ひこうじょう ツチノコ視点版   作:くにむらせいじ

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第3話「点検」

 オレたちは訓練と機体の調整を繰り返し行った。博士には慎重すぎると言われたが、落ちれば死ぬ。命がけだ。慎重にもなる。それに、機体が大きく損傷したら修理は不可能だろう。今までの苦労が水の泡だ。

アメリカビーバー   「ちょいとお待ちを……もう一回点検してから……」

ツチノコ       「何回目だよ!」

 ビーバーはオレ以上に慎重だった。あきれるほどに。

 

 キタキツネの操縦は、シミュレーター、地上滑走ともに上達していった。もともと驚異的だったのだが、「ゲームで鍛えてる」なんてレベルじゃなくなっていた。

 シミュレーターでは空対空戦闘やエアショーばりのアクロバット飛行まで完璧にこなした。普通に飛ばすだけなのだからそこまで必要ないのだが……。

 機体の調整がひと段落つくと、調整をビーバーたちにまかせて、オレは格納庫を離れ、温泉宿のシミュレーターで必死に訓練した。オレは機長だ。搭乗者の命を預かるんだ。手を抜くことは許されない。それに、キタキツネに負けるわけにはいかない。せめて同じレベルには……。

 

 二日ぶりに帰ってきた格納庫。飛行機は整備中だった。飛行機のそばのテーブルで、タイリクオオカミが図面を広げていた。機内へ入って、異様な光景に驚いた。

ツチノコ       「なんだ、ごりゃああああ!」

 飛行機の操舵輪(ヨーク)が操縦桿(スティック)に変わっており、座席のシートベルトが

全て、5点式シートベルトに変わっていた。

 副操縦席にキタキツネが座っていて、客席ではアメリカビーバーとオグロプレーリードッグが、座席のわきにある折り畳み式テーブルを取り外していた。

ツチノコ       「……オレのいない間に……なんでこんな…………」

 無茶苦茶しやがって!オレはうつむいた。体が怒りに震えた。

 キタキツネが、操縦桿を握って言った。

キタキツネ      「このほうが操縦しやすい」

 確かにシミュレーターはスティックだったが、大改造だろ……。

アメリカビーバー   「えっと、シートベルトは、このほうが安全ッスから……」

 5点式なんて必要ねえだろ……戦闘機じゃねーんだぞ……。

オグロプレーリードッグ「軽くするために部品を外していたであります!」

 必要な部分を損傷させたらどうする……削り過ぎれば重量バランスにも影響が出るぞ……。

 これは、もっとやりやがったな……。

ツチノコ       「…………ほかに、どんな改造を……」

アメリカビーバー   「以前から、ちょいとずつやってたんスけど……エンジンの制御系をいじって出力制限を上げて、翼の後縁を延長して動翼の面積を増やして、動翼の制限角度を変更して、操縦応答性を上げるように…………」

ツチノコ       「やりすぎだ!そんなことしたらバランスが狂っちまうだろが!」

アメリカビーバー   「…………えっと、計算上は問題ないはずッス」

 計算上?計算上だって?オレは顔をあげ、言った。

ツチノコ       「…………お前ら……お前らは死ぬ気か!!」

 オレは感情にまかせて機外へ飛び出し、走った。あいつら何考えてやがる!……危険なら飛ばせない……計画中止だ……涙が出てきた…………。

 

 気がつくとオレは滑走路の端に立っていて、そこから伸びる滑走路を見ていた。あの改造、運動性を上げるためのものだ。なぜそんなことを?普通に飛ぶなら必要ないはずだ。

 キタキツネが走って滑走路にやってきた。

キタキツネ      「はあ、はあ……ごめん、ごめんなさい…………ぜんぶ、ぼくがやれって言ったの」

 やっぱりな……。

ツチノコ       「お前と、あの心配性なビーバーがやったことだ。安全なんだろうよ」

 博士と助手の知識、ビーバーの設計、オオカミの作図、プレーリーの工作。最強すぎる。間違いが起きるはずがない。だがこいつはちょっとタイプが違う。おそらく他のみんなも気づいているだろう。だからこいつの提案に乗ったんだ。正直に話すか。

ツチノコ       「オレはな、怖いんだよ。……オレのわがままで、こんな面倒なことにみんなを巻き込んじまって。一人で飛べりゃいいが、落ちるだろうな。オレはそれでも構わんが、みんなの苦労が無駄になっちまう。…………それに、時間がかかりすぎた。…………ほかのやつら、みんな、あんなもの飛べないって思ってるんだ」

キタキツネ      「あれは飛べるよ、だいじょうぶ」

 根拠もなくそんなことを……いや、根拠はあるんだ。自覚がないんだろう。オレはエンジニアとしてもパイロットとしても中途半端だが……。

ツチノコ       「………………くやしいが……お前は……」

オグロプレーリードッグ「ツチノコどのー」

 オグロプレーリードッグとアメリカビーバーがやってきた。

アメリカビーバー   「ツチノコさん、申しわけないっス、全部もとの形に…………」

ツチノコ       「もう遅い。無理に戻すとかえって危険だ」

タイリクオオカミ   「やっぱりここにいたね」

 タイリクオオカミも歩いてきた。

タイリクオオカミ   「私も謝らなければいかんな。済まない。…………なにか悩んでいるようだが……みんな楽しんでいるんだよ。あれを飛ばすこと……君を手伝うことをね」

 そうかよ、なら仕方ねえ。

ツチノコ       「…………改造個所を教えろ。……全部オレが確認する」

 

 

 初飛行前夜。格納庫。

 

 格納庫にはオレしかいない。何度も確認して、問題がないってわかっているのに、また飛行機の点検をしてしまっている。これじゃビーバーを笑えない。

 ガチャリ、と格納庫わきのドアが開き、誰かが入ってきた。

ツチノコ       「うああ、誰だああ………………スナネコ!、何でここに?」

 おどかすなよ。……というかお前、砂漠にいたんじゃ……ここまで結構距離があるぞ……

 スナネコはそばへ歩いてくると、飛行機を見て、言った。

スナネコ       「これは本当に安全なんですか?」

 何を今さら……。いつもののんびりした口調だ。………………いや、違うな……。

ツチノコ       「何度も言っただろ。落ちねえよ」

スナネコ       「絶対に、ですか?」

 絶対に……絶対、では無いな。危険がないと言ったら嘘になる。ここは、どう言うべきか……

ツチノコ       「………………」

 黙ってしまった。スナネコがオレの顔を見た。無表情だった。

スナネコ       「…………明日は見に行けません。ボクは夜行性なので」

 怒らせちまったか? 見に来てくれないのは残念だが、仕方ねえか……それって、明日オレに何かあったら、会えるのは今夜が最後になるってことだよな………。

ツチノコ       「…………そうかよ……」

 

 間。

 

 なんだ?こいつはどうしてほしいんだ?…………どうする?

 

        ([  抱きしめる  ])

        ([格納庫から追い出す])

       ((([  何もしない  ]))) ← ピロリーン

 

 何もしないのかよ!

 スナネコは一歩踏み出し、オレに顔を近づけてくる。かわいい……とか思ってる場合じゃないぞ!…………どうする?

 

        ([  頭をなでる  ])

        ([  キスをする  ])

        ([  押し倒す   ])

       ((([  何もしない  ]))) ← ピロリーン

 

 また何もしないのかよ!

ツチノコ       「…………な……なんだよ」

 そんな言葉しか出ねえのかオレ!わかってるだろ!

スナネコ       「なにもしないんですか?」

ツチノコ       「……何も?………………」

 やっぱり待ってるじゃねえか!見つめられていることに耐えられず、目をそらしてしまった。顔が熱い。仕方ねえ……。

ツチノコ       「そういうのは……こいつが飛んでからだ」

 先延ばししてしまった……どんだけ臆病なんだオレ……。

 スナネコはかすかに笑うと、一歩引いて背を向け、足早にドアから出て行った。

 今は思い出を作るより、おあずけにして希望を持たせた方がいいよな。そう自分に言い訳して、オレは飛行機の点検作業に戻った。…………点検、どこまでやったか忘れちまった……。

 




 第3話「点検」 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 選択肢で遊んでみました。
 1番目の選択肢「格納庫から追い出す」はひどいです。選べません。
 2番目の選択肢では「キスをする」が一番自然な流れのような気がしますが、あえて選んでいません。「押し倒す」を選んだらどうなっていたでしょうね。格納庫の床だと嫌だから、飛行機のシートを倒して……。
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