続・やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。 作:シェイド
結構間が空いたので前話から読むことをお勧めします。
続きです。
黒衣のローブを纏った人物からの依頼を受けたアイズは黒衣の人物にそのまま直行するからと【ロキ・ファミリア】への伝言を頼み、早速18階層へと向かった。
かなりの速度でどんどん階層を下って着いたリヴィラの街はあんな騒動があったにもかかわらず、前のように家などが修繕されていた。
リヴィラの名物とも言える結晶などはダンジョンに基づくものなので完璧に修復されており、前と同じように冒険者やならず者達の喧騒で溢れていた。
その喧騒から少し離れた街の路地を通り、簡潔に伝えられた道筋にそって行く。
やがてたどり着いたのは街の北部にある、長大な水晶の谷間が形成されていた群晶街路の裏道。
ごつごつとした岩壁に口を開けた洞窟が広がっていた。
「こんなところに酒場があったんだ……」
人気のないこんな場所に酒場があったことにアイズは呟きを洩らした。長らくリヴィラを利用しているがこの酒場は知りえなかった。
指定された酒場は『黄金の穴蔵亭』という店だった。
洞窟の中には木製の階段が設けられており、アイズはぎしぎしと音を鳴らしながら下っていく。
階段を降り切り、扉も仕切りもない空洞へ足を踏み入れると、そこには同業者がたむろする普通の酒場の光景が広がっていた。
まず目に入ったのは中心に生えている黄金色の水晶だ。アイズは初めて見たのでもしかしたらここだけの特別なものなのではないか。
アイズは驚嘆とともに店内を見渡す。中々の広さがある酒場は、複数のテーブルと椅子、そしてカウンター席。その奥にはそれぞれの個室なのか扉でガッチリと閉められた部屋が数個あった。
とりあえずといった感じでアイズはカウンターに座る。店主は無愛想なドワーフで、アイズが椅子に座っても見向きもせずにグラスを磨いている。
「……注文は?」
「ジャガ丸くん抹茶クリーム味」
「……手前から二つ目の部屋だ」
アイズが合言葉を伝えると、店主は指で奥の部屋を指した。どうやらその部屋に協力者はいるらしい。早速カウンターを立ち、その言われた部屋に向かう。
軽くノックをすると無言だったためとりあえず扉を開ける。
中に入ると小数の冒険者が戦闘に行く準備をしていた。
すると。
「あ、ああ、あんたが援軍!?」
「……ルルネさん」
そこにいたのは先日のリヴィラ事件で出会ったルルネ・ルーイ本人、そして。
「貴女が援軍ですか、【剣姫】……いえ、アイズ」
「アスフィ……」
【ヘルメス・ファミリア】の首領でありオラリオに五人といない『
【
「え、え!?知り合いなの二人とも!?」
「ええまあ。彼女とは同じ人の元で修業していましたから」
実はアイズとアスフィは前に同時にハチマンに修業してもらっていたことがあった。
その時に協力してハチマンを倒す(押し倒して既成事実を作ろうとした)時に謎の友情を育んでいたのだ。
ある時は修業と言いつつ一人が正面から戦い、もう一人が背中から抱きつくなどの様々な試行錯誤を繰り返すもすべて失敗に終わり、結局一度も倒すことはできなかったものの、実力が上がったため本来の目的は達成している。
「ライバル、だよ」
「そうですね。ですが、もう彼がいないのでどうしようもないですが、ね」
アスフィはどうやら、すでに切り替えているらしく非感の表情は見えなかった。
私はまだ、とらわれているというのに。
「ところで、どうして【ヘルメス・ファミリア】が……?」
「……ルルネが前に受けた依頼の主と今回の依頼主は同じ。つまりこの駄犬が弱みを掴まれ半強制的に依頼を受けたんですよ。それで自分だけじゃ手に負えないからと我々に泣きついてきたんです」
「だ、駄犬って……ひどいよアスフィ~」
「黙りなさい。あなたが正式なLvを掴まれるから悪いんですよ。アイズ、このことは秘密でお願いしますね。ルルネは公式上ではLv.2ですので」
秘密をばらすなと釘を刺された。
……告げる相手なんてほとんどいないことは黙っておこう。
「では援軍も来たことですし最終確認です。私たちはLv.4、Lv.3。アイズはLv.5ですよね?」
「ううん、昨日ランクアップしたからLv.6だよ」
「それは嬉しい誤算ですね。それで武器は――――――――」
その後は互いの持ち物とこれからの進路をある程度確認した。
いよいよ24階層へ出発する。
そんな時だ。
「では、早速行きましょう『キィ……』か……」
扉が開きはじめた。
「総員、戦闘態勢!」
アスフィ達が聞いていた援軍は一人。つまり今扉を開けた人物は援軍でない。
誰も予想をしていない事態にすぐアスフィから指示が飛び、【ヘルメス・ファミリア】の面々は陣形を組み、アイズもデスぺレートに手をかける。
そして姿を現した人物は……
入ってきた人物は青色の髪に整った顔、二本の剣を腰にさした人物だった。
「そんな、あなたは……なんで」
「え、嘘でしょ!」
「……」
アイズとルルネ、【ヘルメス・ファミリア】の面々は驚き、アスフィは目を細める。
「なーんか面白そうなことになってんだろ?手伝ってやるよ。戦力にはなるから問題ないよな?別にこのことを大事にするつもりはねえ」
アイズの師匠、ハチマンの専属鍛冶師、リク・シュトラウスだった。
***
20階層。
まだ中層に位置付けられるこの階層は、森により迷路と化しており、出てくるモンスターも手ごわいものが多い。
Lv.2のパーティからしたら、の話なので今回の国を滅ぼしに行くような戦力なら問題はない。
結局あのあとリクは今回の作戦に参加することとなった。
Lv.5という第一級冒険者であり鍛冶師である彼の力は確かに有益だとアスフィが判断したためだ。
そして出てくるモンスターをほぼアイズが、たまにリクが倒し順調に階層を進んでいった。
「次が今回の依頼である24階層。冒険者の中でもモンスターの異常発生が噂されています。気を引き締めて行きましょう」
アスフィが口頭で注意を促し、アイズ達混合チームは24階層に突入した。
「うわああああああ!!?なにこれ!?」
そこで待ちうけていたのは道を埋め尽くすくらいのモンスターたちが大移動を行っている光景だった。
「これは……」
「なんだこれは!?初めて見る光景だぞ!?」
「どうしてこんなにも多くのモンスターが……」
「……多分、食糧庫だ」
各々が疑問を口にする中リクが話し始め、大半は頭の上に?を浮かべていた。
「モンスターってのは基本的にダンジョンで生まれて俺らや同じモンスターに殺されないかぎり、生きている。だがモンスターといっても食べなければ飢え死ぬ。そのモンスター達の食べ物があるのが食糧庫。つまり、なんでこんなにモンスターが大量発生し、大勢で移動してるのかと言えば……」
「この階層の食糧庫に異変があったから、ということですか」
「そうだ【万能者】。異変はモンスター達が移動してくる元にある筈だ」
「ってことはモンスター達とは逆の方向を調べればいいんだな!」
「ならその前にあのモンスターの大軍を片付けなければなりませんね」
「……私が行く」
「あ、ちょっとアイズ!?」
アスフィが呼びとめるもアイズは無視してモンスターの大軍に突っ込む。
大軍とはいえLvは数段下なのでアイズの敵ではない。
何故アイズが一人で突っ込んだかと言われれば、それは器になれるため。
ランクアップをしただけでは力は上がってもそれを使いこなせているとは言えない。
前もっていた力と手にした力には差があるからだ。
普通の冒険者ならば何回と戦闘を行わなければ器になれることはない。
だが、第一級冒険者らはそれをたった一回の戦闘だけで行うことが出来る。
Lvが高いということはその分戦闘センスに秀でているということを意味しているため、当たり前と言えば当たり前なのだが。
アイズが一人戦闘をし、殲滅しているところをみて【ヘルメス・ファミリア】の面々は「これなら俺達いらなかったんじゃないか?」と苦笑するしかなかった。
この機会にと、アスフィはリクを捕まえ少し仲間たちとはなれる。
仲間達には聞かれたくない話でアイズにも伝えることが出来ない話。今しかタイミングが無かった。
「単刀直入に聞きますが……【双蒼の鬼人】、あなたは知っているのですか?」
「何を?」
「……八幡が生きていること、です」
「……何故そう思った?」
「最近アミッドや同郷の方々とばかりイチャイチャしてるハチマンの腰に新しい剣が佩いてありました。彼はあなた以外の作った剣を使わないはず。例外として神は除かれますが」
「なんだ、知っていたのか」
リクはころっと態度を変えてアスフィと向かい合う。
「ああ、あれは俺が作った新作だ。しっかしハチの野郎バレるのが早すぎやしないか……?」
「少なくとも私は五年前には本人から教えられていますので」
「なんだ、そういうことかよ。俺は帰り際の当日だったがな」
二人が話し込む中、モンスターの掃討を終えたアイズはリクの方も見つめる。
(リク・シュトラウス……)
リク・シュトラウスという人物は【ヘファイストス・ファミリア】に所属する鍛冶師であり、副団長を務めている。Lv.5であることからもわかるように、団長の椿と同様戦える鍛冶師のトップを張っている。その鍛冶の腕で【創造者】という二つ名と、まるで鬼人のように豪快な戦闘スタイルから【双蒼の鬼人】との異名で恐れられる実力派鍛冶師である。
しかし、彼は五年前より表舞台に姿を現したことがなかった。
六年前―――――『27階層の悪夢』にて相棒であったハチマンを失い、まるで人が変わったように鍛冶をすることをやめ、一人、自身の工房に籠っていた……塞ぎ込んでいたというのが【ロキ・ファミリア】が持っている情報であり、この情報は【ヘファイストス・ファミリア】の主神である女神ヘファイストス自身からもたらされたものであるため疑いようがない、のだが……
(性格が変わったというのは嘘……?)
アイズはハチマンの弟子であったため、少なからずリクとの交流はあった。だがあの頃と性格はまるで変わっていないのだ。
(まさか女神が嘘をついた?でも、嘘をついたところで利益はないはず……アスフィも彼のことはリクさん、と呼んでいたから面識はない……?ダメ、分からない)
アイズは思考を停止させる。
今最優先させるべきは24階層、そしてあの黒ローブが言っていた宝珠の謎だ。確かにハチマンの鍛冶師については気になることが多い。
しかし、味方であることに変わりはないのだから。
***
アイズが全てのモンスターを殲滅したその後、目的の食糧庫に辿り着いた一行。
しかし、その入り口は。
「うわあ、なんだこれ気持ち悪いな……」
「これが原因でモンスターたちは残りの食糧庫に向かわなければならなくなり、先ほどのような大移動が起こった、と考えるのが妥当でしょう」
不気味な光沢とぶよぶよと膨れ上がる表面。気色悪い緑色の肉壁はアイズたちの前に立ちはだかり。進路を見事に遮っている。明らかに周囲の石質の壁面とは作りも性質も異なっていた。
生物のようであり、植物のようでもある。まるでダンジョンが患った癌のような。
アイズにアスフィ達、深層経験者ですらもこんなものを見たことはない。
「……この先に謎が隠されていることに変わりはありません。ですが念のためほかの経路も調べます。ファルガー、セイン、他のものを引き連れて二手に分かれ、この階層の残り二つの食糧庫も調べてきてください。ただし、深入りは禁じます。異常があった場合はすぐに知らせてください」
アスフィの指示に、大柄な虎人とエルフの青年が頷く。彼らは地図を持って五名ずつの団員を従え、来た道を戻っていく。
この場に残ったのは、アイズ、ルルネ、アスフィ、【ヘルメス・ファミリア】のサポーター四名にリクの八名だ。
全員、目の前に聳える肉壁を見つめる。
24階層の巨大な通路を完全に塞いでいるところを見ると、大きさは、高さと幅ともに10Mといったところだろうか。鼻を突く異臭……腐臭も僅かではあるが漂ってくる。ルルネは犬人であることもあり人一倍匂いを感じているらしく、「うぇ~」と呻きながら鼻をつまんでいた。
生理的嫌悪を催す肉壁に、アイズはそっと片腕を伸ばした。
慌てたルルネの止めておけという制止を他所に、壁の表面に触れた。
(生きている……)
確かな熱と、そして鼓動にも似た僅かな振動が、手のひら越しに伝わってくる。
警戒を絶えず払いながら、アイズはじっと壁を見据えた。
「アスフィ、戻った」
「どうでしたか?」
他二つの食糧庫の調査を終えた10人が帰還し、結果を報告しようとした中。
「大方、他の食糧庫も同じような感じだった、違うか?」
「……俺たちのところはそうだった」
「僕たちのところもです」
「だろうな」
リクはごく当たり前のように呟く。
「な、なんで分かるんだよ!?」
ルルネは驚いたのか、何故わかったのかを尋ねる。
リクは一つため息したのち、
「簡単な話だ。ほかの食糧庫が空いていればあんなにモンスターが大移動を起こすわけがない。数十体ぐらいなら一つの食糧庫だけかもしれないが、数えるのも嫌になるほどの数がたかが食糧庫一つ入れなくなっただけで発生すると思うのか?【万能者】、お前だってその予想があったうえで確認のために調べさせたんだろ」
「ええまあ」
「ええ!?アスフィわかってたの!?」
「しかし100%ではなかったので。もしもがあるなら調査を怠るべきではありません」
リクがコイツ馬鹿か?という目でルルネを見、アスフィもはぁ、とため息をついてしまう。
だが【ヘルメス・ファミリア】のほかの面々は想像もしていなかったようで苦笑している。
(アスフィもリクさんも……頭がいい、思考が早い)
アイズは今まで興味もなかった【ヘルメス・ファミリア】と【ヘファイストス・ファミリア】の副団長を見てそう思う。
それでもフィンやリヴェリアには劣るだろうとアイズは思っているが、もしかしたらアリシアやアナキティに勝るかもしれない。もしも派閥同士で争いになったときは注意が必要であると感じていた。
「さて、そろそろ本題に入りましょう。今からこの食糧庫に突入するわけですが、分断されることも考え、パーティ単位で動きましょう。【ヘルメス・ファミリア】は私とファルガーの二つに分けましょう。ファルガー組は緊急時に備え入り口で待機。私のパーティとアイズと【双蒼の鬼人】で侵攻します。あなた方はどうしますか?」
「俺は一人でいい。そっちの方どっちにしろやりやすいだろ」
「私も一人でいいです」
よってファルガー達5名は入り口待機班。残りのアスフィ率いる【ヘルメス・ファミリア】10名とアイズとリクが侵攻班となる。
「あとは侵入ですね……植物を思わせる外見から、炎が有効そうですが……」
「斬る?」
「大人しそうな顔してさらっと物騒なこと言うよな、お前……」
アイズが鞘から剣を引き抜くと、ルルネが呆れた視線を送ってくる。
壁を観察していたアスフィは、やがて「いえ」とアイズに断りを入れた。
「情報が欲しい、『魔法』を試します。メリル」
彼女に命じられ、小人族の魔導士がパーティの前に出る。
みなに見守られる中、アイズの腰ほどの小柄な少女は小人族用の短い金属杖を構え、詠唱を始めた。かぶっているとんがり帽子がぴょこぴょこと揺れる。
魔法円を展開する上位魔導士は、静かに魔法名を口ずさむと、炎の大火球を放った。
着弾と同時に、轟音と衝撃、そして炎上する。
悲鳴にも似た音を散らしながら、出入り口にあたる部分は完璧に燃え落ちた。
パーティは列になり、先頭にアイズとアスフィ、最後尾にリクを置いて進みだす。
「お、おい!壁が……」
リクまで内部に入り、少しすると気色悪い音を立てて盛り上がっていく、修復していく肉壁に、パーティ全体が振り返る。
壁は時間をかけて完璧に塞がってしまった。
まるで自分たちを閉じ込めるような動きに、ルルネ以下団員たちは口を閉ざす。
「脱出できなくなったわけではありません。帰路の際は、また風穴をあければいいだけの話です。ファルガー、もし私たちがしばらくしても戻ってこなかった場合は異常があったと認識してかまいません。救援を……第一級ぐらいの冒険者を呼びに行くようお願いします」
「わかった」
入り口待機組との打ち合わせも済ませ、内部へと進行を開始するアイズたち。
内部は全面が緑壁と化していた。壁も、天井も、地面もそうだ。あたかも生物の体内に入り込んだような錯覚を受ける。
障壁から発散されていた腐臭がより濃くなっている中、アイズは壁の一角に歩み寄った。
《デスペレート》を持ち、壁面を斬りつける。
あっさりと切れた割れ目の先には、石壁――――――24階層本来の壁が視認できた。
(何かが、ダンジョンの上に被さっている……?)
まるでこの迷宮内に肉壁が取り付いているようだ、とアイズは思った。
***
リク・シュトラウスは一行の最後を少し遅れつつもついていっていた。
(まったく、ハチも人使いが荒いんだよなぁ……)
通常なら夜の時間帯にしかダンジョンに潜らない。一般認識としては、リク・シュトラウスは27階層の悪夢によって専属冒険者のハチマン・ヒキガヤを失い、茫然自失で鍛冶に手を付けられる状態ではない、となっているリク。そんなリクがこのタイミングでアスフィやアイズたちの極秘クエストを知ったうえでかかわっている理由は単にある組織の命令だ。いや、組織というよりかは上司にあたる男なのだが――――――
(アイツ、小人族に変化してる時は感情を挟まないんだよな……冷徹すぎる。人に対してもモンスターに対しても、等しく扱っている、っつーか……俺に対してすら「リク、命令だ」って感じだしよぉ……俺にはダンジョン潜らせるくせして、本人は「俺は他の仕事もある。映像で確認するから問題ない」とかふざけてんのかよ……どうせ【アストレア】の連中に稽古をつけるんだろうが……ただ女子とキャッキャウフフしてるだけだろ!?)
ともかくにも彼はここにいる。
ダンジョンの異変にも見慣れたものだ。階層ごと変わっている場所まであるのだから……。
はーい、ほんっとに遅れた上に文字数少な目とかすんません。
それと、報告が一つ。
この作品の続きは書いていきますが……少しばかり前作を見直すと「うわぁ、俺の文章力なさすぎィ!?」ってなっちまったもんで、並行して書き直しも投稿していこうかと思っております。
投稿頻度は週一程度になるかもしれませんが、少なくとも今作品の時系列まで追いつかないかぎりはこの作品も進めてまいりますので、どうぞご理解を。
ではまた次の話で!