続・やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

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要望が多かったので書いてみました。
正直、ここからの話が長すぎてやりたいシーンが遠すぎて書く気が失せていたのですが、だんメモを久々に開いてみるとアストレアレコードなる神イベントがあったので書く気になりました。

……前作の27階層の悪夢前を書き足したい気分でいっぱいです。

短いですが、どうぞ。


暗躍する闇派閥と戦いの幕開け

 アイズたち一行はかなり奥まで侵攻していた。

 奥から漂ってくる異臭も次第に強くなってきており、食糧庫がこのような状態になってしまっている原因に近づいている証拠だろう。

 しばらく進んでいると目の前に四つの道が現れた。分かれ道だ。

 

「既存の地図では対応しきれませんね……ルルネ、地図を作りなさい」

 

「了解」

 

 アイズは赤い羽根ペンと何も書かれていない羊皮紙を取り出したルルネを見つめる。

 これまで通ってきた道の曲がり方、歩数を頭に入れていたのか、閉ざされた入り口からの地図を書き上げていくルルネ。

 

「すごい……ね、地図、作れるんだ」

 

「んー、そうか?【剣姫】に褒められるのは光栄だけど……私はこれでも、盗賊(シーフ)だからな」

 

 今でこそ地図情報がギルドよりもたらされ、冒険者たちはその恩恵に預かっているが、それは先人たちの偉業の産物だ。

 『古代』の時代からダンジョンに挑み、命がけで正規ルートを開拓してきた先人たちの功績。今のアイズたち冒険者はその偉業の上にあぐらをかき、ただ魔石を取ったり資源を回収しているに過ぎない。時たま未開拓のフロアが発見されたりするものの、約9年もオラリオの土地にいるアイズですら発見したことあるのは一度のみ。

 そんなアイズからしてみれば、地図作成(マッピング)が出来るルルネは尊敬すら覚えるのである。

 

「本当に凄い…」

 

「あはは。都市の外に出るヘルメス様に付き添って、よく怪しい遺跡とかに潜ったりするんだよな。私はもう慣れたもんさ」

 

 歩きながら、アイズと喋りながらでも手を止めない彼女に対し、アイズは自身がまだ未熟だと考えさせられた。

 時間をかけ、全ての分かれ道を捜索しながら地図を作成していく。

 ある一つの道を進んでいると、広いエリアに出た。

 その中央に灰が積もっており、近くには魔石の代わりにドロップアイテムが置かれていた。

 

「モンスターの死骸か?」

 

「ええ、間違いないでしょう」

 

「……魔石なし、ならやっぱり確定だな」

 

 アイズは先頭にいるアスフィ達とは逆に最後尾に立っていたリクの呟きを聞き逃さなかった。

(リク、さんは……何かを知っている……?)

 魔石だけがなく、ドロップアイテムのみが残されている状況。アイズはある一つの考えを頭に浮かべていた。

 アスフィも考えがまとまったのか短剣を抜いている。

 

「恐らく、『例』の門を突破できたモンスターたちがここまで侵入してきたのでしょう。そして、何かにやられた」

 

 アスフィの言葉にパーティは騒然としたが、察しの良いものは武器を抜いて周囲の気配を探っていた。

 前方、後方、複数の薄暗い横穴。

 【ヘルメス・ファミリア】の面々が注意深く見つめる中、アイズとリク、そしてアスフィだけは上を見上げていた。

 

「―――上」

 

「上です!」

 

 アイズとアスフィの言葉を聞いた面々はその場から退避する。

 上から現れたのは……食人花の群れであった。

 

『オオオオオオオオオオオオオッ!』

 

 破鐘の咆哮とともに襲い掛かってくる敵に、アスフィは叫んだ。

 

「各自、迎撃しなさい!」

 

 アイズたちは戦闘へと突入した。

 

 

***

 

 

 一方その頃、18階層リヴィラの街を出発した三人がいた。

 ベート・ローガ、レフィーヤ・ウィリディス、フィルヴィス・シャリアである。

 アイズが伝言を頼んだことで【ロキ・ファミリア】、その場に居合わせた【ディオニュソス・ファミリア】から援軍として送られたのである。

 先程まで険悪としていた三人であったが、レフィーヤが積極的にフィルヴィスに話しかけ、フィルヴィスも心を開いたことで17階層までの一触即発のような雰囲気はなくなっていた。

 ベートが一人前を歩き、二人のエルフが追随する形で進んでいたときのこと。

 ふと、フィルヴィスがレフィーヤに話しかける。

 

「レフィーヤ。先程リヴィラで私の話を聞いただろう」

 

「はい。で、でも!私はフィルヴィスさんを汚れているだなんて思ってません!」

 

「ふふっ、それはさっき言われたからな。そうではなく……『27階層の悪夢』についてだ。どんな説明を受けた?」

 

「え、えーっと……闇派閥が多くの有力なファミリアを嵌め殺しにした事件で……フィルヴィスさんはその事件の数少ない生き残りだったって」

 

「……そうか」

 

 レフィーヤから話を聞いたフィルヴィスは悲観することなく、むしろ少しばかり笑みを浮かべていた。

(ど、どうしてフィルヴィスさん、少しだけど笑っているんだろう?普通そんな事件が起きたならもっと暗い顔をするんじゃあ……)

 レフィーヤの疑問はもっともなのだが、フィルヴィスの次の言葉がまたレフィーヤに疑問を抱かせることになる。

 

「本当に、レフィーヤ達【ロキ・ファミリア】が羨ましい」

 

「?」

 

 どうして突然そのような話になるのだろうか。

(もしかして、私がいなかったときの【ロキ・ファミリア】と『27階層の悪夢』には繋がりがあるってことなのでしょうか……でも、【ロキ・ファミリア】内で『27階層の悪夢』についてはタブーとされていますけど……)

 現在の【ロキ・ファミリア】には口にしてはならない言葉として『27階層の悪夢』の存在がある。

 前に新人団員がその話をしたとき、フィン、リヴェリア、ガレス。加えてアイズたち『27階層の悪夢』時前から在籍している団員達の空気が途轍もないほどに重くなったことがあった。あの感情を表に出さないようなリヴェリアが悔しそうに俯いているのを見てレフィーヤは絶句したのを覚えている。

 やはり、何かがある。レフィーヤは詳しいことをフィルヴィスに聞こうとするが……

 

「おいエルフ共。急げ」

 

 ベートが進む速度を速めたことにより一旦打ち切ることになってしまったのだった。

 

 

***

 

 

 食人花をあらかた倒し終えたアイズたちは情報の整理を行っていた。

 アイズとルルネは以前にも食人花との戦闘があり、アイズに至っては50階層での女型戦も経験済みだ。情報共有は大事であるため、アスフィを中心に考えをまとめていく。

 

「モンスターがモンスターを襲う行動には、大きく分けて二つの可能性があります」

 

 アスフィは指を一つ立てる。

 

「一つは突発的な戦闘。偶然、あるいは何らかの事故で被害を受け、逆上してしまったモンスター同士が争う。群れ同士で戦う場合もあります」

 

 全員が頷くと、アスフィは二本目の指を立てた。

 

「そして二つ目。モンスターが、魔石の味を覚えてしまった場合です」

 

 本題に入ろうと、彼女は話を続けた。

 

「別のモンスターの魔石を摂取すると、モンスターの能力に変動が起こります。【ステイタス】を更新する時の我々とおなじく、能力が上昇します」

 

「『強化種』……」

 

「ええ。過剰な量の魔石を取り込んだモンスターは、本来の能力とは一線を画するようになります」

 

 アイズの呟きをアスフィは肯定する。

 

「有名なのは『血濡れのトロール』……多くの同業者に手をかけ、討伐に向かった精鋭パーティまでも返り討ちにした化け物」

 

「ああ、いたなぁ……上級冒険者を五十人ぐらいやったんだっけ?」

 

「ええ。最後は【フレイヤ・ファミリア】が討伐しましたが、記憶に新しいです」

 

 アイズも覚えている世間を騒がせた事件を思い返す。

 ギルドの推定Lvをはるかに超えるまでに強化された『血濡れのトロール』はあくまで特例の一つではあるが、同種族の魔石を五つでも取り込めば、モンスターの能力は目に見えて変化するというデータが存在する。

 

「それにしても最初から魔石の味をしめているとかそんなのありー?」

 

「個体差があったことからも種としてそのような性質を持っていると考えた方がいいでしょう」

 

 今回は今までで一番多くの食人花と戦闘をしたアイズだが、個体差が目に見えて存在していることにはすぐに気が付いた。同じカテゴリーに含めていいのかと考えてしまうほど力の差があった個体もある。

 どちらにせよ、食人花が出てきたことはアイズにとっては気を引き締めることにつながる。

(この先に……)

 いるはずなのだ。赤髪の調教師が。

 

「また分かれ道か……次は三つのルートか」

 

 フロアから通路へと戻り奥へと進んでいくと、またしても分かれ道が目の前に現れた。

 

「うわッ、また出た!」

 

「後ろもです」

 

 各通路に食人花が出現し、先程まで歩いていた通路にも同様に姿を見せる。

 

「アイズ、【双蒼の鬼人】、左右の通路をお願いしてもいいですか」

 

「わかった」

 

「いいぜ」

 

 戦力的にも連携としても三つに分けるとすれば自然とそうなる。

 アイズは殲滅を開始し、リクも腰から抜いた双剣で的確に食人花を撃破していく。

 そんな時、突如としてアイズ、そしてリクの上から巨大な柱が降り注いでくる。

 二人とも巨大な緑柱を回避していくが、【ヘルメス・ファミリア】の面々と分断されてしまった。

 

「こちらは大丈夫です!」

 

 アスフィの声を柱越しに受けたアイズだが、すぐさま通路にいた食人花を全滅させると、柱を断ち切ろうとする。

 だが、放たれた獰猛な殺気が、それを許しはしなかった。

 

「……!」

 

 振りかえり、薄闇が続く通路の奥を見つめる。

 あの暗がりの先にいる、無視はできない。何よりも覚えのある圧倒的な存在感。

 この相手に一時も背を向けることは出来ないと判断したアイズは向き直る。やがて、引き寄せられるように暗がりの先へと進む。

 

「――――そちらから出向いてくれるとはな。願ったりだ」

 

 奥の暗闇を切り裂くように姿を現したのは、赤髪の、調教師。

 以前、18階層にて敗北を喫した相手。

 

「……貴方はここで、何をやっているの?」

 

「さあな」

 

「これは、このダンジョンは何?貴方が作ったの?」

 

「知る必要はない」

 

 以前と同様に、こちらの質問には全く答える気はないようだった。

 

「お前は黙ってついてきてくれればいい。会いたがっている奴がいる。来てもらうぞ、『アリア』」

 

「私は『アリア』じゃない」

 

 否定するアイズに、女は怪訝そうな顔をする。

 

「『アリア』は、私のお母さん」

 

「世迷言をぬかすな。『アリア』に子がいるはずがない。仮に……お前が『アリア』本人出なかったとしても、関係のないことだ」

 

「貴方はどうして『アリア』を知っているの?『アリア』の何を知っているの?」

 

「名を知っているだけだ。『アリア』に会いたいとせっつかれてな……うざったらしい声に従って探してみれば、お前にあった。それだけだ」

 

 感情を露わにするアイズに対しても女は表情を変えなかった。むしろ余計なことを話してしまったと言わんばかりに、彼女は会話を切り上げた。

 

「無駄な話は終わりだ。お前を連れていく」

 

 そう言って女が地面に腕を突き刺すと、地面からズズッと何かが移動しているかのような音が聞こえてくる。

 暫くした後、女が腕を引き抜くと赤い液体をこぼしながら棒状のものが出てきた。

 柄が存在する、紛れもない長剣。

 ――自然武器(ネイチャーウェポン)

 アイズが考えているうちにも女は長剣についていた液体を吹き飛ばし、戦闘態勢をとる。

 アイズも肩の力を抜き、愛剣である《デスペレート》を構える。

 

「風は使わないのか?」

 

「必要ない」

 

「舐められたものだなッ!」

 

 女が突進してくるのと同様に、アイズも迎え撃つ。

 戦闘が、始まった。

 

 

***

 

 

「はぁ~マジかよ。閉じ込められたんだけど……」

 

 アイズ同様に一人で通路の食人花を倒しきったリクは、目の前に広がっている緑色の柱を見ながら呟く。

 気配から感じるに、【ヘルメス・ファミリア】の面々は真ん中の通路を進むことにしたらしい。アイズも戻ってきていないところから、それぞれで通路の探索ということになるのだろう。

 

「俺は戦闘が専門ってわけじゃないってのによ……」

 

 リクが愚痴る中で、唐突に。

 奥の通路から凄まじい殺気がリクを襲った。

 アイズに向けられたものと同様のそれは、通路の奥から向けられている。

 第一級とはいえ、鍛冶師が本職である彼には荷が重い……というわけではなく。

 

「なんだ、やっぱり居やがったのな」

 

 まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()を見せるリクは、双剣を構えながら通路の奥へと向かう。

 敵も同じように進んでいたのか、姿を現した。

 青い髪に青黒い瞳。アイズと対峙しているレヴィスに似たような面構えの女はリクを視界にとらえると、腕に持っていた剣をらしきものを構えつつ話しかけてくる。

 

「貴様、何者だ?」

 

「名乗るほどの者でもないが、そうだな……お前らを追っている()()()()()()()だ」

 

「我々を狙っている者がいるのは感知していたが……なるほど、貴様がジョーカーか」

 

 青髪の女からそう呼ばれたリクは、一泊置いて笑い出した。

 

「……何がおかしい」

 

「はははッ!……いやぁ、()()()()()()()()()()()()()と思われちゃあ困る。俺はしがない下っ端の鍛冶師さ」

 

「ほう?つまり貴様を殺せばジョーカーを引っ張り出せるというわけか」

 

「あん?ま、そうだな。だが……お前に殺せるか?」

 

 先程まで会話に応じていたリクだったが、ジョーカーの存在に気を向けてしまった青髪の女に即座に接近し、双剣を振るった。

 

「ぐうッ!!」

 

 しかし、さすがは番人というべきか。反応が遅れたにもかかわらず持っていた剣で防ぐ。お互いの位置がさっきと逆になったところで、今度はリクが話しかける。

 

「相変わらず化け物みたいな反応速度だな。お前の名前は何だ?」

 

「……アヴィス」

 

「俺はリク。ジョーカーとともにお前らの仲間を三人殺したこともある男だ」

 

「ッ!?レイアとカフー、ブフェを殺したのは貴様らか!!」

 

「気づいてなかったのか……さすがジョーカーだな」

 

「殺す!貴様はここで殺す!!」

 

「やれるもんならやってみろ!!」

 

 再び両者はぶつかり合う。

 だが、この戦闘が一方的なものになるとは誰が思っただろう。

 リク・シュトラウス――――()()()()()()()()()()()()()()()L()()()()だということに、誰も気づいてはいないのだから。

 

 

***

 

 

 アイズ、そしてリクと分断されたアスフィ達は苦戦を強いられるものの、異常を感じたであろうファルガー達待機班が伝令を出したうえで応援に駆け付けたことで、食人花の群れを倒しきり、奥へと進んだ。

 大きな広間に出ると、そこは異様な光景が広がっていた。

 

「宿り木……?」

 

 アスフィの口からついこぼれ出た言葉の通り、食糧庫の核が三体の食人花に似たモンスターに包まれていたのである。

 辺りを見れば壁から生れ落ちるモンスター……食人花と思われしモンスターが黒い檻の中に収監される。

(これは……エネルギーを取り込み、ダンジョンが利用されている?食人花はここで作り出されていたのですか……報告が必要ですね)

 アスフィが考えをまとめている最中、奥から人が続々と姿を現した。

 

「侵入者を殺せ!!」

 

「「「おおおおおお!!」」」

 

「なっ、【闇派閥】だとっ!?」

 

「本当に残っていたのかっ!」

 

 過去、オラリオの暗黒期を作り出していた【闇派閥】と思わしき格好をした人間を見て、警戒を強めた【ヘルメス・ファミリア】。

 

「全員、敵の無力化をッ!」

 

『『『オオオオオオオオオオオオオッ!』』』

 

「またかよこいつら!!」

 

「パーティごとに対処しなさいっ!切り抜けますよ!!」

 

 食人花まで襲いかかってくる状況になり、【闇派閥】、【ヘルメス・ファミリア】、食人花による乱戦に突入するのだった。

 

 

***

 

 

『過保護じゃない?』

 

「何がだ、×××××」

 

 上下左右、空間そのものが闇に包まれている中。

 一人の男と、少女の会話が行われていた。

 

『リクまで派遣する必要あったの?彼は引きこもり設定だったから、怪しまれることになるじゃない?』

 

「そのうち僕だって姿を表舞台に晒す。それに、もしも怪人が複数人いれば【剣姫】、【ヘルメス・ファミリア】だけでは荷が重い。いくら【万能者】が第一級に達したとはいえ、相性的には厳しいはずだ」

 

『【ロキ・ファミリア】からは援軍が出てるのに?』

 

「【凶狼】が戦えるかというレベルだ。やはりLv.5では荷が重いからな」

 

『そりゃあ、君たち見てるとそう感じるけど……あれでも七年前より戦力は多いんだよ?』

 

「当たり前だ。【ゼウス・ファミリア】【ヘラ・ファミリア】亡きあと、オラリオがどうやって立ち直ったと思っている。化物集団と同レベルにまでは成長してもらわなければ困るのはこちらだ」

 

『容赦ないなぁ』

 

「こちらの隠し戦力にも限度がある。敵の首魁を倒すにはまだ安全圏とは言い難いんだ」

 

『理想が高すぎるんだって。君はいつもそうだよ?』

 

「せっかくの平和を、失いたくはない」

 

『……やっぱり無理ー!!!その姿禁止!気持ち悪い!嫌だぁぁ!!』

 

「うるさいぞ×××××」

 

『いつもの××××がいいよぉ!』

 

二人の会話は闇の中で続く。

誰も感知できない、その場所で。

 




続きも頑張って出していくつもりです。
更新は遅いかと思われますが、どうぞよろしく。
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