ハリー・ポッターと西行の娘   作:姫桜

3 / 6
バス通学って意外と辛いんですね(白目)


妖精の呪文とハロウィーンと、トロール

遠くから声が聞こえる。

まだ休ませて、私は眠いの。さっき準備を終わらせたの。授業のギリギリだったけど…ギリギリ?

 

「先生ー!サイギョウジ先生!」

 

ガバッと顔をあげればグリフィンドールの一年生一同が私を見ていた。

慌てて近くの砂時計(目測で時間を当てないといけないから最初は慣れなかった)を見ると、授業開始から五分経っている。

 

「ご、ごめんなさいね、さっき授業の準備を終わらせて…とりあえず始めましょうか。」

 

こうして私の久しぶりの授業は幕を開けた。

 

 

 

 

「妖精の呪文はイメージがものを言うわ。理論も覚えた上でのイメージ。それが大事よ。想像力を働かせるの。今日やる”ロコモーター”はとくにそれが重要になるわ。ロコモーターというのは…」

 

 

 

 

「そう!そうよ!グリフィンドールに三点!みんなハーマイオニーを見て!このようにするの!それじゃあ、ハーマイオニーはロコモーターで積み木を積み上げていってみて!全部積めたら言ってね!」

 

 

 

 

「そうよ、順調。それは貴方が杖を向けることで、浮くのよ。理論を思い出して、ゆっくり…そう…そう!よくできたわネビル!グリフィンドールに三点!」

 

 

 

 

「ニンバスね、あれはたしかに性能はいいし、見た目もいいけれど性能を重視しすぎている気がするのよ。もっとレトロな雰囲気も…」

 

 

 

 

「………っは!寝てない!寝てないわよ!えーと…そう!ロコモーターの次は…え?さっき指示した?えっとえっと…」

 

 

 

 

「そ、それじゃあ今日の授業はここまで!みんな次の授業に遅れないようにね!」

 

生徒達を見送り全員が居なくなったタイミングで机に突っ伏する。

まだ次の授業まで数時間猶予がある。

眠るべきなのだろうけど次の授業は六年生、高度な魔法なうえ呪文学なので用意をしっかりしておかなければならない。

それこそ、数時間かかる大変な準備を。

………

 

「…やろ」

 

 

 

 

 

 

さてさてさてさてさて!

今日は楽しい楽しいハロウィーン!

昨日はしっかり睡眠をとった。

なぜなら朝一番にアルバスのところへ行く為だ。

まだ誰もいない校内をくり抜かれたカボチャとローブで仮装して歩く。

途中で先生(尚セブルスは除く)には「トリック・オア・トリート!」と言う。

私の悪戯を経験したことがある教師はハロウィーンになるとお菓子を持ち歩くことにしているらしくカボチャパイやらキャンディーやらを受け取りつつ(クィレルには悪戯として頭をかぼちゃにした)校長室前へ着く。

 

「う〜ん…百味ビーンズ!」

 

途端にガーゴイルは命を吹き込まれたかのように退き、校長室へ入れるようになる。

校長室の扉をどーん!と破りいつも通りにこやかな笑顔のアルバスに言う

 

「トリック・オア・トリート!」

 

「ほっほっほ、イタズラは嫌じゃからのう、ほれ、大鍋ケーキじゃ。」

 

「あら大変、私一人じゃ食べきれないわ。一緒に食べてくれない?」

 

「仕方がないのう」

 

ここまでが、ハロウィーンに必ずやる行動。

ホグワーツ生の時から変わらない、私とアルバスの儀式。

やはり一人で食べるより、友達と食べる方が美味しいのだ。

 

 

 

 

だからこそ、私は授業の後に聞いた言葉が信じられなかった。

”ウィンガーディアムレビオーサ”をやった後の授業、一足先に大広間の食堂に行くために生徒に混じり移動していると、聞こえてきた。

 

「だから誰だってあいつには我慢できないっていうんだ。まったく悪夢みたいなやつさ。」

 

それは恐らくハーマイオニー・グレンジャーを酷評したのだろう。

なぜなら、私の前にいたハーマイオニーがピクリと反応し、泣きながら駆けて行ってしまったからだ。

 

「誰?今同じ寮生を酷く言ったのは。」

 

私の地の底から響くような、誰にも聞かせたことのない声に周りのグリフィンドール一年生が停止する。

私は気にせず続けた。

 

「これが誰であろうと構わない。これは授業外のことだから減点はしないけれど、覚えておきなさい。友を悪くいうのなら、貴方は永遠に上へ上がれない。夢へ行けない。他人を尊重できない人間は人間以下の肉と骨の塊よ。」

 

私はそう吐き捨てると大広間へと歩いていった。

 

 

時は進み、夕食。

かぼちゃの匂いを口一杯に広げながら私はかぼちゃ料理を食べている。

なんでも今回はかぼちゃ料理が多いらしく、私も満足出来る。

…満足出来る、というよりやけ食いのようなものだが。

まあ先生方は相変わらず避けている訳だが。

そういえばクィレルは見なかった。

かぼちゃのままだが良いのだろうか?

などと考えていると、大広間の扉が突然開かれた。

そこから出てきたのは、かぼちゃの妖怪…否、あれはクィレルだ。

 

「トロールが…地下室に…お知らせしなければと…思って…!」

 

静まり返った大広間に響いた、クィレルの報告。

一瞬の沈黙の後、大広間に悲鳴が響き渡った。

皆が恐れ、慌て、秩序がなくなる(いつもの事だが)

 

「アルバス、生徒を落ち着かせて。私は地下室へ先に行く。」

 

「わかった。くれぐれも気をつけるんじゃぞ、ユユコ。」

 

「ええ。」

 

ガタンと立ち上がり大広間からでていく。

目指すは地下室、生徒に被害が出る前に行かなくては。

その途中だった。

もうひとつの足音が聞こえたと思い後ろを見ると、セブルスが居た。

ここは階段の前、上へ登るか下に降りるか。

だが私は下へ降りる方へ、セブルスは上へ登る方へ行こうとしていた。

 

「セブルス、ボケているの?下への階段はこっちよ。」

 

「トロールよりやらなければならないことが吾輩にはありましてね。吾輩には構わないでいただきたい。早く行かなければ、生徒へ被害が出るかも知れませんが?それとも、生徒への被害より吾輩を説得する方を優先すると?」

 

「…わかったわ。その事については不問とするわ。」

 

私は急ぎ足で下へ降りる。

トロールを探さなければならない。

 

 

 

しばらく散策したものの、トロールは見当たらない。

途中でミネルバと合流しトロールを探し回っていると、轟音がした。

間違いなくトロールが何かを破壊したのだろう。

しかしトロールは基本的に敵がいない限り攻撃しない。

…つまり、トロールが敵と見なす生徒が被害に遭っているということだ。

女子トイレの方向からの音である。

私とミネルバは顔を見合わせると頷きあい、全力疾走で廊下を走る。

私は足が短く、ミネルバは体力が少ない。

それらの弊害がありつつ女子トイレにたどり着いた頃には音が止んでいた。

これが意味することは、トロールが倒されたか、生徒が死んだか。

前者は生徒ができるとは思えない。答えは一つのようなものだ。

扉を蹴破りそれぞれ私は扇子を、ミネルバは杖を構え呪文を撃てるようにした。

…が、トロールの灰色の巨体は血に伏しており、私達の扇子、杖は虚空を向いていた。

女子トイレには、三人の生徒。

ロナルド・ウィーズリー、ハーマイオニー・グレンジャー、そしてハリー・ポッターだった。

予想外のことに呆然としたせいで、私の口から出たのはおかしなセリフだった。

 

「ここは女子トイレよ…?」

 

ミネルバ、なんで噴き出したの?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。