優等騎士の英雄譚   作:桐谷 アキト

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今回は全体的に暗い話になりますね。

追記、内容を一部付け足します。


5話 過去の罪

 

 

あの後、二人だけで話したいというカナタの申し出を、蓮は受け学園から少し離れた喫茶店へ移動し奥の空席に案内され、二人掛けのテーブル席に向かい合うように座った。

 

そして蓮はコーヒーを、カナタは紅茶を注文し、喉を軽く潤したところで、

 

「……ありがとうございます。来てくださって」

 

ゆっくりとカナタが口を開いた。蓮は首を横に振る。

 

「いや、構わない。俺も聞きたいことがあったからな」

 

会いたくはなかったが、もう会ってお茶をしている以上、あの日から気になっていたことを少しは聞いておこうと思った。

 

「……苗字、変わったんですね」

「ああ、四年前にな。()()母さんが結婚したんだ。それで苗字が滝沢から新宮寺へと変わった」

 

蓮の両親の秘密をカナタは知っている。だが、その話をこれ以上するつもりはない。何故ならその話は蓮にとっては()()()そのものなのだから。

そして蓮は次の話題に話を切り替えた。

 

「しかし、六年か。六年も経つとお互い変わるものだな。カナタもものすごく綺麗になった」

 

感慨深そうに、だがどこか悲しそうに蓮は呟いた。

お互いこの六年でだいぶ変わった。

カナタを見てまず思うのは、驚くほど綺麗になったことだ。蓮の知るカナタは、お嬢様で周りよりも大人びてはいたがどこかやんちゃなお転婆娘な感じだったが、今はむしろ逆だ。とても一歳違いとは思えないほどに落ち着いた貴婦人のように見える。

六年。恐らく、蓮の知らない時間が彼女を変えたのだろう。彼女以外の幼馴染も同じなはずだ。

そして今のカナタ達はもう、蓮の知る彼女達ではないのかもしれない。今の蓮がもう六年前のあの頃とは違うように。

 

「そうですわね。私も貴方を見て驚きました。昔は同じぐらいだったのに今は頭一つ分あって、驚くぐらい格好良くなったんですもの」

 

そう言ってカナタは表情を綻ばせた。

その穏やかな微笑が、記憶や中にあるかってのカナタと重なって、ようやく実感した。

自分は今、確かに幼馴染の貴徳原カナタと再会したのだと。

そのことは嬉しかった。もう叶わないと思っていたことが叶ったのだから。

だからこそ、過去の罪と向き合わなければいけない。

 

「……で、話ってのは何だ?昔話をするためだけに誘ったんじゃないんだろ?」

 

一度コーヒーを啜り一息つくと、先ほどの穏やかな雰囲気から一転一切の感情を感じさせない冷たい声音で問い掛ける。カナタは表情を暗くし手元の紅茶に視線を落とすと少し間を開けて言葉を返した。

 

「……今日は生徒会の使いで来ました」

「生徒会?」

「ええ、私は生徒会の会計ですので、それで生徒会長と風紀委員長が貴方に話があるそうですので明日生徒会室に来て欲しいとのことです」

 

まさかの人物からの呼び出しに蓮はわずかに驚く。

現生徒会長と風紀委員長。学内序列一位と二位の座にいるまさしく破軍学園の三大巨頭の二人。

七星剣武祭に出てはいないものの、出ればベスト3は間違いなしと言われている本物の実力者達。

名前や顔写真で彼女らの存在は把握していたが、まさかそんな人物達から呼び出しを受けることになるとは予想外だった。

 

「……要件は?」

「それは明日話すそうです。私は内容までは存じ上げません」

「……そうか。了解した」

 

実はカナタは話の内容を知っていたが、真弓と麻衣から言わないようにと口封じをされているため口には出さなかった。

そんなカナタの様子をじっと観察していた蓮はその真偽を追求することはなくそのまま流した。

 

「で、話は他にもあるんだろ?」

「……ええ、むしろそちらが本題です」

「わかった。だが、その話をする前に」

 

蓮は右手の人差し指の先に青白い光を灯すと机を軽く一度叩き、一言呟く。

 

「———《静謐なる海界(アクア・セレン・テルミナス)》」

 

ポゥッと淡く光る手の平サイズの青色の魔法陣が机の中央に浮かび上がると一瞬で溶けるように消えた。

 

「今のは?」

「水で俺達を囲む程度の小さな遮音結界を張った。これで俺達の会話は外には漏れない」

 

水の魔術で音が外に漏れないようにする結界を張る。他人には一見何もないように見える空間だが、実際には二人を囲むように透明な水の層が幾重にも覆いかぶさっていた。

 

霊装(デバイス)も顕現せずに発動してみせた伐刀絶技(ノウブルアーツ)に一切の魔力を感知できなかったカナタは彼の『迷彩』の技術の高さに目を見張ったが、同時に感謝もした。

 

なにせ今からする話はあまり他人には聞かれたくない話だ。幸い、二人の席の周りには人がおらず、店内の客の数はまばらだ。だが、万が一のことがある。今のように店内の向かい側から()()()()()を感じている状況ならば、尚更だ。

蓮もそれに気づいて結界を張ったのだろう。

そして浮かべていた微笑を、冷たい無表情へと変え、

 

「………六年前のことです」

 

そっと囁くように言った。それは、予想していた通りの言葉だった。

 

「……やはりか。なら、俺から先にいいか?」

「……ええ、構いませんわ」

「………あいつらは、刀華と泡沫は元気なのか?」

 

 

 

△▼△▼△▼

 

 

 

——そんな二人の様子を、離れた席からこっそり見ているもの達がいた。

蓮のクラスメイトのレオ、マリカ、一輝、那月だ。先に訓練場に向かおうとしたのだが、やはり二人の事が気になってこっそり後をつけてきたのである。(主にマリカとレオが言い出した事だ)そして向こうの会話の一部分をかろうじて聞き取り、

 

「やっぱりねー、あの先輩、蓮くんと何か関係があると思ってたのよー」

「しかし驚いたぜ。まさかあんな美人な先輩と幼馴染だったとはな」

 

レオとマリカが興味津々と言った様子で店の反対側にいる彼らの様子を食い入るように眺めていた。

だが、

 

「ね、ねえ、これって覗きだよね?流石に新宮寺君も怒るんじゃないかな?」

「そ、そうですよっ他人の逢引を覗くような真似……」

 

困惑した声で二人に言う一輝と顔を赤くしている那月だ。二人は常識を弁えているのか二人の逢瀬?の現場を覗き見るのは流石に失礼だと思い二人を止めようとしている。だが、この野次馬コンビは止まらなかった。

 

「えーでも二人も気になるでしょ?あの二人の関係」

「……確かに気にはなるけど…」

「大丈夫だって、バレねぇようにちゃんと隠れるしもう少ししたら切り上げるからよ」

「……う、うん、程々にね」

 

多分、このまま何度やめさせようとしても彼らの好奇心は止まらないのだろう。

説得を諦めた一輝は遠くに座る二人に視線を移す。

先ほど自分達に先に行っといて欲しいと言った時に感じた雰囲気、あれはあまり踏み込んでいいものには感じなかった。

近寄って欲しくないような他者を拒絶するような意志が感じられた。

だから、カナタとの会話はあまり他人には聞かれたくないものなのかもしれない。

 

だが、やはりあんな美人との二人きりでの会話は年頃の好奇心をくすぐるのだろう。

一輝はバレなければ問題ない、と自分に言い聞かせ、罪悪感を感じながらも二人の会話に耳をそばだてた。向かいの席を見れば那月も顔を赤くしながらも興味津々に耳をそばだてている。

 

これは蓮にバレたら全員怒られるな、と未来の心配をしハァとため息をつく。

 

再び蓮達の様子を窺いながら、

 

(でも、彼のあんな顔は初めてだ。一体、彼女と何があったんだろうか)

 

 

 

△▼△▼△▼

 

 

 

蓮の言葉にカナタは暗い顔をし答えるのを躊躇っていたが、やがて答えた。

 

「……ええ、二人とも元気です。ですが」

「泡沫は俺のことを憎み、刀華は自分を責め続けている。そうなんだろ?」

 

半ば確信に近かった問いにカナタは首を縦に振る。

 

東堂刀華、御祓泡沫。

 

その二人は蓮の幼馴染でありカナタ同様にとても仲が良かった。蓮だけは一歳年下だったがそんなことは気にせずによく四人で遊んだ。

全員伐刀者だと言うことが判明した時には大喜びしていた。

 

しかしそれも六年前のあの日に終わった。

あの事件以来、泡沫は蓮のことを激しく憎悪し、刀華は自分のせいだと思い今もなお己を責め続けている。

 

蓮は彼らの性格を考えればまた可能性の一つとしてそうなることはわかっていた。だが他人の口から聞かされると、その元凶が自分にあることに罪悪感を抱かずにはいられなかった。

 

「………そうか。だが()()()()()()をしたんだ。恨まれても仕方ない」

「———ですが!」

 

カナタは声を大きくして、短く息を呑んだ後、絞り出すようなか細い声で、

 

「六年前のあの事件で、蓮さんは……」

「……ああ」

 

カナタが何を言いたいのかは解る。六年前に起きた事件のせいで、蓮は住んでいた町を離れることになった。その時に自分がしでかした事と、失われたものを、新宮寺蓮は忘れていない。

だが、

 

「確かにあの事件の発端は俺じゃない。だが、俺は被害者であると同時に、加害者なんだ。いくら取り繕うとも、それだけは変えることができないんだよ」

 

蓮は苦笑を浮かべる。

絶対に消すことができない血塗られた《過去(大罪)》。

それは彼らの心に深い傷を残した。

だから、彼らから恨まれ憎悪の対象になったとしても仕方のないことなのだ。

 

「カナタが心配なのはわかる。六年前、俺は自分のしたことを最後まで背負いきれなかった」

「違います。あれは蓮さんのせいじゃありません……だってあれは」

 

カナタが言おうとしたその先の言葉を、蓮は「いや」と首を振って遮った。

 

「それでもだ。この罪はどうあろうとも消えることはない」

 

すると、カナタは俯き、今にも泣き出しそうな顔で、

 

「……確かにそうなのかもしれません。ですが、誰が何と言おうと、私達を守ってくれたのは貴方です」

「……ああ、ありがとう」

 

カナタがそう言ってくれるなら、たとえ許されることはなくても、少しだけ救われた気がした。

大きな過ちを犯し、多くの人から大切な者を奪った自分に、それでも守れたものがあったのだと、ほんの少しだけ安心できた。

蓮は表情を綻ばせ、コーヒーを一口啜ると静かな声で告げる。

 

「……カナタ、俺はこの罪も彼らの憎しみも一生背負い続けるよ」

 

己の覚悟を、あの日に立てた誓いを。

 

「偽善でも構わない。誰からも認められなくても構わない。悪魔と呼ばれてもいい。大切な人達を護れるのなら何だって構わない。俺は俺が守りたいものの為にこの剣を振るう」

 

それだけが彼に許された唯一の使命であり、唯一残された償いでもある。だから、

 

「俺は戦い続けるよ。この手が血に染まっていたとしても、この力が呪われていたとしても、俺が殺してしまった人達以上の人々を救いたい。それが俺にできる唯一の贖罪だから」

「………っ」

 

カナタは顔を俯かせ、悔しそうに唇を噛んで、膝の上でスカートを強く握りしめていた。

 

「俺からは終わりだ。済まないな、先にしてしまって」

「……いえ構いません。それに私が言おうとしたことも同じでしたし、お気になさらなくて結構ですわ」

 

事実カナタも蓮が聞いて来たことと同じことを言おうとしていた。だが、それはあくまで一つであり、まだ彼に聞きたいこと、言いたいことはある。

蓮もそれを感じ取っているのか無言でカナタが切り出すのを待っていた。

 

そしてカナタは切り出した。精一杯の勇気を振り絞って、一番聞きたかったことを彼に尋ねた。

 

「蓮さん、貴方は私達をまだ幼馴染として見てくれますか?」

「……………」

 

しばしの沈黙。そのたった数秒の静寂がカナタには何時間にも感じられた。そして蓮はゆっくりと口を開き。

 

「………ああ」

 

一言、そう答えた。

答えとしてはあまりにも簡潔すぎるものだが、カナタにはそれが聞けただけで十分だった。

 

 

 

△▼△▼△▼

 

 

 

 

その後も蓮とカナタの話は続き、店を出る頃にはすっかり日は暮れ、空には月が上りつつある。

蓮はいくらカナタが伐刀者として強いとはいえこんな夜道を女の子一人で歩かせるわけにはいかないと、カナタとともに学園へと歩き出した。

 

「………蓮さん、今日は本当にありがとうございました」

 

しばらく無言で歩いていると、唐突にカナタが口を開いた。

 

「突然だな」

「ごめんなさい。ですが、また貴方とこうして話ができるとは思ってもいませんでしたので」

「……確かにそうだな。俺も思ってもいなかった」

 

そして再び沈黙が続く。

今度はそれを蓮が破る。

 

「そういえば、おじさんとおばさんは元気なのか?」

 

この場合はカナタの両親がそれに該当する。

蓮は実の両親が生きていた時から彼女の家と面識があり、彼女の両親も二人が死んだ後も良くしてくれてた記憶がある。

 

「お父様とお母様ですか?ええ、元気ですよ。逆に元気すぎてたまに困っちゃうときがありますもの」

「……なんとなく、想像できるな」

 

蓮は二人の性格を思い出し苦笑を浮かべる。

カナタの父親の貴徳原幸太郎はかなりフレンドリーな人だ。そしてその妻貴徳原サヤカも似たようなものだった。

あの二人の性格には戸惑いを禁じ得なかった、というよりテンションについていけないとわずか9歳にして思ってしまうほどだった。

 

「ここまでで構いませんわ」

 

気づけばもう破軍学園の正門まで来ていた。

カナタは蓮の前に一歩進みでるとこちらに振り向く。

 

「蓮さん、私は貴方の味方であり続けます。この世界の誰もが貴方を否定し拒絶したとしても、私は、私だけは貴方の味方であり続けます。それが、私に出来る唯一の恩返しです」

 

強い覚悟を持って告げられた言葉に、蓮は一瞬目を見開くも口の端に笑みを浮かべる。

 

「……ああ、ありがとう。じゃあ、何か困ったことがあったら頼らせてもらうよ」

「はいっ……蓮さん、今日はお誘いに応じていただき本当にありがとうございました。明日、生徒会室でお待ちしております」

「ああ、また明日な」

「はいっ、また明日」

 

カナタは嬉しそうに答え、お淑やかに頭を下げると背中を向け寮へと続く道を足早に駆けていった。

それを見送った直後、ふと生徒手帳(破軍学園の生徒手帳は身分証明書から財布、携帯電話、インターネット端末と、何にでも使える優れものである)とはまた別の携帯端末のメールの着信音がポケットから聞こえてきた。送信者の名を見て、内容に目を通し一瞬だけ険しい顔を浮かべたがすぐに元に戻し、ポケットにしまう。

 

そして一つため息をつくと、視線を後ろに向けた。正確には正門から少し離れた電柱の陰にだ。

 

「いい加減に出て来たらどうだ?お前ら」

 

蓮はよく通る声で電柱の陰にいる追跡者(もう正体は気づかれている)に投げ掛ける。すると、

 

「あーあ、やっぱりバレちゃってたかー」

「だから言ったろうが、あの時点でバレてたってよ」

「ああ、うん、とりあえずごめん」

「えと、ごめんなさいっ」

 

電柱の陰から出て来たのは、マリカ、レオ、一輝、那月だった。マリカとレオは全く反省の色なし、一輝と那月は申し訳なさそうに謝罪していた。

蓮はそれに呆れたように笑みを浮かべ息をつくと。

 

「まあ、お前達が覗いてたのは気づいてたよ。だから途中で結界を張らせてもらったんだ。黒鉄や那月ならともかく、レオ、マリカ、お前達は変に楽しんでそうだったからな」

「「ギクッ」」

 

二人はわざとらしい声を揃って出して、乾いた笑みを浮かべていた。悪戯っ子気質のあるマリカとやんちゃ気質のあるレオのことだ。図星で言い訳もできないからああいう反応をしたのだが、それが見事に同じだった。

それを見て再びため息をつき踵を返すと、

 

「とりあえず今日は夜も遅いしもう帰るぞ。話を聞きたいのなら明日話してやる」

『はーい』

 

今度は四人仲良く揃って返事をしてきやがった。

全く、と悪態をつきながらも蓮の口の端には笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

その日の深夜。

車通りの多い高速道路を一台のバイクが疾走していた。

黒い戦闘服に身を包み、同じく黒いヘルメットで顔は隠れていてわからない。唯一分かるのは、そのヘルメットの後頭部からはみ出ている長い尾のような水色の髪が風に靡いているだけだ。

 

しばらく高速を走り続け、人の多い都市部を抜けると高速を降り一般道路を走り続け人気のない山間部へと入る。

そして山道に止められていた大型オフローダー二台と大型トレーラーを視認すると、その手前でバイクを止める。

バイクから降りた男はそのヘルメットを外し、素顔をあらわにした。

 

月光の下で淡く煌めく水色の長髪。

闇夜に鮮やかに輝く、深い紺碧の瞳。

顔立ちは整っており、身体つきは細身。

その蒼髪碧眼の男は、破軍学園一年の新宮寺蓮その人だった。

 

彼がなぜ深夜にこんな山間部にいるのか、その疑問はすぐにわかった。

 

彼がバイクから降りたと同時に大型オフローダーから降りてきた1人の壮年の男性が、蓮の前に立ったからだ。

彼らは蓮の旧知の人物だった。

蓮は彼らの前で姿勢を正し、敬礼する。

 

「少佐、桜宮現着しました」

「うむ、急な召集に応じよく来てくれた。特尉」

 

旧知の人物であり、上司でもある日本国の特殊部隊である、国防陸軍独立魔戦大隊隊長・氷室茂信少佐は蓮へそう言葉を掛ける。

 

「いえ、これも当然のことです。本官も大隊の一人、任務があるというのに休むわけには行きません」

 

通常の軍隊の編成とは別系統の、魔導騎士連盟の部隊とはまた違う魔導騎士だけで構成された部隊であり、一般の部隊では手に負えない案件。つまり凶悪異能犯罪者の案件を担う部隊だ。

機密の度合いが通常の軍事機密よりもはるかに大きいため、一介の高校生などが関わりあう、ましてやその存在を耳にすることすらも許されないのだが、蓮はとある事情から、戦略級魔導騎士・桜宮亜蓮として彼の部隊に所属している。

そして今夜はとある犯罪組織を確保するために、メールで召集を受けこうして深夜、寮を抜け出し出動していたのだ。

 

「本官が言えたことではないが、高校生になってからますます学生らしくなくなったな」

「今更ですよ。それで、現在の状況はどうなっていますか?」

「トレーラーで話す。来てくれ」

 

氷室に促され、蓮は彼と共にトレーラーへと歩く。

 

「しかし、久し振りだな。直接会うのは三ヶ月ぶりか?」

「そうですね。それで今回は一刻を争う問題だと考えてよろしいのですか?」

「ああ、無論だ。だから特尉を呼んだのだからな」

 

トレーラーの中は情報室になっており、この辺り一帯の地形図、ある建物の構造。それらが2人のオペレーターの操作によりモニターに表示されていた。

それを見て瞬時にこれが今回の敵の情報だと理解する。

 

「黒木、特尉に現在の状況を説明して差し上げろ」

 

黒木と呼ばれた氷室の副官の女性士官は頷く。

 

「はい。犯罪組織『レガリア』はここから約二キロ先にある廃工場に見立てた実験施設を隠れ蓑とし、非人道的な実験を行なっているとの報告があり、我が隊はその実験施設の破壊、並びに実験対象の子供達の保護、そして研究者たちの拘束の任務にあたります。本作戦は迅速に行われる必要があるため先行部隊として貴官、本官、増田少尉、桑原大尉の四名の少数精鋭で当たります。作戦開始は一時間後、他の2人は既に各ポイントにて待機しております。それまでに子供達のデータを頭に入れておいてください」

「ご苦労。特尉、『レガリア』は小規模な組織で、主に研究者の集まりだ。だが、行なっている実験が危険すぎるため、我が隊が事態にあたるよう命令が下った。そこで貴官にも出動を命じる」

「はっ、了解しました」

「特尉、今回は子供達の保護を最優先にしろ。敵の殲滅は子供達を救出した後だ」

 

氷室は断固とした表情でそう言い切った。蓮は無言で敬礼する。

殲滅。それは敵の危険度がそれほど高いということを示していた。

 

故に蓮は手加減も容赦もせず、人質を必ず救出し敵を完全に殲滅することを決意した。

 

 

 

そして一時間後。

 

『時間だ』

 

氷室の一言を通信で聞いていた4人の軍人は、それぞれの持ち場で身構える。

 

『この作戦は失敗が許されない。それを重々承知した上で各自任務に当たれ。では、作戦開始!』

『了解!』

 

氷室の合図に4人の人影がそれぞれの場所から森を飛び出し廃工場へと向かう。

 

「征くぞ———《蒼月》」

 

そのうちの1人、蓮は己の魂の形である藍色の双刀を顕現し、戦場へと出陣した。

 

 




  

カナタのセリフ、あれはどっからどう見ても告白みたいなセリフですが、カナタはヒロインではありません(未定)

そして、次回は主人公がとにかく蹂躙する。

それと戦略級魔導騎士は言い換えれば何になるかは皆さんわかりますよね?

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