ジャパリパークに紅く~Legendary Fish 作:天井in
ま、まあ本編じゃないのでウソ吐いてないです。
…そういうことにしておいて下さい。
「永江さんはこれからどうするのだ?」
乾いた風が緩やかに吹くさばんなの午後。ふと、思いついたようにアライさんが尋ねます。
「そうですねぇ…お二人はどちらへ?」
すこし考えてみたものの、ここは未だよく知らない地。考えても仕方ないと結論付けた衣玖さんは質問を返します。
「私たちはー、しばらくはさばんなを見て回る、でいいのかなー?」
「うん!さばんなは来たばっかだから、まだ見ぬお宝がきっとあるのだ!」
「おたから…ですか?」
のんびりと確認を取るフェネックに、胸を張ってこたえるアライさん。
「アライさんは、パークに眠るお宝をさがす冒険家なのだ!」
「まあ、今のところなーんにも見つかってないんだけどねー」
「これから見つけるから問題ないのだ!探していればきっとそのうち手掛かりが見つかるのだ!」
世知辛い現実にもめげず、こぶしを握って力説します。
「前向きですねぇ」
「かわいいでしょー?」
感心したように手を打つ衣玖さんに対し、フェネックはなぜか自慢げに頷いています。
どうやら深く考えない方がよさそうです。
「…アライさん、フェネックさん。」
「「お?」」
「宜しければ、私もお二人の旅に同行させてもらえませんか?お力になれるかは分かりませんが…」
「おぉ!もちろんなのだ!一緒にパークのなぞを解き明かすのだ!」
「私もうれしいけどー、衣玖さんはいいのー?」
「ええ。昔の事とかもよく思い出せませんし、折角ですから色々なところを見て回りたいな、と思いまして」
それに、お二人を見ているとそれだけで楽しいですし、と心の中で付け加えます。
「よーし、そうと決まれば出発するのだ!」
立ち上がったアライさんが伸びをしながらそう言うと、それを聞いた二人もまた、砂を払ったり行き先を尋ねたりしながら各々立ち上がります。
「わかりました」
「そんでー、どっちに行くのー?」
「あっちに行ってみるのだ!」
そう言って指さした先には特に何があるわけでもなく。どうやら勘で行き先を決めたようです。
斯くして、凸凹コンビの旅路に羽衣のフレンズが加わるのでした。
のののののののののののののののののののののののののののののののののののののののの
リュウグウノツカイについて?
…何故それを私に聞きに来たのかが分からないのだけれど…。まあいいわ。
外見的な特徴としては、鰯の様な模様が入った鱗のない銀色の皮膚、胸部と頭頂部が特に長く発達した紅色の鰭。そして3mを優に超える平たく長い体躯が挙げられるわね。
左右一対の腹鰭は特に長く先端が楕円形に膨らんでいて、この特徴的な形状が英名であるOarfishの由来になっているわ。また、この先端部には多数の化学受容器が存在していることがわかっていて、この器官を頼りに餌等を探知していると考えられているの。
有名なエピソードとして“地震が起こる前に人前に姿を現す”、という逸話があるのだけれど、これは外の世界では科学的には証明されていないのね。
えいえんてい やごころおねえさん
のののののののののののののののののののののののののののののののののののののののの
「そういえば衣玖さんさー」
「はい?なんでしょうか」
「水辺から離れても大丈夫なのー?…だいぶ今更な気もするけどさぁ」
夕陽はすでに落ち、月がさばんなを照らす夜。先を進むアライさんの後をゆっくり追従しながら、フェネックは、おそらく海から来たであろう衣玖さんに疑問を投げかけます。
推測の域は出ませんが、海から来たということは乾燥した空気は肌に合わないのではないか、という考えに今更ながら至ったためです。
「うーん、まあこのくらいならまだ大丈夫そうですかね。夜は涼しいですし」
「そうなんだー。前までの住みかと結構環境が違うんじゃないかと思ったけど。意外と頑丈なのかなぁ?」
「頑丈…とは違う気もしますが。なんというか、こう…」
「こう?」
「私の方が環境に合わせているような?」
「うぅん?んー…適応力が高いのかなー」
自分でもうまく表現できない感覚に言葉が出てこず、どうにもあいまいな説明になってしまいます。
「まあ、水辺の方が好きではありますかね」
「そっかー…ん?」
考えてもわからないので、まあいいかと思考を放棄する二人。すると、フェネックが大きな耳をぴこぴこと動かしました。
「あっちの木陰にー、誰かいるみたいだねぇ」
「おおっ!だいいちむらびと発見なのだ!」
聞くや否や、フェネックが指さした方へ向かって走り出すアライさん。後続の二人も雑談しながらついていくのでした。
「耳がいいんですねぇ」
「それだけじゃないんだよー。私ってもともとさばくちほーに住んでたからさー、周りが暑くてもこの耳から熱を逃がせるようになってるんだー」
「便利ですねぇ」
フェネックの指さしていた木へ向かってずんずん進んでいくアライさん。すると、木陰で休んでいるフレンズを見つけました。
あそこにいるのは誰だろう?いてもたってもいられず、アライさんは大声をあげながら駆け寄っていきます。
「おーい!そこにいるのは誰なのだ―!?」
「ひぅっ」
「えぇっ!?なんで逃げるのだ!?」
びくっと体を震わせたフレンズはアライさんのほうを一瞥すると、小さく悲鳴を上げて逃げ出してしまいます。
どうやら、彼女はとても臆病な性格のようです。アライさんの大きな声に驚いて逃げだしてしまった様ですが…気づく様子はなさそうです。
「待つのだ―!」
「な、なんで追いかけてくるんですかぁ…!?」
「それは君が逃げるからなのだ!?」
「…なんだか楽しそうですね?」
「またアライさんが暴走してしまったみたいだねぇ」
追いついた二人が目にしたのは、
太い木の周りをぐるぐると逃げ回る白黒のフレンズと、やはり同じ場所ををぐるぐると追いかけるアライさんの姿でした。
「ひぃ、ひぃ…」
「ぜぇ…ま、待つのだぁ…」
「…そろそろ止めましょうか」
「え?…あー、そうだねぇ」
慌てすぎて周りの見えていない二人を遠巻きに眺めていた薄情な二人ですが、当人たちが疲れはじめたのを見てようやく止めに入る気になったようです。
…若干一名はまだ後ろ髪をひかれているようですが。
「アラーイさーん、ちょっと落ち着こうか―」
「ふぇ、ふぇねっく…もしかしてずっとみてたのだ…?」
「ははは、そんなまさか」
アライさん達が漫才を始める横で、衣玖さんも白黒のフレンズに近づいて優しく声を掛けます。
「ひぃっ」
「大丈夫ですよ、私たちは貴女を襲ったりしませんから」
「ほ、本当ですか…?」
「ええ。…話すべきこともありますが、お二人とも疲れているでしょうし。少し休んでからにしましょう?」
「は、はい…」
そう言うと、衣玖さんは安心させるように彼女の手を引いて二人の元へ歩いていくのでした。
→
「…それで、アードウルフさんはここで何を?」
「はい…あの、私、この木の根元に住んでて…あ、もともと私が作った穴じゃないんですけど、それで出かけようと思ったら急に後ろから大きな声が聞こえて…」
「驚いて逃げちゃったんだー?」
「はい…」
ひとしきり休んで自己紹介を終え、アードウルフと名乗ったフレンズは事のいきさつを話します。木の根元を見てみると、彼女が住んでいるであろう数人は入れそうな穴が掘ってありました。
「うぅ、ごめんなさいなのだ…今度からは気を付けるのだ」
「あぅ、わ、私こそ…いっつもびくびくしててすみません…」
「いや、アライさんが…」
「まあまあ、お二人ともそのくらいにしましょう?」
気の滅入った二人によって再び始まるいたちごっこ。流石に今度は長引く前に止めに入って話題を変えます。
「私たちは今ねー、さばんなちほーを旅してるんだー。アードウルフはどこに行こうとしてたのー?」
「わ、私はその…どこにって決まってたわけではないんですけど、そろそろ引っ越そうかなー…なんて思って出かけようとしたんです」
「引っ越し?」
「はい。ここって広くて住みやすかったんですけど、水場までがちょっと遠くて」
「なるほどー」
「あの、私はもう行きますけど、良かったら…ここ、使いますか?」
「え?いいのか?」
「はい。寝てる間とかにボスが来てくれるみたいでじゃぱりまんの心配もありませんし」
それに、と欠伸をこらえている衣玖さんのほうに目を向け、くすりと笑って続けます。
「あふ…」
「衣玖さんって夜行性じゃないんですか?」
「わかんないけど、眠そうだしそうなのかなー」
「…皆さんはそうでもなさそうですね」
「基本夜行性だからねー。まあ最近はそうでもないけど」
一応体裁は保っていますが、だいぶ疲れている様子の衣玖さん。フェネックとアライさんも、そろそろ疲れてきたし休んでいこっかー、と頷きます。どうやら今夜のキャンプ地が決まったみたいです。
「じゃあ、今日はここで休むのだ!ありがとうなのだー!」
「昨日噴火したばっかりだし、気を付けてねー」
「お世話になりました…」
「はい、こちらこそ…じゃあ、縁があったらまた」
そう言って夜のさばんなに消えていくアードウルフを見送って、3人も寝床につくのでした。
八意先生の解説コーナーですが、ほぼ筆者がwikiで調べた内容となっております。
実際の研究がどの程度まで進んでいるのかとかは筆者は知りません。専門家ではないので。
つまるところ、あまり真に受けずに流してやってください、ということです。