知られざる育て屋家業の後ろめたい実態に迫る

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割と救いが無いかもしれません


ポケモン育て屋さんの闇は深い

結論から言ってしまおう。

とにかく、持たざる者が悪い。

賢く無い者が悪い。

健康で無い者が悪い。

美しく無い者が悪い。

仲間が少ないのが悪い。

両親が裕福で無いのが悪い。

コネが無いのが悪い。

要領が良くないのが悪い。

運が良くないのが悪い。

 

足りないものに合わせれば動きは鈍化する。

遅いものは速いものに合わせられない。

あらゆるものは平等では無い。そして誰もが優れたものを手に入れたい。

同じ条件で競えば、条件が良い方が勝つ。そして誰もが勝者になりたい。

競争は必然、勝敗は当然。

ならば足りないものを集めたのでは戦に行く前段階から負けている。

足りないものは他の何かで補わなければならない。そしてその余裕が無ければ前提が成り立たない。

故に、可能な限り優れた者を厳選したいと思うのは、生存競争を持つ全ての命の性なのだ。

 

 

だから、私は現在社会問題となっているポケモンの繁殖による望まれない命の反乱に結果として手を出している。

仕事の場所は、ある森の近くにある町の外れだ。寧ろ、森の近隣と言っても良いかもしれない。

 

私はそこで『ポケモン育て屋さん』という仕事をしている。

育て屋と言っても、他人のポケモンを預かって育てるというよりは、孵化・繁殖させた生体を販売するポケモン牧場と呼ぶ方が正確かもしれない。

 

 

 

種族値と言う、生まれ持って変えられない絶対の格差がポケモンにはある。

例えば、強大な竜族の最終形態であるカイリューは偽・伝説存在や六百族と呼ばれる存在で、

余程の事が無ければ…、いやあったとしてもエサとして与えている種族値の低い、具体的には総合的に二百にも満たないビードルが勝つ事は在り得ない。

 

私は、大学で優生学という学問を学んだ。

即ち、優れた存在は優れた存在を生みやすく、劣った存在は劣った存在を生みやすい。

そして、その差が大きくなればなるほど総合的な格差が生まれ、覆りにくくなっていくのだ。

 

優生学の視点において、マクロな視点では種族値が必要だが、

同じ種族同士が戦う事も考えれば、ミクロな視点で個体値と言うものが必要になってくる。

 

人間でもいるだろう。何をやっても才能にあふれた存在と、何をやってもダメな奴が。

生まれた種族は優秀なのに、その恵まれた優位性を生かせずに他者に敗れ去る所謂『ハズレ』。

お客様にがっかりされて私も『ハズレ』扱いされたくないので、そういう個体は森に放棄するか、口に出せないような処分をしている。

 

優れた種族で才能のある両親から生まれたポケモンは大抵、優秀だ。

跳び抜けて優秀なら次の種と畑にして、思ったような質でないなら放棄か処分か、格安で新米トレーナーに払い下げている。

 

 

そういうやり方で、私の顧客達からは高い評価を頂いている。

 

 

更に細かい事を言うのならば、戦いに向いた性格と言うものも存在する。

意外かもしれないが、戦う事に関して言えば真面目な個体より、意地っ張りや控えめの方が成果が出ている。

 

自分のプライドを護る為や、見せ掛けの謙虚さを張る固体はいざという時にやり過ぎてしまうという事なのかもしれない。

同じ生き物を攻撃する事に抵抗を持ち続けられるよりかは余程いい事だ。

それではバトルが成り立たない。

 

 

私がポケモンに対して感じる感想は、売れる優秀な個体と、売れない無能な個体。ただそれしかない。

私はポケモンに対して愛情と言うものはもうない。

昔はあったのかも知れないが、売れ残りを処分して、売れる個体の意思を無視して母体に無理な負担をかけて年中繁殖させる。

商売上そうしなくては成り立たないが、それをやっていくにつれて人間性と言われるものが低下していき消え失せたのだろうと思う。

 

出荷の仕上げについてだが、オリーブケンタロスというのを知っているだろうか?

代謝の関係で、体内の脂肪などが循環する一か月前程度から、オレイン酸を多く含むオリーブを飼料に混入させて使い、

その身の油をサラサラにしてA5ランクの肉質で食卓へと届ける我が牧場でも今度始めたいと思っている手法だ。

売れなくなった駄目な個体の使い道としては食用と言う発想は悪くない。

 

まあ、それと関係があると言えばあるし、無いと言えば無い手法で、ポケモンを販売する前に基礎的な経験を積ませてから出荷する。

そうする事で購入者が育て方が良くなくても高い成長度が期待できるから満足して頂ける。

具体的にはこれを努力値と呼ぶらしい。

特定の相手を倒すと、倒されたポケモンの得意な能力値が倒したポケモンの成長に補正してくれる。

だから、私の牧場には倒される為だけに存在するポケモンたちを集めた努力値を稼ぐ部屋がある。

 

もはや年中負け続ける為に生き続けているので、生きる事への活力が無いし、ダメージをそのまま放置されて障害が残っている個体もある。

だが、そういう個体は死んでしまったら別の処分方法もあるから問題は無い。

死なせたくない、負け癖を付けたくない個体はそもそも努力値部屋の生贄には選んでいないからだ。

 

 

私が独自の研究で練り上げた私しか知らないであろう手法と知識、そしてそれを元にして積み上げた長い時間と犠牲があってここまでこれた。

その犠牲の一つである、近隣の生態系の破壊については、顧客の中に高名な政治家やその子息の方々も多いので警察は動かない。

いや、より正しく言うと動けないのだ。

 

私の牧場では、個人だけでなく企業や組織の方々が顧客として存在する。

そして特殊な例ではその全てに該当する顧客もいる。例えばSさんと言う人は、高名なジムリーダーでもありながら…いやこの話は止そう。

私にある組織の配下に付く様に迫って来たが、残念ながら私は大口の顧客と言えどSさんやその関連の仕事だけで生活をしている訳では無い。

収入が低下する話を受けるわけには行かなかった。

 

だが、Sさん本人はそれ以降しつこく来る事は無くても、そのお使いは良く来る。

 

黒系統の服を着ているので判別は着きやすい。

 

 

 

――――――ん?

アイツらは何をしている? …まさか、何という事だ。火をつけやがった。

私のポケモン達よ、あの不届き者達を倒して今すぐ火を消すのだ。

 

 

 

 

 

……何故だ、何故動かない?

このままだと死ぬしかないのだぞ?

良いのか? 死にたくなければ敵を倒せ。生まれて基礎トレーニングしかしてないから勝てないのか?

ならば、繁殖用の母体と種用がいるだろう。アイツらは?

動かなくていいのか? お前達の卵から孵った個体も多いだろう。可愛そうではないのか?

どうしてだ、死にたくなければ動け。動け。動け。

 

くそ、私自ら動くしかないな。

屠殺用の刃物と消火資材を使えば2人とも倒せて火も消せる。

 

 

…どうしたキュウコン、何故道を塞ぐ。

どくのだ。その道を開けろ。

 

何故だ、お前だけは私の命令にどのポケモンよりも忠実なハズだ。

私の最初のポケモンだろうっ!?

 

 

 

……そうだったな、お前の子供達にも随分と酷い事をした。

恨まれても仕方ない。

モンスターボールの精神拘束を解除してやろう。殺したければ殺せ。

 

 

…殺さないのか。でも助けるつもりも無いのだろう?

解っているさ。ああ、共に死んでくれるのか。この時をお前は待っていたんだな。

良いだろう。やりたいことはやり尽くした。何もかもを犠牲にしてな。

 

良い人生だった。これだけ犠牲を踏みにじる悪行の限りを尽くしたのだ。

良い人生でない筈が無いではないか。そうで無くては犠牲になった者に悪い。

地獄で悪行の続きを奏でてやるとしようか、それとも悪鬼に責め苦を負わされながらも生きた時に行った作業の重みには軽いと嘲ってやろうか?

 

全ては今更だ。全てこれで終わりだ。

ああ、良い人生だったよ。

結局は私は私の研究結果を全て私の頭の中にしか残していないから、私が行った全ては私だけのものだ。

私が私の求めた全てを独占してあの世に行くのだ。知識は誰も奪えない。そう、私だけの物なのだ。

 

 

 

はーっはっはっはっはっは、はーっはっはっはっは。

アディオス、この世界の全てよ。


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