続・やはり俺たちのオラリオ生活はまちがっている。 作:シェイド
なんだよ、リヴィラの話大変ー(ただの愚痴)。
さて、GWに入りましたね。
私は学校が間に挟まりますが、この話を合わせて三話は投稿したいと思っています。
「アイズさん、大丈夫ですか?」
「……うん。もう大丈夫」
どこか弱々しい声で、アイズがゆっくりと起き上がる。
今まで見たこともないような憧憬の姿に、レフィーヤは動揺する一方だった。なんとか狼狽をひた隠す一方で、手元の宝玉を見下ろす。
緑色の膜に守られた気色の悪い雌の胎児。謎の幼体とアイズに視線を移り変わりさせながら、これは一体何なのかと、疑問を募らせる。
「だ、大丈夫なのかよ……や、やっぱりコレ、やばい代物だったのか?」
びくびくしながらルルネが尋ねてくる。
その答えを持ち合わせていないレフィーヤは、とりあえず決断する。
「私が持って、団長に渡します」
「ごめん、レフィーヤ……」
「謝らないでください、こんなときくらいは私が……アイズさんは離れていてください」
精一杯の笑みを取り繕った後、レフィーヤはルルネを見た。
彼女は頷いて袋を手渡す。宝玉を中にしまいきつく紐を結んだ後、そのまま小鞄を受け取って肩に担いだ。
「それじゃあ行きましょう――――――」
直後だった。
遠方から何かが崩れる音と、悲鳴、そして最近聞いたばかりの何かが這いずる音が届いてきたのは。
「!?」
アイズとレフィーヤは目を見開き、次に弾かれるように駆けだす。
倉庫を後にして、すぐ近くにあった見晴らしのいい高台まで走って行く。
そして、高台から見えた景色には――――――――
「あれは……!?」
空高く首をのばす、無数の食人花のモンスターだった。
***
「おいっ、見張りは何やってやがる!?モンスターが侵入してんじゃねーか!」
ボールスの怒声が響く。
リヴェラの街は突如として出現した食人花によって混乱の渦に巻き込まれていた。
「ティオナ、ティオネ、彼らを守れ!」
フィンの指示のもと、二人は疾走した。
「フィリア祭のときと言い、こいつ等どこから現れるのよ!」
「みんな、逃げちゃだめだって!?」
以前の戦闘とは異なり、自らの得物を用いて食人花を断絶していくティオナ達。
だが、周囲の冒険者達はパニックを起こしており、ある者は無数の触手によって叩きつけられ、ある者は体当たりをかまされ、またある者はその醜悪な大顎に捕まり咀嚼されていった。中には連携を行い奮戦する者もいるが、冒険者たちよりも食人花の能力が高く、苦戦している。
「リヴェリア、敵は魔力に反応する。出来る限り大規模な魔法で敵を惹きつけろ!ボールス、五人一組の小隊を作らせるんだ。数で当たれば各班一匹は抑えられる!」
「わかった」
「お、おう!?了解だ!」
戦場の範囲、敵の場所、味方の人員、その他数多くの情報を一瞬で精査、判断し、フィンは的確な指示を出す。
リヴェリアが広場の中央で
口腔の奥にある魔石を的確に貫き、長躯を駆け上がる、または跳躍しモンスターに一撃必殺を見舞う勇者の姿と、喉が枯れんばかりの鼓舞の声に、冒険者達は奮い立った。
混乱が徐々に収まり、彼等も食人花を少しずつだが撃破していく。
「出来過ぎているな……!」
広場での戦況が直されていく一方、未だに多くのモンスターを屠りながらフィンは目を細める。
ここから確認できるだけでも街の中を暴れまわるモンスターの数は50を超える。いや、さらに増えてきているから軽く100近くはいそうだ。階層内でも山の断壁に築かれて天然の要塞と化しているこのリヴェラに、接近の予兆さえ感じさせずに現れたモンスターの大群に果てしない違和感を、奇怪さを覚える。
いや、あまりにも
フィンは走り出し、広場の中でも物見やぐらとなっているであろう建物に上り、そこから身を乗り出す。
「っ……?!まさかね……」
周囲の様子を見たフィンの碧眼が驚愕に揺れ、思考を加速させる。
少し先の方にある湖の底から、夥しい数の食人花が水面を突き破り断壁をよじのぼっている。
湖の中に、いや、
今まで姿を隠し、一斉に襲いかかってきたこのタイミングといい、モンスターには不可能である戦略的行動。介在している人の意思。
これだけのモンスターの統率、信じられないがそうとしか考えられない。
フィンは顔を歪ませ、導き出した答えを口にする。
「やはり、
***
レフィーヤはその光景を目にしながら呆然としていた。
突如としてリヴェラの街に出現した食人花のモンスター。凄まじい数が無数の触手で街々を破壊していく。
「街が……あのモンスターに!」
「な、なんだよあれ……新種か!?」
「あのときの、モンスター……」
衝撃を受けているレフィーヤに、慌て始めるルルネ、冷静に状況を把握するアイズ。
「とりあえず、広場に戻ってティオナ達と合流しよう」
「わ、わかりました」
そして三人が広場に向かおうとしたときだった。
前方に二体の食人花が出現した。
「っ!?」
「私がやる」
急に現れたモンスターにびっくりしたレフィーヤを置いて、アイズはすぐさま行動を起こす。
自身に向かってくる触手を斬り裂き疾走、そのままの勢いで一体目を屠る。
二体目も流れるように勢いを殺さず撃破してみせた。
「す、すげー……さすが【剣姫】」
「ア、アイズさんありがとうございます。すみません、びっくりしてしまって……」
「気にしないで。それよりも早く合流しよう」
「はい!」
あっという間に斬り倒されたモンスターだったが、身を襲う振動にレフィーヤははっと顔を上げる。
「あっちからも……!!」
「う、嘘だろ!?」
「……レフィーヤ、先に行ってて」
「アイズさん!?」
モンスター達は食人花の魔石に反応したらしく、こちらを完璧に補促し、凄まじい勢いでこちらに近づいてくる。
アイズがすぐさま飛びだしモンスター達の中に突っ込んで斬撃の嵐を見舞った。愛剣で複数の敵を斬り裂きモンスター達の進撃を食い止める。
「行きましょうルルネさん!アイズさんなら大丈夫です!」
「う、うん。わかった!」
レフィーヤはこの場に残ってもアイズの邪魔をするだけだと思い、先に移動することにした。今すべきことは持っている宝玉をいち早くフィンのもとに届けること。そしてルルネの安全を確保することだ。
広場に向かおうとするレフィーヤは直接のルートを避け、迂回していくルートを選択した。途中で食人花に出くわす可能性を少なくするためだ。
遠くから怒声と轟音が響いてくる路地をしばらく進んでいると、レフィーヤ達は水晶の林ともいうべき街の一角に出た。
水晶広場の双子水晶と並ぶ、『リヴィラの街』の名所だ。
街の中でも比較的に大きい水晶が生えた階層内の北部にて形成されており、背の高い青色の水晶が立ち並んでいる。多くの十字路があり、家屋に囲まれた路地裏のごとく道はせまい。通り過ぎる者の姿を綺麗に写すことからまるで鏡の迷路のようでもある。街の中でもここだけ気取ったように地面に敷石が備えられていた。
入り組んだ水晶の道に二人の足音が響き、急いているレフィーヤとルルネの横顔が水晶に薄く反射している。
「うわっ、ば、爆撃!?」
「あれは!リヴェリア様の魔法!!」
凄まじい轟音が街の中央から連続して昇る。
ルルネが肩を跳ねさせる中、蒼然とした闇に包まれていた『リヴィラの街』は一瞬で赤く燃え上がった。上空が鮮やかな紅色に染まり、夥しい火の粉が盛大に舞っていく。
うおおおおおっ、と響いてくる歓声も聞き、レフィーヤは、都市最強の魔導師の火炎魔法が数多くのモンスターを撃破したことを悟った。
「っ……!?」
「え、あ、あなたは……??」
そして街が、空が、燃え立つように赤く染まる最中。
火の欠片が降り注ぐ水晶の道に、一つの影が、レフィーヤ達の前に現れた。
(男性の冒険者……?)
胸当て、籠手、足具。
あと頭に兜を被っていれば
レフィーヤが怪しく思っていると、その男は少しずつ歩みを進めてくる。
「と、止まってください!?」
レフィーヤは反射的に叫んでいた。
横にいるルルネは尻尾をふっており警戒を最大限に上げており、レフィーヤも杖を構える。
だが、男は大股でどんどん近付いてくる。
そして、あと十歩分の間合いを切った瞬間、男の姿が掻き消えた。
反応を許さない速度での肉薄。
目も見開く間もないままレフィーヤは懐に踏み込まれ、首を片手で掴み上げられる。
「がっ……!?」
軽々と体ごと持ち上げられ足が地面から離れる。
首を絞めつけてくる籠手。恐ろしく冷たい金属の感触が肌に食い込み、レフィーヤの手の中から杖が高い音を立てて落ちる。
男のその右腕を必死に剥がそうと両手で抵抗するものの、取りついた手は全く離れない。
首をしめ上げようと―――――いや握りつぶさんと――――凄まじい力で五本の指が首に食い込んでいく。
「う、うぐるらあああああ!!」
虚をつかれたルルネが男に向かって飛びかかるが、男はレフィーヤを掴み上げた右手はそのままに左手で裏拳を放ち、ルルネを一撃で吹き飛ばした。
吹き飛ばされたルルネは水晶の柱に叩きつけられ、気絶してしまう。
「ぁ………!ぅ、っ……!?」
レフィーヤもすでに限界に近く、意識が遠のいていく。
空気を碌に吸えないために何度も喘ぎ、その見開かれた瞳には涙が溜まる。今や完全に上を見上げる格好になったレフィーヤに、男はさらに力を込める。
が、そこに
男はすぐさま反応。レフィーヤを離してその場を離脱、回避に成功する。
「がはっ、けほっけほっ……!」
男が手を離したことで解放されたレフィーヤは精一杯息を吸い込みなんとか意識を回復させる。
「……ちっ」
男は矢が飛んできた方向を見て軽く舌打ちした後、目の前で喘ぐ少女の息の根を止めようと目を向けたときだった。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!?』
水晶の柱を破壊してずたずたに斬り裂かれた跡がある長躯が突っ込んでくる。
絶叫を上げ、爆発の如く群晶街路を突き破る食人花のモンスター。いくつもの青水晶が周りに飛散し、目を開けていたレフィーヤの中にもその光景が映り込む。
そして、その後から現れる金髪金眼の女剣士。
「アイズさん!」
「……レフィーヤ、無事?」
「は、はい。なんか援護射撃をしてくれた人がいたみたいで、なんとか……」
「……」
現れたアイズにレフィーヤは歓喜し、男は視線をアイズに固定する。
男はアイズがレフィーヤ達のもとを離れた瞬間を狙い、二人を殺そうとしていたのだ。
「……貴方が、ハシャーナさんを殺した人?」
「え……殺したのは女の人の筈じゃ……」
「……だったらどうした」
その声を聞いた瞬間、レフィーヤは何か見てはいけないものを見ているような感覚に陥った。
高く響いたその声は外見通りのものではなく―――――
「あ、貴方は男性の筈じゃあ!?」
明らかに男性の風貌である相貌をまじまじと見つめながら、レフィーヤが戸惑いの声を上げる。
包帯で顔の半分が隠れているものの疑う余地がない。うすら寒いほど感情というものが存在していないが、その顔はどうしても女性のものとは思えなかった。
無表情な男?は淡々と話す。
「引き剥がしただけだ」
「えっ……?」
「
レフィーヤは絶句しかできない。
アイズでさえも息を呑む。
「『ポイズン・ウェルミス』の体液に浸せば人の皮の腐敗は防げる……知らなかったか?……まあいい。正体がバレたなら、こんな格好は窮屈でしかないな」
抑揚のない口調で告げられる彼、いや彼女の言葉に寒気が体を走る。
つまり、目の前の人物は奪ったのだ。
殺したハシャーナの顔の皮を剥ぎ取り、念のため隠ぺい工作として衝動に駆られてめちゃくちゃにしたと思わせるために。
「ああ、きつくてかまわん」
そう言って女は自身の体に取り付けてある防具を取り始める……いや、砕きはじめる。
胸当て、籠手、足具をすべて壊すと、その下からインナーに身を包んだ豊満な胸がまびろ出る。白い首筋やそのしなやかな肢体があらわになっていく。
そして、最後に顔に取り付けていたハシャーナの顔を破り、白い女の肌が露わになる。
「いい加減、
そう告げ、女は腰に佩いている長剣を抜き放つ。
次には一気に飛びだしアイズへと襲いかかった。
「っ!」
「ああ、やはり強いな」
衝突。
レフィーヤのもとから疾走し自らも斬りかかるアイズ。《デスぺレート》が相手の長剣とぶつかりあい、激しい火花を散らす。
己の高速度に反応してみせたアイズに女は目を細め、更に連撃繰り出す。
「……!?」
言葉を失うレフィーヤを置き去りに、激しい剣戟が巻き起こる。
振り下ろされる長剣に、横に滑るサーベル。舞い狂う剣と剣が打ち鳴らされ、銀の剣閃が宙を何度も行き交う。お互いの姿は霞み、縦横無尽、決して広くない道で何度も立ち位置が入れかわる。
――――強い!!
眼前の敵の実力にアイズは瞳目する。
磨き抜いてきた己の剣技に引けを取らない戦闘技術。純粋な剣技だけでなく拳と蹴りも加えて襲ってくる洪水のような攻撃の嵐に、アイズは防戦一方。否、防ぐことが精一杯だ。
(強い。強いけど……私は負けられない……!)
そして、アイズは一旦距離を取る。
「……どうした、その程度か」
「……はあっ!」
もう一度アイズは女に斬りかかる……ただし、剣を右手に持ち
(使うよ、ハチマン……!)
そして、彼女は紡いだ。
「……
アイズの左手より氷の砲撃が放たれた。
***
「……アイズは間にあったようだな」
アイズ達が戦闘を繰り広げている『リヴィラの街』から数百Mの岩山の場所。
そこに先程まで天井の水晶にいた男と少女はいた。
『……珍しいね』
「ん?何がだ?」
『君が【剣姫】以外を……それも
「……まあレフィーヤはうちの常連だし……なによりいい奴だからな」
『このこの、女ったらしめ!』
「ちょ、痛っ、痛いってどうしたんだよいきなり。万が一に備えて場所が割れないように
先程のレフィーヤを助け、女を襲撃した矢はこの男が放ったものらしく、少女に向かって弁明している。
『ふーん。で、なんであの矢にしたの?他にもあるじゃんか』
「いや、だってバレるだろ。アイズやレフィーヤならともかく、フィン辺りに見られたら感付かれるに決まってる。ロキがいうにはフィンだけは少し感付いているらしいし」
『……で、これからどうするの?』
「様子を見よう。それが今回の目的だしな」
『おっけー……でも、もし
「………その時は最悪俺が出る。
そして、二人は戦闘の様子の観察を続けるのだった。
次回は今週中に出します。
次こそ二巻を……!