だが争いは既に過去の物となり、人間と吸血鬼が共存する世界になった。
これはそんな世界に暮らす二人の物語。
でもただ書くだけじゃちょっとありふれてるかなって思った。
ならば日常もので吸血鬼を出そうと思った。
なら出すのに根拠が必要だ、それなら戦争で吸血鬼が敗北した世界にしよう。
吸血鬼の扱いがペットだけど平和(主人公宅)だから良いよね。
『
曰く、それは人の血を飲み干してしまう悪鬼である。
曰く、邪悪な存在で不死の肉体を有す神の敵である。
曰く、夜を統べる深淵たる闇の王である。
等とあまり良いイメージを抱かないであろう。
実際、そこが良いんじゃないかという者だって居るし化物、怪物役としては正に魅力的な存在だろう。
数多の創作やフィクションで敵役として名を馳せ、それどころか主役や魅力的な味方としても出すことが出来る。
物語によっては不死ではなかったり、そもそも弱点を克服していたりするがまぁ些細な問題だろう。
しかし、それはあくまでフィクションであるからこその話だ。
実際にそんな怪物が居たら騒ぎになるどころの話ではないだろう。
これはあくまでフィクションのお話、吸血鬼なんて存在は創作の中にしか居ないのだ。
だが、もし吸血鬼と呼ばれる存在がこの世に存在したらどうなるだろうか?
その答えが十三年前に起きた人類史初の異種族間戦争『人鬼大戦』である。
かつて人間社会に認知されてこなかった吸血鬼の存在が明らかとなり、人々は恐怖に震えた。自分達と同じ姿形をした存在が、同じ人を喰らう等あってはいけないことだった。
当時の人々が吸血鬼を排斥しようとするのは当然のことであった。そしてそれに反発したのは吸血鬼達も同じだった。
互いの主張、人種どころか種族の違い、考え方や食事の違いが原因でに戦争になったのだ。
戦争の終結は始まってから二年後、人類の勝利で終わったのだ。
――――と、ここまで書けば大丈夫だろう。
僕こと十六夜月花は一旦シャーペンを置いて背伸びをする。
「くぁ、疲れたぁ……………」
学校の宿題で一通り『人鬼大戦』を調べて纏めたけど、大体これぐらいで大丈夫だろう。
溜め息を漏らして机に突っ伏す。昔、人々は夜を遠ざけて吸血鬼を恐れていた。
だがそれはもう昔の話。かつて正体不明の怪物と恐れられた吸血鬼達も文明の発展によってそのベールは剥がされていった。
吸血鬼――――その分類は動物界・脊椎動物門・脊椎動物亜門・哺乳綱・霊長目・真猿亜目・狭鼻下目・ヒト上科・ヒト科・ヒト属・サピエンス種・ヴァンパイア。
人間と同じ進化を遂げたもう一つの人類種、それが彼等吸血鬼である。
その生態の全てを解明できたわけではないが、大抵の大怪我であっても快癒してしまう回復力に優れた膂力、そして長い寿命を有している。
しかし、それらがフィクション並みにふざけた代物というわけでなく、あくまでも常識的範囲内である。建物を持ち上げたりとかも出来ないし、ちゃんと用意をすれば人間一人でも打倒できる存在だ。
食事も胃が人間に比べて退化している為、固形物の接種も出来ない為血液や水などの液体しか接種できない。精々食べれてもゼリーぐらいなものである。
そして人間となんら変わらない理性と知恵を有し、会話することだって出来るのだ。
「ちくしょうがっ!! なんでドロップしないのよ!! こっちは12時間もお前を狩り続けているのよっ!? これが物欲センサーだというのっ!?」
そして堕落するのも人間と同じである。
「…………ねえ、貴女はなんで僕の部屋でゲームをしているのかな?」
さっきからずっと僕の背後でピコピコと大音量でゲームをしていたこの家に住む同居人の方に視線を向ける。
視線の先には僕のベッドの上でスマートフォンのアプリゲームをやっている外見年齢十歳ぐらいの一人の少女が居た。
金色に光り輝く若干ウェーブがかかった長い髪に、真紅の宝石たるルビーを連想させる程に綺麗な瞳、病的な程に白く透き通った肌に左右対称の整った容姿、そして無駄な贅肉など欠片も存在しないと言わんばかりの転生の肉体を有している。きっと大人になれば絶世の美女になるだろう。そう思わせるほどに彼女は美人だった。
実際、外見だけならば間違いなく美少女だろうと思う。着ている服装がだぼだぼのスウェットでさえなければ。
だが僕は知っている、この女、カーネリアンが30歳であるということを。
「ん、あぁ、終わったんだねーげっかー。それじゃあ一緒にゲームやろうよー」
僕の発言を全く聞いていなかったのか、この女はにへらと昼寝をする猫のような笑みを浮かべながら此方を招いてくる。
溜め息をつきながらも僕は椅子から立ち上がり、カーネリアンの所まで行く。
「いや、僕はずっと宿題をしていたわけなんですよ? それなのに何ですぐ傍で宿題の邪魔をしてくるんですかねぇ」
「だってぇ…………折角の休みなんだから一緒に居たいんだもん」
猫のように甘えた声で此方に手を伸ばす。
その手を掴んで持ち上げると「ひゃー」と変な声を出していた。
「一緒に居たいのは分かるけどさ、僕だってもう高校生になったんだからそんな風に甘えられても困るんだよ」
「うー…………昔はあんなに『おねえちゃんだいすきー!』って言ってたのにー…………」
「そんな昔の話持ち出されてもなぁ…………ってか、なんかちょっと臭うんだけど…………リアン、いつお風呂に入ったの?」
「二日前かなー? ずっとゲームしてたし…………」
「二徹って…………はぁもう、後で一緒に遊ぶから先にお風呂入って来なよ」
「いやー、お風呂ヤダー…………!」
そう言ってカーネリアンは顔を横に振って行くのを拒否する。
吸血鬼というのは昔から流水に弱い、と聞いたことがあるがそれは真っ赤な嘘である。
ただカーネリアンがお風呂嫌いなだけである。
お風呂が嫌いな理由も、お風呂に入った分だけゲームが出来なくなるという理由である。
本当に救えない廃ゲーマーである、幼い頃に憧れていたあのお姉ちゃんは何処に行ったのやら。
「はぁ…………もう」
とは言っても仕方がない話ではある。
近年、吸血鬼は政府によって準人権というものが与えられている。
人権の次にあるものだがその実態は超高級なペットのようなものだ。
この家でのカーネリアンの立場は家族だ。両親にとっては親友で僕にとっては姉だ。
だが世間一般ではどちらかというとペットのようなものでしかないのだ。そんな彼女が外に一人で出れるかと聞かれれば答えは不可能だ。
吸血鬼を一人で外に出すことは法律で禁止されており、最低でも人間一人の付き添いが必要だ。
だから必然的にこの家で一人で過ごす時間が多くなるのだ。一人きりで過ごすその寂しさは、僕にはわからない。
だけど、寂しいんだろうなぁと言う事だけは分かった。
「じゃあ久しぶりに一緒に入るよ。僕が洗ってあげるからさ。お風呂が終わったら一緒に遊ぼっか」
「本当………? やったー!」
両手を上げて喜ぶカーネリアンの姿を見てこの日何度目かの溜め息をつく。
本当に外見だけなら年齢相応なんだけどなぁ、でも頼りになるお姉ちゃんではあるんだよなぁ。
そんな事を考えながらも僕はカーネリアンを背負って部屋から出て行く。
一緒にお風呂だなんて、本当に何年ぶりだろうか。しかし、相変わらずちっちゃいなぁ…………。
―――――昔は僕よりも大きく思えた筈だったのに、時の流れって偉大だなぁ。
「そういや昨日さ、アイス買ってきたんだけど食べる?」
「食べるー」
そんなやり取りをしながらお風呂場に向かう。
今日も何にも変わらない日常が始まる。
+++
これは人間と吸血鬼の物語――――。
彼等が命をかけて闘い合うこともありません。
恐怖で支配することも、そんな彼等に勇気をもって立ち向かうこともありません。
人間と吸血鬼の種をかけた争いは終了し、一見平和になった世界。
これはそんな世界に暮らす人間の少年と吸血鬼の少女(30歳)の日常を描いた物語。
引きこもり系三十路の合法ロリな血の繋がらないお姉ちゃんを書いてみたかったんや……………。
なお、キャラ設定。
名前:十六夜月花
女の子みたいな外見と名前をしている高校一年生。
名付け親はカーネリアンで産まれてからずっと吸血鬼と一緒に暮らしている為、常識がちょっとズレていたりする。
高校生になって反抗期が来たが、なんだかんだ言いながらもカーネリアンが大好き。
名前:カーネリアン
金髪美少女な合法ロリ三十路。
月花の両親とは子どもの頃からの親友。
吸血鬼にとっての三歳は人間にとっての一歳である為、吸血鬼から見たら非合法ロリだったりする。
最近子どもを作れるようになった。