優等騎士の英雄譚   作:桐谷 アキト

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12話 新生活と波乱の予感

四月。

それは学生にとっては一つの分かれ目の時期だ。

新入生は新たな学園生活の始まりを、在校生は一年の学業を終え、一つ上の学年へと進級する。あるいは卒業し、魔導騎士の免許を取得した後、各々の道へと進む。

 

破軍学園でも、一年は二年へ、二年は三年へ、三年は卒業という流れになる。そして元三年は三月に卒業式を終え既にこの学園にはいない。

進級した生徒らは黒乃が考案した新たな部屋割り制度に従い、男女混合の部屋となり、殆どが入れ替えを行なっていた。

そして入れ替えも終わり、今日は在校生の始業式があった。

 

「オハヨ〜」

 

一人寮を出て校舎へと向かっていた蓮の背中に声がかけられる。

声の方を振り向けば、やはりというべきか予想通りマリカが那月を伴って来ていた。

二人は今年もルームメイトのため、出るときも同じのようだ。

 

「ああ、おはよう。那月、マリカ」

「おはようございます、蓮さん」

 

那月にそう声をかけると、今度は二人に続いて更に三人が合流する。

レオ、陽香、凪だ。陽香と凪は彼女らが風紀委員会入りしてから蓮達と行動を共にするようになっていた。そして彼女らもルームメイトである。ただ一人を除いて先月までのメンバーが集まっていた。春休みもあったし、こうして顔を揃えるのは久しぶりだった。

ちなみに、蓮は今年も一人部屋だ。レオは去年とはまた違う生徒とルームメイトになったそうだが、そのルームメイトは見る限りこの場にはいなかった。

 

「レオ、ルームメイトは一緒じゃないのか?」

「ん?ああ、秋彦なら先に行ってくれってよ」

「そうか」

 

レオの言葉に蓮はそう短く応えた。そのとき、那月が唐突に暗い声で呟いた。

 

「黒鉄君、残念でしたね。留年だなんて…」

 

そう、ここにいない黒鉄一輝は留年してしまった。

黒乃もなんとかしようとしていたのだが、いかんせん一、二学期の実技成績がないし、元々どうすることもできなかったら手のつけようがなかったのだ。

それを聞いた一輝は元々覚悟していたからか、特に動じることはなく素直にその留年を受け入れた。

そして新入生の入学式兼始業式はまだ4日先だ。今日は彼にとっては登校日じゃないので、今日はルームメイトのいなくなった自室でゆっくり過ごすらしい。

 

そして、那月の言葉にその場にいた蓮以外の全員が暗い顔を浮かべる。一輝の実力を知っている彼女らからすれば納得がいくわけがなかった。

蓮は表情を変えることなく前を向きながら、二人を冷静に咎める。

 

「そうだな。だが、その話は俺達がとやかく騒いでもどうにもならない。それに黒鉄も受け入れてるんだ。彼がそうしている以上、俺達が哀れむことは彼にとって最悪の侮辱になる」

「……すみません」

 

冷たい、と言われてもおかしくないような口調に那月は申し訳なさそうに顔を背けた。

 

「ま、学年が違うからと言って俺達の関係が変わるわけじゃない。普段通り接していればそれでいいだろうな」

「そうよ。那月は無駄に気にしすぎなのよ。黒鉄がそんなこと気にするような奴じゃないのはわかってるでしょ?」

 

蓮とマリカが浮かべた笑みには、無用な気遣いと書いているようにも見え那月はいつもの笑顔を戻した。

 

「はい。そうですね」

「でしょ?気にする必要なんてないのよ。普段通りにすればいいのよ、普段通り」

 

マリカら笑みを浮かべて言った。

すると、その笑顔につられてか陽香も凪も明るい顔を浮かべていた。

 

 

 

△▼△▼△▼

 

 

 

新学年になりクラス替えがあり、蓮、那月、陽香は二年三組に、レオ、マリカ、凪は二年四組に振り分けられた。

ちなみにマリカとレオが同じクラスだと判明した時、二人は盛大に嫌そうな顔をして見せていたが、それが本心なのか、照れ隠しなのかは本人にしかわからない。

蓮は割とどうでも良かったが、那月、陽香、凪は興味深そうにしていた。

 

教室での配置は六×六列と去年と同じで、五十音順による座席指定も一年生の時と同じ。ただ男女混合となっていた。

それが黒乃の改革に基づいたものだとすぐに気づいた蓮は、無意味な詮索をすることもなく、自分の席へと向かった。廊下側三列目、前から三番目。前の席は去年とは変わり那月。五十音順で「サクラ」と「シングウジ」だから何ら不思議ではない。

陽香は「イガラシ」だから、廊下側一列目、前から三番目の席だった。

 

「今年は那月が蓮くんの前かぁ。あたしもこっちの方が良かったなぁ。だったらどっちかの隣に座れたのに」

 

あながち冗談とも聞こえない口調でぼやいたのは、いっぱいに開けた窓のレールに両ひじをついたマリカだ。

 

「別に必要ないだろ。隣のクラスなんだし」

「…うん、全然問題ない」

 

そのマリカと窓枠の間に身体をねじ込むようにして顔をのぞかせているレオがセリフとは裏腹に残念そうな口調でそう続け、陽香と共に蓮達の近くに来ていた凪が呟いた。

 

「そうだな。クラスが別でも何ら不都合はない」

 

一年前なら間違いなく口喧嘩になっていた場面だが、二人は特にそんなことはなかった。その変化が少し可笑しかったが、そんな素振りは露ほども見せず彼はレオの言葉を首肯した。

 

「他のクラスは立ち入り禁止、というわけじゃないですし」

「ただ授業を受けるのが別のクラスというだけですものね」

 

陽香と那月が蓮の言葉にすぐさま同調する。

 

「ま、それもそうね……ところでさぁ」

 

マリカは二人の言葉にあっさりと頷くと教室の中を見回すと、

 

「蓮くん、桐原達に随分睨まれてるね」

 

蓮は軽く肩をすくめておどけたように笑うことでマリカのセリフを肯定した。

彼女に指摘されるまでもなく、自分を憎々しげに見つめる視線に気づいていた。それが誰の視線であるのかも把握している。

どんな理由で彼に憎悪を抱いているのかは判明している。見られているだけで実害はないから蓮は無視するつもりだったが、マリカにとっては見過ごしにできないことだったようだ。

 

「ただの嫉妬と敵対心からなんだろうけど、意味ないってわからないのかしら」

「人の気持ちなんてそうそう簡単に切り替えられるものではないんだろ」

「そうそうって…もう、半年以上前だよ?」

「それでもだ」

 

マリカにそう答えて、蓮は右斜め後ろ、視線の発生源である桐原にチラリと目を向けた。

憎悪を込めて彼を睨んでいた桐原静矢とその取り巻き達は慌てて目をそらす。だが、そんな自分に腹が立ったのか、一層険しい目つきで蓮を睨め付けた。

そんな桐原の態度が、マリカの神経をますます逆撫でした。

元々、自分たちを雑魚呼ばわりして、関係を切るよう蓮に勧めた桐原の態度には腹を据えかねている。

幸い、粘性の低い気質だから自分から突っかかったりはしないが、きっかけがあれば蓮に変わって喧嘩を買う、どころか売ることも厭わないというのがマリカの心情だった。

そして、今まさにマリカは桐原に「喧嘩を売られている」と感じたのだろう。

マリカの双眸が鋭い光を宿し、目を細めるのではなく、逆に大きく見開かれた両目のまじりがつり上がった。

ただでさえ、猫っぽい印象のあるマリカの美貌が、虎か豹を思わせるどう猛な美を帯びた。

このままだと少々面倒なことになりそうなのでもう止めようと蓮は思い彼女を止める。

 

「マリカ、口出しも手出しも無用だ」

 

マリカが不満いっぱいの顔を蓮に向けた。気弱な男子ならすぐに土下座して謝り逃げ不要な迫力だが、あいにく蓮は全く動じなかった。

 

「降りかかる火の粉は自分で払うだけだ。向こうに火をつける度胸があるなら、だがな」

 

蓮が酷薄な笑みを浮かべた。その馴れ合う気が皆無どころか、手を出してくるのなら反撃も厭わない姿勢を見て、マリカの表情が和らぐ。照れ隠しの微笑はですぎた真似をしたという後悔の表れか。

そこへタイミングよく予鈴がなった。

 

「あ、じゃあ私達は荷物置いてくるねー」

 

そう言って、マリカはレオと凪を連れ隣の自分の教室にカバンを置きに行った。後で合流するからすぐに会えるだろう。そのとき、今度はよく知る声がかけられた。

 

「おはよう、蓮」

 

真後ろからかけられた声に蓮が座ったまま振り向く。そこには教室に入ってきたばかりの黒髪で細身の男子生徒が笑みを浮かべて立っていた。

 

「ああ、おはよう。秋彦」

 

秋彦と呼ばれた男子生徒岸田秋彦に蓮はそう応えた。

岸田秋彦は朝の会話でも出ていた通りレオのルームメイトだ。去年は二組で蓮達とあまり交流はなかったが去年の11月に幼馴染だったマリカが無理やり連れてきたことで、交流を持つようになった。

 

「おはようございます。岸田くん」

「おはようございます」

「おはよう、佐倉さん、五十嵐さん」

 

秋彦は那月と陽香にそう返すと、那月の隣二列目の二番目の席に座る。

 

「秋彦、朝はどうしたんだ?」

「制服のボタンが一つほつれちゃっててね。直してから来たんだ。せっかくの始業式だからちゃんとしとかないといけないし」

 

ほら、と言って彼は制服の上着のボタンを見せる。

すると確かに彼の言った通り、他のボタンとは違う糸で縫われているボタンがあった。

しかし、僅かに糸が緩いようにも見える。そしてそれに気づいたのは蓮だけじゃなかった。

 

「あれ、でも岸田くん、この糸少し緩いですよ?」

「え?…あっ、本当だ。慌ててやったからかな」

「始業式が終わったら私が直しましょうか?」

 

困った表情を浮かべる秋彦に那月がそう提案をすると、彼は意外だったのか目を見開いて驚いていた。

 

「え、いいの?」

「大丈夫ですよ。裁縫は得意ですから」

「じゃあ頼めるかな?」

「はい、任されました」

 

秋彦と那月のやりとりを見ていた蓮は腕時計を見ると唐突に席を立つ。

 

「そろそろ時間だ。体育館に行こう」

「あ、もうそんな時間ですか」

「ああ」

 

時計を見れば体育館で行われる始業式が後十分後に迫っていた。

秋彦も那月も席から立つと四人で廊下に出て、四組にいるレオ達と合流して、体育館へと向かった。

 

 

△▼△▼△▼

 

 

全校生徒を集めた始業式が終われば、担任の挨拶やその他諸々の連絡事項があるだけで今日は終わりだ。

明日から通常通りのカリキュラムが始まるが、今日は昼前に終わったため、ちょうど昼の時間帯、蓮達一同は私服に着替えた後、食堂で昼食を取っていた。勿論、一輝も交えてだ。

四人がけのテーブルを二つくっつけて、男子四人と女子四人で分けている。

 

「へぇー、じゃあ青山先生は三組になったんだ」

「ああ」

 

昼食中は様々な話題で盛り上がった。

新学年に上がったからか、誰が担任になったとか、一年の時のクラスメイトがいたとか、ありきたりな会話をしていた。

唯一二年生に上がれなかった一輝は男子テーブルの外側の席に座り、穏やかな笑みを浮かべながら、彼らが楽しげに話す光景をただ静かに何処か羨ましそうに眺めながら、注文した食事を口に運んでいた。

 

彼らが談笑している中、食堂にいた生徒達はそのほとんどが視線を蓮達八人組に向けていた。

なぜなら、彼らが視線を向けている蓮達のメンバーは全員が二つ名を持っているからだ。

 

《紺碧の海王》改め《七星剣王》新宮寺蓮。

《剣の舞姫》木場マリカ。

《鋼の獅子》葛城レオンハルト。

《言霊使い》佐倉那月。

《閃光の魔女》五十嵐陽香。

音響の射手(サウンドシューター)》北原凪。

《精霊使い》岸田秋彦。

 

破軍学園きっての実力者達。二年生の中ではトップ10に入り、学園全体で見ればトップ20に全員入っている。

無論一輝も実力はあるのだが、それは周りには認知されていないどころか、留年してしまったから《落第騎士(ワーストワン)》という不名誉な二つ名をつけられてしまっている。

だから、周囲の生徒達はなぜ一輝が学園内では最強グループの輪の中に入っているのか疑問でならなかった。

事情を知らない彼らはなんであんな奴が、どう見ても実力が見合わないだろ、侮蔑と嘲笑、疑念の視線を向けていたのだ。

その視線に気づいた。気づいてしまった一輝は僅かに顔を曇らせる。

 

「一輝どうした?」

「う、ううん、何でもないよ」

 

隣に座るレオに一輝は慌ててそう取り繕う。だが、その表情は僅かに暗いままだった。だが、レオはそれを追求することなくまた談笑に戻った。

しばらくして、一輝は他の者よりも早く食事を終えるとトレイを持ち席を立つ。

 

「僕は理事長に呼ばれてるから先に行くよ。それと今日は用事があるから午後の鍛錬は行けないからまた明日ね」

 

口早に言った一輝に全員が了承し、また明日と言う。

そして一輝は一人先にトレイを片付け、食堂を出ていった。

一輝が食堂を去った後、レオは紙パックのジュースを飲みながら一輝が去った方向をずっと見ていた。

 

「レオ、どうしたの?」

「なあ……一輝の奴、俺たちを避けてねぇか?」

 

レオに質問で返されたマリカは彼の言葉に頭に疑問符を浮かべる。

 

「そう?そんな風には見えなかったけど、あんたの気のせいじゃないの?」

「…んー、気のせい、なのか?」

「私に聞いてどうすんのよ。ま、あんたみたいな野蛮人の言ってることはほとんど勘違いでしょうしね」

「んだとゴラァ」

 

マリカの茶々に神妙な顔つきだったレオがマリカに食いついた。

 

「レオ、よしなよ」

「マリカちゃんもからかっちゃダメだよ」

 

そして秋彦と那月が二人の仲裁に入るのは、まあ去年から見慣れた光景だ。

その光景に笑みを浮かべながら眺めていた蓮は右ポケット、生徒手帳じゃない端末が震えているのに気づく。

 

「すまない、電話だ」

 

蓮は一言彼らに詫びを入れると、席を立ち食堂から離れると人気のない森の広場まできて、初めて端末に表示された呼び出し相手を見ね、通話ボタンを押す。

 

「桜宮です。少佐、本日はどのようなご用件ですか?」

 

通話相手は、蓮の上官の陸軍少佐氷室茂信だった。

 

『特尉、急な電話すまない。ちょうど昼の時間だったんじゃないのか?』

「いえ、ちょうど食べ終わったところですから、問題ありません」

『そうか、なら早速本題と行こう。本日、本官宛に総理大臣が貴官と話がしたいから立ち会って欲しいという話が来た』

「…総理大臣がですか?」

 

想定外の人物の名に蓮は僅かに返答に詰まった。

 

『なんでも重要な要件らしい。できれば本日話をしたいと言っていたから、本日の午後5時に首相官邸に来て欲しい』

 

断る理由などない。いや、断ってはいけない。詰まる所、この話は現職の内閣総理大臣、すなわちこの日本の最高責任者からの招集命令のようなものだ。

断るわけにもいかないし、彼には昔世話になったことがある、だからこの話を断る理由などなかった。

 

「分かりました。五時に出頭します」

『では次の話だが、特尉、明日から特別任務に当たって欲しい』

 

任務という言葉に蓮は気を引き締めて、続きを待った。

 

『青森の港周辺で不穏な動きをする輩がいるという情報がある。彼らの痕跡も発見された』

「《解放軍(リベリオン)》ですか?」

『ああ、実に嘆かわしいことだ。痕跡から《使徒》は少なくとも5名はいるようだ。何をするかは定かではないが、被害が出る前に不穏な芽は摘んでおきたい』

 

《使徒》が5名ということは非伐刀者の兵も含めれば低く見積もっても150名はいることになる。

それは少しどころか一般市民にとっては危険な状況だ。なら、早めに対処したほうがいいに決まっている。

 

「殲滅戦になりますか?」

『そうだ、詳しい説明は明日話そう。とりあえず今日の五時に官邸に来てくれ』

「了解しました」

『ではな』

 

返事を待たずに氷室は電話を切った。

ツー、ツーと無機質な音だけが電話口から聞こえた。

 

(………俺と話がしたい、か)

 

雲ひとつない晴天の空を見上げながら、一体どんな話をされるのかをいろいろ考えながら、蓮は小さく息をついた。

 

 

 

△▼△▼△▼

 

 

「よく来てくれた。久しぶりだね、蓮くん」

 

午後五時。軍服に着替えた蓮は氷室に言われた通り首相官邸に出頭し氷室に案内された蓮は首相官邸の一室、首相の書斎に連れられ暗い色調の紺色のスーツを着こなし、色の入った眼鏡をかけ喜ばしそうな声を上げているロマンスグレーの男から来客用のソファーに座らされ歓迎されていた。

彼の名は月影獏牙。日本の現総理大臣だ。

蓮は彼の姿を視界に収めると丁寧に頭を下げ挨拶をする。

 

「お久しぶりです。月影総理」

「ああ、新宮寺くんの結婚式であって以来だからもう五年かね。どうかな、元気にしていたかい?」

「おかげさまで家族も含め元気です。母の出産も無事に」

「そうか、新宮寺くんは無事に出産を終えたのか、よかったよかった」

 

月影は本当に嬉しそうに、蓮の記憶よりも皺の深くなった顔を綻ばせると蓮の成長を喜ぶ。

 

「それに蓮くんもすごく大きくなったね、桜木くんにそっくりだ」

「…ありがとうございます」

 

蓮の実の両親と黒乃は月影が昔破軍学園の理事長を務めていた時の生徒だった。

《黄金世代》とは彼ら三人のことであり、三人とも月影の事を尊敬し、慕っていたと聞いている。

蓮も幼い頃、それこそ両親が死ぬ前にも何度か会っており、今でも昔の彼のことは思い出せる。

だから、彼の優しい声や温かい笑顔が昔と何ら変わっていないことに表情は自然と穏やかになった。

ここが会食の席だったならこのまま久しぶりの再会を喜ぶのだが、今はそんなことにかまけている時間はない。

 

「総理、本日はどのようなご用件なのでしょうか。我々は重要な用件があるとしか伺っておりませんが」

「そうだね、再会を喜ぶのはこれぐらいにしてそろそろ本題に入ろうか」

 

蓮の隣に立っていた氷室の言葉で月影の顔からは笑顔が消え真剣な表情を浮かべる。

氷室と蓮は無言で顔を引き締め姿勢をピシッと正し、彼の言葉を待つ。

そして彼は言った。

 

「単刀直入に言おう。新宮寺蓮君、貴方には破軍学園を抜けて『国立・暁学園』に参加して力を貸して欲しい。君の力が必要なんだ」

 

 

 

重い声音で放たれたそれはのちに起こる波乱の始まりの合図でもあった。

 

 




彼はどちらを選ぶのか。

乗るか、乗らないか。裏切るか、拒絶するか、どちらにしても彼は悩むだろう。

それは十六の少年には重すぎる未来の可能性の話だから。

そして、彼が悩んだ末に出した決断はーーー

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