Fate/Sprout Knight   作:戯れ

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続かないと言ったな、あれは嘘だ。

いえ違うんです。本当にこんなの書いてる暇はないんです。
けど妄想が止まらなかったんです。せめて思いついたアイディア一通りぶちまけるだけでもしたかったんです。



注意書き
・ダイジェスト
・雑クォリティ
・勢い100%
・やりたいこと、やったもん勝ち

それでもよろしければ、どうぞ―――



序章―冬木―

 

 

「もう!何よ!何なのよ、こいつらは!」

 

「落ち着いてください、所長!」

 

 オレ事藤丸立香は、意味不明な事態に見舞われていた。

 

 街で行っていた献血に参加して、そこで『君には資格がある!』と怪しげな文句を告げる関係者の人にあれよあれよという間に『人理継続保障機関 フィニス・カルデア』なる場所に連れてこられ。

 そこで『人理の崩壊』などというスケールの壊れた話を聞かされ、しかもそれを防ぐのはオレ達だと聞かされて。

 紆余曲折の末―――オレ達はこの燃え上がる街に放り出され、歩く骸骨の群れに襲われている。

 

「ハァッ!」

 

 気合の掛け声とともに骸骨を吹っ飛ばしたのは、マシュ・キリエライト。

 オレの事を何故か『先輩』と呼び慕ってくれる、可愛らしい女の子だ。

 そんな彼女が、自分よりも大きいあの巨大な盾を振り回しながら、歩く骸骨たちを追い払ってくれている。

 それは、サーヴァントが憑依したからだとか、そもサーヴァントと言うのは過去・未来において人類史に名を残した人々の魂だとか…一通りの説明は受けたけれど、正直オレにはちんぷんかんぷんだった。

 ただ一つ確かなのは、オレにできるのはこうしてマシュの背中に隠れて大人しくしていることくらいだということだった。

 

「…エネミーの殲滅、完了しました」

 

「っ、ふぅ…よ、よくやったわ。いえそれよりも!これはどういうこと!?一体何が起こったの!?」

 

『それについては、僕から説明します』

 

 モニターに映し出された、ロマ二・アーキマン―――本人は、ドクター・ロマンと呼んで欲しいと言っていた―――…現在のカルデアをまとめ上げる、医療部門のトップだという人物が、所長であるオルガマリー・アニムスフィアへ現状を説明する。

 それにヒステリックに喚き散らす所長。ドクターが何故そこで実権を握っているのかという詰問に始まり、次から次へと罵倒と文句が飛び出てくる。

 無理もない。見た所、オルガマリー所長は成人してもいない女の子だ。どんな経緯があって『所長』なんていう地位についてるのかは分からないけれど、そんな女の子が自分がトップを務める組織が、人員的にも物理的にも壊滅状態にあるなんて話を聞かされたら普通は平静ではいられないだろう。塞ぎ込んだり逃げ出したりせず、ヒステリックに喚き散らす元気がある分だけまだマシなくらいだ。

 

「これから、どうなるのでしょうか…」

 

 

 

「それを考える必要はありません。あなた達はここで死ぬのですから」

 

 マシュの呟きに、返答の声が上がった。

 そこを見やれば、立っているのはサディスティックな笑みを浮かべた妖艶な美女だった。

 

「サーヴァント!?まさか、こんなところで!?」

 

「先輩、下がって!」

 

 盾を構えたマシュへと向けて、その美女が突貫する。

 ダンプカーの正面衝突のような豪快な音が鳴り響いた。

 

「ぐっ…この力、竜牙兵とは比べ物になりません…っ!」

 

「こ、これが、サーヴァント!?…ど、どうするのよ!どうすればいいの!?もう、誰か助けて!助けてよぉ、レフぅ!」

 

 

 

 ―――随分と元気だなぁ、メドゥーサ

 

「!?」

 

 更にそこに、新たな声が存在を主張する。

 

 ―――その手に持ってるのは僕の槍か?

 

 ―――死因が武器になる事もあるって聞くが、本当にそうなんだな

 

 ―――ま、お前みたいな怪物が、人間様の武器を満足に使えるわけもないけどな

 

 ―――なんなら、僕が使い方を教えてやろうか?

 

 ―――代金は、お前の首で『また』払ってもらうけどな。ハハハハハ!

 

「お前…お前、まさか…出てこい!私の前に姿を現せ!殺してやる…お前を殺してやるぞ…」

 

 

 

「ペルセェェェウスッ!!!」

 

 

 

「残念だったな、もう無理だぜ」

 

 美女…メドゥーサの背後に突然姿を現した青年は、背後を振り返らせる間もなく、その手に握ったメドゥーサが持つのと同じ槍を振るって、その首を斬り落とした。

 

 

 

 

 

 

「あなたも、デミ・サーヴァントに…?」

 

「どうやらそうらしいな。意識としては間桐慎二としての意識の方が強いが、きちんと『ペルセウス』としての意識や記憶も持ってる」

 

「ペルセウス…ギリシャ神話において謳われる、神に愛された英雄、ですね。メドゥーサを討伐した英雄としても有名で、メドゥーサ打倒のために神から多くの道具を与えられたとか。…その手の槍は、不死殺しの槍であるハルペーですか?それに、先ほど姿を隠していたのは、ハデスの闇兜…?」

 

「そうそう。なんだ、詳しいじゃないか」

 

「い、いえ、それほどでも…」

 

「…って、何和やかに会話してるのよ!?今がどういう事態か分かってるの!?」

 

「…どういう事態なんだ?」

 

「緊急事態よッ!!!」

 

「まぁそういきり立つなよ」

 

「何でそう落ち着いていられるのよ!?なんで、何が起きたのかもわからないのに!しかも今いるのは特異点だっていうこの燃え上がった街で!辺りには敵性エネミーやサーヴァントまで歩いていて!そんな状態で…」

 

「だから、落ち着けって、な?」

 

「っ…」

 

 オルガマリー所長の唇へ、人差し指を当てる青年―――間桐慎二。

 甘いマスクの慎二から間近で微笑まれて、頬を染めて押し黙る所長。

 

「大丈夫だ。どんな理由だとしても、何が起きたのだとしても、ここがどこでどんな場所だろうが、僕が何とかしてやるさ」

 

「ぁ…」

 

「アンタは落ち着いてふんぞり返ってればいいんだよ。どうせ僕が全部解決してやるんだから、その時を大人しく待ってさえいればいいのさ。…な?簡単だろ?」

 

「っ、ぁ、その…わ、わかったわ。…あなたのその言葉を信じましょう。実際に聖杯戦争を戦い、勝ち残ったというあなたの手腕に期待します」

 

「そうそう、それでいいのさ」

 

 

 

 狂乱するオルガマリー所長を見事に口説き落として見せた慎二…いや慎二さんに対して、オレは同じ男として畏敬の念を抱かずには居られなかった。

 

 

 

 

 

 

「セイバー…何で、そんなところに居るんだよ…!」

 

「それを今、あなたが問う余裕があるのか?」

 

 黒い光の奔流が、セイバー…アルトリア・ペンドラゴンの握る聖剣から放たれる。

 

「まずい、避けろ!」

 

 慎二さんは傍に居た妹の桜と所長を。

 魔法少女姿のイリヤは傍に居た弟(兄?)である赤い外套を身に纏った少年、士郎を。

 そしてマアンナという乗り物(弓?)に乗る凛がオレとマシュの手を取って、それぞれ聖剣の射線上から逃れようとする―――が、

 

「逃しはせんさ」

 

「しまった!?」

 

 セイバーの傍に控えるアーチャーから放たれた弓矢が、凛がオレへと伸ばした手を遮った。

 

「戦力の弱いところから狙う、戦術の基本だろう?」

 

 そのままアーチャーから追撃を加えられて、凛はオレ達から遠く離れてしまった。

 

 

 

約束された(エクスカリバー)勝利の剣(モルガーン)ッ!」

 

 

 

 黒い閃光が、オレとマシュを呑み込まんと迫る。

 それを前に、マシュは盾を地面に突き立てて構えた。

 

「ぐ、ぅぅぅぅううううう!!!」

 

 軋み悲鳴を上げるマシュの体を前に、何もできない自分を恥じる。

 

「くっ、そぉぉぉぉおおおお!!!」

 

 ―――オレには、何の力もない

 

 ―――他の人達みたいに、サーヴァントの力をこの身に宿しているわけでもなければ

 

 ―――所長のように、魔術を習得してすらいない

 

 ―――ただの一般人が、こんなところに居るのが間違いだった

 

 

 

 ―――それでも

 

 

 

「頑張れ、マシュ!」

 

「先輩!?」

 

 聖剣の光に押され、倒れ伏しそうになるマシュの体を抱き留め、支える。

 盾を握るマシュの手を上から握り、その手の重みを少しでも受け止めんとする。

 盾から溢れ出した黒い光の奔流の余波が、己の皮膚を焼き焦がしながら通り過ぎていく。

 

「っ、ぐっ…!」

 

「先輩!下がってください!ただの人間である先輩では、ただの余波だけでも…!」

 

「それ、でも!!!」

 

 

 

 ―――オレは、男だろうが!

 

 ―――何もできなくても!何の意味がなくとも!

 

 ―――目の前で頑張ってる女の子一人支えるくらいできなくて、どうするんだ!

 

 

 

「先、輩………っ、ぅ、ううううううああああああああああああああああ!!!!」

 

 マシュが支える盾から溢れ出る光が、迫り来る黒い閃光を押し返していく。

 

「馬鹿な…!」

 

 聖剣を耐えきったオレ達を前に驚愕するセイバー。

 

「チッ…」

 

 満身創痍となったオレたちへ向けてアーチャーが弓を向ける…が。

 

「こんのぉぉぉおおお!!!」

 

「ぐっ!?」

 

「アーチャーの癖によくもやってくれたわね!これじゃ私がドジっちゃったみたいじゃないっ!折角元に戻した評価がまた下がったらどうしてくれるのよ!」

 

「もう手遅れです。役立たずさん♪」

 

「ほらぁ!あぁもうちっくしょう!全部アンタのせいだぁぁぁああああ!!!」

 

「それは八つ当たりではないか!?」

 

 桜と凛の猛攻を受けて、その攻め手を防がれる。

 

「いっけぇぇぇぇええええ!士郎ぉぉぉぉぉおおおお!」

 

「ううううううおおおおおおおお!!!」

 

 空を舞うイリヤの手から投げ出された士郎は、その両の手に構えた夫婦剣をセイバーへ向けて投げつける。

 

 

 

 ―――鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎ むけつにしてばんじゃく)

 

 ―――心技、泰山ニ至リ(ちから やまをぬき)

 

 ―――心技 黄河ヲ渡ル(つるぎ みずをわかつ)

 

 ―――唯名 別天ニ納メ(せいめい りきゅうにとどき)

 

 ―――両雄、共ニ命ヲ別ツ(われら ともにてんをいだかず)

 

 

 

 ―――鶴翼三連

 

 

 

 

 四方から迫る夫婦剣に、セイバーは討たれた。

 

 

 

 

 

 

「ハッハッハッハ、無駄な事を!どのみちその女の肉体は既に死んでいる!このままカルデアに戻ろうと、その瞬間に『肉体が死んでいる』という事実によって世界の修正力が働き、その女は完全に死に至る!…今カルデアスに放り込まれるのを阻止しようと、結果は変わらん!…まぁそもそも、皆人理焼却によって死するのだがな。フハハハハハ!」

 

 高笑いと共に消え去ったレフ・ライノール。

 残されたオレ達の間には、気まずい沈黙が降りた。

 

「い、いや…いやぁっ!いやよ!私まだ死にたくないっ!だって、私まだ誰にも認めてもらってない!誰にも褒めてもらってないのっ!」

 

 慎二さんと彼が駆るペガサスによって救出された所長は、慎二さんに縋りついてもはや悲鳴に近い懇願をする。

 

「っ………ドクター、何か方法はないんですか!?」

 

「そ、そう言われても…」

 

「っ!人理の修復が…!」

 

 ゆっくりとホワイトアウトしていく視界に、この世界の崩壊が近づいていることを悟る。

 それは、オレ達にとっては元の世界に帰る時が近づいていることを指すが…所長にとっては、死へのカウントダウンと同義だった。

 

「ねぇ!あなた言ったじゃない、何があってもなんとかしてくれるって!じゃあ私の事もなんとかしてよ!私の事を助けてよぉ!」

 

 縋りついて泣き喚く所長の姿に、慎二さんも苦い顔をする。

 …かと思ったら、ガシガシと頭をかいて、「まったく、しょうがないな」なんて呟いて。

 

「後になって文句言うなよ?」

 

「へ?」

 

 

 

 突如、所長の唇を強引に奪った。

 

 

 

「んぅっ!?」

 

「ん、ちゅ、じゅる、ちゅ…んぐ…」

 

「は、…ぷは、はぐ…ちゅ、じゅる…!?!?!?」

 

 訳が分からず目を白黒させる所長。当然オレ達にも何が起きてるのかさっぱりわからない。

 せめてもの反抗と、慎二さんの胸を押し返す所長だったが、女の細腕では見た目に反して英霊の依り代として選ばれる程の肉体を持つ慎二さんを押し返すには至らず、口をぴったりと閉じようとしても歯と歯の間に親指をねじ込まれて強引にその口を開けさせられる。

 口内に舌をねじ込まれ、溢れ出る唾液を啜り上げられる所長は、羞恥か快楽か分からないが顔を真っ赤にして目をぐるぐるさせている。

 

 そんな光景を最後に、オレ達は人理修復に伴いカルデアへと送還された。

 

 

 

 

 

 

「なるほど。魂だけの存在となっていたオルガマリーをサーヴァントのように繋ぎ止めようとしたんだね。確かにこの方法なら、肉体を持たないオルガマリーの事を現世に止めておける。令呪という、サーヴァントを縛り付ける要を作った間桐の家ならではのやり方だ。そしてそのためには彼女と魔術的な回路(パス)をつなげる必要があり、その為には粘膜接触という肉体的な接触と、快楽の共有という精神の共有が必要だった…というわけだ」

 

「解、説…どうも!」

 

「…というわけだから、その(トリシューラ)、下ろしてあげてもいいんじゃないから、桜ちゃん?」

 

「にいさんにいさんにいさんにいさんにいさん………」

 

「あぁ、ダメだねこれは。完全に話を聞いてない」

 

「お前どうして諦めるんだそこで!もっと頑張れよシジミもトュルルっていうか本当にもっと頑張れよじゃないと僕が殺されるだろうがぁ!」

 

「き、きす…は、はじめて…しかも、あんなはげしいのを…ふわぁ…!」

 

「うぅぅぅぅ…また役立たずと言われたのだわ…もう姉としての威厳なんて残ってないのだわ…」

 

 

 

「…これ、どう収集つけようか」

 

「…さぁ」

 

 妹の桜に突き付けられた(トリシューラ)を、自らの(ハルペー)で受け止める慎二さん。

 完全にトリップしてロマンチック乙女回路がMAXになっている所長。

 突然金髪になって黒い衣装に身を包んだかと思うと泣き崩れた凛。

 

 この事態をどう収拾しようか、そもそも収拾できるのかどうか。

 士郎とオレの二人は、揃って半ば諦めながらも考えを推し進めるのだった。

 

 

 

 





没案
・桜の元になったキャラってふじのんだよな
・『虚無』と『虚数』って似たようなもんだよな




桜「凶って、凶って、凶って…そして、死んでください」

―――宝具錬成 禍識・歪殺の魔眼

効果:視界に入れた対象を死の線に沿って凶ることで死に至らしめる。

没理由:強すぎ



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