歯抜けのジーニアス   作:clon

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プロローグ 上

歯抜けのジーニアス

 

男子の間でのあだ名。

なんで日本語と英語が混じってるとか歯がないのかとか疑問が残るし色々と恥ずかしいので使ったことはない。出どころも知らない。

なんでこんなセンスのないあだ名が存在するかというと実際彼女は天才で絶賛歯抜け中だからだ。

その証拠にほら、入学式だっていうのに隣の席に彼女はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

今日は入学式。内部進学組としては特に面白味のない行事だが、新入生代表はそうも言ってはいられない。代表としての挨拶がある。

大変名誉な事であり、個人的には面倒くさそうだと思う。

きっと彼女もそうだったのだろう。彼女は現れなかった。先生達が慌てていたから土壇場で帰宅したに違いない。

その証拠に教室に戻った瞬間、彼女の話で持ちきりだ。

あっちでワイワイ、こっちでガヤガヤ。山火事の如くその名が知れていく。

歯抜けのジーニアスは外部進学組にも広まったと思う。

もっとも、このあだ名は男子の中でのみ広がっているから女子間では、また天才が失踪した。市ヶ谷有咲マジハンパない。くらいだ。

 

学年一位の名を欲しいままにしている彼女は今日も自由だ。天才の秘訣はそういったところにあるのかもしれない。

ということで彼女を見習って俺も今日のところは家に帰る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、泥棒ー!」

「…………」

 

 

住宅街に響く高い声。

閑静なこの場所には似つかわしくないその声の先。視線を向けるとそこには専らの噂の、俺的4年目にしてそろそろ近くで顔を見てみたい人物1位である学年1位の市ヶ谷有咲がいた。

入学式を休んだとは思えないくらい元気な声。やっぱりサボタージュだったのか。サボリ魔め。

ソプラノボイスを腹の底から吐き出し、金のツインテールをパタパタと揺らして彼女は真っ赤なギターを抱えるうちの生徒を追いかけて走って行く。

 

泥棒かー、簡単に見つかるなんて素人だな。初犯なのか。

そして簡単に捕まる。聞こえてはこないけど、2、3言葉を交わして何だかんだ仲良さげに歩いてるし友達なのか。

彼女達は俺に気付かぬまま角を曲がって消えていった。

 

追いかけて挨拶でもしようか。暫く考えたが、

 

 

「帰ろ」

 

 

一言呟いて彼女達に背を向ける。

いきなり声をかけて、なんだこいつ……。みたいになっても困る。

彼女達は俺の事を知らないかもしれないのだ。

何も急ぐ事はない。高校生活は今日始まったのだ。

じっくり攻めていけばいい。

とりあえずいつか来る隣のジーニアスに今日の事をどう聞こうか考えながら俺は今度こそ家へと帰る。




キリのいいところがここしか見当たらなかったので、一旦ここまでとさせていだだきます。
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