「どうしたものかしらね…」
慎二に見逃されて生き延びた俺達は、全員揃って俺の家に集っていた。
気を失っていたイリヤは客室の一つに寝かせて、俺と遠坂は今後の方針を話し合うために、居間で膝を突き合わせている。
セイバーには、そんなイリヤの傍についてもらっている。未だイリヤスフィールとは友好的な関係を結んだわけではない、なんて遠坂が言うからだ。
そんなもの必要ない…と俺は言ったのだが、「あんなにあっさり誘拐された身で反論なんてするの?」とステキナエガオで言われては、抗う事も出来なかった。
まぁ、別にイリヤを害するわけでもない。渋々、俺はイリヤの監視を受け入れた。
「一先ず、衛宮君の話を聞かせてもらえる?一体あの時、何があったの?」
「あぁ、それは―――」
俺は、あの時のアーチャーとのやり取りと、奴とぶつかったことで知った己が辿る可能性の一つにおける生涯について、遠坂に話した。
アーチャーの正体が、未来の俺自身であることに始まり。
あの時俺が消えたのは、アーチャーの発動した固有結界に取り込まれたからであること。
そしてその中で見た、俺自身の素質、投影魔術―――ではない。現実にある剣を模倣し、己の中に内包し、それを現実へと写し出す、衛宮士郎の持つ力。
アーチャーは、その力を世界に巣食う人類の無意識の集合体『アラヤ』に認められ、世界の守護者として契約した、自分の未来の結果であること。
守護者となった己を嫌悪しているアーチャーは、過去の自分自身を殺すことで、己が生まれる可能性を消すことを企んでいたこと。
最終的に、何故かは分からないが戦意を失ったアーチャーが、俺の攻撃を防御しなかったことで、戦いが決着した事―――。
俺が連れ去られる前の会話で、アーチャーの正体が俺だというのはある程度想定していたのか、遠坂はそこではあまり驚かなかった。
だが、話が俺の素質―――固有結界の話になると、遠坂が途端に眉根を寄せた。
最後には、分かりやすく頭を抱える遠坂の姿があった。
「あの、遠坂…?どうかしたのか?」
「どうもこうもないわよ!あなたねぇ、その力がどれだけ途轍もない物なのか分かってるの!?」
「え?」
「固有結界は、術者の心象風景で現実を塗りつぶして内部の世界そのものを作り変える大魔術で、魔法に最も近い魔術と言われているの。…そんな物を持っているなんて知られたら、アナタ一発で封印指定喰らうわよ!?良くて監視付きの一生を送るか…最悪、解剖されて隅々まで解析されるでしょうね」
「解剖…!?」
「…そんな事になりたくなかったら、その力は死ぬまで隠しておくこと!いいわね!?」
「あ、あぁ…肝に銘じておく」
まさか、そこまで大事になるようなものだったなんて…。
つい昨日まで、三流どころか魔術師見習いだった俺からすれば、まさに青天の霹靂と言うべき変化だった。
いや別に、だからって俺の魔術師としての腕前が上がったわけじゃないんだろうが…。
「…まぁいいわ。いえ、全く良くはないけれどそれへの対応はまた今度に回しましょう。今は、使える戦力が増えた、と言う事に素直に喜んでおくことにするわ」
「あ、あぁ…それで、遠坂の方はどうだったんだよ。正直、何が何だかよくわからない内に、慎二が帰ってしまった…って感じなんだが」
「それは―――」
それから、俺は慎二の語った内容を遠坂から聞いた。
慎二の話を聞いてセイバーが戦意を失わなかったら、自分は大人しく引き下がると約束した事。
セイバーが、ブリテンの救済を願い、その為に王の選定のやり直しを、聖杯に望むつもりだった事。
それでは、ブリテンを救うことは出来ないであろう事。
それを理解出来たはずなのにしなかったセイバーは、ブリテン救済の意思が本当はなかったであろう事。
自らの持った願いは、掲げた理想の為ではなく、自身が抱いた後悔をなかったことにするという自分勝手な思いから来たものであろう事。
「自分のたった一つの願いだったブリテンの救済が出来ないと知って、セイバーは戦う理由を失っていた。しかも、元々抱いていたその願いが、自分本位な理由だったかもしれない可能性に気付かされて、自責の念に駆られていたんでしょうね」
「そんな…」
「ま、それもこれも、衛宮君のおかげで何とかなったけれどね。慎二に向けて切った啖呵は、なかなかカッコよかったわよ?………衛宮君?」
それを聞いて、俺の中に湧き上がった感情は―――怒りだった。
セイバーと繋がって、俺はセイバーの記憶を夢で見た。
選定の剣を抜き放ち、星の聖剣を手に取って。
数多の戦場を駆け抜け。
王としての責務を全うし。
多くの人々を助け、救い。
そしてその果てに―――臣下の裏切りによって幕を閉じた、アーサー王の生涯を。
それでも、まだ足りないというのか。
もう、彼女自身が救われてもいいんじゃないのか。
十分に、彼女は頑張っていたじゃないか。
なのに、どうして彼女は―――。
セイバーは、余りに自分に無頓着すぎる。
彼女はもっと、自分の事を考えるべきだ。
自分だけの幸福を追求するべきだと思う。
彼女にはその権利と、義務がある。少なくとも、俺はそう思う。
だから―――なんてことを考えていたからなのか
「ともかく…これからどうする、衛宮君?」
「あぁ、明日、セイバーとデートをする」
「は?」
「あ」
咄嗟に、思っていたことをそのまま口に出してしまった。
「ぷっ、ふふ…あっははははははははは!!!」
「…遠坂」
「いやごめんごめん、だって、衛宮君がいきなり変な事言うから…ぷっ、くく…」
「へ、変な事ってなんだよ!いやまぁ確かに、ちょっと飛躍しすぎてるかもとは思ったけど、これでも、俺なりに真剣に考えて…」
「ふぅーん、なるほどねぇ…そっかぁ、衛宮君は真剣にセイバーの事を考えてるのね…そっかそっか」
にやにやとこちらを見つめる遠坂に、むっとした顔を向けるも、遠坂はそれを意にも介さず、笑みを絶やすことはない。
「ま、いいんじゃない?」
「は?い、いいって…」
「だから、デートして来ればいいんじゃない、って言ったの。これから慎二に挑むにしても、準備にある程度時間はかかるけど、衛宮君に手伝ってもらうようなこともないしね。どうせ暇になるなら、少しでも有意義に時間を使う方が合理的でしょ?」
「い、いやでも…本当にいいのか?」
「だから、良いって言ってるでしょ?…ま、頑張んなさい。セイバーは難敵だけど、私も応援してあげるから」
「…助かるよ、遠坂」
こうして、俺は遠坂の協力を得て、セイバーを思いっきり楽しませるために、デートプランをみっちり練るのだった。
◆
翌日。
「それでね、セイバー。衛宮君から話があるんだって」
「はい、なんでしょうか、シロウ」
「と、遠坂!?」
朝食を終えて一服していた俺達に、とんだ爆弾を投げ込む遠坂。
いや、言わねば言わねばと思ってタイミングを見計らってはいたのだが、まさかこんな風に遠坂の手で無理矢理タイミングを作られるとは思っていなかった。
セイバーは大声を上げた俺を不思議そうに見つめているし、遠坂はそんな俺達を見て吹き出しそうになるのを必死にこらえている。
―――あ、後で覚えてろよ、遠坂…!
そんな、絶対に叶わないであろう反逆の意思を胸に秘めて、意を決してセイバーへと向き直る。
こほん、と咳ばらいを一つ入れて語りかける。
「あ、あぁ…その、セイバーと、デートしようと思っているんだ」
「でーと…とは、なんでしょう?申し訳ありません、シロウ。その言葉は、聖杯から与えられる知識にはないので…」
「え」
まさか、説明しなければならないのか?
デートとは、一般的には恋仲か、それに近しい関係にある男女が行う物であり。
互いの仲を深め、より親密な関係になる事を目的として遊び回る事で。
今回、俺がセイバーを連れ出そうとするのも、そういった意図があるという事を―――。
「―――っていう意味よ、セイバー。わかった?」
「はぁ…は!?」
と、遠坂ァァァアアア!!!
俺がうだうだしている間に、遠坂は細大漏らさず、現代にてデートと言われる行為に関する説明をおおよそ終えてしまっていた。
セイバーにとっては、驚天動地だろう。今は聖杯戦争の最中。そんな中、態々デートに出ようなんて阿呆な事を考えるマスターについては、セイバーの想像の外に違いない。
だが、俺に諦めるという考えはなかった。
俺はセイバーに、きちんと幸せになって欲しい。
少なくとも、そうなりたいと、セイバー自身が思うようになってほしい。
抱いた思いは、間違いなく本物なのだから。
その後、自暴自棄気味に強引に話を推し進める俺の意見に折れる形で、セイバーとのデートの約束は成ったのだった。
◆
それからは、怒濤の一日だった。
結局、特に希望を告げることのなかったセイバーを連れて、新都のあちこちを渡り歩いた。
慣れない女性服専門店に寄って、さっぱり興味を示さないセイバーと全く勝手の分からない俺とで右往左往して、結局店員さんのおすすめのままにセイバーを着せ替え人形にして。セイバーという極めつけの美人を前に舞い上がって気合を入れて衣服をチョイスする店員さんと、それに戸惑うセイバー。着替えを終えたセイバーを前に感想を求められたけれど、普段と装いの異なるセイバーを前に緊張しきりだった俺は、碌な答えを返すことは出来なかった。
他にも、アミューズメント施設に寄って、様々なゲームを楽しんだりもした。ボーリング等の体を動かすようなスポーツに近しいゲームでは完敗だったけれど、慎二と共に電子ゲームの類もよく遊んでいた俺が勝ててしまうようなゲームもあった。少なくともセイバーは、音楽を奏でる才能には些か難があるらしい。新しい発見。
遠坂おすすめのクレープ屋台にも寄ったりした。考えてみれば、家で出すのは普通の料理ばかりで、こういったデザートの類を作る事はなかった。流石のセイバーも、現代の甘味という未知の刺激には驚いたのか、無意識に顔を綻ばせていた。
色々あったけれど、俺は確信する。
セイバーは、義務感だけで出来上がった無機質な王なんかじゃない。
ちゃんと感情があって。何かを楽しめる気持ちがあって。
幸せにすることができる人間であることを。
◆
「ふぅ…」
一日遊びつくした俺達は、日もすっかり落ちて、街を照らすのは転々と存在する電灯のみ、なんて時間帯になった頃。
手頃なベンチに座って、家に戻る前の一服としていた。
「シロウ、今日は何故こんな事を?」
「え?」
「シロウは、今日は随分と疲れているように見えます。本来、戦いの前に休息を取るべきなのに、態々街に出てこのような事をする意味が…私には、わかりません」
「なぁ、セイバー…今日、楽しかったか?」
「え、えっと…その、目新しい事ばかりで、新鮮だったのは認めますが…」
「そっか…なら良かった」
その言葉を聞いて、俺はセイバーと向き合い、真正面から彼女と視線を合わせた。
今日、ずっと考えていたことを、セイバーに告げる。
「セイバー、俺は、セイバーは幸せになるべきだと思う。
…セイバーと繋がったせいか、セイバーの生前の姿を夢に見た。
国のために、民の為にって戦って、勝って―――そのたびに、誰かを犠牲にして。
だからって、セイバーの気持ちが分かるとは言わない。けど、俺から言わせてもらえれば、もういいんじゃないかって、そう思う。
もう、セイバーは十分に頑張ったじゃないか。出来る限りを尽くしたじゃないか。救うために自分を犠牲にするばかりで―――セイバーは、全然幸せになんてなれていないじゃないか!」
「それは―――できません、シロウ」
「セイバー!」
「シロウ。私は、あなたがアインツベルン城で、ライダーのマスターに向けて言った言葉は、正しいと思う。
『全てを無かったことになんて、してはいけない』―――その通りです。私は、ブリテンを守るために剣を取り、そして戦った。だからと言って、私だけが懸命だったわけではない。
共に戦った騎士も居ました。飢えに耐え凌ぐ民が居ました。そんな彼らの行いすら消す権利は―――私にある筈も無かった。…私は、大馬鹿者です。
ですが、それとこれとは話が違う。
私は、紛れもなくブリテンの王です。聖剣を抜くことを決意し、そして選定の剣を抜いた時点で、それは決まっていた。そしてそれは、ブリテンという国に対して、責任を負うという事です。
…結局ブリテンを救えなかった私には、救われる権利などありはしない。あってはならない」
「そんなことないっ!確かにブリテンは、国としては滅んだかもしれない。けど、慎二だって言っていたんだろう!セイバーじゃなければ、もっと多くの犠牲が出ていた筈だ!…なら、セイバーの力で救った人の分だけ、少なくともセイバーには幸せになる権利があって然るべきじゃないのか!?」
「いいえ。…シロウ、これは私の納得の問題なのです。…私は、私を許せない」
「―――っ」
沈痛な面持ちでそう呟く彼女を前に、怒りが頂点に達する。
何故、そんな事を言うのか。
何故、わかってくれないのか。
何故―――自分を思う誰かの存在を、認めないのか。
「この、分からず屋ッ!!!」
あぁいいだろう!
なら言ってやる、言ってやるとも!
こんな察しの悪い頑固者に、こんな回りくどい言葉で届くわけもなかったんだ!
「セイバー、よく聞け」
「俺は、お前が好きだ」
「………は?シロウ、何を」
「権利だ義務だ、納得だなんて、はっきり言っちまえば、本当はどうでもいい。俺はただ、セイバーが不幸なのが我慢できないだけだ!好きになった女の子が、そんな風に沈んでいる姿が見ていられないだけだ!
これは俺の我儘で、勝手な言い分だけど―――セイバーには幸せになって欲しい!セイバーを幸せにしたい!」
「し、ろう…」
呆然とするセイバーを前に、自棄になった俺は頭に浮かぶままに言葉を羅列する。
自覚がある。
俺は、今とてつもなく恥ずかしい事をしている。
正直、後で思い返したら絶対に後悔することになるであろう所業を積み上げている。
だが、そんなこと構うもんか。
セイバーを幸せにできるなら、俺はなんだってする。してみせる。
人を好きになるっていうのは、きっと、そういう事だと思うから―――!
「改めてもう一回、はっきり言うぞ、セイバー」
「俺は、お前が好きだ」
「―――――――――ぁ」
潤んだ瞳でいるセイバーから、俺はずっと視線を外さずに見つめ続ける。
思いの丈はぶつけた。言いたいことは言い切った。
あとは、セイバーの返事を待つだけだ。
数秒か、数分か、それともいつの間にか数時間くらい経ってしまったか。
バクバクと心臓がうるさく鳴り響く中、時間の感覚も曖昧になる程緊張したまま、俺はセイバーの言葉を待ち続ける。
そしてとうとう、セイバーがその口を開き―――
「我が伴侶たるセイバーを娶ろうとは、随分と思い上がった雑種も居たものよ」
黄金の王が、現れた。
◆
「まさか人類史最古の王、ギルガメッシュとはね…」
予想もしなかったビッグネームに、思わず唸る。
夜遅くまで帰ってこない衛宮君達に、『これは朝帰りかな?』なんて呑気に考えていた所、その予想に反して二人が帰宅。
しかし予想に反していたのはそれだけではなく、衛宮君は全身血まみれになりながらセイバーに支えられて帰ってきて、それにぎょっとしつつもとりあえず適当にその血で汚れた体を綺麗にし、今は衛宮君の自室に寝かせている。
そこまで終えて、私はセイバーから事のあらましを聞いた。
前回の聖杯戦争参加サーヴァント、アーチャー・ギルガメッシュが受肉しており、そのギルガメッシュと戦闘になった事。
セイバーはそれに打ち勝つことができず、絶体絶命まで追いやられた事。
その時、衛宮君に宿っていた『
ギルガメッシュなりの拘りなのか、『このような道端で再開を終わらせるのも興覚めだ』とかなんとか言って、再会を一方的に約束したギルガメッシュは去っていった事。
「まさか、慎二の勢力以外に聖杯戦争への参加資格を持つ者が残っていただなんて…」
先日あの兄弟子であるエセ神父に聞いた限りでは、キャスターとアサシンの組は脱落、ランサーもまた脱落し、そのマスターは教会で保護している、と聞いていた。
そうなれば残っているのは、セイバーとそのマスターである衛宮君、アーチャーとそのマスターだった私、バーサーカーとそのマスターだったイリヤスフィール、そして現在はアーチャーとバーサーカー、そしてライダーを擁する慎二だけ。
…の、筈だったのだが。
「ていうか、アイツ監督役なんだからギルガメッシュが残ってたの知ってる筈よね…あんにゃろう、今度会ったら絶対殴る…!」
意図的にこちらに情報を渡していなかったであろうエセ神父の顔を脳内でフルボッコにしつつ、セイバーへと向き直る。
「しっかし、永遠に遠き理想郷かぁ…衛宮君が固有結界なんて大魔術の素質を持っていたのは、そんなのを埋め込まれていたからってわけね、納得したわ」
「それで、どうするの、リン?」
「どうもこうもないわ。出来る限りの準備をして決戦に臨む。…結局、そうするしかないのは変わりないもの」
問いかけてくるのは、昼間の内に目を覚ましたイリヤスフィール。
彼女とも色々あったけれども、最終的にはこうして、私達と慎二、及びギルガメッシュを倒すための戦力となる事を承知してくれていた。
そんな彼女と共に一度遠坂邸に戻った私は、遥か昔、
衛宮君の投影…ではなく、固有結界を用いれば、恐らくだが原典そのものとはいかないまでもそれなり以上の出来の強力な礼装が手に入る。
サーヴァントであるセイバー。
永遠に遠き理想郷。
衛宮君の固有結界。
私と、切り札となる例の礼装。
あとはまぁ、イリヤスフィールも戦力に加えるとして。
「この面子で、あの二人に挑むわけだけど―――」
ピンポーン。
「来客?こんな時間に?一体だれが…セイバー?」
「…サーヴァントの気配がします」
警戒心を露わにするセイバーに問えば、そんな返答が。
もしやギルガメッシュ―――とも思うが、聞いた限り、さっきの今で訪れるような性格のようには思えないし、ギルガメッシュならギルガメッシュだとセイバーも言うだろう。けれど他に候補と言えば―――もしや、慎二だろうか?
アイツもあのギルガメッシュに出会い、敗れ、逃走。そして共闘の申し出をしてきた。その可能性が、現状では一番高い気もする。
ギルガメッシュのようなイレギュラーが居る状態で、聖杯戦争を無理に推し進めることもないだろう。もし慎二だとしたら、ギルガメッシュを倒すまでという条件で共闘し、しかる後に決着をつける…というのも、十分に有りなように思える。
「…一先ず出てみましょう。セイバー、着いてきて」
セイバーを伴って玄関まで向かう。
扉越しに見れば、そこには光に照らされて四人分の人影が浮かび上がっている。
「どちら様かしら」
「………私は、間桐臓硯」
「間桐…臓硯?」
確か、現在当主である老人で、慎二と…今は桜の祖父でもある魔術師…だった、筈だ。
そんな男が、何故…というか、聞いて居た限りでは老人だったという話だが、それにしては随分と声が若いような…?
「こちらに戦闘の意思はない。私達は―――情報の提供、そして交渉をしに来た。どうか聞き入れて欲しい」
「リン、どうしますか?」
「…セイバー、サーヴァントの気配は一つだけ?」
「はい」
「ギルガメッシュでは、ないのよね」
「えぇ。この気配は、恐らく…ライダーのものかと思います」
「ライダー?それは慎二のサーヴァントだったんじゃ…いえ、話していても仕方がないわね。セイバー、いざという時は…」
「えぇ、私が剣となり盾となる。安心してください、リン」
「…なら、決まりね。いいわ、入ってきなさい」
「感謝する」
その言葉と共に、衛宮家玄関の戸が開けられる。
「なっ―――!?」
戸を開けた先に居たのは、セイバーが感じ取った通り、ライダーのサーヴァント。そしてたった一人の男性であるところからして、中心に立っているのが間桐臓硯だろう。その後ろにいる妙齢の女性は知らない人間だ。
だが私は、戸を開けた一人の少女の姿にこそ驚愕した。
「あんたは―――!」
我様「我が嫁となれ、セイバー!」
セイバー「( ゚ω゚ ) お 断 り し ま す」
どうやっても原作そのまんまにしかならないので省略。