一輝もステラもすごかったけど、最後の珠雫で全部持っていかれた。(驚)
アスカリッドさんには死んでほしくなかったなー、たった一人の家族を守るために世界を敵に回すその覚悟はまさに見事としか言いようがない。
ヴァーミリオン皇国編は一段落ついたとして、日本で発生している『脱獄事件』とやらの全容を早く知りたいものですね、それに黒乃の旦那の拓海さんがどんな人なのかを早く知りたいですねー。
蓮がステラ・ヴァーミリオンを模擬戦で下した翌日、彼は破軍学園の近くにある全国展開している大型のショッピングモールにいた。
彼の格好はいつもの学生服とは違い、黒いTシャツの上にゆったりとしたオーバーシャツをジャケットがわりに羽織り、下はグレーのジーンズの黒を基調とした出で立ちだ。
そして、彼は二階にある有名ブランドの服屋の試着室の前に置いてある椅子に座り文庫本を読んでいた。
そして、先程から蓮の周囲にはチラチラと彼を窺い見る視線が無数にあった。
それは若い男女のものだ。女性客に連れられている男性客はその何れもが蓮より年上、あるいは歳が近い。高校生、大学生、ヤングビジネスマンといったところだろう。
彼らは足を組んで椅子に座り本を読む蓮を遠巻きに窺い見ていた。彼らは足を組み本を読むという至ってよくある姿勢をとっているだけの蓮の姿に目が離せなかったのだ。
しかし、そうなるのも無理はなかった。
言わずとも知れた歴代最強の《七星剣王》。その上、U-12での世界チャンピオン最年少記録保持者。伐刀者でなくても知っている超有名人だ。日本を代表する騎士といっても過言ではない。
更にその容姿だ。順調に伸びた結果180を超える高身長になり、その辺の世界的なトップモデルが裸足で逃げ出すほどのルックスを持っている。
それだけの条件を兼ね備えていて、人が多いショッピングモールにいれば否が応でも称賛や羨望、嫉妬などの様々な視線に晒されるに決まっている。
普通なら煩わしいと感じたり、逃げ隠れたりするのが普通なのだろう。
だが、蓮は自分に注がれる眼差しを有害なものと無害なもので選り分け、害のないものを自然と無視するという境地に至っていた—彼の場合、そうでなければ街を歩くこともできない—ので、煩わしいと思うことも、逃げ隠れるということもしなかった。
しかし、今回に限ってはその視線を集めているのは彼だけではなかった。
ふと、試着室の扉が開き、中からは淡い黄色のブラウスの上に、春らしい明るい色のカーディガンを羽織った陽香が現れた。
彼女も周囲から視線を集めているもう一つの要因であり、十分に可愛いと評されるルックスとメリハリのあるプロポーションが男女問わずたくさんの視線を集めていたのだ。
「あの、ど、どうでしょうか?」
「陽香によく似合う色だと思うよ」
「あ、ありがとうございます。蓮さん」
陽香から服の感想を求められた蓮は素直な感想を述べた。
蓮の素直な感想に、陽香は頰を赤らめ試着室の扉を閉めた。
美男美女のやりとりに周囲の人達は目が離せなかった。
それに当然気づいている蓮は見事にスルーしたが、陽香はそもそもその視線に気づいていなかった。
しかし、なぜ蓮が陽香とショッピングモールに来ていて、陽香の試着に付き合っているのか、それは昨夜の夕食まで遡る。
「映画?」
「は、はい。い、一緒に観に行きませんか?」
いつものように四人がけのテーブルを二つくっつけ七人で食事をしている最中、蓮の隣に座る陽香にそう誘われたのが切っ掛けだった。
小声で言ったからか、周りには聞こえていない。彼女の隣に座る凪には聞こえているかもしれないが、彼女はパクパクと食事をしており、聞こえてる様子ではなかった。
「ああ、いいよ。朝に校門前でいいのかな?」
「はいっ」
明日は予定もなく特に断る理由もないので、蓮は二つ返事で了承する。すると、陽香はこの前夕飯を作ってもらった時と同じようにパァっと顔を輝かせ大きく頷いた。
そして、隣に座る凪の方を向いて蓮からは見えないようにVサインを浮かべ、凪がサムズアップしていた事に蓮が気づくことはなかった。
翌朝。学校の正門前で待ち合わせた二人は、そのままショッピングモールへ向かった。
彼らの目的地である
いつもは凪やマリカ、那月と買い物に行っているらしいが、偶には男性からみてどうなのかを知りたいそうだ。
最も、それが本音か建前かは蓮には分かりかねるが。
ちなみに、何の映画を観るかについて尋ねてみれば、『砂漠の王女カルナ』を観ると答えた。砂漠の盗賊団に攫われたカルナ姫が若い盗賊のリーダーに恋をするアニメ映画らしい。
何故、恋愛もののアニメ映画に蓮を誘ったのか、それすら蓮には分からなかったが、ここ数日は色々と忙しかったので、気休めに丁度いいか、と真意を探ることもなく一人で自己完結した。
その後、二人はショッピングモールについた後、陽香の提案通り服屋に入り、今に至る。
「……こっちはどうでしょうか?」
試着室の扉が再度開かれ、本日4度目のお披露目。
今度のは、花柄模様のワンピース。胸元やスカートにはふんだんにレースが飾られ、露出も多くはなく、アイボリーの生地に散りばめられた細かな花柄が年相応の可愛らしさを演出しており彼女によく似合っている。
「ああ、良く似合ってる。さっきのよりも良いと思うよ」
「そ、そうですか?…それなら、これにします」
蓮に最も好評だった服を選んだ陽香は、再び試着室の扉を閉め、しばらく経った後、今日着てきた、伸縮性の高いセーターとフリル付きの膝上丈スカートに着替えて出てきた。
「では、会計に行ってきます」
「ああ、俺は外で待っておくよ」
「はい」
陽香が服を持ってレジに向かい、蓮は店の外に出て陽香を待つ。その間、蓮は端末でシネマランドのHPにアクセスし、観る予定の時間と空き席を確認した。
時間的にちょうど良く、後十分もすれば入場が始まるといったところだった。席もいくつか空いており、今からチケットを買いに行けば間に合うだろう。
どの席に座ろうか考えていると店内から袋を持った陽香が出てきた。
「蓮さん、お待たせしました」
「構わないよ。それに時間も丁度良いから、そろそろ四階に移動しようか」
「あ、もうそんな時間なんですね。分かりました」
蓮がそう切り出し、二人はそのままエスカレーターで二階から四階のシネマランドへ移動し、チケットを買い、お供としてポップコーンとドリンクも買った二人は指定されたスクリーンへと移動し『砂漠の王女カルナ』を視聴した。
チケットを買う際に、カップル割はどうですかと店員に提案され、じゃあそれにしてくださいと蓮が迷いなく言ったことに陽香が思い切り赤面したのは余談だ。
▼△▼△▼△
「中々面白い話だったな」
「はいっ!とても面白かったですっ!」
シネマランドから出てきた二人は歩きながら先程の映画の感想を言い合っていた。蓮は穏やかに微笑み、陽香は目元を赤く腫らしていた。
見ていた映画『砂漠の王女 カルナ』が予想以上に面白く感動したので陽香が号泣したのだ。その隣で見ていた蓮は終始無表情だったが、今の様子からして彼も楽しめたようだ。
「しかし、この映画館はまともなタイトルの映画がないな」
「言われてみれば、そうですね」
現在この映画館で上映されている映画は計4つ。
一つは二人が見た『砂漠の王女 カルナ』。
他は『私は妹に恋をした。※R-15』や『男たちの失楽園。※R-15』とどちらもR-15指定のものであり、さらに極め付けが、『ガンジー 怒りの解脱』。
サイトに掲載されているポスターの画像には、ガンジーというタイトルの下に、炎をバックにした坊主頭上半身裸のムキムキマッチョメンが、重火器を手に佇んでおり、『許すことは強さの証と言ったな。あれは嘘だ』という煽り文句まである。もう色々ひどい。行き過ぎたカオスっぷりだ。
四つのうち三つが地雷臭がする為、二人は自分達が見た映画が一番まともだったと共に思った。
映画を見たからか時刻はちょうど昼前。
ちょうど、腹の虫がなる頃合いだった為、二人は昼食を済ませることにした。
各階にあるディスプレイに浮かぶ地図を見て、どこに入るかを決めた二人は三階にあるパスタハウスへと足を運んだ。
店内に入った途端、喧騒が一瞬で途切れた。
客だけでなく、店員までもが店に入ってきた蓮の姿に息を呑んで立ちすくんだのだ。
素でモデル顔負けのルックスに唖然としたのだろう。普通なら、静まり返った店内と数多の視線に戸惑うはずなのだが、こういう対応をされるのは日頃から注目されている蓮からしてみれば慣れたものだった。
「すみません。席に案内して欲しいのですが」
「っ、も、申し訳ありません!すぐにご案内しますっ!」
蓮の言葉にウェイターは我を取り戻し、急いで二人を席へ案内した。
二人は店奥のテーブル席に案内された。椅子を引こうとするウェイターを制して、蓮は陽香の背後に回り、椅子を引く、陽香は少し驚いたような仕草をするも、おずおずと蓮の引いた椅子に腰を下ろす。蓮はその向かいの席に座り、ウェイターに視線を向け、慌て気味に差し出されたメニューを鷹揚な仕草で受け取り、一つ陽香に渡すとウェイターを下がらせた。
そんな彼の所作は年齢に不似合いな貫禄に満ちていた。
彼に目を向けていた客達ーそのほとんどが女性客ーがその視線に羨望の眼差しを浮かばせていた。
しかし、その視線を見事にスルーした二人は受け取ったメニューを開き、しばらくして何を頼むのかを決めると、すぐに店員を呼んでオーダーを終えた。
「そういえばずっと気になってたんですけど」
「ん?」
オーダーを済ませ、料理を待っている間、水を一口飲んだ陽香がふと疑問を漏らした。
「その花のネックレスはいつもつけてるんですか?」
陽香の視線の先には蓮の首に下げられた銀のフレームに赤と青の二色のクリスタルが嵌められた六枚弁の八重桜を模したネックレスがあった。
蓮はその質問に頷き、ネックレスを手に取る。
「そうだね、風呂の時以外は基本つけてるかな」
「そうなんですか。殆ど身につけているということは、やっぱりとても大切なものなんですか?」
「ああ、昔大切な人からもらったものなんだ」
そう言い、手の中にあるネックレスを見て蓮は昔を懐かしむように笑みを浮かべた。
蓮が肌身離さず身につけている桜のネックレスは彼の実の両親からもらった最後のプレゼントだ。
六歳の誕生日プレゼントの為にわざわざ特注で作ってもらったものらしい。ーらしいというのは、そのネックレスの事を知ったのが、二人が死んで葬儀を済ませた後であり、理由を知っていた黒乃からその時に全てを聞かされたからだ。ーそれ以来、蓮は二人が遺した形見として日常生活の殆ど身に付けている。
もちろん、毎日手入れを欠かしていない為、ネックレスには錆や傷の一つもない。
赤と青のクリスタルが天井のライトの光を反射してキラキラと光っていた。
「すごい綺麗ですね」
「ああ、俺もそう思うよ」
蓮は陽香の言葉に笑みを浮かべ、ネックレスを再び首から下げる。
その時、タイミングのいい事に料理が運ばれてきた。
「お待たせしました」
それぞれ頼んだものが机へと並べられていく。見た目や匂いで十分食欲をそそられる料理に二人の顔は自然と緩んだ。
「じゃあ食べようか」
「はい」
そう言って二人はそれぞれ料理を味わう。
料理は、カジュアルな店構えに関わらず、至極満足のいく味だった。
前菜やスープ、そしてメインのパスタも、小細工のない真っ向勝負の品々で二人は存分に舌鼓を打ち堪能した。
▼△▼△▼△
食事の会計は蓮の奢りで済ませた。陽香も払うと言っていたのだが、こういう所ぐらいは男である自分が払うと蓮に押し切られ、仕方なく蓮に奢られた。
それに、蓮は軍務や特例召集などの収入により、ポケットマネーは元服を迎えたばかりの16歳の少年にはしては異常な額だった為、昼食の代金二人分を払った所で全く響かなかった。
食事を終えた後、二人はしばらくモール内を適当にブラブラしいろんな店を回る事にした。
「そういえば、蓮さんは選抜戦の相手は決まりましたか?」
他愛のない話をしている最中、隣を歩く蓮に、陽香が問い掛けた。
破軍学園での七星剣武祭の出場枠を決める選抜戦は明日から始まる。
今日までに対戦相手の通知が選抜戦実行委員会からメールで送られる手筈となっている。
だから、陽香は蓮が初戦で戦う相手が誰なのか気になったのだ。
「いや、まだ来てないな。陽香は?」
「私は三年生の幡手という方で、2日目です」
陽香は今朝方に実行委員会から既にメールを受け取っていた。
対戦相手は三年生、Dランク騎士幡手 岳だ。記憶が正しければ彼は確か岩使いであったが、陽香の実力をよく知っている蓮は贔屓目なしに客観的に判断して素直に陽香が勝つと思った。
「陽香の実力なら大丈夫だろう。いつも通りにやれば問題なく勝てる筈だ」
「はい!頑張ります!」
蓮からの激励とも取れる言葉に陽香は歓声に近い声で強く頷いた。蓮は陽香のそんな様子に笑みを浮かべていた。
そして、当の陽香はというと、
(蓮さんに激励された!)
今の言葉を蓮に激励されたと思い。心の中で歓喜に打ち震えていた。しかし、それは心の内にとどまらず、嬉しそうな表情ともなっていた。
陽香は蓮のことを友達としてではなく一人の異性として好きだ。
彼女が蓮を意識したきっかけは、破軍に入学する前、入学試験の日だ。陽香は彼と同じ試験グループだった。
破軍学園は他の学園のように素質があれば、誰でも入学できるというわけではなく、全寮制と支援金による衣食住の保証+学費全額免除という特典が存在する分、入学の際にその投資に見合うかどうかを選別するための入学試験が行われるのだ。そこで、陽香は彼と同じグループになった。
初めて見た時、まず彼の容姿に惹かれた。
淡い水のような蒼髮と海のように鮮やかな紺碧の瞳。整った顔立ちと、明らかに他の受験生達とは違う雰囲気。
後から、彼が日本に二人しかいないAランク学生騎士の一人、U-12優勝最年少記録保持者である《紺碧の海王》の二つ名を持つ騎士だと知った。
そして、彼が試験で見せた伐刀絶技に圧倒されたと同時に、魅了された。
陽香はBランクと言うこともあって実力は十分すぎるほどにあった。中学時代まで、自分の周りで最高の好敵手は同じBランクの小学校時代からの親友である凪だけだ。お互いが親友であり、最高の好敵手であった。
二人に比肩し得る魔術の才能を持つ子供は、あいにく彼女たちのコミュニティに存在しなかった。
騎士学校に入り、お互い以外の切磋琢磨するライバルが得られることを望んでいたが、同時に、自分たち以上の才能には巡り会えないのではないかと言う思いも彼女たちの心にはあった。
だが、そんな思い上がりは隣を歩くこの凛々しい青年によって粉々に打ち砕かれた。
彼は「別格」だった。
嫉妬することすらもバカバカしくなるほどの、圧倒的な才能、そして実力。
入学試験で試験官に見せた伐刀絶技は、発動スピード、威力、規模、魔力制御、全てにおいて完璧で圧倒的だった。
しかも、それだけではなく、彼の魔術はとても
彼女は蓮のように霊眼を持っているわけではない。だが、光使いである彼女は一般の伐刀者に比べて、魔術行使の副作用で生じる光のノイズに敏感だった。
魔力の無駄。余分な魔力が空間を震わせることで生じる光のノイズ。
だが、彼にはそれが全く感じられなかった。それの意味するところは、一切の無駄がない魔術。魔力を一滴も零す事なく全てを伐刀絶技に使い切る、計算され尽くした精緻な魔術。
それを、その混じり気のない純粋で鮮やかな『青』を、陽香は、美しいと思った。
今までに見たことのない、とても幻想的で神秘的な美しい魔術だと感じた。
その日以来、ずっと忘れられないほどに、それは彼女の心に深く刻まれた。
それが彼女が蓮を意識した切っ掛けだった。
それからは、彼と話をし、交流を深めていくうちに、ますます彼に惹かれ、いつしか彼の隣を歩いて支えたいと思うようになった。
まだ告白はできてはいないが、日頃からアタックはしている。今日も凪達のアドバイスを受け意を決して今日やっとデートに誘うことができたのだ。
とりあえず一歩前進できたことは大きな成果のはずだ。
そして、ここまでは彼女の思い描いた通りに状況が進んでいる。この後もプランは一応考えてはいるが、どのタイミングで切り出そうか決めあぐねていた。
「……っ」
その時、ふと、隣を歩いていた蓮が足を止めある方向へと視線を向けた。
「蓮さん?」
「………」
不思議に思った陽香が尋ねても蓮はその瞳に警戒の色を浮かばせた彼は氷刃の如き眼差しを壁の方へ向けていた。
そして陽香が再び声をかけようとした時、
「陽香今すぐここを離れるぞ」
「え?あ、はい」
有無を言わせない口調に陽香は戸惑いながらも頷き、歩き出した蓮に続く。
一体何があったのだろうかと陽香が思考を巡らせた瞬間、モール内に銃声と悲鳴が響き渡った。
▼△▼△▼△
『おい、そっちはいたか?』
『いや、こっちもクリアだ。この階の客はさっきのでもう
全部集め終わったんだろう』
黒の戦闘服とガスマスクに身を包んだ二人組の男が、手にアサルトライフルを構えながら、三階の廊下を歩き格店内の様子を捜索していた。
『一度下に戻るぞ。ビショウさんに報告だ』
『おう』
そう言って、二人は周囲を警戒しながら小走りで下へと降りていった。その様子を
「《
人二人は乗れそうな巨大な6枚花弁の氷の華『雪華』に蓮と陽香は乗っていた。
《解放軍》の兵が銃を発砲する瞬間、いち早く彼らの存在を察知した蓮が陽香を抱え飛び上がり、足元に一枚雪華を展開しその上に乗り天井に張り付くことで、事が落ち着くのを待っていた。それと同時に遮音結界《
「陽香、怪我はないか?」
「は、はい、大丈夫です。いきなり飛んだので驚きましたけど…」
「それはすまなかった。言う間も無く来てしまったからな」
「いえ、大丈夫です。それで、これからどうするんですか?」
陽香の質問に、蓮は周囲を見回しながら答えた。
「とりあえず外に出る。奴等の目的は大方人質をとっての資金調達だろう。それならそう簡単に人質は殺されないはずだ」
「ですが、逃げ出すにしても一体どこから……」
陽香の言葉に蓮は少し離れたところにある1階から3階まで繋がっている大きなガラス壁の方を指差す。ガラス壁は銃で撃たれたからか大きく割れており、人二人は余裕で通れそうな穴が開いていた。
「あそこから出よう。有難い事に奴等が銃で割ってくれたからな、このまま外に出る。片付けるのはその後だ」
そう言うと蓮は雪華を操作し、空中をまるでサーフィンでもしているかのように飛び、割れたガラス壁を潜って外へと出た。
外に出た二人はショッピングモールから少し離れた所へ降りる。
外には既に、警察が来ていて何台もの警察車両がバリケードを作るように並び、武装した大勢の警察官が周囲を固めていた。しかし、この程度の規模では突入出来たとしても、人質の命の保証までは出来ない。
ということはつまり、自分が全てやらないといけないのだ。最も初めから一人で済ませるつもりだったのでさして問題はないのだが。
蓮は警察官の一人に近づくと生徒手帳を取り出しながら声をかける。
「すみません、破軍学園所属の新宮寺です。責任者のところに案内してくれませんか」
「え、あっ、は、はい!こちらへどうぞ!」
蓮に気づいた警官が慌てて敬礼し、責任者の元へと二人を案内する。
通された蓮は同じく通された陽香を置いて責任者のもと
へ歩み寄る。
「破軍学園所属の新宮寺です。現在の状況を説明願いたい」
「はい。犯人は解放軍。規模は二十人から三十人ほどで、全員が銃器で武装。監視映像をモニターしている警備会社からの情報では、買い物客五十名程度を人質としてフードコートに集めているようです。身代金とモールの金品を要求しています」
蓮の予想通り、彼等の目的は定期的によくやる資金調達だった。敵、人質の数、どこを見回りしているかその全てをたった今魔力索敵し終えた蓮は警察官が言った情報と齟齬が無いことを確認する。
「何度も交渉を試みてはいますが、《使徒》が出てこないので……」
見れば警察車両の上からメガホンを持って必死に交渉している警察官がいた。しかし、相手側は姿を現そうとすらしないのであまり意味がないようだった。
状況を一通り聞いた蓮は一度頷く。
「分かりました。全員ここで待機しててください。俺が全て確実に、始末します」
「え、お一人でですか⁉︎せめて応援が来るまで」
「時間が惜しい。それにこの程度ならむしろ一人の方がやりやすい。後、人質はここに
『流す』の言葉の意味が分からず、殆どの人が首を傾げるが蓮は自分で考えろと言わんばかりに彼等から陽香へと視線を向けた。
「陽香はここにいてくれ。すぐに片付けてくる」
「は、はい蓮さんもお気をつけて」
「ああ」
陽香の万感を込めた眼差しに見送られ、蓮は警察車両の前に進み出る。
「《海龍纏鎧》」
蓮は東洋の武士鎧を模した氷と水の青白い全身鎧を身に纏い、敵を駆除するためにショッピングモールの中へと踏み込んだ。
デート描写書くの難しいね。
そして、私の都合上設定に一部修正を加えます。
1つ目は、蓮が小4時に小学生リーグでの世界二位を世界一位に変え、最年少優勝記録保持者とすること。
2つ目は、陽香と凪のランクをCからBへ変更すること。
以上2つの設定を変更します。
12/27追記
海龍纏鎧のイメージを西洋の甲冑から東洋の武士鎧へと変えました。