夜明けの先で、待ってて   作:昼夜米主義

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申し訳ありません。
遅れてしまいましたが7話です。


『最近』(ふうけい)の第七話

突然だが、『マリアージュ流戦技』について説明しようと思う。

この流派の起源は、一人の青年から始まった。

その青年、クロードが聖王家の歴史に登場したのは、聖王家最初期である、まだ小さな地方領主並みの領土しかなかった頃まで遡る。

この当時は弱小国でしかなかった聖王家だが、地球でいう劉備なんかみたいなアホみたいなカリスマで、兵力……というか戦力の面だけで見れば、ベルカ有数の力を秘めていた。

いわば、眠れる龍だったのである。

クロードが、聖王家の歴史書に登場したのは、そんな聖王家が眠りから覚めようとしたその時だった。

……いや、クロードが聖王家に忠誠を誓ったから、眠りから覚めたというべきかもしれない。

歴史書にはこうある。

 

『ウルズランド地方(現在の聖王連合東北最端の地)にて、かの地で暴虐の限りを尽くす賊を討伐するため、2000の軍を率いたが、たった一人の悪童により軍勢は半壊する。見かねた聖王陛下のご威光により、悪童を恭順せしめ、陛下のご威光に加わることになる』

 

マリアージュ家の口伝(というか、歴代の武勇伝)も合わせて解説すると、ウルズランド地方には、ちょっとどころではないクソ領主が居たらしい。そのクソ領主を討伐するため、当時の聖王陛下は2000の軍勢を差し向けたのだが、クロード青年にボロクソにされてしまった。

実は、クロードには恋人が居たのだが、クソ領主に恋人を人質に取られてしまっていたらしい。そんな訳で、クソ領主に良いように使われていたのだ。

(転生者の力による)尋常じゃない力を目にした聖王陛下は、当初、クロードを暗殺する計画があったがそれを取りやめ、自らの威光……自らに忠誠を誓った12人に騎士たちに銘じて、彼を捕らえさせた。

そして、捉えたクロードを口説き落とす最中に、人質の話を聞き、一計を案じて恋人を取り返してあげた。その事に、恩を感じたクロードは、聖王陛下に忠誠を捧げたのである。

 

当時でも最強クラスであろう12人の騎士が、全員でかからないと捕縛できなかったクロードの尋常でない力であるが、聖王陛下の軍を半壊させた事もあり、“13人目”になるのは遅れたが、後の名高き聖王の威光『十三騎士』がそろった瞬間である。

ちなみに、この13人の騎士だが、クロードを除いても、ほぼ全員が転生者である。

伝承されている力を見ても、露骨すぎである。

というか、超電磁砲とかもうちょっと捻れよ。

まあその後、クロード青年は武功を上げ続け、その後に例の屍の如き生き汚さを見せることになる。

つまり、彼は命よりも大事なものを救ってもらった恩を、命を懸けて返したのである。

 

この武勲により、彼の息子を貴族として、マリアージュの名前を与えたのだ。

 

さて、流派の話に戻ろう。

マリアージュ流戦技は、クロードの使った特殊な力と独特な武術を、なんとか彼の息子であるハインクランが使えないかと試行錯誤したものが、最初のマリアージュ流戦技と言えるだろう。

だが、この時に出来たのは未完成だった。

現在のマリアージュ流戦技に至るまでは、まだすったもんだがあるのだ。

ハインクランの戦死である。

転生者特有の技や技術を再現できるほどに才能が有ったハインクランだが、中途半端に再現してしまったクロードの技で戦場に出た彼は、あっけなく戦死してしまった。

所詮は息子の七光りとバカにされ、お情けで貴族になった家とバカにされるのだが、これが覆されたのは早かった。

ハインクランの姪である、アンナカロナが比類なき武勲を上げたのだ。

彼女は、ハインクランの再現した技を覚え、そしてクロードの技の“理念”に立ち返ることで戦場に覇を唱えた。

 

それは、戦場にて絶対に生き残るという事。

 

ハインクランの戦士の理由は、偉大な父の後を継ごうと焦り、死に急いでしまった事にある。

アンナカロナがしたのは、その逆の事。

クロードの使った技は、彼の特異な力によってなされていたし、そもそも想定として、人外の化物を塵殺するために特化された技術であったが、だがそれ以上に戦場で生きて帰る事こそに主眼を置いて特化されていた技だった。

これを、勘違いしたハインクランは死に。

逆にきちんと継承したアンナカロナは生きた。

そんなわけで、『戦姫』の銘を戴いたアンナカロナは、ハインクランの再現したクロードの技を正しく継承し、自分のマリアージュ家に残した。

マリアージュ流戦技の雛型を作ったのである。

それから、人外の化物相手から、(人外の化物みたいな)王族クラスや魔法使いを殺すために改良が重ねられていき、1000年の研鑽の下、現在のマリアージュ流戦技となったのである。

 

戦場で、絶対に生きて帰ることを突き詰め。

敵を皆殺しにすることで、それを達成する異常流派の完成である。

 

そんな訳でマリアージュ流戦技には“相手の虚を突き”、“必ず先制をとり”、“絶対に相手を殺し”、“反撃されない”技が集約しているのである。

おじいちゃんとは違い、お父様は魔法の才能はあったが、マリアージュ流戦技の才能が無かったらしく、次代に伝えるために全てを学んだあと、自分用に再編しているらしい。

僕自身、教わるにあたって正統な技しか見たことないが聞く限り、なんでも“知ってれば、あとは殺せればいい”とかなんとか。

まあ、それもそれでおかしいけども。

それ以上におかしいのは母上である。

母上は、マリアージュ流戦技を“教わって”いないが、おじいちゃん曰く『マリアージュ流戦技は、彼女の代で完成を見た』との話し。

輿入れするときに全て盗んで、自らの築いた我流に組み込むことで、もっと頭のおかしい技に昇華させたらしいが、概要や術理を聞くだけでやっぱり頭がおかしくなった。

なんだよ“距離と防御を無視すれば、殺せば絶対殺せる”って。

そりゃあできれば殺せるだろうさ。

 

……まあ、そんな訳で。

マリアージュ流戦技とはそういう技である。

 

 

 

 

「――はぁああああああッ!」

 

『マリアージュ流戦技 声法の二、違吠(たがえぼえ)

特殊な発声法により、声が()()()()()()()()技だ。

『マリアージュ流戦技 歩法の一、湖畔(こはん)

地面を滑る様に移動することで、力の流動を相手に見せず、自分の動きを予測させない技。

『マリアージュ流戦技 歩法の三、蜃気楼(しんきろう)

前後左右上下の、急発進・急停止の切り替えによる、見た相手に錯覚を見せる技。

『マリアージュ流戦技奥義 (てん)

体重移動(『マリアージュ流戦技 歩法の二、(おもし)』)

慣性制御(『マリアージュ流戦技 歩法の四、陽炎(かげろう)』)

関節の一斉駆動(『マリアージュ流戦技 体技の一、(ながれ)』)

威力の一点集中(『マリアージュ流戦技 体技の三(とつ)』)

四つの技の集約によるバカ威力で、相手の防御ごと貫く力技。

 

“相手にどこにいるのか分からせず”

“見えても予測させず”

“防御ごと押し切る”

これを、母上は一手で返した。

 

「―――――」

「かはっ」

 

おそらく、幻法の三、(いびつ)

相手の“力”に、少し方向の違う“力”を入れてやり、逸らす技。

……だが、母上は僕の剣に触れていなかった!

それなのになぜ、“力”を入れられた!?

“ありえない”を見せられた僕の頭は、一瞬でも真っ白になる。

当然のように肩口を斬られて、僕は正気に戻った。

だが、致命傷だ。

木剣でも、母上の技はその辺の枝でも斬鉄をする。

現に僕の肩は、骨は断たれなかったがぱっくりと開かれてしまっている。

左肩から先は動かない、神経がやられてしまったようだ。

コンマの隙で、隠していた奥の手を出せる距離から、母上は移動してしまってる。

 

……いや、今の予想外の逸らしが無くても、母上は移動してしまっただろう。

斬られるまでの最後の記憶、体技の二、(かたり)によって、母の重心と筋肉の動きに偽装があった。

元から、カウンターで一発入れて離脱するつもりだったのだろう。

本命は、(捨て身の一点突破)の後だと気が付かれていた。

 

「いつ、気づかれたんですか?」

「最初からよ」

「最初からといわれましても……」

「本当に最初からよ。捨て身に奔るなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()もの。最初からそっちが本命でしょう?」

「……ぐうの音も出ません」

「そう。それじゃあ今日の鍛錬は終わりね」

「ありがとうございました」

 

そう言って、ぐしゃりと崩れ落ちる。

今気が付いたのだが、足がおかしい。

力が入らなくなってる。

 

「気が付いて無かったのね、貴方が思考停止してる間に、足の神経を削っておいたわ」

 

ああ、そういう事で……。

奥の手が、遠距離だった場合を考えて、先に潰されていたと。

あーそりゃ、最初から負けてたわけだ。

 

「クロンがもうすぐ着くから、気張って締めなさい。死ぬわよ」

「……」

 

しゃべる気力が無かった。

僕は、死ぬ気で肩の筋肉を締めて、血を出さないよう踏ん張った。

 

 

 

七歳になった僕の、最近の日常である。




次の話は、明日には投稿したい(願望)
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