続・やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。 作:シェイド
「お前は……!?」
「久しぶりだな【万能者】」
「どうして貴方が生きているのですか!?オリヴァス・アクト!」
【ヘルメス・ファミリア】、闇派閥、食人花による戦闘は【ヘルメス・ファミリア】の勝利で一度落ち着いていた。
そんな中、奥にいたフードを被った人物と対峙したアスフィは、その人物を見て驚きを隠せなかった。
オリヴァス・アクト。かつての闇派閥で幹部だった男。推定Lvは3。【
だが、『27階層の悪夢』時に討ち取られたはずだった。
「お前は殺されたはずです!あの他ならぬ【闇英雄】に!」
「ふははははっ!確かに私は一度死んだ。我らの計画を次々と狂わせた忌々しき男に腕を落とされ、最後は身体を切り離されてな。しかし私は選ばれたのだ!『彼女』の力によって蘇った!!」
「彼女…?」
「『彼女』の望みを叶えるのが私の願望だ。故に貴様らを生きて返すわけにはいかない。いけ、我が同士達よ!!」
「「「おおおおおお!!」」」
「奴らに死の鉄槌を!」
「これで俺はハンナの元へ行ける!」
「待っててユリウス!今あなたの元へ行くわ!!」
「これは……!?」
「『火炎石』!?あの野郎またっ!!」
闇派閥がギルド傘下のファミリアと拮抗を維持していた理由の一つ。
それこそが自爆覚悟の特効攻撃。深層域に生息する『フレイムロック』のドロップアイテムであり、強い発火性と爆発性を持つ。
それゆえに、直撃すれば上級冒険者に対してすら命を奪うことが出来る。
「壊れた連中だな。神に縛られる愚か者ども……滑稽な」
「貴方の相手はこの私です!」
後ろで行われている常軌を逸した光景を見ながら、そう呟くオリヴァス。
アスフィが接近を試みるが……
「
「なっ…!?」
一言、ただそれだけで食人花の群れが地中より現れ、アスフィを襲った。
(やはり調教師……!)
アスフィは自身の考えに間違いはないと断定。自作の爆薬を用いて迎撃しながら相手の出方を窺う。
「【万能者】、以前私に散々いたぶられたことを忘れたのか?恐怖しないのか?」
「あれはすでに過去のこと。今ならば負けはしない!」
「大した自信だ。だが……ファミリアの団員達を守りながら私を倒せるのか?
「貴様っ!!」
「お前ら隊列を維持しろ!アスフィが調教師を倒すまで粘るんだ!!」
「わかってらぁ!」
ちらりとファミリアの様子を確認するものの、なんとか粘ってくれていた。アスフィは心強く思いながら倒すべき相手、オリヴァスを見つめる。
「仕留めさせていただきます!」
「
「それはもう見飽きましたよ!『タラリア』!」
「なにっ?」
アスフィ・アル・アンドロメダ。
オラリオにおける屈指のアイテムメイカーであり、その中でも傑作がこの
二翼一対。計四枚の羽根によって装備した者に飛翔能力を授ける。アスフィが開発したアイテムの中でも秘匿とされており、破格の性能を持つ。
「空中に……」
「はっ!」
食人花たちの無防備な上空から爆薬を振り注がせ、瞬く間に殲滅。そのままオリヴァスに突撃するアスフィ。
「はあっ!」
「ぬうっ!」
短剣を叩きつけるものの、その剣身を素手でつかむオリヴァス。
「っ!なんて力…!」
「――――確か貴様はLv.4だったな」
アスフィが短剣を引き抜こうとしてもわずかにしか動かない。
その一瞬で、オリヴァスはもう片方の手でアスフィの首を掴む。
「うぐっ」
「今の私はLv.3どころの話ではない。調子に乗ったな【万能者】」
「ぐうううっ!」
どんどん強く締められていく首。
なんとか腕を外そうとするものの、力の差でどうしても離すことが出来ない。
「冒険者のしぶとさは身に染みている。確実に仕留めさせてもらおう!」
「ッ!」
「なに?」
咄嗟に背後に装備していた予備の短剣を腕に突き刺し、力が弱まった瞬間に首を絞めていた腕を振りほどくアスフィ。
「かはっ……はっ!」
「遅い」
呼吸をし、地面に落とした短剣を拾ってオリヴァスに突きつける。
しかし、一瞬のうちに背後に移動したオリヴァスが、先程腕に刺された短剣をアスフィの背中に突き刺して……
「アスフィー!?」
アスフィがオリヴァスを抑えたことで食人花が増えることがなくなり、殲滅し終えた【ヘルメス・ファミリア】の団員たちがこれから起きる惨劇に目を見開いた―――――しかし。
「遅い?こちらのセリフです!」
「馬鹿な!?」
一瞬のうちに回転し、短剣を受け止めるアスフィの姿があった。
「いつ私がLv.4だと言いました?」
「……なるほど、器の昇華か」
アスフィの公式レベルは4。第二級冒険者とされているが、実際はLv.5、第一級冒険者である。
主神のヘルメス、また友人から口止めされており、【ヘルメス・ファミリア】の団員たちですら知らなかった事実。
「アスフィもだったのかよ!」
「文句はうちの主神に言いなさい」
予想された惨劇が起きなかったことに一先ず安堵した【ヘルメス・ファミリア】。
だがまだ終わってはいない。
「どちらにしても貴様らは生かしては帰さん。
『オオオオオオオオオオッ!!』
「なんつー数だよっ」
先程までの倍はあるだろうか。食人花を再度地下より呼び出したオリヴァスは自身もアスフィを殺すために邪魔なフードを取り戦闘態勢に移る。
そこに。
「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!!」
「新手かっ」
火炎の豪雨が降り注ぐ。
凄まじい威力の魔法が食人花に襲い掛かり、次々と撃破していく。
「あれは……レフィーヤ!?」
「ルルネさん!?どうしてここに……」
現れたのはレフィーヤ達三人。
ベートは辺りを見回した後、問いかける。
「おい、アイズはどこだ」
「【剣姫】とは分断されちまった!」
「分断だと?」
「……そうか、お前らは【ロキ・ファミリア】か。【剣姫】を追ってきたのだな」
「……アイツは?」
ベートがオリヴァスを目を細めながら見つつ尋ねる。
「オリヴァス・アクト。5年前に確かに討ち取られたはずがどうやってか生き延びていたらしい。現状、Lv.5上位と認識していた方がいいでしょう」
「Lv.5!?」
一旦戻ってきたアスフィが答え、それを聞いたレフィーヤが驚きの声を上げた。
第一級冒険者とされるLv.5以上の冒険者はオラリオにおいてもほとんど存在しない。多数の第一級冒険者を抱えている【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】も含めても、都市最上位のファミリアにしか在籍していないのである。
前回リヴィラでアイズを圧倒した赤髪の調教師と言い、今回のオリヴァスと言い、敵の戦力は相当高い。
レフィーヤは気を引き締めようと杖を握りなおす中、隣にいるフィルヴィスの様子がおかしいことに気が付いた。
***
「オリヴァス……オリヴァス・アクト!!」
顔に怒気を纏いながら今にも飛び掛かりそうしているフィルヴィス。
呼ばれたオリヴァスは見知った顔であったことに口角を上げた。
「フィルヴィス・シャリア。貴様も生き残っていたのか」
「何故貴様が生きている!?」
「私は『彼女』に選ばれた存在だからだ!生き返ったのだ!……それより、お前こそ何故生きている」
「何……?」
怒るフィルヴィスと気色悪い笑みを浮かべているオリヴァス。
フィルヴィスの変化に驚きを隠せないレフィーヤは、唖然としたまま会話を聞いていた。
「お前たちギルド傘下の冒険者たちは【闇英雄】によって助けられ続けたにもかかわらず!最終的には奴自身にとどめを刺したようなものだろう?【アストレア・ファミリア】の女どもといい、貴様らといい、足を引っ張り続けていたではないか」
「……【アストレア・ファミリア】?何故その名が……」
「……れ」
「そうして考えてみると奴自身も甘い男だった。ゼウスとヘラの残党とも対等に渡り合い、当時、オラリオ最強を誇っていたというのに弱者を見捨てられなかった軟弱者だった」
「……なさい」
「……まれ」
「あの魔法、【
「「黙れ!!!」」
オリヴァスの言うことに我慢できなくなったフィルヴィス、そしてアスフィが怒鳴りながら攻撃を開始する。
「【一掃せよ、破邪の聖杖】!」
「『タラリア』!!」
超短文詠唱に多大な魔力を込めるフィルヴィスに、上空に舞うアスフィ。
「【ディオ・テュルソス】!」
「とっておきです!」
黄金の雷と【万能者】の中でも一番の威力を持つ爆弾が投下される。
だがオリヴァスは不敵な笑みを浮かべるばかり。
「ふんっ!」
「何っ!?」
フィルヴィスの魔法を片手で受け止めるオリヴァス。
さらに、
「
『オオオオオッッ!!』
「まだこんなモンスターをっ!」
アスフィの爆薬を防がんとばかりに地面から現れる
それは食人花よりも巨大であり、加えてアスフィの爆弾でも少ししか傷をつけられないモンスター。
「返すぞエルフ!撃ち落とせ
「ああああッ!」
「ぐうッ!!」
「フィルヴィスさんっ!」
「アスフィっ!」
雷の魔法をお返しとばかりにフィルヴィスへと撥ね返し、巨大花の触手がアスフィを地面に叩きつけた。
「ちっ、あの野郎とでかい花は俺がやる!馬鹿エルフ詠唱しろ!」
ベートが跳躍し、いつの間にか湧いていた食人花を蹴散らしながら接近していく。
レフィーヤはフィルヴィスの様態が気になったが、【ヘルメス・ファミリア】が回復薬を使っているところを見て自分にすべきことを全うしようとする。
「すいません、援護をお願いします!……【解き放つ一条の光。聖木の弓幹。汝、弓の名手なり】」
淀みなく詠唱を行いながらレフィーヤは考えを巡らせる。
(私には分からないことだらけ。だけど、今しなきゃいけないことは分かる!)
フィルヴィスの怒りも、【万能者】の怒りも理由はピンと来ていない。
それでも、あのオリヴァスとかいう男が敵であるということだけははっきりとしているのだから。
「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」
食人花の触手攻撃が続く中、レフィーヤはひるまずに詠唱を終えた。
「【アルクス・レイ】!」
放たれた光の砲撃は真っすぐにベートへと向かい、その装備しているブーツに集約される。
「おらああああッ!!」
「何だと!?」
ベート渾身の一撃が巨人花を襲い、撃破に成功する。
そのままの勢いでオリヴァスに突撃するベート。
「てめえが何者かなんてどうでもいい!アイズはどこだ!?」
「【剣姫】なら私の仲間が相手にしている。今頃腕を斬られている頃ではないか?」
「―――殺す」
凄まじい殺気を帯びた目で睨みつけながら、連続攻撃を仕掛けるベート。
互角に戦い続けるオリヴァス。
「本当にベートさんと互角だなんて!?」
レフィーヤとしては信じたくもない光景である。
アイズといいベートといい、レフィーヤにとって【ロキ・ファミリア】の幹部たちは雲の上の存在であり、憧れである。
そんな存在と対等以上に渡り合える者がここ最近多く見かけられるのだ。動揺は大きかった。
それでも自身のすべきことは忘れない。
「【……解き放つ一条の光。聖木の弓幹。汝、弓の名手なり】」
自分に出来る精いっぱいをするのがレフィーヤの役割。それをしっかりとこなそうとしているのだ。
「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】」
『オオオオオ!!』
「ッ!」
(しまったっ!)
食人花に応戦していた【ヘルメス・ファミリア】が少しばかり分断されてしまい、自身を守る存在がいないことに今気づいたレフィーヤ。
魔法を打つことに神経を使いすぎて周囲への警戒を忘れていたのだ。
(やられる……っ)
咄嗟に目を瞑り詠唱を中断してしまいそうになるレフィーヤ。
「【盾となれ、破邪の聖杯】!」
しかし、彼女の前に一人のエルフが飛び出した。
「【ディオ・グレイル】!」
白い輝きを放つ、円型障壁。
魔法を発動させたフィルヴィスによってレフィーヤを狙った食人花たちの攻撃を無効化、さらには消滅させる。
「やれ、レフィーヤ!」
「【アルクス・レイ】!」
フィルヴィスの援護によってもう一度成功した光の砲撃がベート達の元へ飛んでいく。
自身の向かってくるそれを一瞥したベートはすぐさま跳躍した。
「無駄なことを!」
光の砲撃が自身に向かってくるのを見て片手を突き出し、止めようとするオリヴァス。
だが砲撃は進路を変え、ベートの元へと打ちあがった。
第二等級特殊武装《フロスヴィルト》。
レフィーヤの膨大な
「くたばりやがれぇぇぇ!!」
「ぐうおおおおおっ!!」
とびひざげりの要領で渾身の力を持ってベートが叩きつけた力はオリヴァスをどんどん後退させていく。
「だっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「おおおおおおッ!!」
蹴りきったベートに吹き飛ばされたオリヴァスは床を削りながら、最後は核となっていた寄生されている柱の中心部にぶつかって止まった。
「……やったか?」
「いや、まだだ。しぶとい野郎だぜ」
ベートの言った通りオリヴァスは息を荒くしているもののまだ生きていた。
さらに。
「ふふふ、ははははッ!」
傷が再生されていく。
目を疑うような光景に全員が唖然とする中、オリヴァスは酔いしれるように告げる。
「言っただろう、私は選ばれたと!他ならぬ『彼女』に!」
そうして見せつけるように胸の一部分から魔石を外に浮き出させるオリヴァス。
「……あなたは、人とモンスターの混合体とでもいうのですか!?」
「その通りだ!私は至高の存在となった!神の恩恵よりもすさまじいこの力を得て!!」
モンスターの力を人が行使する。
考えただけでも恐ろしい事実に、多くの者が恐怖を抱く。
「貴方の目的は一体なんだというのです?」
団員たちに回復してもらったアスフィが支えられながらも問う。
「―――
その答えに、全員が目を見開く。
「お前ッ、自分が何を言ってくるのか、分かってるのかよッ!」
オラリオはダンジョンの直上に築き上げられた巨大都市であり、そしてダンジョンに対する防波堤でもある。 『蓋』の役割を持つ『
そのオラリオが崩壊すれば『古代』の戦乱の時代に逆戻りすることになる。
かつてオラリオ崩壊を企んだ【闇派閥】は冒険者たちが命をかけて戦い抜いたことでやっとのこと防ぐことが出来た。
それと同じことをまたしようとするオリヴァスに、ルルネがすぐさま言葉を返す。
「理解しているとも!私は、自らの意思でこの都市を滅ぼす!!『彼女』の願いを叶えるために!……お前たちには聞こえないのか、『彼女』の声が!『彼女』は空が見たいと言っている!『彼女』は空に焦がれている!『彼女』が望んでいるならば、私はその願いに殉じてみせよう!」
病的なまでに肌白い顔に高揚した笑みが浮かぶ。
話の中身からかろうじて理解できることは、『彼女』という存在に対しての男の忠誠と妄執だ。
「そのために、まずは貴様らを殺すとしよう」
「何言ってやがる、もう碌に動けねえだろうが」
オリヴァスにベートが反論する。
実際、外見は綺麗に再生されていたオリヴァスではあったが蓄積された戦闘によるダメージに内部はかなり消耗していた。
「見抜かれていたとはな。だが、貴様らを殺す手段など他にもあるのだ。巨大花!」
『オオオオオオッッ』
「な、なんだよ……」
「さっきの比じゃない大きさですね……」
地中より現れたモンスターは先程までの巨大花と同じようではあったが、大きさがまるで違った。
「ふはははッ!すべては彼女のために!」
三度、戦闘が起ころうとしたところで……真横の壁が次々に崩壊した。
「あれは……」
「アイズさん!!」
左側からはアイズと赤髪の調教師。
「【双蒼の鬼人】!」
右側からはリクと青髪の女が。
「ちっ」
アイズの猛攻に防戦一方で受けることが精いっぱいな赤髪の調教師。
「この程度じゃ俺は殺せねえっての!!」
リクの振るった双剣の威力に吹き飛ばされる青髪の女。
「ぐうッ」
「アヴィス、貴様の相手は誰だ?」
「【
「レヴィス!こいつは駄目だ!Lv.6でも上位に入る!!」
「次から次へと…!」
「何を手間取っている。レヴィス、アヴィス。口だけかお前らは。私が代わりに倒してやろう。……『アリア』は最悪死体でも構わん!やれ、巨大花」
「おい、止めろ」
「止めてくれるなよレヴィス。全ては『彼女』のためだ」
空中に飛んだままの状態であったアイズ目掛けて巨大花が襲い掛かる。
だが、アイズは冷静だった。
「【テンペスト】!」
風の加護を纏い、一閃。
それだけで真っ二つにされて消滅する巨大花。
「なぁっ!?」
「……また差を開けられちまった」
圧倒的な一撃を見て、レフィーヤはおののいた。
―――アイズの魔法、【エアリエル】は異常だ。
攻守一体を司る万能の能力、単独で階層主と渡り合える途方もない出力、あの力は
ヒューマンであるアイズが、先天的な魔法種族のエルフでもない彼女が、どうしてあそこまでの魔法を行使できるのか。
(アイズさんが、また……)
Lv.5であったアイズを、都市最強の一角へと押し上げていたのは間違いなく風の力によるものだ。
Lv.6に至った今、純粋な白兵戦であればフィンたちをも超えたであろう。
「ベートさん、レフィーヤ……」
アイズに対しての援軍であった二人は、一先ずアイズを見つけたことに安堵する。
「さすがだな【剣姫】。ハチの野郎が目をかけていただけはある」
アイズたちが振り返った先には、双剣を構えつつ相手方を警戒しながらこちらにやってくるリクの姿があった。
「【双蒼の鬼人】、まさかあなたがLv.6だったとは」
「派閥内で団長よりLvが高くなると面倒が起こるからな……隠してたんだよ。お前らも黙っといてくれよ?」
こちらを一瞥した後、再度アスフィと会話をするリクを見ながら、アイズは考える。
(相手は青髪の女の人。確かアヴィスとか言う怪人……私と対峙していたレヴィスさんと同格の存在なはず……この人、強い……)
アヴィスが言うにはLv.6上位であるという。
本職が鍛冶師であるリクがLv.6であるということだけでも驚きだが、フィンたちに次ぐ実力を持っているということには耳を疑うばかりだ。
「レヴィス、ここは撤退だ。私は『彼女』の望みのためにもここで死ぬわけにはいかない!」
「……」
敵方を見ればオリヴァスがレヴィスに撤退を訴えていた。第一級冒険者が四人もいるこの状況を不利と判断したのだろう。
レヴィスはそんなオリヴァスを一瞥し……
「ガハっ!?……な、ぜ……」
「より力が必要になった。それだけのことだ」
一瞬のうちにオリヴァスの身体に埋め込まれていたであろう魔石を抜き取り、それを口にした。
魔石を抜き取られたことで灰となり消滅したオリヴァス。
「これでもまだ足りないか……アヴィス、力を貯めるとしよう」
「わかっている。この柱を壊せば……!」
食糧庫は特殊なルームである。
中心になっている柱を崩壊させることで食糧庫自体が崩壊するようになる。
「まずいっ!全員早く外に出ろ!!」
アヴィスが起こす行動を悟ったリクが叫ぶ。
「ダンジョンが……!」
「ちっ!アイズ!早くしろ!!」
次々と天井の岩が崩れ落ちていく中、アイズはレヴィスと向かい合っていた。
「アリア、59階層へ向かえ。そこにお前の知りたいことあるはずだ」
「59階層……」
「ちょうど面白いことになっている」
「……どういう意味、ですか?」
「薄々感づいているだろう?お前の話が本当だとしたら、身体に流れている血が教えてくれているはずだ」
「……」
「お前が自ら向かえばこちらの手間も省ける」
そう言葉をかわした後、アイズも食糧庫から脱出したのだった。
***
「よーし、張り切っていくわよ!!」
とあるオラリオ郊外にある一件屋の庭にて。
11名の少女たちが集結していた。
……いや、庭というのは些か無理があるだろうか。
魔法特訓のための障壁に剣打ち込み用の人型、モンスター型の模型など、一般の庭とはかけ離れている場所であった。
「ふふ、今日も団長殿は張り切っておられますこと」
「そりゃそーだろ。これから懐かしいオラリオ入りするってんだ。××××程じゃないが、アタシだって興奮してるぞ?」
「×××の場合は【勇者】に会いたいだけでしょう?」
「別にいいだろ!そうだそうだ、××××。アタシらが表舞台に立った後、二人で夜這いしねえか?アタシはフィンに、お前は××××によ」
「それはいい考えね!!」
「団長、こんな昼間から何寝ぼけたこと言ってるんだ……」
「あははっ。僕はまたリオンに会いたいよ」
「あのクソ雑魚エルフとはちょくちょく顔を合わせているのにか?」
「それでもだよ。いつも一緒にいたいくらいだ」
彼女たちは本来ならば生きていてはならない存在。
殺されてしまった、潰えてしまった正義。
それでも、ある者は回復し、ある者は蘇った。
そしてそれは、誰も知ることのないことである……
「全員、揃っているようだね」
「あ、××××!」
そんな少女たちの前に一人の小人族が姿を見せた。
先程まで一切の気配を悟らせなかった彼は無表情のまま告げる。
「まずは顔合わせだ。全員、僕の作った魔道具は持っているな?」
「「「はい!」」」
「なら行こうか……【我、闇の眷属なり―――――】」
***
「……以上が、アイズ、ベート、レフィーヤからの報告をまとめた内容だ」
「赤髪の調教師レヴィス、同類の仲間であるアヴィス……」
「まさか【
「まるで悪夢だね」
【ロキ・ファミリア】の執務室で、フィン、リヴェリア、ガレス、主神のロキが集まり会議を行っていた。
本来であればここにコマチも加わるのだが、今回はレフィーヤによるある問いから彼女だけ呼んでいない。
議題は新種のモンスターやダンジョンでの異変、人とモンスターの融合体である怪人についてである。
「それにしても一番の問題はアイズたんや」
「ああ。『アリア』の名がここで出るとは思わなかった」
「敵はアイズを狙っている。それだけは確かじゃろう」
フィンたち最高幹部はアイズがオラリオを訪れた時より世話してきたこともあってか、多少の事情は本人から聞いている。
それゆえに、彼女の意思を一番に知りたいと思っていた。
「……アイズはなんて?」
「行きたい、だそうだ」
「ふむ……」
フィンは情報を整理しつつ、これからの行動について考える。
(59階層は【ロキ・ファミリア】の未到達領域に違いはない。ギルドからも遠征をおこなうように強制任務が来ている……アイズ自身のためにも、ここは挑戦すべきか)
資金面や団員達への知らせなどやるべきことは山ほどあるが……フィンは結論付けた。
「よし、遠征を決行しよう」
「せやなー、どちらにせよギルドからもせっつかれとるし、ちょうどええか」
「今回は【ヘファイストス・ファミリア】の応援も依頼したい。深層へのアタックを確実に成功させるためにも新種のモンスターに対応するためにも必要になるだろう」
「それはいいが……今回の件、なんでもあの【創造者】……【双蒼の鬼人】、リク・シュトラウスが出てきたとな。椿には毎回濁されておったが……いつ復活したのじゃろうな」
「ハチマンの相棒鍛冶師か……『27階層の悪夢』の一件以降、表にはほとんど姿を現していないと聞くが、アイズたち曰く第一級冒険者並みの力を持っていたとか」
話題は今回の件でもう一つの重大視されていることに移っていく。
「……レフィーヤには、何と言おうか」
「……」
「正直、儂らですら受け止めることで精いっぱいだったことだ。アイズやコマチだけではない……慕っていたラウルやアキたちの士気にも関わってくる」
「遠征前に告げるのは得策ではない、か」
「【闇派閥】の生き残りが存在したうえで、敵が煽りを入れてくるとすれば共有すべきことだろう。しかし……なんと言えばいい」
「「「……」」」
かつての仲間。今はもういなくなってしまった男。
ロキの恩恵も途切れており、生存を信じる信じないの話をすることはもうなくなってしまった。
彼らは大人だった。割り切ろうとして今でもファミリアを引っ張り続ける存在だ。
だが、彼女たちは違う。
若く、それでいて子どもな彼女たちの精神はそれに耐えることが出来なかった。
ファミリア内で近頃加入した団員には、『27階層の悪夢』を聞いてくる者も存在している。その話題に触れただけで、アイズは歯を食いしばり、コマチは目の焦点が合わず、ラウルは涙目になり、アキはやりきれないとばかりに目を逸らす。
ファミリア内の信頼にも関係してくる事柄故に、彼らは対処に頭を悩ますのだ。
……一人、真実を知るロキは大量に脂汗をかきながら外を眺めているが。
「……ともかく、遠征が終わるまでその話は禁止とする。それと遠征中に、ガレスかリヴェリアのどちらかにリク・シュトラウスと話してもらいたい。僕たちよりもある意味濃い付き合いをしていた彼なら……」
「そうだな……」
「わかった。儂が話してみることにしよう」
三人が遠征計画を詳しく仕上げていく中、一人、外の景色を見ているロキは汗をかきながら心の中で叫んでいた。
(八幡お前!!いつ戻ってくるんや……仕事を早く終わらせてくれ……頼むで!!)
ウラノスに会いに行った際に姿を確認した男のことを思いつつ、どうにかバレんようにしようと、ロキは改めて思うのであった。
えー……これからの展開どうしよ?飛ばしたいよぉ、めっちゃ飛ばしたいんだよぉ……頑張って更新するか……。
今回の内容が前作と矛盾するところがあるのですが、こちらが正しいです。前作はやはり改変すべきですね……なんとか時間を作って書きたいとは思っています。
時間があるときに適宜更新できるように作っておくか……。