桜とイチャイチャ第二弾。
イチャイチャって、書くの難しい…書いてる内に何故か事前的な雰囲気に…なので微エロ注意
っていうか展開を考えてて思った
この主人公(傲岸不遜な完璧超人)、イチャイチャ展開に向いてねぇ!
「兄さん、まだ起きてますか?」
「あぁ。どうした、桜?」
日も沈んで、月が天高く昇った頃。
私は兄さんの部屋を訪れていた。
「あの、今日は兄さんと一緒に寝てもいいですか?」
「…は?」
「そ、その!…かれこれ一週間、兄さんと離れ離れだったから、兄さん成分がまったく足りていないと言うか、可及的速やかに補充をしたいと言うかですね?」
緊張で支離滅裂な言葉を吐きながら、兄さんの様子を伺う。
ガシガシと頭をかく兄さんは、少しばかり悩んだ様子を見せた後、「はぁ…」と深いため息を吐いて―――
「ま、別にいいぜ。こっちこいよ、桜」
「!…はいっ」
お許しが出た所で、トテトテと小走りに兄さんのベッドへと走り寄る。
そのまま、兄さんの手で持ち上げられた布団の中、その奥に見える兄さんの胸元へ向けてダイブする。
「おっと…」
「~♪」
兄さんに抱き着いて、その感触を存分に堪能する。
胸元に顔をこすりつけて深呼吸。兄さんの匂いを、肺一杯に吸い込む。
兄さんがちゃんと傍にいるという安心感が、私に麻薬染みた多幸感をもたらした。
「すぅー…はぁ…あぁ、兄さん…!」
「ったく、何してんだよ、桜」
「だって…本当に、怖かったんです、あの時」
目の前で、聖剣の光に呑まれた兄さんを見た時。
私は、世界が真っ暗に染まって閉ざされる感覚に陥った。
私の全ては、兄さんで出来ている。
私が不幸を知らずに生きてこれたのは、兄さんが私の代わりに不幸に耐えていたからで。
私が幸福に今を生きていられるのは、兄さんがいつも私を守り導いてくれたからだ。
そんな兄さんが、私の人生から失われてしまったら、私はこれからどうやって生きていけばいいのかも分からなくなっていただろう。
「だから、一杯兄さんを、感じさせてください」
兄さんがきちんとここにいる。
その実感を、与えてください。
「そいつを言われると弱いな…仕方がない。暫くは、お前の望むままに甘えられてやるよ」
「はいっ!」
ならば存分に、甘えさせてもらおう。
一先ず深呼吸を止めた私は、優男染みた雰囲気に反してとてもたくましく育てられた兄さんの胸元に頬ずりする。
硬く鍛え上げられた胸板が、私の頬を押し返してくる。その感触がたまらなく、やめられなくて止まらない。
そんな私を、兄さんは抱き上げて自らの上に乗せる。
片腕でがっちりと私を固定した兄さんは、その体勢のまま頬ずりする私の頭を優しく撫でる。
ごつごつとした男の人らしい感触が滑る感覚に、脳髄の奥の奥まで蕩けそうになる。
「ん、はぁ…兄さん」
兄さんの胸の感触を堪能した私は、両腕を首元に回して、ずりずりと兄さんの体の上を這いずって、兄さんと頭の天辺を合わせるように体を持ち上げる。
目と鼻の先にある兄さんの顔に緊張しながら、今度はゆっくりとその頬へ向けてすり寄った。
犬猫の赤子が親にそうするように自らの頬を兄さんの頬へとすり寄せる私に対して、兄さんもまた、私の頭を撫でる手を止めることなく、私の方へと体を押し付けてくれる。
「兄、さん…」
私は、潤んだ瞳を兄さんへ向ける。
「桜…」
私の名を、愛おし気に呼んでくれる兄さんへ向けて近づく。
そして。
唇と。
唇が。
―――そこで、私の意識はぷっつりと途切れた。
◆
「ふぅ…」
桜を暗示で眠らせた僕は、胸元に崩れ落ちた桜を、床に落ちてしまわないよう抱き寄せる。
「ったく、こいつはもっと自分ってものを自覚するべきだな」
「それを阻害しているのは君ではないかね?慎二」
「…覗き見ってのは趣味が悪いんじゃないのか、臓硯?」
「ふむ、それは私もそう思う。…だがまぁ、館の中で魔術行使の気配を感じれば、家主として確認しないわけにもいかないのでな」
「…チッ」
起き上がって、ベッドの際に立つ臓硯と向かい合う。
こいつの言う通りだった。
使用したのは、ここに桜が訪れたその瞬間。
薄桃色の薄手のネグリジェに身を包んだ桜。
月明りに照らされて映る、緊張に紅潮している頬。
今にも零れ落ちそうになっていた豊かな双丘。
透き通ったネグリジェ越しに見える真っ白な肌。
女性らしい丸みと細さを見せつける剥き出しの肢体。
目に映る全てが官能的であり、その姿に僕は見蕩れ、全身の血液が興奮に沸騰するのを 抑えつけるため、自己暗示の為に魔術を行使したのだった。
「君が自己暗示などせず、生物として正しい反応を返せば、彼女とて自分自身の魅力を理解するのではないかね?」
「正しい反応、ねぇ」
胸元にダイブされた時、そのまま押し倒して、衣服の役割を果たさないその薄布をはぎ取ってしまおうかと悩んだ。
自身の上に乗った桜が、脱力して体を預ける様子を見て、このまま彼女の全てを貪ってしまおうかと思案した。
僕の匂いを胸一杯に吸い込む姿を見て、『僕だって同じように、桜を全感覚で感じ取りたい』という欲求を抑えるのはとんでもない苦行だった。
最後、桜の顔が目の前にあった時、全ての理性を手放して彼女に手を出す決断をしなかったのは奇跡に近い。
「何故、この子を拒絶する?君もこの子も、そうある事を望んでいるのではないのか?」
「…理由は、色々あるがな」
なんとなくの流れで彼女との『初めて』を済ませてしまう事を惜しんだというのが一つ。
桜の方は準備万端で臨んできたのかもしれないが、こちらはそんなことは全くなかったため、不測の事態を避けたかったから日を改めたかったというのが一つ。
直接的な行為に及ぶのは、年齢的に不味いだろうという常識的判断が一つ。
「けどまぁ、突き詰めれば僕の『覚悟』の問題さ」
僕は、『間桐慎二』だが、『間桐慎二』ではない。
僕は、『間桐慎二』ではないが、『間桐慎二』である。
『間桐慎二』では、この世界に辿り着くことさえできなかっただろう。故に、僕は『間桐慎二ではない』。
だが同時にどうしようもなく『間桐慎二』であり。
―――僕は、桜をきちんと幸せにできるのだろうか
「…私からしてみれば、君以外の誰にこの子を幸せにできるのか、と問いたいところだが」
「別に、出来ないとは言っちゃいない。ただ、簡単に結論を出せる問題でもないってだけさ。…こいつの事もあるしな」
トントン、と叩いた胸元に今もなお埋まっているのは、英雄王より貸与されし万能の杯。
こいつの支払いを済ませない内は、おちおち一息つくのもままならない。
そんな自分が、他人の面倒まで見れる自信があるか、と言えば…これもまた、簡単に結論の出せる問題でもないだろう。
「そうか。…ならば、もう何も言うまい。私にできることは、せめて少しでもその『覚悟』を決める時が早まるよう、助力する事だけだ」
「ま、その辺は頼むよお爺様」
そのまま闇に溶け込んで来たときと同じように音もなく去っていく臓硯を見送る。
二人きりになった部屋で、安らかに眠る桜の寝顔を見つめる。
「んぅ…兄さん、大好き、です………すぅ」
「…あぁ、僕もだ」
―――愛してるぜ、桜
この言葉を、直接彼女に届ける日は遥か遠い彼方か、それとも―――
後日、最後の最後で一線を越えさせてもらえなかった桜がぷんすかと怒っていじけてしまうのは、また別の話。
拙作は、これで一先ず終わりとなります。
色々書きたいもの、考えていることはあるのですが、それを書く暇が…
貧乏暇なしとはまさにその通りですね。仕事とFGOをやっていたらもう暇な時間が残りません。
拙作のようなものを読んでいただき、誠にありがとうございました。
もし何かまかり間違って作者が続きか別の作品を書くことがあれば、そちらもご一読いただければ幸いです。