続・やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。   作:シェイド

15 / 16
うーん、どんどん出していくべきかなぁ。


遠征の始まりと冒険する者

「これより、ダンジョン深層への遠征を開始する。今回も上層の混乱を避けるため――――」

 

 フィンが団長として遠征隊を前に話している中、アイズは先程渡された水晶を見つめていた。

 ルルネに携行食と共に渡されたもの。黒いローブから渡されたというそれを、身に着けて59階層に向かえとのこと。

(あの黒ローブの人は、一体……?)

 アイズの疑問は尽きることがなかったが、遠征隊が出発したことで意識を切り替え、フィンに続くのであった。

 

 

***

 

 

「ベート君、遠征楽しみだった?」

 

「あったりめぇだろうが!今回もモンスター共を殺しまくってやる!」

 

「でもでも~前回は敗走したよね~?」

 

「あれは全員だろうが!?」

 

 コマチはベートで遊んでいた。

 一班に配属されたコマチはベートと隣で進行している。コマチの【ライトニング】の性質もあり、アイズと共に組まされることの多い二人なのだ。

 それに、コマチの楽しみの一つがベートを弄って遊ぶことであった。

 立て続けに大事な人を失い続けたコマチは精神が壊れていた。いや、今でも壊れているのであるが、そんな中で入団してきたのがこのベートである。

 最初、ガレスに挑んでボコボコにされたという話を聞いた時は面白いぐらいの認識だったのだが、ある日、コマチが【ロキ・ファミリア】最速であることを聞きつけたベートが色々と絡んできたのである。

 もちろん、レベルはコマチの方が高かったことで【ライトニング】と【リスト―ロ】による無限地獄を味合わせてやったりしたのだが、Mなのかというレベルでベートは勝負を挑んできた。

 ベートも当時、精神的に不安定で暴れる相手が欲しかったのだろう。そしてそれはコマチも同じ。

 ある時ベートがコマチを破ったことでランクアップすると、今度はえげつない手でベートを地に伏せるコマチが。

 そんな喧嘩仲間のような二人はかなり仲がいい。お互いにだけ過去のことを話す(酒の力もある)など信頼度は高い。

 その二人を周囲が見れば……

 

「見て!またあの二人が仲良さげに会話しているわ!」

 

「やっぱり付き合ってるのよ!すごくお似合いだし!!」

 

「ベートさんはカッコいいですし、コマチさんは可愛いですから……美男美女同士!」

 

「「「キャー!!」」」

 

 と、ファミリア内で噂になることもしばしば。

 まぁ、ベートにその話をするとキレられ、コマチにはやんわりと拒否られるのだが。

(なんでこんなブラコンとそんな話が出るんだっての……)

(いやー、ベート君はないなぁ。性格がお兄ちゃん並みにめんどくさいし)

 お互いの内心もこんな感じであるため、そういったことはないのである……多分。

 

 

***

 

 

「助けてくれー!!」

 

 それは上層を進行していた一班が遭遇したこと。

 二人組の冒険者が走ってこちらに向かってきていた。

 

「おーい、どうしたのー?」

 

「『ミノタウロス』が出たんだ!9階層に『ミノタウロス』が!」

 

 事態を把握するべく、フィンが二人の冒険者に詳しく聞くと、剣を持った『ミノタウロス』が現れたと。

 

「いずれにしても、あなた方が無事でよかった。他の冒険者は?」

 

「……奥のルームで一人、襲われてた。あの白髪のガキ、今頃……」

 

「ッ!」

 

「おい、アイズ!」

 

「ちょ、遠征中だよ!」

 

 アイズはすぐに、今朝まで戦い方を教えていた少年のことが頭に浮かび、走り出した。

 しばらく進むと小人族の女の子が血を流しながら倒れているところを発見し、「ベル様を助けて…」という言葉から襲われている少年があのベル・クラネルであることを確信した。

 そうして助けに向かおうとして……

 

「【剣姫】」

 

「……【猛者】、オッタル……」

 

「手合わせ願おう」

 

「どうして……なぜ今ここに」

 

「敵対する派閥と、ダンジョンで相まみえた。殺し合う理由には足りんか」

 

(まさか……)

 このタイミングで姿を現したオッタルの言葉に、アイズは昨夜の襲撃を思い出していた。

 【フレイヤ・ファミリア】による警告。あれの意味するところはこれだったのかと。

 どちらにしても、ここを越えなければ先には進めない。

(相手は、オラリオ唯一のLv.7…余計なことを考える余裕はない)

 

「【テンペスト】!」

 

 アイズは風を纏い、オッタルへと突撃する。

 

「そこをどいて!」

 

 剣技が振るわれる。

 暴風とも思えるその激しい攻撃を、オッタルは全て簡単に防ぎきる。

 

「ぬるい。だが、新たな高みに至ったか」

 

(このプレッシャー……レベルの差だけじゃない。これが【猛者】の、武人の力量…!このままじゃあの子が…!)

 なんとか突破すべく、突撃を開始するアイズだが、その背後から影が飛び出す。

 

「ていやぁ!!」

 

「……【ロキ・ファミリア】」

 

「今!」

 

「やらせ……」

 

「誰に剣向けてんだイノシシ野郎!!」

 

「ちっ」

 

(よし、抜けた―――――)

 そう思ったアイズの目の前に、回し蹴りが向かってきた。

 紙一重で回避に成功するも、一体が誰がと顔を上げれば……

 

「【剣姫】か。悪いが通すわけには行かなくてな」

 

「貴方は……!グレイス、さん……!」

 

 オッタルの後ろにいたのはたびたび遭遇することのあった狼人、グレイスであった。

 

「あー!君は前ベートを一撃で倒した狼人!」

 

「あぁ?てめえ!!」

 

 グレイスに一撃で倒されたことがあるベートは吠え、ティオナは驚きの声を上げた。

 

「そういや言ってなかったな……俺はグレイス・レイヴァーン、【フレイヤ・ファミリア】所属だ」

 

「……グレイス、手を出すなと言ったはずだが」

 

「だって突破されてんじゃねーか。さすがに第一級がこうも揃えば、足止めは難しいだろ」

 

「……」

 

 グレイスの言葉に、露骨に嫌な顔をするオッタル。

 そんな二人を見た後、アイズたちはここをどうすれば突破できるのかと考えを巡らせていたが……

 

「やぁ、オッタル」

 

「げ」

 

 フィンがオッタルに声をかけたあたりで、グレイスが奥へと逃げていった。

 

「あ!待ってよ狼人君!!」

 

「待ちやがれてめえ!」

 

「!」

 

 アイズたちもグレイスに続いて通路の先へと消えていった。

 

「まさか、立ちふさがってるのが君とはね。お仲間は逃げたようだけどいいのかい?」

 

「別に構わない。アイツは俺の管轄ではない」

 

「へえ?僕の知らない間に【フレイヤ・ファミリア】は随分と凄まじい冒険者を引き入れていたようだね」

 

「……」

 

「まぁ、今はその話はいいだろう。それより、今回の行動は派閥の総意ととってもいいのかな。女神フレイヤは、僕たちと全面戦争をすると?」

 

「……」

 

「もう一度聞こう、これは女神フレイヤの意思なんだね?」

 

 フィンの問い詰めるような言葉に視線を逸らしたオッタルは、少しした後。

 

「俺の、独断だ」

 

 そう、言うのであった。

 

 

***

 

 

「大丈夫、頑張ったね、今助けるから」

 

「……ッ!」

 

 アイズは倒れているベルの前に立ち、『ミノタウロス』と相対する。

 間に合ったことを喜ぶ中、ここまで耐えられているベルの強さも感じていた。

 

「で、で?グレイス君は何であんなことしたのかなー?」

 

「別にどうでもいいだろうが。おい【凶狼】、この馬鹿をどうにかしてくれ」

 

「あぁ?一生ソイツに構われてろ!」

 

「なんでだよ……」

 

 その後ろからグレイス、ベート、ティオナも姿を見せる。

 

「いた、アイズ!」

 

「何やってんだよお前は……」

 

 アイズを見つけた三人はそちらの方へと向かう。

 

「いかないんだ……もう、アイズ・ヴァレンシュタインに助けられるわけには、いかないんだ!!」

 

「!」

 

「ああああああッッ!!」

 

 アイズの助けを借りず、自らで決着をつけようとベルは走り出した。

 ちょうどリリを連れてフィン、リヴェリア、ティオネ、コマチが現れた辺りで、グレイスは一人思う。

(ベルの奴本当に主人公みたいだな……つーかこの状況何?え、【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者に囲まれてるんですけど……逃げてぇ)

 完璧に脱するタイミングを逃したグレイスは、居心地悪そうにしているのであった。

 

「ま、ダンジョンで獲物を横取りするのはルール違反だわな。あ?あれあの時のトマト野郎か!?ぎゃははッ、アイツつくづく『ミノタウロス』に縁があるようだな」

 

「それって、アイズが助けた?」

 

「ああ、『ミノタウロス』の奴、トマト野郎が恋しくなって遥々中層から来たんじゃないか?」

 

「ふざけないでベート」

 

「ちっ」

 

「そうだぞ、俺の一撃で沈んだお前が言っても無理してるようにしか聞こえないぞ」

 

「うるせえこの野郎!……ま、助けられたくはねえよな。前と同じ状況で、みっともないところを見せてしまった相手によ」

 

 ところどころベートにダメージが入っていたものの、言っていることは真実であった。

 

「いいの?あの子Lv.1なんでしょう?絶対やられちゃうよ」

 

「……」

 

 ティオナがアイズにそう声をかけるも、アイズはじっとベルの戦闘を見続けていた。

 

「ほっといてやれってティオナ。あいつは男してるんだぜ?もし助けられでもしたら俺だったら死にたくなるね」

 

「……お願いします、冒険者様!ベル様を助けてください!」

 

「お、おい……」

 

「お願いします!」

 

 リリがボロボロな体でベートの足にしがみつき、必死に懇願する。

 ティオナがリリを労わるものの、リリはやめる様子を見せなかった。

 その様子から、ベートが『ミノタウロス』の元に向かおうとするが……

 

「やめておけ【凶狼】」

 

「あん?」

 

「お前には見えていないのか、あいつの、ベルの冒険が」

 

「……は?」

 

 グレイスの言葉にベートが戦闘を見つめると、そこにはベルが『ミノタウロス』と互角に戦っている姿があった。

 

「あの子、Lv.1じゃないの!?」

 

「……ひと月前、ベートの目にはあの少年が如何にも駆け出しに見えた……違ったかい?」

 

「…何が起きやがった……」

 

 多くの第一級冒険者が見つめる中、ベルの冒険は続く。

 『ミノタウロス』の攻撃を全て防ぎ、反撃し、身のこなしでかわしきるベルの姿に、アイズは父を、師匠を思い出していた。

(凄い……英雄みたいで……)

 

「あの子、アルゴノゥトみたい」

 

「英雄に憧れる少年の物語だね」

 

「私もあの童話、好きだったなー」

 

 化け物に立ち向かう少年。

 巨大な敵を前にしても、怖気づくことなく果敢に向かっていく。

 今のベルの姿は、英雄の姿そのものだった。

 

「てりゃあ!!」

 

『ヴゥオゥ!!』

 

「なんなんだあのナイフ!」

 

「確かに業物だ」

 

「それだけじゃない。彼の技だよ。Lv.1とは考えられないね」

 

「本当によくしのいでる」

 

「でも攻めきれない」

 

「『ミノタウロス』の肉は断ちにくい…」

 

 それぞれが目の前の戦闘に夢中になる。

(いいぞ、ベル。頑張ってくれ……お前は英雄にならなくちゃいけないんだから)

(あの人、なーんかこう、懐かしい気持ちが湧いてくるんだけど……誰だろ?)

 グレイスやコマチは、少しだけ違うことも考えていたが。

 

「ファイアボルト!」

 

「あの魔法詠唱していない!!」

 

「アイズや、コマチと同じ……」

 

「ああ、だが相手が悪い」

 

「軽すぎだ」

 

「……いい魔法だ」

 

「……?」

 

 ベルの魔法が『ミノタウロス』に直撃するも、倒すには至らず。

 火力が低いのだ。ベルの魔力がLv.1としては破格であったとしても、『ミノタウロス』を倒すには至らない。

 

「ぜやああああ!!」

 

『ヴォオオオオ!!』

 

 『ミノタウロス』から大剣を奪ったベルと、前傾姿勢をとった『ミノタウロス』が互いに突撃し合う。

 

「若い……」

 

「ちっ、馬鹿が……」

 

 その光景を見てリヴェリアとベートがやりきれないとばかりに目を伏せ、逸らす。

 

「大丈夫」

 

 普通ならベルは負ける。単純に威力では『ミノタウロス』に劣るため、先ほどはかわしてから攻撃を仕掛けるべきだった。

 それでも、ベルを一週間見てきたアイズは確信していた。

 その通り、ベルは『ミノタウロス』をうまくかわし、自身のへスティアナイフを突き刺した。

 

「ファイアボルト!」

 

『ヴォウ!?』

 

「ファイアボルトォッ!」

 

『ヴォオオッ!!』

 

 

「ファイアボルトォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

 三度の魔法。

 ナイフを通して体内に送り込まれた炎は、最後、『ミノタウロス』を内側から破壊した。

 

「……勝ちやがった」

 

「立ったまま、気絶してる……」

 

精神枯渇(マインドゼロ)……」

 

「ベル様、ベル様!!」

 

「……リヴェリア、あいつの【ステイタス】は?」

 

「私に盗み見をしろというのか?」

 

「あんな状態じゃ見てくださいって言ってるようなもんだろうが!」

 

「じゃあコマチが見るよ」

 

 上半身の服が焼け落ちたため、背中がむき出しになっているベル。

 ヘスティアがステイタスを隠蔽していなかったため、背中に数値が浮き出ている状態なのだ。

 

「……嘘」

 

「ああ?コマチ、どんな数値だったんだ!?」

 

「どうしたコマチ……ふふっ」

 

「なんだ!早く教えろ!!」

 

「……アビリティオールS」

 

「「「!!」」」

 

「敏捷はSSに至っている」

 

「SS、だと……」

 

 基礎アビリティの数値はLvと共に強さの基準となる。

 それがS、SS……普通ならばありえない数値を持っていた彼に、【ロキ・ファミリア】の面々は驚いた。

 

「彼の名前は?」

 

「ベル……ベル・クラネル」

 

 アイズとしてはベルの冒険を、ベルの強さを改めて感じて、そしてファミリアの皆がベルに興味を持ったことが嬉しかった。

 

「……ベルか。彼は良い冒険者になるはずだ。……さて」

 

「うげっ」

 

 フィンが視線を向けた先――――グレイスは通路の入り口に向かっていたところだった。

 ……忍び足ではなく走って逃げろとその場にいる全員が思ったが、グレイスは汗を掻きつつも振り返った。

 

「な、なんでしょう?」

 

「オッタルといい、君といい、この状況を作るために僕たちを足止めしようとしたことは既に分かっている。どうしてこんなことをした?」

 

「……オッタルとは別の理由があるんだよ。こっちも色々と立て込んでいてな」

 

「なにさー!ちゃんと話してくれないと分かんないよ!!」

 

「……世界は英雄を欲している」

 

「……?」

 

「約束の時は近い。だが……まだまだオラリオの戦力が足りていない」

 

「何言ってやがんだてめえ…」

 

 グレイスの言うことに大半は理解が及んでいなかった。

 フィンやベルの回復をしつつ聞いていたリヴェリアは厳しい顔をしていたが。

 

「ベルは英雄になりうる存在なんだっての。お前らが手を出してそれを邪魔してもらったら困るんだよ」

 

「…だから、私を襲撃させた?」

 

 アイズは警告を思い出しながらそう聞くが……

 

「は?何、アイツら【剣姫】襲ったの?マジか……これはちょっと説教が必要だな」

 

「「「……は?」」」

 

「んじゃ、またいつか会おうぜ【ロキ・ファミリア】」

 

 そう言って通路へと走っていこうとするグレイス。

 謎が増えたことで混乱する【ロキ・ファミリア】の面々。

 

「待ってくれ、まだ話は……」

 

「炎状網!」

 

「何っ」

 

 グレイスは炎の円を作り出し、通路の先へと消えていった。

 

「熱い!これめっちゃ熱いんだけど!!」

 

「凄まじい魔法ね……」

 

「……今度ロキと話してみる必要がありそうだな」

 

「奴もまた、速攻魔法を使いこなす者、か」

 

 それぞれに印象を残したうえで。

 グレイスは去り、ベルの冒険は終わりを告げたのであった。

 

 

***

 

 

 50階層へとついた【ロキ・ファミリア】と【ヘファイストス・ファミリア】は野営の準備をしていた。

 

「うーん、ここが50階層か!」

 

 【ヘファイストス・ファミリア】団長である椿・コルブランドは景色を眺めながらそう言った。

 初めて訪れた階層に興奮を隠せないといった状態だ。

 

「ここまで深いところにきたのは初めてだ。礼を言うぞ」

 

「こちらこそだよ」

 

「……それにしても」

 

 椿が見つめる先にはピリピリとした空気を醸し出すティオナ。ティオネ、ベート、アイズの姿が。

 

「あやつらはいつもこんな感じなのか?道中でもかなり暴れまわっておったが」

 

「ま、ちょっと訳ありでね」

 

 ベルの冒険に感化された彼らは、心の内から熱くなっていたのだ。

 うずうずが止まらない、といったところだろうか。

 そんな中、コマチはというと……

 

「お兄ちゃんはどこなんですか!?」

 

「お、おい、なんだってんだ【光の妖精(フェアリー)】……」

 

 リクに突っかかっていた。

 何せリクはハチマンの専属鍛冶師。その上これまで表舞台に一度たりとも出てこなかったのだ。

 コマチとしてはハチマンのことを聞きに行くべく何度も工房に足を運んだが、いつも留守にしているか、帰ってくれの一点張り。

 そんな人物が遠征に同行しているのだ。詰め寄るのも分からなくはない。

 

「……ハチマンは死んだだろうが」

 

「お兄ちゃんは死んでません!ふざけたことを言わないでください!」

 

「現実見ろよ妹ちゃん。死体はなかったってことだが、腕はあったんだろ?それに、アイツはなんでお前らの元に帰ってこないんだ。誰よりもファミリアを大事にしていたアイツが、帰ってこないわけがないだろうが」

 

「そ、それは……!」

 

「それくらいにしてやってくれないか、【双蒼の鬼人】」

 

「……【九魔姫】か」

 

 さすがにこれ以上はコマチの精神に関わると思ったリヴェリアが手助けに入る。

 コマチを抱きしめつつ、リクを見やる。

 

「……何故今このタイミングで出てきた?」

 

「それ、【重傑】にも言われたんだが……鍛冶がしたくなってな。久しく深層にも来ていなかったし、ちょうどいいかってな」

 

「ハチマンと深層に潜っていたのは聞き及んでいたが……本当だったとはな」

 

「どちらにしろもうアイツはいない。俺はフリーでゆっくりやるつもりだ」

 

 ヒラヒラと手を振りながら去っていくリクの後ろ姿を、リヴェリアとコマチは見つめるのであった。

 

 

***

 

 

「では、明日51階層以降に進行するパーティを発表する」

 

 夜。

 フィンが全員の前に立ち、明日のパーティを発表していく。

 51階層……正確には52階層以降は文字通り地獄の階層だ。階層無視による攻撃は凄まじく、過酷な戦いを強いられる。

 前回、58階層で撤退するしかなかったことからもそれが窺えるだろう。

 そのため選抜隊で進行するのである。

 

「僕、リヴェリア、ガレス」

 

 まず最初に最高幹部の三人。

 

「コマチ、アイズ、ベート、ティオナ、ティオネ」

 

 第一級の幹部5人の名も呼ばれる。

(私はまだ……)

 レフィーヤはそんな光景を見て少しだけ落ち込んでいた。

 分かっていたことと言えど、取り残される気分は嬉しいものではない。

(冒険か……なんか差をつけられたような)

 ベルを一方的にライバル視しているレフィーヤからすれば、アイズたちの気持ちを高ぶらせているベルの冒険とやらで、負けたような気持ちになっていた。

 

「それから、サポーターとしてラウル、ナルヴィ、アリシア、クルス、レフィーヤ」

 

『はいっ!』

 

「……」

 

「レフィーヤ?」

 

「は、はい!」

 

「鍛冶師として、椿とリクについてきてもらう」

 

「うむ、任された!」

 

「じゃ、あれを渡しておかないとな」

 

「何を言っとるんだリク~、作ったのは私だけだろう?お前は本当に作らないしなぁ……」

 

「……別にいいだろ」

 

 こうして、59階層へと向かうパーティは決定した。

 

 

***

 

 

「「「おお~!!」」」

 

「注文されていた品だ。シリーズ名はローラン。全ての武器に不懐属性(デュランダル)を施している」

 

「思っていたよりも軽いのう」

 

「これなら、この大きさでも十分に扱えるわ」

 

「ほんとだ!」

 

「椿、要望通りだよ。これで新種のモンスターとも戦える……ところで、武器が一つ足りなくないかい?」

 

 各々が自らに与えられた武器を手に取り、新たな武器に心を躍らせる中。

 フィンはコマチにだけ武器がないことに気づき、椿に尋ねる。

 

「あー、【光妖精(フェアリー)】の分だろう?それは……」

 

「これだ」

 

「え……」

 

 コマチに剣を差し出したのは……リクである。

 ハチマン以外には剣を作らないと頑なであった彼が、まさか武器を渡してくるとは誰が思うだろうか。

 

「……彼が?」

 

「あーまあな。コイツめんどくさくてなぁ……彼の相棒以外には武器を作らないと言っておるのだが、昔に渡し損ねた武器があったと言ってな。それを少し改良したらしい」

 

「リクさん……」

 

「勘違いするなよ。俺はお前のために武器を作ったんじゃない。俺が作るのはハチに対してだけだ。……でもまぁ、ハチの妹なら受け継ぐ権利がある」

 

「これ、凄い業物……」

 

 アイズがコマチの握る新たな剣を触りながら呟く。

 不懐属性(デュランダル)が施されているだろうそれは、ローランシリーズよりも光り方が違っていた。

 

精製金属(ミスリル)も混ぜ合わせてある。お前にも扱えるように軽くしているから振る分には問題ないはずだ。名はそのままデュランダル。使い手とともに一生あってくれと願って、な」

 

 少しだけ目を伏せるリク。

 その空気に室内にいた者もつられそうになったのだが……

 

「さて、武器も揃ったわけだし、今日は早めに休んでくれ」

 

 フィンの一言でなんとか解散することになった。

 

 

***

 

 

「フィン、あ奴は……リクはやはり危険分子ではないか?」

 

「そう、かもね」

 

「昼間にはコマチが危なかった。もちろんあいつ自身も深い傷を負っているのは間違いないだろうが……それにまたレフィーヤに聞かれてしまった。遠征後に話すとは言っておいたが……」

 

 最高幹部三人がそんな話し合いをする中。

 外でその話を盗み聞きしていたリクはというと……

(ほっら!やっぱ俺いたら駄目な奴だろうが!アイツマジで何考えてんだよ……不安もあるんだろうが俺【勇者】より弱いし【重傑】よりも力ねーよ!()()()【九魔姫】には敵うわけねえし、【剣姫】にもそのうち……【光妖精】になんか殺されそうだぞ……)

 ある意味潜入しているといってもいいリクは頭を抱えていた。

(コマチのことが心配で……あんな剣作りやがって……なんですか天才ですか!?)

 そんなリクの心を、この場の誰も知ることはなかった。

 




うん、なんか書いててわけわかんなくなってきたよ(白目)

次くらいでコマチのステイタスとリクのステイタス出そうかな。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告