「報告しなければならないこと、話し合わなければいけないことは色々あるんだけれど…先ずはこの事から、かな。
レフ・ライノールの罠によってマスター適正者のほとんどは瀕死かそれに近しい重傷を負って、現在はコールドスリープを行っている。
けれど、比較的軽傷な人が1人だけ居てね。君たちがあの冬木の地に居る間に目覚めたんだ。…入ってきていいよ」
「お前、白野!よかった、無事だったのか!」
「あぁ、立香。お前も無事でよかったよ」
ドクターに連れられて出てきたのは、オレと共にここに連れてこられた一般人である岸波白野だった。
ドクターに詳しく聞きたいところでもあったが、冬木に居る間は(主に所長のヒステリーのせいで)そんな余裕もなく、自分の事で手一杯だったのもあって聞くことができていなかったので心配していたのだ。
こんな訳の分からない状況で、信頼できる友人が居るというのは本当にありがたいことだ。
「彼には、目が覚めた時点で冬木の状態を僕達と一緒に見てもらっていたんだ。
その上で、彼はこの人理定礎復元に参加することを約束してくれた。…今後は、彼にも協力してもらう事になる」
◆
その後、ドクター・ロマンの指示に従ってオレ達は新たに英霊を召喚する事となった。
レイシフト時にいつの間にか英霊が憑依してデミ・サーヴァントとなって戦うなんてことは完全に想定外で、本来はマスターとなってサーヴァントを使役して戦うのが正しい形である、とのことだった。
そのため、全員がそれぞれ一騎ずつ英霊を召喚することになり…
◆
「問おう、あなたが私のマスターか?
…あの夜も、同じようにあなたに問いかけましたね。
あなたの声に応え、今ここに参上いたしました。
どうか私に、もう一度あなたと共に戦う栄誉を、頂けますか?」
「勿論だ、セイバー。もう一度、一緒に戦ってくれ」
衛宮士郎は、金髪の美しい女性剣士、あの冬木の地で戦ったアルトリア・ペンドラゴンと再会し。
◆
「よう、メドゥーサ。僕の事は覚えているか?」
「はい、シンジ。どうやらあなたと繋がる事で、あなたに関連する記憶も引き継ぐことができたようです。聖杯戦争を戦い抜いたことも、あの燃え上がる冬木の地で首を落とされた事も、きちんと覚えています」
「そうか。…お前を殺したことについては別に謝らないぜ?」
「構いません。あの時の私は、マスターを持たず近くの生命体を無差別に食い尽くす化物と化していましたし、当然の判断かと。…マスターにあの男の魂が宿っていることについて、思う所がないと言えば嘘になりますが」
「ま、意識としては『僕』としての意識が強いから安心しろ」
◆
「ご用とあらば即参上!貴方の頼れる巫女狐、キャスター降臨っ!です!」
「………」
「あぁ!?なんという冷たい目つき!あなたのようなイケ魂マスターにそんな目で見つめられちゃったら、私、傷ついちゃいます…くすん」
「………お前、何だ?」
「さり気なく人外判定!?いえ、何と言うか、ここで召喚されておかないと私の出番がなくなる危機と言うか…それだけならまだしも某皇帝とか某大王とかに好き勝手活躍されるのを許すのは我慢ならないと言うか…」
◆
「さて、良いニュースと悪いニュースがある。どちらから聞きたい?」
「どっちでもいいさっさと話せ」
ハリウッド映画みたいな台詞をあっさりと流されたドクターは、若干涙目になりながらも説明を続けた。
「じゃぁまず、良いニュースから…現在、七つあると思われる特異点の内、五つまでの特異点を観測することに成功した」
「よくやったわ、ロマン!これで、前もって準備を進めることが…」
「で、悪いニュース。その理由は、各特異点の進行が活性化したからで…ぶっちゃけて言うとタイムリミットが劇的に早まっている」
「何やってるのよロマン!」
「うぇええ!?これは別に僕のせいじゃないですよ所長!」
「現状から鑑みて、各特異点に一人以上の人員を派遣し、それぞれの特異点を修復するしかない。しかも、私達はみんなが特異点で意味消失しないよう観測に専念することを余儀なくされる。特異点に入ってからは、私達の補助らしい補助は受けられないと考えてくれたまえ」
◆
「第一特異点・オルレアンには、衛宮士郎とアルトリア・ペンドラゴン、イリヤスフィールとヘラクレス!」
「第二特異点・セプテムには、藤丸立香とマシュ・キリエライト、岸波白野と玉藻の前!」
「第三特異点・オケアノスには、間桐慎二!」
「第四特異点・ロンドンには、遠坂凛とアーチャー・エミヤ!」
「第五特異点・イ・プルーリバス・ウナムには、間桐桜とメドゥーサ!」
「以上の人員を以て、この緊急事態に対処する!…冗談でも比喩でもなく、人類の存亡がかかった戦いだ。君達には…特に、一般人である藤丸君や岸波君には辛いかもしれないが、僕達も出来る限りを尽くす!…どうか世界を、救ってくれ!」