夜明けの先で、待ってて   作:昼夜米主義

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色々遅くなりました。
(25日の22時くらいに書きあがっていたため、)本来、26日の零時に投稿のつもりが、予約投稿ミスって27日の零時になってました。
申し訳ありません。


『前夜』(かくごなき)の第八話

 

「今日も無茶したねぇ」

「うがー……無茶っていうなら、母上に手加減するようにお父様からお願いしてくれませんか?」

「言うだけなら言っても良いけど、結果は見えてるよ?」

「……ですよね」

「それじゃあ、ご飯の支度をしなくちゃいけないから戻るからね」

 

一通りの手当てをしてもらった後、そう言ってお父様はご飯を作りに家に戻っていった。

いつもの事だが、あと30分ほどたてばご飯である。

正直、いつも思うのだが、ここまでボロボロだと食欲が無い……。

食欲が無くても胃に押し込まなくちゃいけないのが本当に辛い。

いや、おいしいんだけどね? おいしいんだけどね? それ故に辛いというか……。

 

「……そろそろ、行こう」

 

体の痛みはあるけど、いつもの事だし、動かせないほどの怪我なんかは完全に感知している。

この“痛み”は、つまり慣れろって言われていることだ。

おじいちゃんとか、戦争で両腕吹き飛んでも、敵を噛殺したとか聞くし。

怪我とか痛みとか、それはそれとして敵を殺せ! ……って事らしい。

なんだこの殺戮民族ってお父様に行ったら、苦笑と共に「そうだね」なんて言ってそのままである。

 

いつもの調子で家に帰りつき(とはいっても、裏庭のため100メートルも離れていない)、食堂に行くと既にご飯の用意が終わっていた。

というか、なんか妙にいい匂いがするんだが。

 

「あら、今日は早いわね」

「あーうん、慣れたというか……」

「そう! それなら明日はもうちょっとボロボロにしてもかまわないわね!」

「藪蛇った!」

 

そんなニコニコ顔で言わないでください。

率直に言って怖いです。

 

「さあ、席につきなさい。今日は珍しいお肉を頂いたから豪勢よ?」

 

その母上の言葉に、食卓を見ると結構厚いステーキがあった。

いい匂いの元はこれか。

 

「いやあ、久しぶりね! ハインツに感謝しなきゃ」

「凄いいい匂いしますけど、何のお肉で?」

「竜種よ」

「???」

「ドラゴン」

「まじか」

 

まじかー。

遂にドラゴンの肉か。

ファンタジー飯の定番よね! ドラゴンミート。

 

「さあ! 頂きましょう――」

「ご当主」

「どうしたんですか? お義父様」

 

……いい匂いと母上のめっちゃいい顔で気が付かなかったが、おじいちゃんの雰囲気がいつもと違っていた。

なんというか……その様子は、いつもの覇王系好々爺然としたものではなく、ピリピリとした“痛い”ような雰囲気を纏っていた。

 

「陛下から、お下知が下りました」

「……なんですって? ジゼルが10歳になるまで、“次”のマリアージュの育成が最低限終わるまで、使()()()()()という話ではありませんでしたか?」

「ご当主もご存じでしょうが、『奴ら』と思われる痕跡が見つかりました」

「……そうですか」

「それに、16年前は100年ぶりの『豊作の年』(バース・ディ)でした。『天与』(ギフト)持ちの子供たちが数千人、彼らも戦闘に“耐えられる”程度にはなりますから……予想はされていました」

「私が、『天与』(ギフト)の無い次代(ジゼル)にかまう時間は無いと、陛下は判断されたのね?」

「そういう事になります」

 

おじいちゃんの言葉を、ゆっくりと飲み込んで、母上は今まで聞いたこともないような、凛とした言葉で返した。

 

「『血華(ちばな)の騎士』、拝命いたしました」

「よろしい、明日の明朝に登場するようにとの事です」

「かしこまりました」

 

……。

……。

 

「どういうことでしょうか?」

「……戦争が始まるから、次代の育成に構う暇があるなら、戦えって事だよ」

「それって……」

「あと、最低でも5年は欲しかったんだけど……ジゼル、君を育てるだけの時間も余裕もなくなってしまった」

「ジゼル、陛下からの打診にもよるが、遅くとも半年後にはお前の叙任をおこなうだろう」

「叙任?」

「ええ、マリアージュ家に生まれた者として、貴方は陛下に……ひいては聖王連合に忠誠を誓う義務がある」

「えっと……」

「戸惑うのも無理はないわね。だって、心構え(そういうこと)はまだ教えていないもの……でも、貴方の戸惑いを納得に変えられるだけの時間は無いわ」

「だからジゼル」

「それを、戦場で学びなさい」

「元々、マリアージュの人間は“そういう”人種だ」

「……できなかったら?」

「死ね」

「理不尽に思うだろうけど……さっきもローズが言ったように、君が自発的に戦場に出るように教育する時間はもう無いんだ。マリアージュの人間として、幼くても、未熟でも、覚悟が無かったとしても、すぐに死んでしまうんだとしても、戦う選択肢しか、君には残っていない」

「……かしこまり、ました」

 

ジゼライド・マリアージュ、七歳の冬。

覚悟も決意も、意志すらもないままに、戦争の足音がもうすぐそばまで迫っていた。

 

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