ひこうじょう ツチノコ視点版   作:くにむらせいじ

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第2話「みんな」

 結局、飛行機の修復はかばんたちの出発には間に合わなかった。だがオレはこれを飛ばすことを諦められなかった。飛行機は飛ぶためのものだ。飾っておくためのものではない。

 多くのフレンズに協力してもらい、試行錯誤しながら飛行機を修復していった。

 飛行機は、大物部品の状態は良かったが、劣化した消耗部品や損傷した部品などがあり、修理と調整が必要だった。

 

 

ワシミミズク(助手)     「読めないのです」

アフリカオオコノハズク(博士)「わけがわからないのです」

ツチノコ           「ちきしょう……難解すぎる……」

 

 ……図書館の本によって知識を得た。格納庫に残されていた、整備マニュアルの解読を行った。

 

 

      

博士    「ライオンにもらった部品、穴径を大きくすれば、使えるかもしれないのです」

ツチノコ  「硬そうだな。精密な加工できるか?」

 

アリツカゲラ「ランプの部品、使えないでしょうか?」

ツチノコ  「分解すれば……」

 

助手    「これはコツメカワウソにもらいました。川底に落ちていた物を拾ったそうです」

ツチノコ  「やった!ぴったりだあ!」

 

 ……多くのフレンズに協力してもらって、交換部品(の代用品)や工具を探した。

 

 

 

ツチノコ       「パッキンが劣化してるな……」

アメリカビーバー   「バスのタイヤ、加工して使えないッスかね」

 

 ……放置されたバスや、ヒトの作った遺物の部品の流用を行った。

 

 

 

アメリカビーバー   「きれいな図面ッスね……」

タイリクオオカミ   「ここの合わせ、高い精度が必要だけど、測定じゃわからないから現物合わせになるね」

オグロプレーリードッグ「大きめに作って、削って調整できるであります」

 こいつら、オレより理解してる……。

 

 ……タイリクオオカミに新規に作る部品の図面を引いてもらった。

 

 

 

オグロプレーリードッグ「出来たであります!」

アメリカビーバー   「相変わらず速いッスね」

ツチノコ       「木工だけじゃなく、金属加工も早いのかよ……」

 

 ……アメリカビーバーとオグロプレーリードッグに、足りない部品の製作、修復作業を頼んだ。

 

 

 

ツチノコ   「この解説書、誰が持ってきたんだ?」

博士     「それは、たぶん…………」

 今なにか、扉のかげにいたような……。

 

 ……ラッキービーストは相変わらずしゃべらなかったが、陰で協力してくれた。

 

 

 

スナネコ       「本当にこんなものが飛ぶんですか?」

 スナネコが脚の格納部に手を突っ込んでいた。

ツチノコ       「やめろ!余計なことするな!」

 

 ……スナネコに邪魔された。

 

 

 

ツチノコ       「ダメだ、作動油が漏れてる……」

 

 

 

博士         「ここは、われわれの手には負えないのです」

 

 

 

アメリカビーバー   「なんか、動きが固いッスね、あれだけ調整したのに」

 

 

 

ツチノコ       「カバーが閉まらねえぞ、寸法間違ってねえか?」

 

 

 

オグロプレーリードッグ「また折れてしまったであります……」

 

 

 

ツチノコ       「正確な図面だ。寝てないだろ、少しは休めよ」

 

 

 

ツチノコ       「いてっ、切っちまった」

 

 

 長い時間が流れた。無線等の一部の電子機器を除き、飛行機はほぼ修復された。

 

 

 修復はできたのだが、飛行機の調整やテストには、予想以上の時間がかかってしまった。整備マニュアルの、調整やテストの項目は気が遠くなるほど多く、一つ一つクリアしていかなければならなかった。

 オレたちはエプロン(駐機場)で、飛行機のエンジンのテストをしていた。オレはコックピットの左側、機長席に座って、左右のプロペラが高速回転しているのを見ていた。

 部品の痛みこそ少なかったものの、恐ろしく複雑で調整に一番苦労したのがエンジンだった。

ツチノコ       「今日は快調、だな」

 オレは右を見た。誰もいなかった。初飛行時の機長はオレに決まっていたが、副操縦士が必要だった。

 まずシミュレーター(温泉宿のゲーム)でパイロットの試験を行った。

 期待されていた、鳥系のフレンズは、自分の飛行感覚で操縦してしまい、かえって危険なことが判明した。

 縄張りが遠く、飛行場に通う、あるいは飛行場付近で生活するのが困難なフレンズは、選抜から外した。

 整備員である、アメリカビーバーとオグロプレーリードッグは、鳥系のフレンズに運んでもらうか、徒歩で飛行場に通っていた。

 

 シミュレーターの操縦で特に優秀だったのは、キタキツネだった。「ゲームで鍛えてる」というのは伊達ではなかった。

 

  副操縦士選抜試験 第2回 兼 操縦訓練 第4回

 シミュレーターで成績の良かったフレンズを対象に、ハイスピードタキシー(地上滑走)試験を行った。

 

  ---- タイリクオオカミ ----

 

ツチノコ       「止まれ、止まれええええ!オーバランしちまう!」

 飛行機は、オーバラン寸前で止まった。

タイリクオオカミ   「いい表情(かお)いただき」

 

 タイリクオオカミ:器用で物覚えも良かったが、心臓に悪い操縦を行ったうえ、試験中にスケッチを行う問題行動があったため失格。

 

 まあ、どちらかといえばエンジニアだし、そっちのほうで活躍してもらおう。

 

 

  ---- パンサーカメレオン ----

 

パンサーカメレオン  「怖かったでござる……」

ツチノコ       「まあまあだな…………半分、消えてるぞ!」

 

 パンサーカメレオン:一通りこなしたが、緊張しすぎて姿を消してしまい、動作が見えなくなって危険だった。保留。

 

 

  ---- スナネコ ----

 

 スナネコは、オレの近くにいたから、といういい加減な理由で連れてきた。以外とシミュレーターの操縦は上手かったが、すぐに投げ出しやがった。

ツチノコ       「よし、エンジンスタート…………って居ねえええ!」

ツチノコ       「…………ま、わかってたけどな……」

 

 スナネコ:エンジンスタート前にどこかへ行ってしまい失格。

 

 そのあと近くの砂浜に穴が見つかり、スナネコがその中で寝ているのが発見されたらしい。あいつ、夜行性だからな。ちょっとかわいそうなことをしたか?

 

 

  ---- アルパカ・スリ ----

 

アルパカ・スリ    「うまくいかないもんだにぇ」

 

 アルパカ・スリ:ひと通りこなしたが、不安定なので保留。

 

 

  ---- ジャガー ----

 

 ジャガーの縄張りは飛行場から遠かったが、頼まれたら断れない性格のためやってきた。

ジャガー       「わからん……全然わからん……」

 

 ジャガー:初めはシミュレーターよりはるかに複雑なコックピットを見て困惑したが、操縦は器用にこなした。合格。

 

 

  ---- カバ ----

 

カバ         「あら、取れてしまいましたわ」

ツチノコ       「なにやってんだ、お前ええええ!」

 

 カバ:精神面は強かったが、操舵輪(ヨーク)を破損させやがったので失格。

 

 

  ---- リカオン ----

 

リカオン       「オーダー……完了しました……」

ツチノコ       「なかなかいいな」

 

 リカオン:そつなく一通りこなしたが、緊張しすぎなのがちょっと不安だ。合格。

 

 

  ---- サバンナシマシマオオナメクジ ----

 

ツチノコ   「誰だお前!、選抜メンバーじゃねえだろ!、つーかどうやって操縦する気だ!」

ツチノコ   「うああ!!なんだそれ!なに出してんだ!やめろさわるな気持ちわりい………」

 

 サバンナシマシマオオナメクジ:そもそもフレンズなのかも不明。触手のようなものを使って操縦できたが、突っ込みどころが多すぎて失格。しかもそのあと座席がベタベタになってしまった。

 

 

  ---- フンボルトペンギン(フルル)----

 

 フルルは、シミュレーターではキタキツネと並び天才的な操縦をみせた。

マーゲイ     「さすがフルルさん!無骨なコックピットとのギャップがいいですねえー」

フルル      「このいす座りやすいねー」

ツチノコ     「そろそろ行くぞ」

マーゲイ     「アイドルにそんな危険なことさせられません!」

ツチノコ     「なんでだよ!もったいねえだろが!」

 フルルがうしろを振り向き、何かを見ていた。

フルル      「…………」

マーゲイ     「フルルさん?」

 

 フルル:非常にもったいなかったが、マネージャーのストップがかかり棄権。

 

 

  ---- キタキツネ ---- 

 

 滑走路の端。  

 飛行機のプロペラとエンジンの音が変わった。ブレーキリリース。飛行機が滑走路を走り、速度を増していった。機首を上げ、エンジンの出力を落とした。飛行機は徐々に減速し、自然に機首が下がった。前脚が接地し、主脚のブレーキとプロペラピッチ角の変更(逆推力)により、さらに減速した。滑走路に余裕を残し、十分に減速した飛行機は、滑走路の端でUターンして、エプロンへ戻っていった。

 手順通り。安定した走り。非の打ち所がなかった。

 

キタキツネ(機長席)「飛べないとおもしろくないね」

ツチノコ       「……完…璧……だ…………」

キタキツネ      「…………うしろ、なにかいる」

 ゾクリとした。オレは振り返って後部座席を見たが、何もいなかった。

ツチノコ       「何もいねえぞ、怖いこと言うなよ…………」

 

 オレたちは駐機場へ戻ってきた。上空で様子を見守っていたハシビロコウがおりてきた。

ハシビロコウ     「しっかり真ん中を走ってて、ふらつきもほとんどなかった」

 それはオレもわかった。滑走中、窓から見える滑走路の線がきれいに流れていたからだ。少し横風が吹いていたはずだが、なぜあんなに安定して制御できたのだろう?

 

 そのあと、厄介なことが起きた。後部座席にペンギンの幽霊が現れるいう噂が流れ、ほかの訓練生が怖がって試験が出来なくなってしまったのだ。タイリクオオカミが訓練生を怖がらせる嘘をついたのでは、と疑ったが、彼女は否定した。結局何だったのかは不明だ。ちょっと怖かったが、オレは実際に幽霊を見ることはなかった。キタキツネいわく、「いなくなった」らしい。

 

 初飛行時の副操縦士はキタキツネに決めた。機上整備員として、アメリカビーバーとオグロプレーリードッグに搭乗してもらうことにした。

 




 第2話「みんな」 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 第2話は「通常版」とあまり変わっていないのですが、細かい所をいじっていたりします。
 これって一人称視点とは違うんじゃないか?とも思います。


 以下は、「通常版」のあとがきと同じです。

 航空機のレストアは非常に難しく、時間がかかります。素人では手に負えないものです。このおはなしでは比較的状態が良かったことと、フレンズたちがものすごくがんばったことにしていますが、実際にはほぼ不可能だと思います。それに、このおはなしでは無視していますが、法律(機体の登録など)や管制などの問題もクリアしなければならず、無線などが壊れた状態では飛ばすことはできません。
 けもフレはファンタジーだから、ということで許してください。

 「温泉宿」と書いていますが、あそこは宿ではなく入浴施設だけなのでは?とも思います。「温泉」だけだと山にある源泉と混同しそうなので「温泉宿」の表記にしています。


 フライトシミュレーターの設定

 温泉宿のゲームコーナーにあったもの。ゲームだが本格的なシミュレーターに近い。単座。動揺装置は無い。画面はけっこう大きい。操縦桿はジョイスティックタイプ(センター)。ラダーペダルがある。シートには背もたれが無い。選択できる機種が豊富だが、ミリタリー系が中心。

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