Fate/Sprout Knight   作:戯れ

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感想欄に余りに愉悦部の方が多かったので…


間桐桜に一切合切を―――

  伝える
 →伝えない
 
臓硯「彼女に態々辛い事実を伝える必要もないだろう」






ルート分岐―BAD END―

 

 

 

 

「桜」

 

 部屋の隅で虚空を見つめている少女へ向けて語り掛ける。

 何日も食事を取っていないのだろう、頬はこけて唇はかさつき、かつての快活な面影は影も形もない。

 呼びかけに反応することもなく、変わらず虚ろな目で虚空を見つめ続ける。

 

「しっかりしなさい!…慎二も、そう望んでるわ」

 

 慎二。

 その言葉に、少女は反応する。

 

「…たが」

 

「………桜?」

 

「あなたが、それを言うんですか。…兄さんを助けなかったあなたがッ!!!」

 

「っ…」

 

 桜は、私に掴みかかって壁へと押し付ける。

 私はその激昂を甘んじて受けることを選んだ。

 

「かっ、は…!」

 

「兄さん、兄さん、兄さん…!兄さんが、どこにもいないんですよ?兄さんが、帰ってきてくれないんです。あなたのせいだ。あなたが役立たずだから…!あなたが!あなたがッ!!あな、っ…ごほっ…!」

 

 衰弱していた体には、そうやって叫ぶだけでも辛かったのだろう。

 私を壁へと抑えつけていた手を放して、せき込む口元を覆って体を丸める桜。

 

「…桜」

 

「出ていって」

 

「ねぇ、聞いて桜」

 

「出て行ってッ!!!」

 

「………また来るわ」

 

 今はまだ、どうにもできない。

 ともかく時間を置いてもう一度来ようとだけ決めて、私は引き下がる事にした。

 

 

 

 

 

 

「桜」

 

 次に現れたのは、兄さんの面影が垣間見える人物。

 私の現在の祖父である間桐臓硯だった。

 

「………慎二を、取り戻せる方法がある」

 

「!?」

 

「全魔術師が共通して持つ野望がある。この世界の、全ての始まりが記録されているという場所。アカシック・レコードとも呼ばれるそれは、魔術師達の間で『根源の渦』と呼ばれている」

 

「根源の、渦」

 

「そうだ。全ての始まりであるその場所は、逆説的にあらゆる場所へと繋がる場所でもある。

 そこに辿り着けたのならば…恐らくは、慎二を取り戻す方法も手に入れられるはずだ」

 

「………」

 

「だがそれは、あらゆる魔術師達が、何世代掛けてもなお辿り着けない場所だ。

 そこに辿り着ける可能性は―――」

 

「でも、兄さんを取り戻すには、そこに行くしかないんですね」

 

「…少なくとも、魔術的にも科学的にも、死者の蘇生は不可能だとされている。

 それこそ、魔法を用いてもなお、な」

 

「なら、辿り着いて見せます。たとえ―――」

 

 

 

―――どんな犠牲を、払う事になったとしても

 

 

 

 

 

 

「…また邪魔をしに来たんですか、先輩」

 

「えぇ、あなたにそんな事をさせるわけにはいかないもの。

 …現存人類、およそ70億をエネルギー源として利用する、根源の渦への到達。そんな所業、許すわけにはいかないわ」

 

「もうやめろ桜!こんなこと、慎二の奴だって―――」

 

「うるさいッ!!!」

 

 少女の悲痛な叫びが、洞窟の中に木霊する。

 

「誰のせいで、こんなことをする羽目になったと思ってるんですか!…あの日、あなた達がきちんと兄さんを助けてくれていれば、私は、私達は―――!」

 

「そうね、そこは言い訳しないわ。私達は慎二の奴に助けられた。慎二の奴を助けられなかったのは、私達に力が足りなかったから」

 

「そう思うなら、邪魔をしないでくれませんか?」

 

「そういうわけにはいかないわよ。…慎二の奴から、アンタの事を頼まれているもの。アンタを、人類絶滅の引き金になんてするわけにはいかないわ」

 

「―――あなたが」

 

 

 

「あなたが、兄さんの事を口にするなッ!!!」

 

 

 

 

 

 

激しい戦いの果てに、勝利したのは私達だった。

ボロボロになったまま洞窟の壁面に体を預ける桜に、私は手に持つアゾット剣を突きつける。

 

「これで終わりよ」

 

「どう、して…私の、邪魔ばかり…そんなに、私が嫌いですか…不出来な妹が幸せになるのが、そんなに許せませんか?ねぇ、姉さん?」

 

 姉さん、と。

 ずっと、そう呼び掛けて欲しかったのに。

 そう呼び掛けられた私は、ひどく胸が痛んでしょうがない。

 

「―――――――――」

 

「私は、ただもう一度、」

 

 

 

 ―――兄さんに会いたかっただけなのに

 

 

 

「それすら許してくれないんですか、一度も助けてくれなかったのに、手を差し伸べることすらしなかったあなたは、ひたすら私の邪魔ばかり…あなたなんて、あなたなんて―――最初から、居なければ良かった………ッ!!!」

 

 奥歯が噛み砕けるほどに歯を食いしばって、目の前の少女を睨みつける。

 

 なけなしの命の灯火と。

 ありったけの憎悪を込めて。

 

「さようなら、桜」

 

 ―――それと、ごめんなさい

 

 その言葉を、口にすることは出来なかった。

 それこそ、私にそんな権利はないだろう。

 

 子供の頃に別れて以来、アナタの事を忘れた事なんてなかった。

 私が必死に研鑽を積んでいれば、苦痛から逃げずに立ち向かっていれば、その分あなたは幸せになるんだと無邪気に信じて。

 そんな思いでずっと、優等生として表の顔を保ってきたし、血反吐を吐くような魔術の修練も我慢してきた。

 

 なのにアンタは、そんな私とは無関係に、勝手に幸せにしてもらっていた。

 

 ずっと、そんな未来を思い描いて努力してきた筈なのに、いざあなたが慎二と一緒に幸せそうにしているのを見たら、なんだか微妙な気分になって、でもまぁ幸せならそれでいいかって、無理矢理自分を納得させて。

 

 

 

 ―――私は、そんなあなたの幸せを、守ってやる事さえできなかった。

 

 

 

 不甲斐ないお姉ちゃんでごめんなさい。

 役に立たないお姉ちゃんでごめんなさい。

 あなたを幸せにしてあげられなくて―――ごめんなさい。

 

 言葉で謝ったって、意味なんてないわよね。

 あなたが愛したアイツを見殺しにした私に、もはや償う手段なんて存在しない。

 ならせめて、これ以上あなたの罪を重ねさせないことが、私にできる精一杯の―――

 

 

 

 がしりと、首を握られる。

 

「あなた一人、幸せになんてさせない。―――私と共に地獄に落ちろ、遠坂凛!」

 

 心臓を貫かれた桜が、最後の力を振り絞って、私の喉元に触れた両手から虚無の魔術を発動させる。

 咄嗟に対抗魔術でレジストしようとしたけれど―――

 

 ―――いいわ。せめて、一緒に居てあげる

 

 憎悪を込めて私を睨む桜の姿に、私はその気を失ってしまった。

 大好きなあの子をこんなにしてしまったのは私で。

 それを償う方法なんてないと思っていたけれど。

 

 あの最期の瞬間、慎二は満足して逝った。

 『桜を頼む』だなんて身勝手な願いを私達に押し付けて。

 そんなアイツは、きっと天国で能天気に過ごしているんだろうし。

 

 ―――そうね、あなた一人地獄に行かせるわけにもいかないわよね。

 

 

 

 憎悪によって磨かれたあの子の憤怒の咆哮が、私の首を噛み千切った。

 

 

 

 

 

 

「皆、死んじまったよ、爺さん」

 

 青年となり、孤独になった少年だった者は、自らが追うべき背中を見せてくれた男の墓標の前に立っていた。

 

「なぁ…俺はどうすればよかったのかな」

 

 返答はない。

 

「けどさ、これからどうするかは決めてるんだ」

 

 

 

 ―――俺はやっぱり、アンタの後を追う事にする。

 

 

 

 一を殺して十を救う。十を殺して百を救う。百を殺して千を救う。

 理想とした背中を見せた男は、そんな生き方を選んだ、度し難いほどの聖人だった。

 恩人だった親友もその手で殺し、その妹へ報いることすら叶わず、共に戦った少女を守り切る事も出来ず、父だった男の忘れ形見である姉を救う事も出来なかった少年に―――もはや、殺せない命はない。

 

 きっと彼は、素晴らしき正義の味方になることだろう。

 

 

 

―――BAD END―――

 








~~~キャスター道場~~~



マスター・リリィ(巫女服に身を包んだ謎のキャスター、の若き日の姿)「というわけで!多くの皆様のリクエストにお応えして!バッドエンドルート解禁でございます!」

弟子ミ二号(ふんどし一丁にねじり鉢巻きの謎のアサシン)「応よ、マスター!今回のBADの条件はなんだったんでい!?」

マスター・リリィ「それは、終盤で間桐臓硯に、真っすぐ衛宮邸に向かわせてしまったこと!要らない気遣いが最悪の結果を呼び寄せてしまったわけです!
 主人公に安らかに逝かせてはいけません!最後の瞬間までみじめったらしく声を掛けて、未練たらたらの状態にしてしまいましょう!
そうでもしないと、『あぁ、安心した…』なんて言って大人しく( ˘ω˘)スヤァしてしまうので!」

弟子ミ二号「応、マスター!諸君は最後の選択肢に戻るべし!最後の瞬間、間桐慎二少年に未練を呼び起こせそうな人物が、兄の帰りを待って食事を作っているはずだ!」

マスター・リリィ「その通りです!間桐慎二は聖剣の光に飲まれて( ˘ω˘)スヤァしている頃、少女が『兄さん、まだかな…』なんて言って膝を抱えて夜の空を見上げているので!きちんと死に目に会わせてあげる事!それがハッピーエンドの条件になるのです!」

弟子ミ二号「…ところで、何故このコーナーを私達が?」

マスター・リリィ「いやほら…私達、本編で全く出番がなかったから」





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