで、イッシーの実の兄である人に出会った。

 手には中身が詰まった紙袋。

 おそらく一度イッシーの見舞いに来た後に医者から入院が必要だという話を聞いて、一度帰って家から着替えなどの日用品を持ってきたのだろう。

 

 石割さん自身にも仕事があっただろうに、それらを投げ出してでも家族の下に駆けつけたのだろう。

 妹想いの素晴らしい人だ。

 

 だから・・・・・・この人は、俺を殴る権利がある。

 

「この度のことは、本当にすみませんでした」

「うわっ、突然どうしたの?」

 

 あ、つい気持ちが先行し過ぎて・・・・・・そりゃ人前で頭を下げられても迷惑なだけだよな。

 

「俺の所為で、妹さんに怪我をさせてしまいました。・・・・・・医療費は俺が全部支払います」

「いやいやそこまでしてもらわなくても、仕事中の事故なら『猛士』が八割ぐらいは支払ってくれるしさ。気持ちだけ受け取っておくよ」

 

 え? そうなの? じゃなくてっ!

 

「・・・・・・俺は今後も、樹さんと『鬼』の活動をしていくつもりです」

「うん、それで?」

 

 へ? またしてもあっさり?

 もっとこう「お前どのツラ下げて言ってやがる!」とか「お前みたいなカスに妹を任しておけるか!」とか言われると覚悟してたんだけど。

 

「何も、言わないんですか?」

「え? 君がそう言うってことは、もう樹には相談して、樹はOKって言ってるんだよね?」

 

 はい、そうですけど・・・・・・。

 

「じゃあ僕が横からとやかく言うのは無粋ってもんだよ。それに、あの子は昔から正しいと思ったことは自分で決められるしっかりした子だったから・・・・・・ちょっとしっかりしすぎじゃないかなって不安になるぐらいに」

 

 で、でも俺がまたヘマをして彼女に怪我させてしまうかもって考えないんですか?

 

「うーん、じゃあその時は妹のことを一生、人生を懸けて責任を取ってもらおうかな?」

 

 え?

 

「はは、なーんてねっ。それじゃバイバーイ」

 

 ・・・・・・え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「? どうしたんですか、サバキさん。顔を真っ青にして」

「トドロキ・・・・・・生命保険って、どうやって入るんだっけ?」

「本当にどうしたんですか!? サバキさん?!」

 

 後に勘違いだとわかりましたとさ。めでたし、めでたし。




お寿司食いたいですね、サバキさん(金欠)←他意はない
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